ワスレッタ
少女は何度も子ども部屋を確認した。
やはり、ない。いつも一緒の人形が行方不明なのである。
その人形は、可愛らしいドレスをまとっていて、青い大きなおめめをした人形で、とにかく少女はそれを気に入っていたのである。
少女は思った、きっと昼間に遊んで忘れたのだと。公園にきっとあるはず。
そのことを母親に告げると、母親は言いました。
「もう夕方暗くなったから、家を出てはいけません、明日一緒に取りにいきましょう」
少女は、もう寝る時間だと諭され、ベッドに入ることになった。
でもどうしても人形のことが気になって眠れない。そこで、もう暗かったが、寝室の窓から公園まで歩いて行くことにした。
町は、まだ、大人が起きている時間帯なんだなと少女は思った。大人は、子どもを寝かしつけたあとで何をしているんだろうと思いを巡らせた。きっと仕事ばかりしているのだから、子どもが寝たあとも仕事をしているのかななんて考えたりしながら。
公園についた。
人形はあった。いや、性格には人形は「いた」。二本の足で辺りをうろつきながら、ドレスの裾をもちあげて、歌を歌っていた。
「明日は帰らなくちゃならないから、きょうくらい楽しく過ごしたいわ」
ツキヨノダケにこしかけながら、月を見ていた。少女は怖くなって、そのまま帰宅して布団に入って寝たふりをしてそのまま寝てしまった。
翌朝、親からひどく起こられた少女は、昨夜の人形の話をしてみた。母親は笑いながら、
それは、ワスレッタがとりついたのよ。
と言った。
なんでも、外に置き忘れた人形にとりつく霊のようなもので、多くは子どもの霊だから心配はいらないのだそうだ。
朝にはもう戻っていると聞き、怖かったので母親と一緒に公園まで歩いて行った。
人形は、ツキヨノダケに座ったまま、いつもの青い目でおとなしくなっていた。




