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改史 大戦  作者: BT/H
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第5章 第1次世界戦争編 C-0002ダンツィヒ沖海戦前夜

 1914年7月25日 キール軍港 陸海軍統合作戦会議

「デンマークが折れた。スカンジナビア各国も中立宣言に向けて動き始めているとの報告が入っている。統合参謀本部より一部部隊転進の要請だ。」

「ではシュリーフェンプラン実施のために部隊を配置されますか?」

「それには部隊が不足している。ここに残存する3個軍すべて投入しなければシュリーフェンプランに成功の余地はない。だが、部隊の一部を西に転進させ始めればシュリーフェンプラン開始までの時間を稼げる。」

「ならば…」

「一番西にいる第3軍の転進を開始させます。」

 陸軍と海軍の合同会議であるが、現状、陸軍が主体である。だが、それは急激な変化が訪れる。

「英本国艦隊総力出撃を確認。目標はオランダ近海と思われます。」

 駆け込んできた兵士が叫ぶ。英国の参戦それに類する行動だ。

「英国はなぜオランダに!!」

「オランダからの上陸を意図しているのであればそこに陸軍部隊を配属させねば危ない。」

「統合作戦本部には報告、第3軍をベルギーとオランダを抑える位置に配属しなればならない。指示を仰げ。作戦案の提出もやれ。」

「了解。」

「海軍は英艦隊をたたけるか?」

「危ういですね。もともと仏露海軍は各個撃破を基本とします。しかし英国参戦の場合、ロシア海軍の撃破を優先するそれは開戦前の作戦計画通りです。」

「フランス艦隊はドイツ海軍と接敵次第、英国艦隊布陣地点まで後退すればいい。そうすれば圧倒的な海軍力で押し切れるのですから。」

「むろん本国守備も必要です。しかし本国を守るには2つの手段があります。攻めるか、守るかの2択が。海軍としては守りを第一としたいのですが、陸軍は英艦隊を撃破してほしい。なぜならば撃破しないと陸軍がオランダに拘束されることになるから。どちらにしても先にロシアをたたきます。」


 1914年7月26日 ロシア サンクトペテルブルク海軍基地

「反対です。英国海軍の参戦が確認された以上、わが海軍にバルト海の制海権を確保する能力はありません。」

参謀ウラジーミル・ポリエクトヴィッチ・コスチェンコ中佐がバルト海艦隊司令長官ニコライ・オットヴィチ・フォン・エッセン大将に直談判している。

 ウラジーミル・ポリエクトヴィッチ・コスチェンコ中佐は造船技術者である。史実にはロシア海軍に入隊していないが、改史においては造船技術者と軍人としての立場を兼任している。

 この原因は作中にすでに記されている。(第12部分、第2章3-2話ごろ) 彼は日露戦争後の海軍再建に携わった人物のひとりでありその過程で日本に滞在した経験がある。そして、日露戦争をはじめとする戦争の資料を手に入れることができた人物である。その際に得た知識や日本海軍軍人との交流にて得た能力を評価され、軍人に引き立てられているのだ。

「なぜだ?ウラジミール君。英国の参戦で戦力的には圧倒的に有利になったのだよ?このままでは戦果をすべて英国に奪われてしまうことにならないかね?」

「逆です。英国が参戦したからこそです。英国参戦がかえって我らが海軍を窮地に陥れることになります。」

「どうゆうことだ」

「勝てない相手とは戦わなければいい。ということです。」

「だからどうゆうことなんだ!!」

「ドイツ海軍の立場になって考えると仏露だけの参戦の場合、両海軍を戦力分散してでも同時撃破することが可能です。現在、デンマーク沖に展開している艦隊がバルト海と北海方面で分かれていますからそれができます。」

「確かにそうだ。できないことはない。」

「しかし、英国海軍が参戦した場合、どうなるのでしょうか。2つ考えることがあります。

 一つ目、仏艦隊に手出しできなくなる。仏艦隊と交戦状態になれば彼らは撤退し英艦隊のいる位置まで誘い込む。そうなれば独艦隊は壊滅させられる。」

「ならば独海軍は仏英に仕掛けない。最低限の防衛戦力を残すだけ。しかも沿岸だから小型間の襲撃作戦もできる。」

「はい。第2次米墨戦争時のロサンゼルス沖海戦の時のように。わが海軍も日露戦争の折、数隻失っております。そして余剰戦力はわが国に向かいます。しかも2つ目の理由。仏英の艦隊への攻勢時に後背を脅かされないためにわがロシア海軍を完膚なきまでに破壊するつもりでしょう。」

「理由は分かった。注意はしよう。だが出撃を止めることはできない。」

「しかし提督!!」

「10年前のあの戦争から莫大な予算をかけて再建した海軍が何も動かないわけにはいかない。」

「我ら海軍が再度壊滅しても遂げなければならないことですか。泥臭くとも存在す続けることこそ敵艦隊の誘引につながり、同盟国への支援になるのではないですか?」

「出撃は決定事項だ。我々が決めることではないのだ。」


 1914年7月27日 キール軍港

 デンマーク及びスカンジナビア方面への砲艦外交を終えたドイツ帝国海軍艦艇は基地に帰港した。バルト海沿岸において活動した艦隊はこのキール軍港へ入港した。この艦隊の編成はケーニヒ級4、カイザー級1、ナッサウ級4、前ド級戦艦10隻。

 このうちケーニヒ級とカイザー級は史実とは艦影が違っている。いいや正しくは先に建造された改史カイザー級が史実のケーニヒ級に相当し、改史ケーニヒ級の艦影が異なっている。

 この時代の戦艦に多く存在する構造が艦橋に艦上部構造物に射角が遮られている主砲塔が存在している。この構造はのちの戦艦には失われた特徴でもある。史実のケーニヒ級も5つの主砲塔が存在していたがそのうち3番主砲塔が艦上部構造物に射角を遮られており、真横にしか打てない。改史ケーニヒ級はこの3番主砲塔を真後ろにも撃てるように3,4,5番主砲塔を背負い式に配した。

 結果的に砲撃力は向上したが、史実よりもトップヘビーな船になっている。

「ロシア艦隊が出港準備をしているとの情報が入った。わが艦隊はこのロシア艦隊を完膚なきまでに叩きのめし、全戦力を北海に投じ、英仏艦隊を撃破しなければ我ら海軍に存在価値なし。諸君。歴史を作られたし。」

ヒューゴ・フォン・ポール海軍大将は北海にいるドイツ帝国海軍総旗艦カイザー級戦艦2番艦フリードリヒ・デア・グローセをバルト海に展開させ、第1次世界大戦でのドイツ帝国海軍最初の決戦に向けての指揮を執る。

「物資の補給が終わり次第出撃せよ。」

 その日の午後には艦隊が出港した。



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