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改史 大戦  作者: BT/H
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第5章 第1次世界戦争編 C-0003ダンツィヒ沖海戦会敵

1914年8月4日 総旗艦 戦艦フリードリヒ・デア・グローセ 艦橋

「水上機を確認。」

見張りが報告する。

「おそらくロシア艦隊から発進したものでしょう。ロシア海軍が水上機母艦を保有しているという情報はありませんが、世界初の水上機母艦を保有したフランスと友好関係にあります。」

「わかっている。おそらくロシア海軍のものだろうな。わが艦隊の位置が発見されたことを意味しているな。今後継続的に監視状態に置かれることになるな。あれを落とせるか?」

「対飛行船用の砲がありますが、命中は厳しいと思われます。今後の課題ですね。」

「今落としても新しい機体が上がってくるだけだな。砲弾の無駄だ。このまま敵艦隊の目撃報告のあった水域の直線上にあるダンツィヒに向かう。」


 同国戦艦ガングート

「偵察機より入電。ドイツ艦隊発見。編成はケーニヒ級4、カイザー級1、ナッサウ級4、前ド級戦艦10隻、装甲巡洋艦5、防護巡洋艦8、その他水雷艇多数。」

「馬鹿者。偵察員には火力と高速を兼ね備えている船には注意しろと事前に言っているはずだ。装甲巡洋艦の艦種は特定できたか!!」

「申し訳ありません。装甲巡洋艦はフュルスト・ビスマルク、プリンツ・ハインリヒ、プリンツ・アーダルベルト、フリードリヒ・カール級、ローン級。カール以外各1隻です。」

「提督。作戦に問題はなさそうです。ローン級以外わが艦隊よりも足が遅いです。」

「そうか。作戦通り。行動する。」

 

現地時間1914年8月5日AM4:00 総旗艦 戦艦フリードリヒ・デア・グローセ

東から登る太陽に敵艦隊のシルエットが浮かぶ。

「見つけました。ロシア艦隊です。編成は…ド級戦艦4隻、装甲巡洋艦4他見えません。敵艦隊一斉回頭中」

 ドイツ艦隊の見張りがロシア艦隊をとらえる。

「おかしいな。敵にはほかにド級戦艦4、前ド級戦艦5がいるはず。」

「おそらく、撤退先に待ち伏せ部隊がいると思われます。待ち伏せに対して陣形を変更すべきです。追撃速度を落とし追跡、敵は誘い込みを目的としているならば相対速度をほぼ0に保とうとするはずです。」

「わかったそうしてくれ。」

「速力を落とせ。艦隊6ノット、煙幕を展開。対空かかれ。水上機を追い払っているうちに特殊艦を展開させろ。」


 2時間後 

現地時間1914年8月5日AM6:00 総旗艦戦艦ガングート

「水上機からの写真です。」

 艦隊の予定進路から外れた位置にいる旧式防護巡洋艦アルマーズを改造した水上機母艦から発進した水上機が届けたものだ。

 これが届くまで2時間かかったのは水上機が写真撮影→水上機母艦アルマーズにて現像→通信筒に入れ水上機に積載→航行中のため水上機の回収ができない戦艦ガングート上に通信筒を投下→総司令部艦橋というルートをたどったためである。

「厄介ですね。あの陣形…ドイツ艦隊はわれらの奇襲に気が付いていると思われます。水雷艇部隊が隠匿できそうな陸側に旧式の前ド級戦艦、装甲巡洋艦、防護巡洋艦を集め、小、中口径砲の速射にて水雷艇を迎撃、海側からはわれ話の残存戦艦が攻撃をかけてくると見越して水雷艇を配備。大型艦に有効な魚雷をもって迎撃する意図があると思われます。」

「第2、第3艦隊の襲撃は成功しないのではないか!!」

「いいえ。これは予定通り…むしろ一部情報を流すことで敵の陣形を誘導しました。この陣形になりことは予想できました。初めからそのような編成にしております。通信長。全艦に作戦書151に変更と伝えてください。敵に作戦書が渡っていないのならばそれで有効なはずです。」

 

 同刻 ドイツ艦隊 総旗艦 戦艦フリードリヒ・デア・グローセ

「水上機が敵旗艦に接近」

「目的は偵察じゃない。目的は分かるか?」

「わかりません。しかし、嫌な予感がします。」


 さらに2時間後

現地時間1914年8月5日AM9:00 総旗艦戦艦ガングート

「両艦隊から入電。作戦準備完了です。」

「作戦を開始。天測を怠るな。正確に襲撃を敢行せよ。」


 ロシアバルト海第2艦隊 第1巡洋戦隊 旗艦アヴローラ

「作戦は以上だ。我々が第2艦隊で最も血を流す位置にある。だが我々は失われない。我々はなんだ!!」

「「「不死身の第1巡洋戦隊です!!」」」

「不死身とはなんだ!!」

「「「決して貫かれない最強の盾!!」」」

 第1巡洋戦隊の士気は良好。所属する3隻が幸運艦であると信じているからだ。アヴローラを含めた3隻の同型艦はいずれも日露戦争に参戦して紆余曲折あったが、3隻とも最終的にロシア海軍にて就役している。つまり1隻も失われていないということだ。ロシア海軍のほとんどの戦力を喪失したあの戦争で同型艦すべてが生き残った稀有な例である。

 それを彼らは不死身と名乗った。日露戦争後再建されたロシア海軍。そのバルト海艦隊第1巡洋戦隊に3隻とも配属され、自ら不死身の第1戦隊を名乗った。海軍司令部もそれを黙認したような状態だ。

「われらに勝利の加護を祖国と皇帝陛下万歳(ウラー)!!」

「「「万歳(ウラー)万歳(ウラー)万歳(ウラー)万歳(ウラー)」」」


 同刻 第1巡洋戦隊後方 第2巡洋戦隊旗艦 ボガトィーリ

「第1戦隊は士気が高いですね。」

「フン。日露戦争の敗残兵どもが…作戦案を見ただろ…我らは盾。すなわち勝利のための捨て駒。失われるとわかっている命だ。『死に損ないは死んでこい』ということかな?」

 それと比較して第2巡洋戦隊の士気は低い。死ぬとわかっている任務だ。士気が高いはずがない。

 第1,2巡洋戦隊に所属している船はいずれも防護巡洋艦と呼ばれる船だ。この種の船は建造コストが安く、装甲が薄い。その代わりに石炭庫を防御に利用する。その代償は大きく、日清戦争での黄海海戦では大型艦砲の命中で大損害を生じることになった。装甲版に使われる素材の進化によって従来の装甲版の半分以下の厚さ、重量で同等の防御力を得られるようになると次第に旧式化した。その中で止めを刺す大事件だったのが日本海海戦だ。日本海海戦では日本が燃焼性の高い砲弾を使用して船を火炎地獄にした。可燃物である石炭を防御に使用する防護巡洋艦は主力としてこれに参加はしていなかったが、被弾していた場合の被害は甚大になったことは疑いない。

 つまりこの時代に完全に不適合その船を何かを守るために盾にするということはすなわち撃沈されて来いということなのだ。

「かといっても逃げるわけにはいかない。」

「逃げ上手な第1巡洋戦隊の連中は逃げ切れるだろうな。」

 第1,2巡洋戦隊の中は悪い。ともに性能的には同等の船。それなのに扱いはどうだ。第2巡洋戦隊の面々は第1巡洋戦隊のことを逃げ上手を呼び蔑んでいる。これは第1戦隊の生き残り方…すなわち3隻中2隻が敵前逃亡とも言える状態で中立国に逃げ込んでいたことを揶揄している。 (残り1隻は大破着底し、日本が浮揚し修理、ロシアに安く売却した)

 むろん第1巡洋戦隊側も黙っていない。第2艦隊の3隻中2隻が日本に鹵獲され、返還 (売却) されたことを裏切り者扱いしている。 (残り1隻もウラジオストック陥落寸前に残存艦艇を率い脱出、中立国に逃げ込んでいる。)

 むしろ1隻ずつ入れかえってやったら完全な罵倒になる。逃げ上手と裏切り者

 だが士気の違いはのちに大きな影響を与えることになる。


 ドイツ艦隊 総旗艦 戦艦フリードリヒ・デア・グローセ

「右翼艦隊敵水雷艇を発見。迎撃を開始します。」

 司令部に飛び込む通信兵の後ろでは右翼に所属する前ド級戦艦10隻、および装甲巡洋艦4隻の2列縦列陣形が砲撃を開始している。

「見張りから報告左舷前方。敵艦隊を発見。2列縦列陣形 ド級戦艦4、前ド級戦艦5、防護巡洋艦6進路はわが艦隊の前方をふさぐように展開」

「やはり襲撃が来たか。左舷側水雷艇敵艦隊を迎撃しろ」

「敵主力戦艦部隊左舷回頭、装甲巡洋艦部隊一斉回頭」

「まずいな。敵艦隊の推定射程23000mわが艦隊の主力艦艇は届いて20000m射程外から一方的に打ちまくられるぞ。」

「えっ接近はできないのですか!!」

「馬鹿者。左舷側の敵艦隊が邪魔をしているんだ。接近しすぎれば至近距離から装甲を撃ち抜かれるぞ!!」

「右舷水雷艇煙幕を展開」

「なぜ煙幕を展開したんだ!?」

「馬鹿者命中精度を落とすために決まっておろうが」

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