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第百一話 賢者人気

 昨日は大量の美味しい料理と飲み物が振る舞われ久々にかなり贅沢なパーティーとなった。子供達は賢茶をぐびぐび飲み、大人達はリンカスタービールを楽しんでいた。テーブルには多くのボア肉や焼魚料理が並び孤児院の子供達はもちろん大人にも大人気だった。


「今日の食事代は孤児院で全部持つから好きなだけ食べていいわ。逆に残したらお金もらうわよっ!」


 マリエールさんの成金っぽい発言から会場は更に盛りあがった。実際、成金というのもあながち間違いでもなく、現在、新しい孤児院を建築予定である。子供達も街の外で危険を伴いながら採取のクエストなどをせずにビール工場でお手伝いを出来るのでマリエールさんも喜んでいる。


 一応、工場の責任者兼人事部長兼孤児院のシスターという不思議な職業に落ち着いたマリエールさん。新しい孤児院は今の3倍の広さの3階建てを計画しており、新しいシスターを王都から呼ぶ手筈をしている。工場もスラム街から労働者を積極的に獲得しており、ビール職人さんの指導のもと出荷数量を順調に増やせているとのこと。


「ハルト会長、スラムの人達の採用が一段落しました。働く意思のある人は全て雇用することになりましたよ」


 どうやら安定した給料を得ることでリンカスターの市民権を買い、街の中に住む家族も増えてきたとのことだ。また、働いている人向けの寮を建てる予定もあり、ほとんどの人はそこに住むことになりそうだ。


「マリエールさん、その、会長ってのは止めようよ。何か距離を感じるんだよね」


「そうはいっても、働いている人がいる前ではそう呼ばない訳にはいかないわよ」


「うーん……参ったな」


「ハルト! 参っているのは私の方だ。いつの間にビールの樽に私が描かれているのだ!」


 クロエは名誉顧問として商会のマスコット的な役割を担っている。今やニーズヘッグを倒した英雄だ。アストラルでもその名は知れ渡っていることだろう。リンカスタービールのロゴマークにはドラゴンと戦うクロエが描かれている。ビールとともに更にクロエの名声は高まるだろう。


「クロエは名誉顧問なんだからしょうがないわ」


「そうそう、少しはリンカスタービールに貢献してもらわないとね!」


「むぅ……。私をロゴマークにしたせいで売れなくなっても知らんからな」


「大丈夫、大丈夫。今やクロエは大人気だからね!」


 世間の評判というのも面白いもので、王都から広まったクロエの名声はたちまちリンカスターにも広がり、手のひらを返したように賢者の名前を使った商品が街に溢れていた。賢者のポーション、賢者の串肉、賢者のパン、賢者のタオル、賢者のパンツ等々。


「食べ物はまだいい。だが、賢者のパンツはどうかと思うのだ! そもそも私はあの店で下着を買っていない」


「まぁまぁ、クロエがようやく街の中でも仮面を外せるようになってホッとしてるんだから」


「そうよ。本当によかったわ」


「う、うむ。そうだな。ベリちゃんが私も被るーって言ってた時はさすがに困ったな」


「ベリちゃんは単純にクロエの真似をしたかったんだろうけどね」


「それで、あなた達3人でこの孤児院に住むのね」


 そうそう、新しい孤児院が建ったらこちらの孤児院は僕達が住まわせて頂くことになった。所々、古くなったり交換の必要があるのもあったが、設備としてはまだまだ充分に使える。しばらくハープナに遊びに行くのでその間に手直しをしておいてもらう予定だ。


「ハープナにはすぐに行くの?」


「2~3日後かな。豊穣祭が始まる少し前に入るつもり」


「私もいつか豊穣祭でアリエスの舞いを見てみたいわ。たまにはリンカスターでやればいいのにね!」


 そもそもハープナの祭りをリンカスターでやる訳にはいかないでしょ。ただ、リンカスタービールは大量に運ばれる予定なので、売り子として孤児院の子供達と潜り込めないか画策はしたらしいが、さすがにケオーラ商会もそこまでは難しかったらしく、馬車の手配、ビールを大量に運ぶだけで精一杯だったようだ。


「マリエール、工場だってハープナへの大量出荷でそれどころではないはずだろう。あまりベネットを困らせないようにな」


「わ、わかってるわよクロエ。ちょっと聞いてみただけだってば……」


 ふと周りを見渡すと、ベリちゃんが孤児院の子供達と仲良く後片付けや掃除を手伝っている。年齢の近い友達が出来たようで楽しそうにしている。


「本当にここを手直しして住むの? 今なら綺麗に建て直しても余裕があると思うんだけど」


「ここは私達が育った思い入れがある場所だからな。壊すのは忍びないのだ。それにまだまだ使えるところが多いし、マリエールだって壊してしまうより誰かが使っている方がいいだろう?」


「まぁね。あの子達もたまに顔を出しにくると思うからよろしくお願いするわ」


「もちろんだ。ベリちゃんもお友達が出来たようだからな」


 なんというか、お金にもある程度ゆとりが出来て、子供達の楽しそうな笑い声を聞いているとここアストラルでの暮らしも悪くないかなとか思いはじめている自分がいた。


 明日も午前中は討伐して午後からはゆっくりというか、ハープナへ行く準備かな。そういえばクロエに王都でのことを聞いてなかったな。王都、どんなとこだったんだろう。

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