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いつも更新遅くてすみませんm(_ _)m
イーリアス様と付き合いの長いシャルさんは、少し説明したらすぐに納得して……
「シャルロッテ様!!」
「どうしたの? 何か変わったことでもあったのかしら?」
駆け寄ってきたこの村のエルフの一人と話を始めた。
このエルフが、おそらくこの精霊大核門の村代表と思うけど、他のエルフたちは一定の距離を保ち僕たちを訝しげな視線を向けている。
――ほら、みんなに見られてるよ……
「ルシール、ほんとうに、小さな娘に興味ないっちゃよね? ね? 聞いてる?」
「聞いてます……」
――やっと人界に戻ってきたというのに僕は何をやっているんだ……
「また〜……ほらルシール。こっち向くっちゃ」
「う、うん」
――うう、イーリアス様……恨みますよ……
正座して俯く僕の顔をアルテが首を傾げ覗き込んでくる。これで何度目だろう……アルテは、大人っぽくなっているのであまり近寄られても困るんだ……
――特に……胸……ぃぃ!?
アルテは僕が寝ていた三年で、体術の才能を伸ばしていた。回復魔法の使える武闘家だ。
盾としても使える大きな手甲と蹴られたら骨が折れそうな分厚いブーツを装備している。ドワーフに作ってもらった一品らしい。
話が逸れてしまったけど……何が言いたいのかというと、アルテはこの三年で胸まで大きく育っているんだけど……
――昨日までそんな格好してなかったよね?
アルテは袖のない上着と短い短パンを履いている。これが動きやすい服装だと言うんだ。
武闘家のスタイルはこんなもんらしい……本人がそう言ってるので間違いない……はず……けど……
――め、目のやり場が……
首回りが緩いのか、さらに大きく育った胸の谷間がしっかりと見えているし、引き締まったお尻とキレイになった長い足がいやでも目に入ってしまう。
僕はアルテから必死に顔を背けようとするのだが、僕の顔を両手でがっちりと固定したアルテがそれをよしとしない。
「ほら〜、またルシールは顔を逸らそうとするちゃ。こっち向く……」
――ぶはっ!? み、見えてる、見えてるんだって……アルテ……
「あ、アルテ。ほんとに誤解だから……イーリアス様のイタズラなんだよ……」
いつもは味方になってくれるアルテなのに、今回はアルテだけが、なぜだかなかなか信用してくれない。
僕も、さすがに困り果てていると――
「ほらアルテ。もう許してやって……」
アルテの隣に立っていたフレイが手を差し伸べてくれた。
「うーん……でも……」
「ルシールも誤解って言ってる……ね?」
そう言ってフレイまで正座する僕の前にしゃみこんだ。
「そ、そうなんだよ、フレ……ぃぃ!?」
――ぶふっ!!
フレイはこの三年で風属性と水属性の魔法を更に極めた。他にも護身術として小剣を扱うようになっていたので、腰にしっかり帯剣しているのが目に入る。
そのフレイが扱う小剣は、なんと僕が使っていた風のシルエアだ。シャルさんが貸してくれたらしい。
なんとなくだが、フレイは、シャルさんを目指しているように感じる……
そのせいか、戦闘スタイルもシャルさんに似てきたし、服装もシャルさんに似た、上衣とスカートが一緒になった服を着ているんだけど、丈が非常に短くてしゃがみこむと――
――見えてる……見えてるから……フレイ……
僕は思わず目を閉じた。ほんとうは顔を背けようとしたけど、アルテが僕の顔を固定しそれをよしとしない。
「……分かったっちゃよ……ルシール、ごめん。怒りすぎたっちゃね」
アルテは僕の頭に軽く触ると、立ち上がりやっと解放してくれた。
「ん。ルシールも……今度から気をつける」
フレイもアルテと同じように、僕の頭を軽く触るとゆっくりと立ち上がった。
――むっ! 二人してまた僕を子供扱い。
フレイもアルテも、僕をよく子供扱いにする。身体だけ17歳の子供だと思っているんだ。正直悔しい。そのうち見返してやりたい。
「ルシール終わったのね。それなら三人ともこっちにきて……少し確認することができたの」
シャルさんがタイミングを見計らったかのように僕たちに声をかけてきた。
「はい」
僕たちが、シャルさんの傍に歩み寄ると、軽く紹介され、そのまま村長、正式には村長代理(村長は一応イーリアス様らしい)の屋敷に案内された。
案内されている途中、後ろを振り返れば、精霊大核門は見えなくなっていた。
ここの精霊大核門も一定の距離を離れると見えなくなるような結界が張っているんだと思う。
――確認ってなんだ……?
本当はすぐにでもシャルさんに尋ねたかったが、一応、僕はシャルさんの聖樹騎士で、迂闊なことは喋らないようにと釘を刺されている。
――気になる。
少し広い部屋へと案内された僕たちがしばらく待っていると、村長代理が五人のエルフを引き連れて部屋に入ってきた。
「お待たせしてすみません……思っている以上に進行が進んでいました」
その五人のエルフたちは皆顔色が悪かった……
村長代理が心配そうにしながらも、その五人に挨拶をさせようとしたが、案の定、そのエルフたちは挨拶もできず、その場に座り込んだ。
――辛そうだ、何でわざわざ、こんなところまで連れて……ん? このエルフたち……シャルさんと同等の魔力量だ!!
「シャルロッテ様、すみません」
僕が辛そうにしているエルフたちの魔力量に気を取られている間に、村長代理はシャルさんに頭を下げていた。
「気にしないで……それより、この娘たちがそうなのね?」
「はい。彼女たちは、この地で冒険者活動をしながら情報を集めていた者たちです。
人族との接触を避けやっとこの村にたどり着いたらしいのです。
……始めは疲れでも出たのだろうと宿に泊まっていたそうなのですが……だんだんと症状が酷くなり、宿主から私まで報告がきたのです」
それを聞いたシャルさんは、五人のエルフたちを見ながら目を細めた。
少しだけ指輪の力で見えるようになった精霊が動き回っているので、おそらく精霊魔法を使っているのだろう。
しばらくすると――
「何て量の魔力なの……え? これは!? なんでよ、この娘、聖石化スキルが発現しているわよ!?」
――スキルが発現した……?
シャルさんが深刻な表情で残りの四人にも精霊魔法を使っていく。
「あり得ないわ、五人ともじゃない!!」
「はい。彼女たちは、この村にきて丸三日が経ちますが、日に日に魔力が増えるとともに、その一方で身体能力が低下していきました……それで、ついに今朝方、スキル化したようなのです」
「それは……その娘たち自身が聖石化する前触れよ……どうしてそんなことに……体内の聖石が何らかの形で過剰反応を起こしたとでもいうの? でも、そんなことあり得ないわ……」
シャルさんがすぐに首を振って否定していた。
「はい。私も気になり彼女たちに話を聞いたのですが、そのなかで一つだけ気になる点がありました」
「気になる点……」
「はい。……一度だけ、彼女たちは野営中に漂ってきた嫌な感じのする煙を吸い込んだらしいのです。
そのあとすぐに、取り囲みつつある気配に気づき慌ててその場から離れたらしいのですが、その嫌な感じの煙というものに、私は少々引っかかっています」
シャルさんが、苦しそうに脂汗を浮かべているエルフたち五人を見ながら何やら考えるも、すぐに首を振った。
「情報が少なすぎるわ……それよりもその聖石化を抑えることの方が先よ……」
「はい。ですが……あらゆる薬草や、回復魔法を使用したのですが……スキル化してしまっているのですぐに元の状態に戻ってしまうのです……もう、我々に……打つ手はありません……彼女たちもそれを理解しています」
「……!?」
「伝えたかったそうです……最期に、自分たちの身に起きたことを一人でも多くのエルフ族に……そのためにシャルロッテ様には足を運んでいただきました。ありがとうございます」
そう言った村長代理は頭を深く下げ、それをシャルさんは悔しそうに黙って見ていた。
悔しそうで悲しそうなシャルさんの横顔。
「シャルさん……」
――スキル化しているから、回復できない……スキル化……スキル……スキル……? スキルなんだ。なら、そのスキルを取り除けば……あれ、でもシャルさんも知ってるはずなんだけど……
「あの……シャルさ……シャルロッテ様。ぼく……私に任せてもらえませんか?」
僕は急に追加されたスキルショップの買い取り機能を使えばシャルさんの笑顔を見れると思いそう口にした。
「ルシール……なんで……」
けど、シャルさんは笑顔どころか心配そうな顔を僕に向けてきた。




