L'histoire de café
素人処女作です。妄想。追記:気づいたらユニークPV100超えていました…。読んでいただいた皆さまに感謝です。最初で最後の創作のつもりでしたが、また書くかもしれません。
<<根っからの甘党でコーヒーなんて大嫌いだが、カフェイン中毒の彼の唇に残った苦味は嫌いじゃなかった>>
吐きそうなくらい甘い蜜を舌先で転がしながら、そんなことを思い出していた。
「ん?ご不満かな?」
しまった。甘いのが欲しいと口では言いつつも、醒めてしまいそうなほど鋭い苦味と酸味が忘れられない私と、全てを見透かした目と笑みをたたえる彼の視線が空を切る。ドロっとした彼の息で耳がベタつく。不快だ。私の口もまたベタついて開きそうにない。
「僕はね、苦いのも好きなんだよ」
嘘だ。
彼に好みなどないし、そもそも個というものがない。甘さが好きなのは彼が人生の中で出会った他の誰かに違いない。私に好かれるように真似しているだけだ。模倣という神から贈られた才能。
「ん…っ。」
閉じこもった貝を開かせるには実力行使しかないと踏んだらしい。今度は強烈な苦味とともに、一さじの砂糖が舌の上にふりかかる。今度は一体どこの誰だろう。カフェイン狂いのあの男でないことだけは確かだ。それにしても、彼の私への執着ぶりは異常だ。
「ねぇ、なんで私なの」
「ー****。」
甘美なビターテイストに溺れそうになりながら最後の息を吐き出した私は、その返答を聞く前に理性を手放した。
最後まで目を通していただきありがとうございました。