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第百二十六話 調査報告

「殿下、マウオラ大森林深淵におけるニーズヘッグに関する調査報告をさせていただきます」


「うむ、続けよ」


 領主様の館にてレイエノールさんからラシャド王子へ報告がされている。ニーズヘッグの消滅確認、ニーズヘッグが消滅してからの周辺の魔物生息に関する生態調査報告からマウオラ大森林の現在の安定度、その他ルート上における薬草関係の分布エリア等。いつ調べたの? と不思議になるぐらいしっかりと調べ上げられている。調査団、ただキャンプしていただけじゃなかったみたい。


「そ、その報告書は私にも頂けるものなのでしょうか?」


 領主様も報告書の内容がとても気になるようだ。薬草関係の分布とかギルドも欲しがる資料かもしれないけど、このあたりは冒険者にとってもお金になるものなので公表が難しいところでもある。


「もちろんです。同様のものを二部作成いたしますのでベルナール様にもお渡しさせて頂きます」


「も、もう少し調査の時間をとってもよいのですよ」


「ベルナール殿、急いだ訳は其方も知っているであろう。我々はすぐにサフィーニア公国に向かう。しかしながら、レイエノールを含む調査団の半分はしばらくリンカスターに残すことになる。調査費用を頂けるのならばレイエノールにお願いしてみるといい」


「えっ? レイエノールさん、リンカスターに残るんですか?」


 続けるように領主様が話を繋いでいく。


「それだけではありません。賢者様とハルトさんがサフィーニア公国に行っている間はハープナの宝石の巫女アリエス様、ローランドさんにもリンカスターに入ってもらう話をしていますよ」


「アリエスとローランドさんまで!? というか、クロエがサフィーニア公国に向かってもいいということですか?」


「交換条件ですね。調査団の半数とハープナからの支援を合わせることで移動制限を許可するようラシャド王子に説得させられてしまいました。上級職が2名、さらに賢者としてアリエス様に調査団が残るのですから文句を言えるはずがありません」


「いくらなんでも過剰すぎませんか? サフィーニア公国に行くならローランドさんには同行をお願いしようと思っておりました。もちろんローランドさん次第ではありますが難しいでしょうか?」

 

 正直そのメンバーをアンフィスバエナ討伐に向けた方がより現実的な気がしないでもない。ラシャド王子、またサフィーニア公国に対してもやはり賢者の名前が大きいのだろう。しかも『火の賢者』はドラゴンを討伐しているのだから余計だ。


「ベルナール殿、ハルト殿はこう言っておるがどうであろうか」


「そうですね。確かに過剰ではあります。ローランドさんがよければ同行してもよいのではないでしょうか。彼はレイエノール殿と同じ上級職のパラディンです。賢者様やハルトさんとも面識があり、先日までパーティを組んでおりましたのでやりやすいでしょう」


「ほう、それは頼もしいですな」


「ありがとうございます! ローランドさんがこちらに到着しましたら相談してみます」


 アリエスが自分も連れていけと騒ぎそうではある。しかしながら代わりの賢者をリンカスターに置くということに意味がありそうなニュアンスに聞こえただけに難しそうな気がする。


「それでは、メンバーが決まり次第すぐに出発するとしよう。明日、ハープナ組が到着次第すぐに向かおう」


「かしこまりました」


 そう言うとラシャド王子はリンカスタービールを飲みながら部屋に戻っていった。ビールはかなりお気に召したと思われる。部屋の中ではきっと焼魚も準備されていることだろう。貿易の方も順調に進んでくれることを祈るばかりだ。そこはまぁ王族パワーに期待しよう。


「それから、ハルトさん少し場所を変えて話をしたいのですがよろしいでしょうか? 賢者様もご一緒に」


「はい。かしこまりました」


「それでは、応接室の方にお願いできますか? 新製品のことで少し相談があるのですよ」


 少しわざとらしい感じで領主様が声を掛けてきた。周辺には調査団の人たちやレイエノールさんもいるので聞かれないようにとの配慮と思われる。おそらく考えられるのはリンカスターのドラゴンであるベリちゃんについてだろう。


「ハルトさん、ベリルちゃんについてどうしようかと思っていたのですが、流石にドラゴン討伐に連れていくというのは説明が難しいかと思うのです」


「それでも私はベリちゃんと一緒に行きます。サフィーニア公国に行くということは一日や二日で帰って来れる訳ではありません。家族ですから一緒に行動するのは当たり前です」


「賢者殿……。しかし、ラシャド王子には何と説明するおつもりですか? 以前ヴイーヴル殿がドラゴンは縄張り意識が強い生物だとおっしゃっておりました。そう考えると一緒に旅をするというのは厳しいのではと思うのですが」


「そのことについては、ヴイーヴルから匂いを消すことが出来るアイテム『身隠しの粉』というものを頂けるという話を聞いております。日数があまり長くならなければ大丈夫かと」


「おー、そんなアイテムがあったのですね。それならばひとまず安心でしょうか。繰り返しますが、ベリルちゃんのことについてはくれぐれも秘密に願います。このことがバレてしまったら私達はお終いなのですからね」


「もちろんです。領主様にもご迷惑をお掛けするようなことは致しません」

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