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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

認められない強さ

作者: 孤独

ある意味で、最強という、力が欲しい。


『……………』

『あんた、神様なんだろ……。俺は死んで命を与えるなら』

『……………』

『最強の能力もオプションで付けて、生き返らせてくれ!!でなければ生き戻るのを拒否する』

『そー?そんなの欲しいの?』


ここは白い部屋。何かがいるくらいしか知らない。それが神様なんじゃねぇのかと、想い、信じるのは自暴自棄から生まれた神様だ。

神様はたぶん座った気がした。自分自身、今、どんな形なのかよく分かってはない。けど、自分を見るには鏡ないと分からないもんだ。


『”最強の能力”で良いのなら、都合がいいのが、今、1つあるけど。おススメしないよ』

『おススメなんてどうでもいい。ネットの評価や折り込みチラシのおススメが全てじゃないだろ?』

『それも一理あるねぇ。隠れた名店的な、そんな能力で良いの?』

『いいんだ!最強なら、最強として生まれ代わったら、俺は楽しい人生を歩める気がするんだ』

『それは……残念だね。周りの評価を自分の人生とするか』

『文句あるか!?』

『ないよ。そーいう人もいるし、そーいう人ほど拘りがあるものね』


神様はトーンっと、俺を押し倒して、能力を渡した。



『能力名は、”名もなき(Nameless) 能力(No Exist)”』


それは最強かもしれないけど、多くが考える最強とは違うんじゃない?

そうとは知らず、蘇る一人の青年。


◇        ◇


「ふぁっ!」


起きると病室……痛めつけられた記憶が蘇り、身体には記憶通り刻まれていた。

しかし、なんだか奇妙な頭痛がする。あの白い部屋にいたという記憶も確かにある。夢では……夢ではない気が……。

なんと言ったか?戻って来た時、神様らしき奴はなにかしやがった。そして、伝えたのだ。



「”名もなき(Nameless) 能力(No Exist)”……?」


なんだそれは?よく分からない内に戻ってきてしまった。嫌な学校に……


「あ、起きたの?また随分と虐められていたのね」

「あ。保健の……」

「学校としては虐めとか言われて、騒がす日常だからねぇ」


止める先生がいたとしても、その現場をいつも見張ってくれるわけでもないし。

今日のところは帰るしかないのかな。


「あの、どれくらい。寝てました?」

「うーん、1時間ぐらい?」

「そ、そうですか」


保健の先生、綺麗だなぁ。優しいし……。ここだけが居場所みたいだ。


「す、す、すみません。帰ります。今日も」

「そー」


色々と忘れよう、たった一人のだけ、強い自分になれることでいい。それだけでいいんだ。自分は弱いんだ。弱い……弱いまま、生まれてしまったから……。

だから、強弱なんてカンケーのない能力に憧れるんだよ。

なんだっけ?あそこで知れたもの、



『”名もなき(Nameless) 能力(No Exist)”……伝えろ、伝えろ』

「え?」


今、鬼神が宿ったとでも、思われていい。


『いつでも俺を伝えろ。伝えろ。伝えるんだぞ』


ここから誰にも負けない、無敵と言える力を備えた気がした。心臓の中にいる、なにかと一心同体になった。



◇       ◇


それから1週間後。

発端を生んだ存在は、仲間にまた厄介ごとを頼むのである。


「やぁ、広嶋くん。元気」

「今度の用事はなんだ?」


めんどくせぇの表情でカフェオレと手作りパスタをいただく、広嶋健吾。アシズムからしたら彼が最も頼れる存在であり、趣味の後処理担当でもある。まんざらでもないのが良い。


「いつもの如く、厄介かつ危険な能力を狩ってきて欲しいんだけど」

「それはお前のせいでもあるだろ」

「私が生んだ能力じゃないので、私のせいにされてもねぇ」


いつもなら敵の資料を手渡すアシズムであったが、今日はそれが一切なかった。


「能力者の名前は羽水灰斗はみずはいと。住所は記載されたところ。今回はそれだけの情報ね」

「は?それだけかよ、情報」

「今回はね。私が言えば納得するだろ?ちょっと厄介な能力で、君でも危ういかも」

「のんやミムラ類の能力じゃなきゃ、構わねぇけど」


もしかすると、今回の適任はミムラちゃんかもね。それならお互い、戦うという間合いにはならない殺し合いになるから。


「というわけで頼んだよ。もう被害は、鬼神は暴れているようだ」

「へいへい。始末してくるよ」


確かに最強という類の能力なんだろうけど。残念ながら、それ以上の化け物はいるもんだ。広嶋くんはその典型。私の、自慢できる協力者の1人だ。だから、羽水くんに教えてあげよう。

世の中、縋ることより己を頼れと



◇       ◇


名もなき(Nameless) 能力(No Exist)


その力を羽水が自覚した時、想像を超えていた強さ故に精神のタガが外れ、自惚れや傲慢、自意識過剰に呑まれたのは当然だと思えた。


「羽水くーん」

「いくら持ってきたー」


虐めの類。ゆすりの類。日常的になっていた。羽水は


『情けねぇ奴だな。さぁ、伝えろ。俺を伝えろ。俺を伝えるんだ』


悔しさ、怖さが、今までにないものだと感じた。中二表現であるが、内に秘めたる鬼神が心を支配しようとしていた。それに屈する形で呟く。従い、


「”名もなき(Nameless) 能力(No Exist)”」

「は?」

「なに?」


脅す者達にとっては何を言ったのか、よくは分からない。しかし、確かにその言葉を聞き、


「能力は、”能力を知った奴を殺す”」

「はい?」


ふざけていて意味が分からないこと。しかし、今。僕達はその意味不明で理不尽な世界に入った。相手にそのことを伝えた瞬間。羽水の心にいた鬼神が解放された。その機を待っていた赤い鬼神は、制約に従った能力通り、全てを殺害に移す。


『あはははははは!』

「!?な……」

「なんだこいつ!?」


鬼神にとっては、この条件でようやく外界と干渉ができる。

自分を知った存在の肉体を掴み、ミキサーのように超高速回転し、肉体を螺子切ってぶっ飛ばす。瞬間的に現れ、殺害する。有無を言わさぬ強力にして、確実な殺害。

複数だろうと同時に葬り去る。(知った人数の数だけ、鬼神は現れる)


「え」

『これで俺を知る者はいなくなった』


鬼神は数秒現れただけで、再び羽水の心臓の中に戻っていく。


この能力の恐ろしさは、対策が全くできない事にある。

能力者を除いて、能力と能力名を知る者を問答無用に、どこにいようが、何人いようが、同時に葬るという性能。まさに最強、無敵の能力。


「こ、こんなにも……」

『俺を知らせろ。俺とお前だけが知ることができる能力だぞ』


その力に触れて羽水が、まともになれるわけでもない。鬼神の囁きに負けるように、伝えたくて伝えたくてしょうがなかった。

全てが嫌になるように、壊れるようにと、告げまくる。とっても簡単なこと。


「”名もなき(Nameless) 能力(No Exist)”。能力は、”能力を知った奴を殺す”」


その手段はなんだってありだ。

言葉、声、文章。それらが伝わればいい。学校内の嫌な奴で10人程度試してから、放送室を使って校内中に放送。聞いた者は当然ながら、鬼神を目の前に畏怖する間もなく、肉体を吹っ飛ばされる。

さらには


『SNSやツイッターでもやれ。もっと知らせろ。もっと知らせろ。拡散しろ』

「……うん」


現代社会では当然となった代物を使った物でも、条件が満たす。恐るべき殺戮能力を誇る。知った瞬間に死ぬとあっては、どうにもならない。何もできずに死んでいくを抗うなど不能。

無敵だ。最強だ。


「僕は誰よりも強くなったんだ!!誰にも僕を止められない!!」

『そうだ!俺は最強で無敵だ!』


鬼神の強さに溺れる羽水だった。そーいう自負を持ってしても、この広い世の中。誰かが挙げる最強は数あれど、それを頷き自覚する者はそういない。上には上がいたり、相性というものが確実にある。

また、強さとは常に漠然としたものではないのだ。

今は恍惚になり、1人となった家で過ごす羽水にとっては、鬼神を伝えることしか頭になかった。



ゴーーーーーーーッ



だから、



「まったく」


いきなり、巨大大型船が自分の家に突っ込んでくるなんて、想定もしていなかった。



ドガアアアアァァァッ



「よく分からんが、能力を知ってヤバイなら、瞬殺が一番だろ」



その船に乗っているのは広嶋健吾。一見家など軽く押し潰せる船を投げ飛ばしたのは、広嶋の能力の一つ”投手ピッチャー”である。投げる物ではないが、投げることができればなんだってできる。それだけの力に鍛え上げ、研ぎ澄ましている。

先制攻撃ができるという利点を持つ者が、先制攻撃されると途端に脆く崩れる。広嶋は瞬殺することができた。しかし、今の一撃でその必要はまったくないと判断した。厄介なことである。



「げほぉっ、がはぁっ」


弱々しく、潰れた家から這い出てきた羽水。潰された家をどう思ったか、自分ではなく、鬼神が殺した人間達のように見えただろうか?君がしてきたのはこんな理不尽だと。


「おー、上手い事、直撃しなかったか。ナイスピッチング」

「な、なんだお前は……」



広嶋の姿を見るなり、それが誰であろうとなんだろうと。


「”名もなき(Nameless) 能力(No Exist)”。能力は、”能力を知った奴を殺す”」


殺す、今、殺す。鬼神がお前を殺すと、それがあまりにも他力本願であるのを知らずに。


「!」

『はははははは!強そうなのが来たな!だが、無駄だ!誰だろうと俺に殺される!!』


突如として、広嶋の前に現れる鬼神。どんな奴だろうと、この能力を知る者は殺す。殺してしまう。


パシィッ


「奇襲するなら」

『あ?』

「黙ってやれぇぇ!!」


しかし、この時。そんな制約など破たんにさせる怪物がいた。現れた鬼神の声と同じタイミングで反応し、超スピードで掴んで投げ飛ばした。

今まで出会った奴とはまったく違う反応だった。


『がはぁっ!?』

「お前程度なら正面切って戦ってやる。なんだっけ?能力を知ったら、死ぬとか、殺すとか、なんとかよ」

『!そうだよ!!』


鬼神は倒れても立ち上がる。制約に従い、なんであれ、能力を知った広嶋を殺しにかかる。素早く一直線に来たが、百戦錬磨の広嶋の目に追われている。難なくと体を掴みにかかるが、



スカッ


「!」


鬼神の実体を掴めない。空のような状態。透き通って、広嶋の体内に入り込もうとする鬼神。問答無用に心臓を鷲掴み。これならどんなに強かろうと、死ぬ。心臓が死ねばいい。


フワッ


『は!?』


しかし、鬼神が殺す刹那に広嶋が霧散した。空ぶったのはお互いであり、それに慣れていない鬼神は歴戦の差を痛感。掴むといった直接的な触れ合いを拒否したが故、鬼神の肉体がブチブチに吹っ飛んだ。もう一つの能力、”同士討血”を展開し、惨く殺すことに移行。



『ごあああぁぁっ!?ああぁっ!?』

「なんだよ。この程度で根を上げんのか?」


広嶋はいつの間にか、崩れた家の瓦礫の上に座っていた。一体どんな移動を使ったか、一体どんな攻撃をしてきたのか、まったく分かっていなかった。

腕と脚、胴体をバラバラにさせられ、苦痛を浴びせられて、殺意のある戦意は吹っ飛んだ。この時点ですでに鬼神の勝ちはなくなった。制約を満たし、広嶋を殺そうとしても、それを拒む面が見えて、広嶋は休息をとっていた。


『がはぁっ、ぶはあぁっ』

「ったく」


つまんなそうに空を見上げて、鬼神が完全に死ぬまで待っている広嶋。しかし、


「おい!何をしているんだ!殺すんじゃなかったのか!?殺すんだろ!?そーいう能力なんだろ!!」


羽水は鬼神の不甲斐なさに叱咤した。そのための奴が、こうもやられては一体、得られた能力はなんだという結果だ。しかし、それに激怒したのは鬼神の方。


『ふざけてんのか、テメェ!クソガキ!』

「な!?」

『テメェのためなんかに動いているわけねぇだろ!!殺したいから殺してるんだ!!』


にも拘わらず、この男。どんな化け物だ。


『お前は俺に操られるだけのカスだろ!!俺の殺人にやらせるための、駒!道具!自分じゃ何もできねぇ弱者が!吠えてんじゃねぇ!!』


能力を知った奴がいる限り、鬼神は外界と干渉することができる。広嶋には勝てないと悟り、今起きた怒りの原因。あろうことか、自分の能力者である羽水に殺意が向かう。


『俺を知っている奴は殺してやる』


鬼神がそう思えばできる。広嶋に差し向けられた鬼神ではもうダメ。また新たに己を、羽水の前に生み出そうとしていた。それを見た瞬間、羽水は自分を知った。


「ま、待て!ぼ、僕を殺す気か!?止せ!」

『利用され、利用するのがことわりだ』


死。死。死。

道連れにしていこうとする。


「死ぬのはテメェだけで良いだろ」


しかし、広嶋は鬼神そのものを殺しに来ていただけだから、羽水が攻撃を受けるその直前で手を下した。


◇        ◇



「はっ」

「起きた?」


目覚めた時、また保健室だった。いつもの保健医さん。


「魘されていたけど、大丈夫」

「…………はい」


なんだか、ぼやぼやする。悪い夢を見ていた気がする。


『俺を伝えろ!!』


「?……なんだっけ?」

「ほら、もう時間だから気を付けて帰るのよ。この近くには、通り魔もいるみたいだし」

「……ああ、そういえば」


そーいう言葉を聞かされて、そんなニュースを見たような。


『羽水!伝えろ!俺を伝えるんだ!俺を忘れるな!!』


何か心の奥にいるみたいだけど、なんだっけ?思い出せないなぁ。


「先生、ありがとうございました」

「いいのよ。明日も頑張るのよ」

「はい」


何かを頼ったりもするべきだけど、それを踏まえて、自分も頑張らないと。そんな気がした。そーいうものを見て来た気がした。


『俺に殺しをやらせろーーー!!お前まで忘れたら、俺が完全に死ぬのだ!』


これからは何か大切なものを探しに行こうか。


羽水は家に帰っていく。そして、自分の道を進んでいく。

完全に終わるまで、見守るのが広嶋やアシズムの仕事。


「こんなんで良いか?あいつは誰も殺しちゃいねぇよ」

「情報操作が大変だったけど」

「それは、お前があんな代物を一般人に与えるからだろ。報酬は弾ませろよ」






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