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コトバガリ
暗くなって、大人も眠っているのに、こっそりとパソコンに向かってアニメを見ようとしている子どもは、注意したほうがいい。それは、音も立てずにソロソロと後ろから近づいてくる。そうして君の背中を突く。
「わぁ!」
と君は叫ぶかもしれない。だけどその声は、鎌で切り取られて、袋の中へ収穫されてしまうんだ。
君はとにかく色々叫びたくなるかもしれない。パパやママを呼んだりするかもしれない。だけど全部が無駄に終わる。コトバガリが、全部収穫して袋に入れてしまうからだ。
そのうち、君の声はどんどん刈り取られて、何も話せなくなる。何も話せなくなった子どもは、だんだん消えていく。昔から言うようにね、言霊といってね、言葉には魂が宿るものだから。魂を失った君がどうなるかって?
想像もしたくない。自分が何を考えているかもわからなくなって、辺りをうろうろしているだけだから。パパもママもわからずにね。言葉は、考えていること、そのものだ。言葉を刈るなんて怖いお化けが出てくる前に、布団に隠れて眠ってしまおうね。