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第百話 リンカスターの日常

「パパ、そっちに行ったの!」


「了解!」


 氷刃(ブレードアイス)


 草原に身を隠しながら僕を狙っていたゴブリン2体を草ごと狩りとってみせた。


 火炎竜巻(ファイアストーム)


 反対側からは火炎の竜巻が巻き起こり、大量のワイルドボアがいい匂いをさせている。適度に脂肪のあるその体はとてもよく燃える。


 魔法を放ったのはクロエではなく、ベリちゃんだ。どうやら発動する魔法は、ヒト型の時はヒトに準じた形で撃つらしい。正直、幼女が口を大きく開けてブレスを吐くのは外聞的にもちょっと困るし、変な噂が立つのも厄介だと思っていたので助かった。


「ベリちゃんの魔法が普通でよかったよ……あっ、また転けたね」


 手を降りながら僕の元へと駆け寄ってくるベリちゃんだが、どうもよく転ける。ベリちゃん自身がその内に慣れるとは言っていたが、まだヒト型での体の動かし方に馴染めてないかららしい。


 たまに手をパタパタさせて飛べないのに飛ぼうとしている姿はとても愛らしい。まだ癖が抜けていないようだ。


 ベリちゃんは見た目に反してかなり強くなってきてはいるが、目が離せないところは本当の子供みたいだ。一人で魔物討伐とかは、まだもうちょっと先かなーとか思いつつも、あっさりと僕の強さなんかは超えていってしまうだろう。いずれは僕のことをしっかり守ってくれるドラゴンに成長してもらいたい。


「また転けちゃった」


「こっちにおいで、女の子が擦り傷だらけだと可愛さ半減だよ」


 癒しの風(ヒール)


「大丈夫なの。パパやママがすぐに治してくれるもの」


 少し前になるが、リンカスターとハープナの領主が連盟でニーズヘッグ討伐及びその消滅を発表した。


 とりあえずというか、僕とクロエはしばらくの間はリンカスターを拠点として活動することを領主のベルナールさんに伝えたのだ。クロエは若干、僕が他の街へ移動出来ないことを気にしてはいたが、僕自身は別に全てを諦めた訳ではない。


 いずれはアストラルを旅しながら元の世界に帰る手段を探してみるつもりだ。しかしながら、小さなベリちゃんを置いてすぐに旅に出るというのも違う気がするんだよね。あと、安全に旅をするなら僕一人というのは無理があるし……。


 この発表は王都で大々的に発表された。ドラゴンの消滅という歴史的な大偉業なだけに王都での発表となったようだ。王都は祝賀ムード一色だろうし、きっとクロエ人気が凄いことになっていることだろう。豊穣祭を前にしたアリエスがとても悔しがっていた。


 領主のベルナールさん的にも、かなりの冒険をしてもらっている。ハープナの領主にどこまで話をしているのかはわからないけど、バレたら絶対殺される案件だと思うんだよね。本人はそこまで深刻に受け止めてないようだからいいんだけどね。


「えっ? ベリルちゃんがドラゴンだとバレてしまったらとうするのかって? 知らなかったと言えばいいのですよ。調べた竜の巣にはドラゴンはいなかったし、ベリルちゃんはヒトの姿をしているんだから私には判別しようがありません」


 ベルナールさんは涼しい顔でこう言い切ってみせた。肝が据わっているというか、一応は逃げ道は考えているということなのか。


 まぁ、確かにその通りなのだ。事情を知っている者が話さない限りバレることはないだろう。万が一バレる恐れがあるとすれば、ベリちゃんが他のドラゴンのいる街、というか縄張りに入ることで何かしらの反応や、攻撃を受けた場合だ。そうなってはじめて、その街の賢者からバレる可能性があるというぐらいだろう。


「パパー、今日はママが帰ってくる日だよね?」


「うん、予定ではね。王都で接待を受けたり貴族に囲まれて大変だったかもね。たっぷり褒賞を貰ってきてほしいな」


「早く帰って来ないかなぁー。今夜はママと寝るの」


「うん、クロエも早くベリちゃんに会いたいはすだよ。マリエールさんがご馳走の準備をしているだろうから今日はこのあたりで切り上げて手伝いにいこうか」


「うん!」


 一週間もクロエと離れていたせいか、ベリちゃんも早く会いたいようだ。今日は孤児院に親しい人を呼んでのちょっとしたパーティーを行う予定だ。リンカスタービールのハープナへの販売も正式に決定したので、忙しくなる前にニーズヘッグ討伐やリンカスタービール開発の慰労会を行おうということになったのだ。


 リンカスターの街に到着した時に、見慣れた馬車が近づいてきているのが見えた。


「帰ってきたの!」

「予定通りだったね」


 カイラルでローランドさんとアリエス、ヴイーヴルと合流して戻ってくることになっていたのだ。ベリちゃんが手をパタパタさせているので、早く馬車に飛んで行きたいのだろう。


「ベリちゃん、ハルト、ただいま!」


 少し離れた位置から、こちらに気が付いたクロエが手を振りながら大きな声を出している。


「おかえり、クロエ」


 このあと、王都からちょっと面倒くさい人達が訪れることになるのだが、それはまたしばらく経ってからのことになる。

しばらくの間、自作『ダンジョンの管理人はじめました。』の発売に向けて注力していきたいと思いますので、こちらの投稿をお休みさせていただきます。

5月24日の発売以降、少し落ち着いてから再開する予定でおりますのでお待ち頂ければと思います。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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