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第百二十八話 接待バーベキュー

 カイラルに到着すると漁師のブルーノさんと野良猫のロカがお出迎えしてくれていた。ブルーノさんはお土産用の干物を大量に用意してもらっている。もちろんこれとは別に検査用の積み荷はリンカスタービールも含めて既に定期船に積み込まれているはずだ。


「ブルーノさん、お久し振りです! 干物の準備もバッチリのようですね」


「おう、しっかり天日干しさせた美味しい干物だ。こいつぁ自信作だぜ。検査で長い期間を勝ち取らねぇとな」


「ですね! リンカスタービールも頑張ってもらいたいです」


 野良猫のロカは尻尾を立ててベリちゃんの足元をぐるぐる回りながらご挨拶をしている。何やら匂いを嗅いだり自分の匂いを付けたりしているようなんだけど、ふとジュリアの方を見上げると激しく威嚇し始めた。


 シャャャアアアー!!!!


「な、何で怒るのよ。どっちかというと仲間だと思うんだけどな」


 ロカはベリちゃんとジュリアの間に入るようにして警戒している。おそらく、ベリちゃんに付いたネコの匂い=ジュリアの匂いに反応して私のものに手を出すなと言いたいのだと思われる。


「ロカが怒るなんて珍しいな。近くに新入りのネコでもやって来たのか?」


 ブルーノさん、ネコじゃないけど猫獣人なら近くにいるんだ。ここでもしっかりフードをかぶっているジュリアなので、外見的にはわからないんだけどね。


「ロカ、シャアーはダメ。みんな仲良くだよ」


 なあぁぁー


 ベリちゃんに対しては、優しい喉声で返事を返すロカ。好き嫌いがはっきりしている。


「この分だと、久し振りにロカも王都への定期船に乗り込みそうだな」


「ロカも一緒に船に乗る?」


 なあぁぁー


 どうやら来るっぽい。定期船のネズミ対策として、食料の積み荷を守るようにネコ達も同船する。今回はボスネコ自ら乗り込むことになるようだ。


 定期船の準備も順調のようで、すぐに乗船可能らしい。


「ラシャド王子、乗船されますか? それとも浜辺で軽く昼食をとりましょうか」


 質問はしているけど、浜辺ランチ一択だろう。昼食の準備はブルーノさんがあらかじめ用意してくれているのだ。


「ハルト殿、浜辺ということは海鮮と干物。そして、リンカスタービールだな」


「もちろんです!」


 接待は続いている。いくらラシャド王子に気に入ってもらえてるとは言っても輸入許可と賞味期限が設定されるまでは油断出来ない。品質管理にも努めてきているので大丈夫だとは思うんだけど、無事に審査を通過することを祈っている。どちらも味には自信があるので頑張ってもらいたい。


「ブルーノさん」


「おう、任せとけ。おいっ、みんな先に冷えたリンカスタービールを! エビや貝、干物もどんどん焼いてくれ!」


 漁師兼、干物職人と化したカイラル漁業組合のみなさんによる、おもてなし海鮮バーベキューがスタートした。肉好きのラシャド王子を唸らせた海鮮は見事なもので貝や海老そして焼魚は浜辺一帯に磯の香りをこれでもかと漂わせている。


 港付近のマーマンが減少してきているそうで、監視付ではあるが素潜り漁も限定的ではあるが復活させているらしい。住処としている場所をもっと沖の方に移したのだろうとのこと。そう考えると僕たちのマーマン狩りもそれなりに効果があったのだと思う。それによってこんなにも大きな貝が獲れたのだから素晴らしい。


「パパぁ、この大きいのなんて言うの?」


 ベリちゃんが指差しているのはその大きな貝。身も大きくとても弾力がありそうだ。ブルーノさんが食べやすいように一口大に切り分けてくれている。


「これだけ大きい貝となると夜光貝かな? ブルーノさんこれは何て言う貝なんですか?」


「これは実は貝ではなくてな、イカの種類なんだ。イカは逃げるのが早いからなかなか獲れないんだが、こいつは外敵から守るために甲羅が発達して貝殻を身に纏うように進化した種で逃げ足が遅い。素潜り漁なら見つけさえすれば獲り放題だ。食感もよく焼くと甘みが出て最高だぜ」


 かなり美味しいようでベリちゃんも口の中にいっぱい詰め込んでいる。のどに詰まらせないか心配になってしまうが、クロエが慌てて水筒を渡していたので大丈夫だろう。


「ほう、この良い香りはイカというのか。私にも一つもらえるかな」


 ラシャド王子も気になったようでインパクトのあるビッグサイズのイカとその香ばしい匂いに引き寄せられるようにやってきた。


「そのままでもいいですが、こちらの貝の肝をすり潰したソースを付けて是非お召し上がりください。磯の香りが口の中にいっぱい広がります」


 ブルーノさんが持ってきたソースはそれ自体が強烈な磯の香りを放っていて美味しさが凝縮されているのが見ただけで理解できた。


「こ、これは堪らんな。リンカスターの調査において一番の収穫はカイラルの海鮮料理かもしれぬ」


「喜んでいただけて光栄です」


「そして、焼物にバッチリ合うこのキンキンに冷えたリンカスタービール。ズルい、これはズルい。ハルト殿、ブルーノ殿、リンカスタービールと干物の輸入許可はすぐに取り付ける。数量の確保をしっかり頼むぞ」


「もちろんです!」

「お任せください」

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