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ブックマークありがとうございます。

嬉しいです。

 >ルシ坊、大丈夫か?<


 意識を取り戻すとラッシュが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。


「…ああ大丈夫だ。ありがとう。」


 そうなのだ。あれから何度となくルシールは崖へと引っ張り落とされていた。あの崖道から先に進む事が出来ないのだ。


 幸い手加減されているのか身体のどこにもケガする事はなかったが、何度も早く走り抜け様としてもダメだった、飛翔スキルで低空を飛んでみたがそれもダメ、全て何者かに捕まって暗闇に引っ張られる。


「…いったい…どうすればいいんだよ…」


 パンツ姿のルシールは立ち上がると一纏めに置いてある自身の服を身に纏っていく。何度となく繰り返しているルシールはもう手慣れたものである。


 ちなみにラッシュは僕が3度落ちた辺りからパンツを履かせてくれていた。グッとしてクイッとしてスーッとするのがコツなんだぜ、と得意げに親指を立てていた。


 もう僕からは何も言うまい。これは考えちゃいけない事なのだ。


 >ルシ坊、残念だけど、そろそろ時間だから、次が最後だな<


「そうか、もうそんな時間なのか…」


 こんな事で鬼人族と渡り合えるのだろうか、と己の未熟さを改めて痛感し何とも言えない不安に襲われるが、これは1日でどうこう出来る問題ではない。


 ――頑張らないと!


 今はこの洞窟で少しでも強くなるしかないと思い直した。 


「…分かったよ。じゃあ最後だし気合い入れる!!」


 ルシールは不安な気持ちを取り除く様、頭を振り両頬をパンパンッと両手で叩き気合いを入れ直した。ルシールの両頬には赤く手の跡が残った。


「くぅ〜…よし!」


 >痛そう<


「これくらいがいいんだよ。」


 と口では強がってみたもののルシールはヒラつく頬を思わず摩った。


 >あ!そうそう、精霊達も飽きたから、もう帰っていいよって言ってたぞ。<


 腕を組みくるくる飛び回るラッシュがさも今思い出しましたとばかりにそう口にした。


「え!」


 ーーーーー

 ーーーー


 またきたぞ

 え〜もうあきたのに

 かえってっていったのに

 うんうん

 くすくす

 いいじゃん

 おなじこと

 またひっぱるよ

 うんひっぱるよ

 ぐっとひっぱる

 ぬぎぬぎぽい

 うんぬぎぬぎぽい

 うんうん


 ルシールは最速で再び崖道へとたどり着いた。何度となく繰り返している為か、ここまでの道のりは完璧になっていた。

 襲い来る木の人形も、その気配を捉えると迅速に切り伏せていく。


 ルシールはまだ気づいてないが、洞窟に入る以前よりスキルも上がり見違えるほどその動きは良くなっていた。


「…ん?ラッシュ今何か言った?」


 >うん?何も言ってないぞ<


「そっか。問題はここなんだよな……。」


 >そうだな、どうするんだ?<


「どうしよう……」


 すっかり定位置となった肩に座るラッシュの小さく可愛い顔が、僕の顔を覗く。


「……よし、ゆっくり歩いて行こうと思う。最後だしせめて、あの暗闇から掴んでくる正体だけでも知りたい。」


 >ふーん<


 ずっと走り抜けていた崖道をルシールはゆっくりと歩いていく。


 木の人形の魔法攻撃は手数が多いが慣れればどうって事ない。今では魔力の盾を使用しなくても、魔眼、空間把握、見切り、回避の足捌きだけで事足りる様になっていた。


 ゆらりゆらりと躱し、ラッシュに当たりそうな魔法だけ、風魔剣でかき消し、風の刃で片付ける。


 >へえ!風の刃の使い方がうまくなったな。<


 感心しながらラッシュがルシールの頭を撫でてくる。小さな妖精に撫でなれるというのも小恥ずかしいが、魔法ぎガンガン飛んで来る為今は周りに意識を向ける。


「ん?そうかな、ただ魔力消費を少なくしたかっただけだよ。」


 ルシールは風魔剣から小さな風の刃も飛ばせる様になっていた。目につく木の人形に風の刃を飛ばし木屑へとしていく。


「…来た!!」


 崖道から木の人形が居なくなり、いよいよ壁が押し迫ってきた。


 >ルシ坊壁来る、壁が来るぞ<


「分かってるよ。ありがとう。」


 壁が更にルシールへと押し迫る。


 ――……あれ、この壁……何てことだ。


 ルシールが冷静に暗闇の正体を確認しようと空間把握を展開し注視していると何やら違和感に気づいた。

 そう押し迫って来る壁の奥の壁は全く動いていない事に。


 ――じゃあ、この壁は何?


 ルシールが押し迫る壁を手で触れようとするとスーッとすり抜けた。


「え!」


 >お!<


「この壁、幻覚なのか…」


 >わぁ気がついた!<


 ラッシュから嬉しそうな声が聞こえた。どうやらラッシュは、この壁が初めから偽物だと気付いていたらしい。僕はそのまま壁をすり抜け崖道の中央を歩く。


「ラッシュ。もしかして知ってた?」


 >そりゃあ。こう見えてあたい達、妖精族に幻術は効かないからな<


「なるほど…」


 不思議だと思ったんだよ。一緒にいるラッシュは裸で戻されていた様子がなかった。僕より先に起きて着替えてるとも考えたがそれも何か違う気がしていた。

 結局分からなくて、元気でケガも無いようだったから気にしない事にしていたんだよな。


「僕がもっと冷静だったら…」


 >いいじゃないか。気付けたんだし偉いと思うぞ…あ!ほら油断しない<


 ラッシュの声に崖側の暗闇からシュルシュルと細い触手の様なモノが伸びてきた。


「む!」


 こんなモノ冷静であれば、木の人形の魔法より遅い。シュルシュル伸びてくる触手をサクサク切り落としていく。


 ――多いな…


 迫り来る触手を切り落としていく。

 崖の暗闇からただ、真っ直ぐ伸びてくるだけのその単純な動きは脅威でも何でもない。


 ――…キリがないか………あれ!でもこれって無視して前に進めばいいんじゃないか。


 ルシールが、その触手を切り落としながら前に歩を進めると、まるで焦ったかの様にその正体が暗闇から姿を見せた。


「うげぇ…」


 >うわぁ<


 ラッシュも思わず顔をしかめる。その姿は大きな木のボールから沢山の触手がウネウネと生えていた。


 ――気持ち悪い…


 ルシールはその姿を拝むとすぐに風の刃を飛ばし、真っ二つにした。なんとまあ、見掛け倒しで呆気ない事か。触手も枯れた様に萎びれ動かなくなった。

 こんな奴から暗闇に落とされていたのかと思うと、何とも複雑な気持ちになった。


「……」


 ラッシュも僕に気を使ってか無言で、僕の顔を覗き込んできた。


 >……<


 その後は、似た様なもので落とし穴や垂れ下がった水晶石を避けつつ木の人形を倒していった。


「でかいな…」


 最後にルシールと同じくらい背の高い木の人形が木剣を構えていたが、一合目で木剣ごと斬り伏せてしまった。風魔剣様様である。


 >おお!!やったなルシ坊<


「なんかちょっとズルした気分だけど…」


 >いいんだよ。この精霊の洞窟は難易度が高くて最後まで来れる奴はなかなか居ないんだから<


「ふーん。そうなのか……ん!あれは?」


 >ん?おお。ルシ坊運が良いな、最後に宝箱が出てる<


 何だかんだラッシュの態度がワザとらしく感じるも。ルシールは宝箱へと近づいた。


「宝箱ねぇ…また枯れ木じゃないのか?」


 そうなのだ、ここにあった宝箱全て見つけて喜び開けると、すごくがっかりするのだ。枯れ木、小石、ガラクタ、雑草などまともなモノなど1つもなかった。期待してはいけない。


 >ほらほら開けてみなよ<


「う、うん。」


 ルシールが恐る恐るその宝箱を開けるとー。


「こ…これはおもちゃは?の…指輪かな…」


 >おお!これは珍しい。ルシ坊これ精霊の悪戯指輪だぞ<


 ここでもラッシュがワザとらしく感じるも、何故かその指輪に惹きつけられてしまう。


「悪戯指輪?……」


 >まあ、試してみるといいぞ<


 ラッシュがその指輪を手に取りと、よっこらよっこらとルシールの左小指に嵌めた。


 指輪が小さく一つ一つ確かめる様に指に嵌めては外し、嵌めては外しと繰り返し、小指にしか入らなかったのだ。


 >これでよしっと。どうだ?<


 するとどうだ、ルシールの目の前に小さくキラキラ光る何が無数に飛んでいるのが見え始めた。

 その光はそれぞれが赤、青、黄、緑、黒、茶、白色に柔らかい輝き放っていた。


 おまえおもしろい

 うんうん

 きにいった

 きにいった

 しょうがない

 おまえあそんでやる

 あそんでやる


 ルシールは急に見える様になった光と、その声にきょろきょろと目で追いつつ平静を装うも、心の中では酷く狼狽していた。


「何………こ、これって…。」


 >精霊だよ。小さな精霊だけど…7精霊かなルシ坊の事、気に入ったから付いてくって。よかったなルシ坊<


 にこにこしながらラッシュは顔をルシールに向けて来た。


「う、うん。でも良いのかな…」


 ルシールが手に小指に嵌るおもちゃの様な指輪を軽く摩りなが呟いた。


 >エルフ族は精霊がふつうに見えるから、ルシ坊も見えた方が都合が良いと思うぞ…な<


 にかっと笑い親指を立てるラッシュ。


 もしかしてラッシュは初めから僕の事を考えてここに連れて来てくれたかもしれないと頭によぎったルシールは、ラッシュに素直にお礼述べた。


「ああ、ありがとなラッシュ。」


 照れ臭くなったのかラッシュは何も言わずパタパタと飛び上がり定位置に座った。


 >さあ、帰るぞ!<


「うん、そうだな。帰ろう…と、その前に。」


 ルシールは飛び回っている小さな精霊に向かってこれからよろしくなと光に向かって両手を広げて振った。


 うんうん

 まかせろ

 まかせろ

 ついてく

 ついてく

 なんかくれ

 あまいの


 ルシールは聴こえてくる精霊の声に苦笑いを浮かべ洞窟を後にした。





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【名前:ルシール:LV20】 ↑ギルドランクE

 戦闘能力:560↑

 種族:人間?

 年齢:17歳

 性別: 男

 職業:冒険者

 称号:精霊界の聖樹騎士

 スキル:

 〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉〈文字認識〉 

 〈アイテムバック〉〈貫通〉〈馬術〉

 〈カウンター〉〈早寝〉〈早起〉

 〈早食〉 〈早技〉〈早足〉〈早熟〉

 〈治療:4〉↑〈回避UP:5〉 ↑〈剣術:5〉↑

 〈見切り:6〉↑〈捌き:6〉 ↑〈毒耐性:2〉

 〈覗き見:3〉↑〈危険察知:4〉↑〈空間把握:6〉↑

 〈精神耐性:3〉↑〈魔力装備:1〉

 固有スキル:

 〈浄化〉〈魔眼:6〉↑〈飛翔〉

 魔 法:

 〈生活魔法〉〈初級魔法:1〉

 *レジェンドスキル:

 《スキルショップ》

 《スキル制限解除》

 《加護・スキル神》

 借金総額:  セーバス管理 約7100万カラ

 レア装備:竜のブレスレット

 :風魔剣・風のシルフィールド

 精霊の悪戯指輪new

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