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白と黒の世界の中で  作者: 栞
2/3

最も最悪

澄み渡る青い空を

一本の白い線が2つに分けているように伸びている。


青々しい緑が艶やかに地に根を張り

色とりどりの花々は長い夜の眠りから覚めた事を喜ぶように

太陽へと伸びている。


この季節の象徴

桃色の鮮やかな桜が風に吹かれて

ひらひらと宙を舞う。


まだ硬くおろしたての黄色い帽子に

ツヤツヤのランドセル。


真新しいスーツに身を包み

キズのないピカピカの革靴で

早足に過ぎ去る青年。


始まりの季節。

キラキラした時間の中。





「ヤバイ‥ヤバイ‥ヤバーーイ」



猛ダッシュする瀬戸夏海(せとなつみ)

夏海走りぬけた後に花びらが舞い上がる。


「マジで初日からは勘弁してよぉー」


と、言いつつも原因は本人にある。


夏海の両親は幼い頃に離婚し

夏海は父親に弟と共に引き取られ

小、中、高と男手一つで育ててもらった。

母親との交流もあり一年に何度かは

女同士楽しい時間を過ごしたりしていた。


大学進学と同時に家を出て

実家の近所に家を借りて一人暮らしを始めた。

東京なんて比べものにならない田舎だったが

それなりに遊ぶところも流行りもあった。

なんだかんだ充実した毎日だった。

だがある日

母が大病を患ったという連絡が入る。

母も独り身で看病出来る人も居ない。

そこで夏海が側に居ることにした。


母親の看病のため

近くの大学へと4年から転入したのだが

始めての都会に

昨日は高校の友人と夜中まで遊びまわって居た。

久々という事で話に華が咲き誇る

どんどん華が咲き、、、、

気づけば薄っすら明るくなり始めていた。



と、いう経緯で今朝こうなっているわけで。


よく漫画やドラマなどで

こういうシーンをよく見かけるが

あんなに綺麗な綺麗なものじゃない


昨日、いや

むしろ今日そのまま寝てしまったので

急ぎでシャワーだけ浴びて

大事に伸ばしてきた胸まで伸びる髪の毛は

表面だけを乾かし

化粧はなし!

額から汗がつたう。

結んでいない髪の毛がべったりと顔にまとわりついてくる。



何度か大学までの道は下調べしたが

さっきバスは行ってしまった。

待ってる時間もない。


「今‥ハァッ何時だ?」


淡い色したヴィンテージのジーンズのポケットを探る。

次に春色イメージの淡い黄色のカーディガンのポケット。


足は動かしたまま

肩にかけている大きめのトートバッグをまさぐる。

手に触れた感覚で大体分かる。

教材。ペンケース。財布。メイクポーチ。

お目当てのものは見つからない。


足を止めて片手で掴めるだけ鷲掴みにして

カバンの中身を取り出す。


「やった‥‥あぁーーーうぅ…」


最悪とは

最も悪いと書く。

なんて、わかりやすいんだろう。


まさにその通り。

ここでわめき散らせたらどれだけ気が楽になるか、、

喉までこみ上げる感情をぎゅっと呑み込み


足を動かす事にした。


だが、最も最悪な出来事はこれだけではない。

まず向かっている方向が間違っている事に

いつ気づくのだろうか。


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