2章1-2戦間期 海軍の戦い 軍縮
海軍編です。間違えてあげてしまいました。(28日に出す設定にしようとしていたのに)同時に出すつもりだった改史における1906年時点の主力艦艇についての資料は28日に公開します。改史における差異と艦の概要を記述しています。スペックは書いてないので『ウィキ』とか見てください。
軍縮が求められたのは陸軍だけではなかった。海軍はそれ以上の軍縮を求められたのだ。
時はドレッドノート就役以前にさかのぼる。
1906年4月
「軍縮の必要性は理解した。」
山本はすでに海軍大臣ではない。だが、この時の海軍大臣斉藤実との関係が深く、海軍創設以来の重臣であることが考慮され、高橋是清の訪問を受けている。
「方策について相談したいのです。」
高橋は財政の専門家であって海軍予算の専門家ではない。だが山本権兵衛は海軍出身。さらに組織改革を断行した実績と経験があった。
「人件費を減らすなら、早い手が一部将官の予備役編入じゃの。その分若い連中を育てれるし戦時には召集すりゃいい。」
「なるほど…。」
というもののこれ以上の節約はこの時決められず、全海軍左官以上に資金削減案の捻出を求める機密書類が配布された。ガリ版刷りの数十枚に及ぶ資料は「見たら燃やせ」とも書かれていた。
しかし、陸軍と違い、明白な軍縮方策をとる前に事態が急変する。ドレッドノートショックだ。
日本 8月7日
この日、ドレッドノートの就役の対策会議が開かれ、結果的に、建造及び計画中の8隻の戦艦のうち4隻の建造作業中断、2隻の工期短縮。さらに日露戦争での鹵獲艦の工期短縮が決定された。
「改造および修理について方針をつけたほうがよろしいかと。」
秋山真之はその時さらに口を開いた。
「秋山どうした。」
「金がないんです。それを考慮に入れる必要があります。具体策は早急に旧式艦を退役。その武装を流用すべきです。特に事故で沈没した三笠は退役させるべきでしょう。鹵獲艦の一部は修理をする前に修理を放棄。退役させるべきであると判断します。」
「戦艦を退役だと!!」
「戦力を縮小させるつもりか!!」
「もう時代遅れなんです。鹵獲艦もいま日本が保有しているどの戦艦も。ならば維持費と戦力を考慮に入れれば早期退役が最もいい手ではないでしょうか。むろん今すぐ退役すべき船は限定されるべきでしょう。」
「船がもったいなくはないか!!」
「金のほうがもったいない。屑鉄に出す金はない。屑鉄のほうがまだ価値がある。」
秋山は喧嘩調になる。
「今でもポンコツな船は今すぐ退役してもらわなきゃ金はない。ウラジオの整備もしなきゃならんのだ削らなやってけないし、いくらの借金こさえたかと思うかあの戦争で!!」
秋山は叫ぶ。周りは静まり返る。山本権兵衛が大量に刷らせた削減案捻出に関しての案 提出命令に際し、多くの軍人は何も出さなかった。むろんされが出すべきことであることはわかっていたが出さなかった。賄賂などの利権が横行していた当時の日本海軍において上司ににらまれたり、自分の利権を失いかねない行為であったためだ。
「どの基準を持って退役とすべきか。君には判断がつくかね。」
「はい。現時点すぐに退役させるべき艦は日清戦争時代においても旧式艦及び役立たずであった扶桑、鎮遠、三景艦と防護巡洋艦和泉、鹵獲戦艦壱岐、見島、沖島、修理中の鹵獲防護巡洋艦ノヴィーク、修理を断念すべき戦艦三笠。以上の軍艦11隻は今すぐ退役させるべきです。その武装を新型戦艦に流用できれば予算削減が可能です。」
「う…む」
「そののち退役させるべき船は戦艦富士、そのほか一部防護巡洋艦。技術発展を考慮に入れるならば通報艦の廃止を考えるべきであると判断します。」
結局、決まらなかった。この日は。決まるわけがない。
予算の削減は早急に必要な事項だったが、その4日後の8月11日は戦艦の改造が決定。その予算確保のため臨時予算を求める書類が内閣に提出される運びになった。
そのことは当然民間にばれた。
書類が民間に流出した8月20日ごろには日本全国の新聞に
『国民苦しめ海軍』
の記事が躍った
8月16日 閣議
「斉藤さん。金がないのはわかっているでしょ。なぜこのようなことをしたのですか。」
時の総理大臣である西園寺は海軍大臣を叱責している。
「海軍は英国の新型戦艦の就役ですべての戦艦が旧式化する事態に陥ります。そのため新型戦艦と同程度の戦艦を整備しなければ海軍は国防に責任を持つことができません。」
「ロシア海軍は壊滅した。我が国に海の脅威はない。海軍をこれ以上拡張する必要はない。」
陸軍大臣が叫ぶ。陸軍はすでに大幅な軍縮に向けて動いており、動きの遅い海軍に対し
「今一隻も世界レベルの戦艦はおりません。急いで建造しなければ手遅れになります!!幸い、現場の造船技官の独断で現在建造中の戦艦の一部が新型戦艦同等の性能に改造が可能です。そのためには部品が足りません。その予算をいただきたいのです!!」
「予算は削減せねばならん。海軍は何か予算の削減方法はあるか?」
「…先日の会議議事録を確認したところ旧式艦の退役を早め、その分の維持費を浮かせ、武装を流用する。議事録では極論、三笠を退役させるべきという記述も見られました。」
三笠は事故で沈没している。1905年9月11日。火薬庫が爆発して沈没した。三笠は真実においても改史においても1906年8月8日浮揚[サルベージ]され、修理に回される予定だったが、改史、三笠はこの時点で工事中断が決定されている。一応秋山の主張が通った形だ。修理費がもったいない。ということが本音だろう。
「戦艦の退役か。」
「よし。旧式のものは直ちに退役させるように陛下に意見してみよう。」
「えっ」
「維持費が浮くのと乗員が減らせるのではないか人件費を安くできる。」
大蔵大臣は無情にも言い渡す。
「じょ、乗員の首はまずいです!!新型艦の乗員が不足します!!」
「ならほかにも予算縮小手段を探せ。」
海軍大臣室
「どの艦を退役させるべきかね。」
斉藤はすぐに秋山を呼んだ。史実においてはこの時期秋山真之は巡洋艦の艦長であったが、改史では海軍兵学校教員に復職している。そのため比較的早く呼び出すことができた。
「主力艦限定ですが、すでに表にしてあります。直ちに退役なさるのであればこの艦ですかね。」
秋山は1枚の紙を渡す。
退役対象艦
戦艦
富士、三笠、鎮遠、扶桑
日露戦争鹵獲旧式戦艦3隻
防護巡洋艦
即時退役対象
松島型 松島、橋立、厳島、 和泉
順次退役対象
浪速型 浪速、高千穂、 千代田、秋津洲
予備役対象艦
戦艦
金閣型 金閣、銀閣 相模型 相模、周防
装甲巡洋艦
八雲、吾妻 春日型 春日、日進、六甲、三宝、
と書かれている。どうやら電車の中で書いたものらしい。退役対象艦と予備役対象艦の文字以外は字が揺れている。機密保持の観点からそのようにしたのだろう。ちなみに松島型は三景艦のことである。
「予備役対象とはなんだ。」
海軍大臣は言う。
「予備役指定は使わないけど解体しない船のことです。瀬戸内海で停泊させ、定期的な整備を行う以外、訓練も行わず、兵士も配属させない船です。機関にも火を入れていませんので燃料を消費することもありません。」
軍艦は停泊中も燃料を消費する。そのためこのような形にすることで費用を抑えることができるのだ。
「兵員の訓練はそれ以外の船に乗員を集中させます。戦時には予備役艦を再就役させ乗員を再配置させて投入すればいい。」
「だがそれでは集中させた艦が早々に老朽化せぬか?」
「旧式艦を大切にする必要はあるのでしょうか。酷使しても問題はないと判断します。退役対象艦から撤去した武装に関してはすでに近藤技術大鑑に連絡を取り、副砲としての利用を提案しています。」
「三笠を退役させることは新聞に大きく取り上げられるだろうな。」
「そうですね。ですがそれは海軍の軍縮への意欲を示すものになります。いい宣伝になるでしょうな。」
「君は軍縮に関して何かほかに案はあるか?」
「兄から聞きました。陸軍の児玉閣下の提案で兵役の代わりの税、労役が検討されているそうです。それを利用すればウラジオストック軍港地帯開発の人件費を安くできるでしょう。」
「ほかにあるかね。」
秋山は肩をすくめる
「それ以上は私に案はありません。ただ三笠の件は陸軍の徴兵削減と同じだけの報道効果があると思います。報道を利用して何とかなりませんかね。金額だけじゃない。印象で喧嘩できませんかね。」
数日後、三笠の退役に関する理論が新聞に上る。それには三笠の修理費に関する記載と英国の新鋭戦艦の就役についても記載があり、国民はそれについて議論することになる。
今後の方針です。あまりにも長い平時に私は飽きました!!(日露戦争終わって大体1年ぐらいなのにもうかい!!)なので一つ史実にない戦争を入れることにします。史実において1906年(日露戦争)~11年(伊土戦争)の間は大きな戦争はありません。
まあ、史実に起きた出来事をネタに戦争を一つ作ってみます。