2 転生、そして進化
光が見え、産声を上げ泣き出した。
周りを見渡すと、父と母らしき人と医者とローブを着た明らかに魔法使いみたいな人が居た。
すると魔力測定に来ていた魔法使いが今にも世界が終わりそうな顔で驚いている。
そして何やら話した後、全員がとても悲しそうな顔になっていた。
何が起きてるのかさっぱり分からなかったけれど、なにか嫌な予感がした。
すると父は頭ほどの輝く石をを取ってきた。そしてその石を僕の枕元に置くとその場を後にした。
目が覚めた。
きっと泣き疲れて寝てしまったのだろう。まぁこの身体でやった初めてのことだからね、仕方ない。
さてここは日本語が通じるのかを確かめねば。
「あいうえお」(日本語)
「〇△♣□♦◎」
「♦♠☎♨」
あ、これ何語か全くわかんない奴だ。
って何だコレ?真鍮の箱?それになんか首からホースみたいなのも伸びている。
これを見て思わず泣き出してしまった。
「♦〇♣♨♦△”ラルナ”。」
※
1歳
「かあしゃん」
少し喋りにくいけどなんとか喋れた。すると、それを見ていた母は
「喋った!アナタ!ラルナが母さんって喋ったわ!」
そりゃ1年もすれば覚えるわ
と心の中でツッコミを入れていると
「本当か!?」と父が全速力でやってきた。埃が舞うからもう少し静かに来てくれよ逃げないから。
「ケホッケホッ、とうしゃん」
ホコリが舞うからもう少し静かに。と言おうとすると、父が嬉しさのあまりか大泣きしてしまった。
「母さん、ラルナが俺の事呼んでくれたよぉぉぉ」
と言っていると「わかったからその涙と鼻水をどうにかしなさい」
と母さんが呆れながら言っていたから
「かあしゃんもあんまりとうしゃをおこらないであげて?」
と、とりあえず父を庇ってみたら
「あなた、ラルナががあなたのこと庇ってるわよ」
と母まで泣き出した。
※
5歳
今までずっと聞かなかった事を聞いてみようと思う。
「父さん、僕がいつも背負ってるこの箱ってなんの意味があるの?」
それに対し父さんがこう答えた。
「それはお前の命を守る魔法道具だ。お前は生まれつき魔力の回復速度がとてつもなく速いんだ。それでお前の身体がパンクしないように魔力を少しずつ吸い取って結晶にしているんだ。ちなみにその結晶はその時は作り方が公表されたばかりの技術でな、しかも結晶ひとつの保有魔力が普通の人の数倍はあるからとても高く売れる。」
サラッと金の話は入れなくていいから。
「でもそれだけならこんな不格好にする事ないよね?それとも、何か隠してる?」
父さんがビクッと動いた。これは母さんに内緒でつまみ食いをしたのがバレた時と同じ挙動だ。
「そっそそそそそんなここことななないぞぉ?」
と嘘丸出しの回答についつい
「ダウト」
と言ってしまった。
すると父さんは諦めたようで、
「そうだよ。その魔法道具は元は”進化”をコンセプトに魔法道具を研究していた頃の失敗作を魔力を結晶化させる魔法道具に作り替えたものだ。」
と教えて貰うと、つい
「じゃあこいつは進化するかなぁ?」
と聞いてしまった。しかし、さっき父は、
「さっき言っただろう?こいつは”失敗作”だと」
「そっか」
ここで会話は途切れてしまった。
※
6歳
それから1年が過ぎた。小学校?ナニソレオイシイノ?この国には王都と一部の都市にしか学校なんてもの存在しないのだよ。まぁという事で同年代の、というか歳が近い者が無に等しいこのエルト村では友達1人出来ず、暇つぶしにずっと大人の手伝いばかりしていた。この日は、村の大工のおっちゃんの手伝いをしていた。手伝いと言っても木材やレンガを運んで届けるだけの単調な仕事だ。しかし、この世界のレンガは3キロもあり、まだ6歳の僕の身体では2つが精一杯なのだ。しかも、木材も2〜3メートルはある物ばかりなので、
とても運びづらい。もっと効率良く運ぶ事は出来ないだろうかと考えたり、イライラしていると、目の前に直径30センチ程の黒い穴がぽっかり空いた。それに驚き「うわぁ!!」と叫ぶと、周囲の大人が「どうした」と寄ってくる。その中に魔法使いの人もいた。魔法使いが僕の方に寄ってくると、「嘘だろ…」と声を漏らした。そして魔法使いは言った。「凄いじゃないか!!これは収納魔法だぞ!」と大声で言う。それを聞いた大人達は「何だそれ?」「収納?」「それって凄いのか?」とざわめく。すると魔法使いは「凄いも何も、王都でも使える術者が十数人居るか居ないかの魔法ですよ!?」と言った。すると外が騒がしい事に気がついた父が「どうした!」と家から出てきた。すると魔法使いは父に事情を説明した。「何だと!?ラルナが魔法の練習無しで魔法を発動させた!?しかも空間系統!?」とはじめは驚いていたが、少し経って落ち着いて「流石は俺の息子!!」と頭をわしゃわしゃと撫でながら褒めていると大人達が声を揃えて「「「お前男だったのかよ!?」」」と叫んでいた。じゃあ女の子にこんなモン持たせてたのかよ…と心の中でツッコんでいると、その中に悩んでいる人が一人いた。魔法使いだ。魔法使いは王都に数人クラスの収納魔法を使える人間がこの村から出ることに疑問を覚えていた。そして、空間魔法を使ったのはラルナでは無くラルナが背負っている魔法道具なんじゃないかという結論にたどり着き、訊いた。「その魔法具って一体何の効果がある物なんですか?」それに父が答えた。「昔試作品だった奴を改造したただのマナ結晶化装置の小型版だよ。」すると魔法使いが「アナタ”ただの”の使い方間違ってますよ!?普通のマナ結晶化装置なら魔法は使えないはずです!!」と綺麗なツッコミを入れた。そのツッコミを受けて父は「確かに…普通のマナ結晶化装置なら収納魔法を使えるはずないか…なら…そうだ!」と急に叫びながら家から魔法道具組み立て用の工具を持ってくるとおもむろにラルナの背中の箱の蓋を開けた。すると、作った当時とは中身が当時の面影は一つ残らず変わっていた。それに対し父は「嘘だろ…ラルナの魔法道具が進化している…でもこいつの研究をしていた時には何も起こらなかったハズなのにどうして…」とブツブツ呟き何か思い当たる節があったように身体がビクッと動いた。そして「進化の条件は持ち主の強い意思だったのか!」と叫ぶと泣きながら「やった!やった!完成した!!」踊り出した。そして、父が"進化"する確率を高めた魔法道具を十数個作ってから数週間後。王都に行くことになった。
どうも。8です。さて、今回から本格的に連載を開始しました。そして他の方の小説で言うところの準備期間が一気に進みました。さて次回、王都編。まぁそのうち書きます。