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第十一話 魂浄化

 女の子は足を引き摺りながら僕とドラゴンの間に入り戦おうとしている。


「は、早く逃げるのだ! わ、私が何としても食い止めてみせる!」


 いや、足めっちゃ震えてるじゃないの……。それに僕も既に動けないんだよね。HPほぼ0なんじゃないかな。


 ロードしてもいいんだけど、どうにかしてこの女の子を助ける方法はないだろうかと考えてしまう。そもそもワイルドボア焼く度にドラゴンが飛んできたら堪ったもんじゃない。


 うーん。攻撃は一切通じそうにないし、魔法も……魔法があったな。


 ここは僕の運に懸けてみるか! もう立ち上がれないけど、魔法なら撃てる。MP切れるまでやってやる!


「うおぉぉぉ!!!! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)! 魂浄化(プリフィーソウル)!」


 僕の叫び声に呆気にとられている仮面の女の子とドラゴンは僕が一体何をしたのかわかっていなかった。戦える力があると思われていなかったからこそ完全に隙をつけたのだろう。油断大敵だアホ。


 ドラゴンを足下からゆっくり光の粒子が囲いこむと上に伸びていき体を包み込むように一塊になっていく。


「なっ! なんだっ! お、お前一体何をしたのだぁぁぁぁぁ! うぉ! あ、足が動かん! 動かんぞぉ! こ、こんな奴に、我がこんな奴にやられる訳がぁぁぁぁぁ……がうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 苦しそうな叫び声をあげた森のドラゴンは次の瞬間、ブラックホールに吸い込まれるかのように光の中に小さくなって消えていった。あの時と全く同じ光景だ。


 忘れた人もいるかもしれないので改めてこの魔法の説明をしよう。


 魂浄化(プリフィーソウル) MP2


 邪なる者の魂を浄化する魔法とされる。効果は敵1グループを対象とすることができ、邪なる者を光の彼方に消し去ることが出来る。但し、失敗する場合もありその確率は不明。成功した場合、敵は文字通りこの世界から消え去る。また、戦闘終了後の経験値は手に入らない。


「へっ、ざまぁーみやがれ」


「し、深淵のドラゴン、ニーズヘッグが消えた……だと! ま、魔力を感じない……。お主、一体何をしたのだ! ニーズヘッグは? 深淵のドラゴンは一体どこへいったのだ! 教えてくれ! 私は奴から離れるわけにはいかないのだ!」


 せっかくドラゴン倒したのに何故か怒られているような雰囲気の僕。もっと喜んだり褒めてくれてもいいんだよ。それにしてもこの女の子は一体……。


「あ、あのですね。と、とりあえず回復魔法とかないでしょうか? その、動けなくてですね……」


「あぁ、すまない。すぐに魔法を、癒しの風(ヒール)


 あたたかい風が僕の身体を包むと痛みがスッとやわらいでいく。これだよ、これ。僕の求めていた回復魔法は。あー、早く覚えたい。ドラゴン倒したらめっちゃレベル上がったんだろうな。まぁ、あれを倒すとか絶対無理だと思うけど。


「どうだ、動けそうか?」


 手を差し伸べてくれる彼女も自身に回復魔法を使ったのだろう。足の怪我も既に治っているようで普通に歩けているようだ。仮面もしっかり被り直しているのだが、恥ずかしがり屋さんなのだろうか。それとも僕の息があまりにもボア肉臭かったのだろうか。だとしたらとても悲しい。


「は、はい大丈夫そうです。ありがとうございます」


「いや、礼を言うのは私の方だろう。それで、深淵のドラゴン、ニーズヘッグのことと、あの魔法のことを聞いてもよいか?」


「あっ、はい。あの初級魔法は知ってると思いますが魂浄化(プリフィーソウル)です。決まればこの世界から対象を消し去ります。割りと運がいいようなので成功してよかったですよ。あっ、ちょっと喉が渇いてるので川の水飲んできますね!」


「……プリフィーソウルだと。そんな魔法聞いたことがないぞ。近辺にニーズヘッグの魔力は感じられない。本当にこの世界から消え去ったというのか。あの男の子は一体何者なのだ……」



 水が冷たくて美味しい! 水ってこんなに美味しかったっけ? 飲んでも飲んでも止められない。お腹がたっぷんたっぷんになるまで水を飲み続けてようやく人心地ついた。


「ぷはぁー! さすがにこの飲みっぷりは引かれてるかな?」


 仮面の女の子の方を見ると、何やらブツブツと考えごとをしているようでこちらを全く見ていない。


 ハンカチを濡らして顔や手を拭う。あー、気持ちいい。ハンカチは一気に汚れていく。もう上半身も脱いでしまうか。シャツを脱いで素肌に直接水をかけると思いの外冷たくて声が出てしまった。


「ひゃっ! 冷たっ!」


 僕の恥ずかしい女の子のような声に反応したのかこちらを向いた仮面の女の子が驚いたように声をあげる。


「な、な、な、何て格好をしているのだ!」


 仮面なので表情を伺うことは出来ないが、あたふたしているのは理解できた。男性の上半身くらい見る機会はいくらでもあると思うのだけど、まぁ初対面でこの行動はないよな。


「す、すみません。久々の水場だったのでつい浮かれてしまいました。すぐ服を着るのでしばらく後ろを向いていてもらえますか?」


「は、早くするのだぞ」


 後ろ向きに座る仮面の女の子はまたブツブツと独り言をいいながらこちらを見ないように俯いていた。

しばらく毎日投稿頑張ります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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