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改史 大戦  作者: BT/H
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第5章 第1次世界戦争編 E-0008 追撃の撤退

1914年8月29日 AM05:00 マルキーズ島 独東洋艦隊旗艦シャルンホルスト

ドイツ東洋艦隊は日本艦隊の敗走で降伏したマルキーズ島に停泊している。日本の追撃艦隊の到着を待てば間違いなく全滅だ。ドイツ艦隊乗員は司令部員以外と捕虜となった日本人・フランス人、雇った現地民を総動員して補給作業を行っている。

「状況は最悪だ。燃料は日本海軍の抵抗中に炎上。生き残った石炭も多くが海水に濡れ、しばらくは使えない。

最後の敵駆逐艦計3隻からの水雷戦で小型巡洋艦ニュルンベルクとライプツィヒが被雷。マルキーズ島に擱座し、沈没こそ免れたが使用は不能。」

「さらに平文でフランス植民地内にある燃料はわが艦隊襲撃次第着火、焼却処分する命令が出されている。今後、仏領ポリネシアで通商破壊や湾口襲撃を実施しても消費燃料が増大。一方鹵獲燃料は減少。燃料不足で無力化されかねません。」

「砲弾も不足しています。タヒチとマルキースで砲弾を大量消費しました。小型巡洋艦ドレスデンに放棄艦から積み替えるので余裕がありますが大型巡洋艦の砲弾は不足気味です。」

「今後の方針はどうするべきだ?」

「捕虜と行政府の証言では日本の追撃艦隊に接敵しないように迂回したサモア・タヒチ襲撃はドイツ艦隊の自暴自棄ではないかと考えられていたとのことです。この証言は潜入させた石炭船乗員からも同様の証言が出ています。ならば裏をかいて一路本国に!!」

「いいやわが艦隊が本国に戻っても欧州の戦力比は大きな変化はない。しかしわが艦隊がここにいれば少なくとも日本艦隊の欧州回航を防ぎ、これ以上の戦力比の悪化を防ぐことができる。これこそ重要だ。」

「砲弾もなしにどう戦えと。このまま仏領海域にとどまっていてはいずれ圧倒的に優勢な日本艦隊に全滅させられるだけ。時間稼ぎにもならん。日本海軍の主力戦艦1隻よりも我ら艦隊の方が戦力が低いのだぞ!!」

「確かに…わが艦隊を1隻で相手どれる戦艦は日本海軍多数所属している。いくら速力が遅くとも捕捉された場合厄介だぞ。」

 その時ある参謀が挙手をする。しかし誰もしばらく気が付かない。

「アドルフ君。意見はあるかね。」

 シュペー提督はしばらくして挙手をした士官に質問を投げる。

「提督。太平洋から脱出するにしても太平洋に残留するにしても、当面早急に当海域を離れ、南米に進路をとるべきと愚考いたします。」

「理由は?」

「当海域での活動の困難さと今後の選択肢の拡大です。

 前者は敵が石炭の焼却を決めたことに起因します。当海域の燃料資源は枯渇気味。わが艦に補給するため接近する船はおそらくすべて拿捕されます。」

「敵は石炭を拿捕することで捜索と我らの封じ込めができるということか。」

「さらに敵は味方輸送船の情報共有でそれ以外の輸送船を優先拿捕、我らの給炭船のあぶり出しを実施するでしょう。そうなれば補給もままなりません。敵は島一つ一つ探され、何も抵抗できずに撃沈されます。燃料がなければ砲塔の旋回すらできずにね。」

「離れた場合どのような利点がある。」

「真っ先に補給が可能になります。さらにメキシコの存在もあります。」

「…なるほど…メキシコ海軍から砲弾を横流しさせるのか。」

「はい。米墨戦争以降、メキシコはわがドイツ帝国から多数の兵器を購入しています。これらの兵器はわが艦隊との砲弾の互換性があります。8インチ主砲弾以外なら入手できる可能性があります。」

「なんで8インチは?」

「馬鹿。メキシコ海軍は8インチ砲を採用していないからだ。」

「通商破壊ならば8インチ砲以外で十分です。いざとなったら火薬を手配して空砲を作ってやればいい。」

「そうなるとシャルンホルスト級の2隻はきついな。8インチ連装砲2基舷側に4門の砲郭式単装砲」

「射程と射角の関係上砲郭式の4門は使いにくいな。」

「大破した2隻から砲を回収。砲身ごと積み替えるべきと思います。幸い砲弾には余裕がある口径ですし。」

「認めよう。人夫を動員しろ。次の補給目標はイースター島だ。このことは絶対に漏らすな。」

「了解。」


 日本艦隊 戦艦 御岳

「秋山少将マルキース島が独海軍に襲撃されました。」

「なんだと!!なぜわが艦隊とすれ違わなか…ったん…だ…」

(どこかでわが艦隊の動きが読まれていた…だがわが艦隊がマルキース島に停泊するなんてわかるわけがない…。どこから漏れた…まさか!!)

「同行した貨物船だ!!奴に情報を流された!!してやられたぞ!!急ぎ帰還せよ。タヒチに戻る必要はない。直接マルキースに向かう。最短距離でどれくらいかかる!?」

「およそ48時間です!!」

「敵艦隊の出航までにつけるか!!いいや…つかなくていい…奴らはおそらく…」


 1914年8月29日 PM09:00 マルキース島沖合 駆逐艦浦風

「作戦はわが艦が囮となることが前提だ。天津風を守れ。」

 天津風には予備魚雷がある。時間さえかければ再度の装填を行える。だが時間の関係上昼間攻撃になるので夜襲のため時間をおいている。

「目立つな。」

 ドイツ艦隊は補給のために昼夜問わず作業をしている。そのため闇夜に煌煌と明かりがともされている。

「主砲砲撃戦用意。」

「艦長。魚雷をいきなりぶち込んでやった方が」

「馬鹿者。人夫を殺す気か。警告射撃だ。」

「しかし…」

「そのための囮だ。本艦はすでに員数外戦力だ。沈められても問題はない。だから天津風は撃たない。」

「馬鹿者!!これだけやられておいて何もしないで本国に帰ることができようか!!」

「しかし…」

「主砲砲撃戦用意。操舵手全砲を敵に向けろ。向け次第発射」


 シャルンホルスト

 轟音がなりびびく

「襲撃です!!おそらく日本艦隊規模は駆逐艦砲火から見て1隻!!」

「見えている。人夫が逃げでしている。戻させろ。」

「そんな無茶です!!」

「馬鹿者!!この襲撃はいやがらせだ。補給に時間をかけさせることが目的だ!!」

 直後、擱座した防護巡洋艦2隻から反撃の砲火が飛ぶ。そのそばでは捕虜の日本兵の労働者を指揮し急いで内陸部に向けて逃げる。

「1隻だけで砲撃だけで挑んでくるわけないでしょ!!魚雷が来るぞ!!退避!!」

「もう1隻の砲火を確認。門数と砲弾の威力から駆逐艦2隻と推定。先の海戦での生き残りの2隻です!!」

 直後6本の水柱が立ち上った。


 天津風

「浦風を支援しろ。主砲撃て」

 天津風は魚雷を発射したのちに砲撃を放つ。

「浦風は損傷しているはずだ!!負担を軽くしてやれ!!」

 襲撃を敢行した2隻の駆逐艦のうち予備魚雷の搭載があったのが天津風のみであった。浦風は天津風の魚雷発射まで囮となった。闇夜で大砲を撃てば砲火が自艦の位置がばれてしまう

 天津風の魚雷発射まで耐えた浦風は当然被弾しているだろう。浦風の撤退のための支援だ。

「艦長。装甲巡洋艦からの砲撃は確認できません。装甲巡洋艦に対する命中は期待できません。」

「向こうにも策士がいるようだな。」


 1914年8月29日 PM11:00 ドイツ艦隊 シャルンホルスト

「被雷したのがすでに擱座していた2隻だったのは幸運だった。」

「しかし2隻で作業を実施していた乗員のほとんどが戦死。船体も2隻とも横転。そのまま沈没。海面に多少、船体をのぞかせるだけの状態です。」

「人夫は?」

「日本の捕虜たちが独断で逃がしてしまいました。日本兵の指示で被雷した側の反対側に飛び込ませていました。」

「どうして応戦が遅れた。」

「2隻から計8門砲を外すために砲員が乗船していました。ほかは砲員まで荷役についていましたので。」

「そしてその砲火を目標に魚雷が放たれた。だから2隻が完全に破壊された。」

「そんなことよりも問題は2度目の襲撃の可能性です。捕虜からの尋問であの2隻の駆逐艦には残りの魚雷はないとの証言があります。あとは完全に時間稼ぎのための襲撃になるかと思われます。警戒艦を出すべきでしょう。」

「それでは補給に時間がかかる。」

「ドレスデンならば問題ありません。小型のため補給すべき物資の総量が少ないのですでに定数の積載は完了しています。」

「ならばドレスデンの蒸気圧を上げて置け。出港しやすいように艦首を港外に向け停泊。襲撃あり次第出港させよ。」

「了解。」


 日本艦隊 矢矧

「駆逐艦 天津風と浦風合流します。」

 2隻の駆逐艦は襲撃を実行。防護巡洋艦 矢矧と商船の艦隊に合流した。そして2艦の艦長は矢矧に集まった。

「敵艦隊の被害は不明です。しかし、砲撃を敢行していたのは2隻。水柱の大きさから防護巡洋艦2隻と推定します。その2隻には確実に魚雷を命中させました。完全喪失と推定します。、」

「撤退戦時の戦果は不確実2隻。残存は1~3隻といったところか。」

「魚雷はあと3本沈められて1隻か。」

「どちらにしても出港を遅延させる必要がある。兵装を射耗した君たちには無理だ。矢矧が行く。商船を守れ。そのくらいならば残弾でもできるだろう。」

「今後は?」

「重大な損害なくば2回ほどの襲撃する弾薬と時間はあるだろう。」


 1914年8月30日 AM03:00 ドイツ艦隊

「ドレスデンの出航急げ!!」

 背後では防護巡洋艦から放たれた砲弾が着弾している。

「蒸気圧をもっと上げろ!!」

「砲戦を急げ。」

「駆逐艦級の砲じゃない。これは!!」

 ドレスデンは命中弾に見舞われた。


 同刻 矢矧

「命中弾を確認敵艦炎上。」

「砲撃を行いながら適切な雷撃地点につけ!!しっかり狙って撃てよ!!最後の3本だ!!」

「敵艦防護巡洋艦。艦形からおそらくドレスデン!!」

「エムデンの同型だな。」

 この時すでに青島を脱出していたエムデンは同時に脱出した商船改造の仮装巡洋艦とともに南シナ海、インド洋方面での通商破壊を実施していた。

「動いています!!」

「襲撃を予期していたか。機関にある程度の蒸気圧を置いていたな。だが…」

(これは大型艦にはできない。物資が多い。その間の補給を考慮に入れればな。)

「艦長!!」

「ドレスデンの主砲は10.5㎝。わが方の駆逐艦級の主砲と同等。砲撃戦で敵を圧倒せよ。射角はどうだ!!」

 矢矧の主砲は15.2㎝砲。威力では圧倒している。

「敵側面につきました。」

「魚雷全弾発射」


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