コント脚本『未知との遭遇?』
A:中年男性のサラリーマン
B:男性宇宙人、銀色の服。
○公園(夕)
足早にかけてくるA。
A「ああ、仕事で遅くなっちゃったな~。この辺、暗くなると怖いから、はやく通り過ぎようっと……」
辺りが急にピカピカと光る。空を見上げるA。
A「あっ、UFOだ!」
Aの視線が下におりてくる。
A「え……うそっ、ここに着陸した!」
A「うわ~中から宇宙人でてきた! 怖いな、どうしよう……」
Bが現れる。
銀色の服をきて、もろに宇宙人といった感じだが、
頭には、古いタイプの不自然なヅラ。足にも、古いタイプのバレバレなシークレットブーツ。
B「ワレワレハ、宇宙人だ……」
A「やっぱ、ワレワレって言うんだ。一人なのにな~」
B「ワレワレハ、ちきーじんと……ゆ、ゆーこーてきな……か、かんけえを……」
A「すっごいカタコト。なに言ってんのか、わかんないな~」
B「うっせえな、ボケ! ぶっころすぞ!」
A「汚い言葉は、習得はやい~!」
Bはせきばらいを一つする。
B「え~、ワレワレハ、地球人と、友好的な関係をきづくためにやって来た」
A「なんだ、普通にしゃべれるんかい。なんだったんだ、さっきのは……」
B「ワレワレのモットーは、平静に、平等に、平和に……と三つの平を大事にしている」
A「うんうん、こちらこそだよ」
B「だが、さからえば、この銃で蒸発させる」
A「おかしいだろ! 情緒、不安定すぎだろ!」
B「おかしいだと? フフフ……」
B「これは単に、地球とワレワレの星の、価値観のちがいだ。個性を否定するとは。お前らこそ、おかしいのだ」
A「なんか、道徳的な言葉をならべて、ごまかそうとしてる……そこは地球と一緒だな……」
B「今日は、ワレワレの進んだ科学力を見てもらい、あなたがたと友好条約を結んでもらうためにきました」
B「おどろくなよ、原始人ども……」
A「なんか、言葉の上げ下げの幅がすごいな……色んな意味で、頭、はたきたいな~」
B「見ろ!」
Bは、80年代のデカくて重い携帯電話と、ソックリな機械を、肩から背負って見せる。
B「お前らの星にも、電話器はあるみたいだが……どうだ! これは、持ちはこべる電話器だぞ!」
A「あ、あの……ちょっと……」
B「こうやって、肩からかけて使うんだ。8時間の充電で、なんと、40分も話せるんだぞ!」
A「は、はあ……」
B「なに? これが何か、わからないのか?」
B「この星には、まだ電話器もないのか? しょうがないな、原始人め……」
A「え、ええ、まあ……」
B「じゃあ、今度は……ワレワレの星の、進んだ健康法を教えてやろう」
A「え! それなら期待できるかも……」
Bは鉄棒みたいなのを出す。
A「これをどうするんですか? 健康光線かなんか出て、くぐるんですか?」
Bは鉄棒みたいなのにぶらさがる。
B「一日、一分、これにぶら下がる!」
A「ぶらさがり健康法~! なつかし~っ! いや、効くかもしれないけれども……」
Bは、Aを向いて営業スマイル。
B「これでワタシは、彼女ができました!」
A「売り方も、なんかふる~っ!」
Bは元の位置に戻る。
B「お前も、ちょっとやってみろ」
A「え? ぼ、僕はいいです……」
B「ワレワレハ、お前のためを思って言ってるのだぞ」
銃をチラつかせるB。
A「わ、わかりましたよ~」
Aはイヤイヤぶらさがる。
B「お前がサボらないように、下に、激痛足ツボマットをしいておこう」
Aの下にマットをしく。
A「うわ! コイツ、ガチかよ……」(小声)
ふと腕時計を見るB。
B「お! もうこんな時間か。ちょっと待て。あれを飲まないと」
Bはコップを出し、腰に手をあて、コップの中の液体を、ゴキュゴキュと一気に飲み干す。
B「プハ~ッ!」
A「なにを飲んだんですか?」
B「これも、ワレワレの星の、進んだ健康法だぞ」
A「へえ~~なんですか、それ? お茶っぽいけど……」
B「自分の尿だ!」
A「飲尿健康法~! やってるヤツいたんか~!」
BはAをチラ見する。Aはギクッとなる。
B「お前も……」
コップをAの口に近づけてくるB。だが、Aはぶらさがってるので動けない。
A「バカ! やめろ! 近づくなあっ……」
手をはなして落ちるA。思い切り足ツボマットをふむ。
A「いてえっ!」
背筋がピーンとなって、ケイレンしたように倒れる。
足裏をおさえて、痛さにもだえているA。
A「コ、コイツ……」
B「大丈夫か?」
Bは顔を近づける。
B「ゲップ!」
A「あっちむいてやれ!」
Aはフラフラと立ち上がって、元の位置に戻る。
B「お前、なんか顔色悪いな」
A「あんたの健康法のせいだよ!」
B「きっと、お前の運気が悪いんだな。よし、ワレワレの進んだ科学力で解決してやろう」
Bは高そうなツボを出す。
B「どうだ? 幸せになれるツボ……今なら100万で……」
A「古いし、もはや詐欺~っ!」
B「いまなら特別に、ダッコちゃんをつけてあげるぞ」
A「ああ~~もういい!」
A「UFOと銃は、ハイテクなのに、他はなんで、こんなに遅れてんだよ! バランスおかしいだろ! お前の星の方が原始的だろ! 帰れ帰れ!」
A「そんなに見て欲しいなら、なんでも鑑定団にでも持っていけ~!」
B「じぇじぇじぇ!」
A「ズラもシークレットブーツも、なんか古いやつだし、最初からずっとバレバレだし……」
B「こ……これはズラではない!」
A「ちょっと浮いとるやないか!」
B「これは個性だ!」
A「尿のついた顔で、近づくんじゃね~!」
B「うむむむ……」
B「ついにワタシの秘密を知ってしまったな。もうこんな星、蒸発させてやる!」
地面に向けて銃をかまえるB。
A「ち、ちょっと、待ってくれ!」
B「もう聞く耳、もたんね」
A「待て! もし助けてくれたら……地球の進んだ科学力でうまれた最高のズラを教えてやるよ……」
B「フン! そんなの、苦しまぎれの……」
Aはゆっくりとズラをとる。おどろくB。
Bは、バレないハイテクカツラに感動している。
Bはひとさし指だけを出して、近づいてくる。(ETの友好のポーズみたいな)
かと思ったら、ハゲ頭同士をくっつけて、光る。
B「友好条約というよりも……これは毛根条約ですな!」
Bは可愛く舌をペロッと出す。
A「オチもなんか、ふる~いっ!」