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「これで、ルシールの屋敷内についてはもう大丈夫ね。
必要な事は大方決まったから、これで良しとしましょうか。」
「はい、シャルさんありがとうございました。」
「それでまずは、ルシールが鬼人族との戦闘で手に入れた黒石の入った袋なんだけど、覚えてる?」
「もちろん覚えてますよ。途中で落としてないか心配してました。」
「あの袋はマジックバックだったわ。
そして、あの袋にはまだ数万個の黒石が入っていたわ。もし、あと時にルシールが手にいれてなければ大変な事になるところだったわ。ありがとう。」
「いえ、あれは、運が良かっただけで‥僕は‥」
ーーあの時の僕は何も出来なかった‥。
ルシールは、あの死闘から数日しか経っていないような感覚であり、しっかりと脳裏に焼き付いている。思い出す度に拳に力が入る。
あの鬼人族に手も足も出なかった自分が、情けなく悔しくてしかたなかった。
「ほら、またそんな顔をする。そんな事ないわよほんとルシールのお陰なのよ。」
「ルシールは、よくやった。」
「そうっちゃよ。」
フレイと、アルテはルシールの背中を優しく擦った。そこで、ルシールはフレイとアルテも何も出来なかった事が悔しくて訓練を必死に頑張っていたというシャルさんの言葉を思い出した。
ーーこんなんじゃダメだ。
「フレイ、アルテありがとう。」
「ううん。」
「いいっちゃよ。」
フレイは小さく頷き、アルテは笑顔を向けてくれた。
「それでね、ゴブリンになる黒石についても、ずっと王宮精霊魔法士が研究してくれてたんだけど、ようやく鬼人族から取り出した魔石の欠片だと言うことは分かったわ。
でも、それだけ、あれがゴブリンだったからまだよかったけど、それ以上の強力な魔物だっらと思うとゾッとするわ。防ぐ手立てもまだよ。
だからこれはもうしばらくは研究に時間が掛かるわ。 」
「そうですか‥。」
「次は、現在の人界についてルシールに簡単に話すわね。ルシールも気になっていたんじゃない?」
「あっ、はい。僕も気になっていた所でした。」
シャルさんはにこりと笑みを浮かべるとフレイと、アルテに顔を向けた。
「フレイと、アルテにはすでに話している事だけど、ルシールに付き合って上げて。」
「はい。」
「はいっちゃ。」
そう言って正面に座るシャルさんはテーブルに大きな地図を取りだし広げた。
この応接室はテーブルを挟み、ソファーが対面に配置してある。
「まずは、これを見てくれる?人界の地図よ。」
「これが‥‥人界の地図!?」
シャルさんの言葉を受け、僕と、僕を挟んで左右に座るフレイとアルテがその地図を覗き込んだ。
ーー広い‥。
僕の屋敷に勤めてくれるエルフさん達は既に自分の持ち場へと戻っているので、応接室には僕、シャルさん、フレイ、アルテの4人しかいない。
シャルさんが手配してくれただけあって、指示なく状況を読んで動いてくれる非常に優秀なエルフさん達だ。
「ほら、見ての通り人界は大きく中央大陸、東部大陸、西部大陸の3つの大陸があるのは知ってるわよね?」
「‥いえ、そのすいません。」
3人は驚きの顔をルシールに向け、向けられルシールは恥ずかしくて身を小さくする。
田舎村出身のアルテすら幼少期に習い知っている常識をルシールは知らなかった。
「ルシール、分からない?」
「子供の頃に習わなかったっちゃか?」
「ごめん。僕には分からない。」
シャルロッテ、フレイ、アルテの3人は顔見合せた。出逢った当初は文字すら読めなかった事は3人の中で周知の事実。
ルシールは分からない、知らない事が多い。だが、その事にルシール自身は何の疑問にも思っていない。
その事を理解している3人は頷き、今は触れないでいることにした。
「‥そう。じゃあルシール。この地図を見た通り人界は3つの大きな大陸があるの。
そして、ルシール達がいた大陸はここ。中央大陸ね。」
「ここに、僕達がいた王国が‥。」
ルシールは地図に描かれているその大陸にそっと触れた。
「そうよ。でも残念だけど、ここが一番鬼人化が進んでいるわ。だから、次に私達が向かうのもこの中央大陸よ。」
「‥そう、ですか‥‥‥では他の大陸はまだ大丈夫なのですね?」
ルシールは王国でお世話になった人の事を思い出し、言葉に詰まったが、隣で黙って地図を眺めるフレイや、アルテも同じ様な思いをしてるだろうと平静を装った。
「ん~、今は大丈夫って所ね。正直な所、どうなるか私達にも分からないよ。
東部大陸はサカーク小国が、西部大陸はシーク帝国が周辺の鬼人化した人族を抑えているわね。」
「周辺で鬼人化した人族をですか‥」
「そうよ。まず、サーカク小国には獣人族が手を貸しているようね。
なんでも、この国には不思議な力を持った4人の人族がいるそうなのよ。
その4人を勇者として祭り上げ、鬼人族や異形の魔物に抗っているようね。」
「獣人族‥‥4人の勇者‥‥」
ーーそれって僕に竜のブレスレットをくれた、エルシャ様が捜していた人達と関係があるの‥かな?
「ルシールどうしたの?」
「あっ、いえ。でも、そんなに早く人族は鬼人化するものなのですか?」
「そうなのよ、こんなに早く鬼人化する事態あり得ない話なのよね。残念だけど、今はまだ私も分からないわ。」
「そうですか、じゃあ。西部大陸はどうなのですか?」
「西部大陸は‥‥少し危険ね。」
「えっ、中央大陸が一番鬼人化が酷いんじゃあ‥」
「ううん、違うの。そう言う意味じゃなくて‥シーク帝国には魔族が手を貸している事が分かっているわ。これはいいんだけど‥。
でもダンジョンの屋代に設置していた聖石は殆んど奪われてしまってるの、この西部大陸の殆んどをね。」
「それじゃあ、異形の魔物も溢れて、それに、普通の魔物も段々強くなってるんじゃあ。
酷くなれば、その魔物も異形化するんですよね?」
「そうなるわね。でもその聖石はどうも、シーク帝国が指示して回収させているらしいのよ。」
「えっ?」
「その聖石と、魔族の魔導技術を使って、帝国全域に結界を張っているそうよ。」
「何て事を‥‥‥どんどん穢気が溢れ出している事には変わりない訳で、その異形の魔物はどうなっているんですか?」
「それもシーク帝国の魔導兵士が何とかしているらしいわ。でもその魔導兵士‥凄く不気味で、人形みたいだと聞いているわ。
でも、その能力は信じられない事に精霊魔法で確認したエルフの話によると、全ての兵士が莫大なスキルを所持していて異形の魔物も数人掛かりで穢気を吸収して倒してしまったそうなのよ。
そして、その兵士は異形の魔物を吸収し終わると指揮官の命令に従い鬼人化する前に自害したそうよ。」
「‥‥なんなんだ、それ‥‥。」
「非人道的で信じられない話だけど事実よ。
それでも、鬼人族や、異形の魔物に抗う事が出来てしまってる、私達ではどうしようもない事よ。」
「‥‥。」
「そして、最後に私達が今から向かう。
中央大陸なんだけど、ここは酷い有り様で、どんどん鬼人化してるわ。
更に自我を持ち始めた鬼人族は、ダンジョンの屋代にある聖石を積極的に回収しているようね。
異形の魔物を意図的に発生させ鬼人化した者が喰らってるの、自身の力の源にしているわ。
それが目的の1つだったのかもしれないわ。
益々厄介になってるわね。」
「それじゃあ、あのシャルさんが新に設置してくれたコボルトダンジョンの聖石も‥」
「ええ、間違いなく奪われてるわね。」
「そんなぁ‥」
「‥‥。」
「シャルさんごめんない。僕があの時、余計な事を言わなければ‥」
「‥気にしなくていいわ。使命をまっとうするのならば、設置して当たり前の事だったんだもの。」
「それでも、聖石が‥」
「‥もうルシール。そんな顔しない。聖石が必要ない世界にするぐらい言いなさいよ。それでも私の聖樹騎士ですか?」
ーー…そうだよ。こんな事で弱気になったらダメだ。
「はい、そうですね。シャルさん絶対聖石が必要のない世界にしましょう!!」
「ふふ、期待してるわよ。」
シャルさんはそう言うと眩しいくらいの笑顔で応えてくれた。
これから本格的に人界にいるエルフ族の撤収に入る。僕はその手伝いをする。と言っても、シャルさんを始め、女王陛下、他の聖樹姫様とは話はついている。らしい。
まずは、セリーナ族長の精霊核門から人界戻って更に東にあるエルフ族の村に向かうのだと。
そこで、シャルさんのお姉さんセイル様と合流する事になるそうだ。
何となく分かっていたけど、シャルさんの姉妹=聖樹姫=王族なんだよな。
「ルシールそうだったわ。あなた目が覚めてから1度もラッシュに会ってないでしょ?
会いに来ないなんて非常識だとラッシュが怒ってわよ。ウチの屋敷に来てるから後から顔を出して上げなさいよ。」
「えっ。」
その後、シャルロッテの屋敷に顔を出して待って居たのは小さな馬の姿の妖精ラッシュだった。
その姿は羽の生えた小さな馬…の人形みたいで可愛いのだが、こっ酷く怒られるルシールだった。
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【名前:ルシール:LV17】 ギルドランクE
戦闘能力:410
種族:人間?
年齢:17歳
性別: 男
職業:冒険者
称号:精霊界の聖樹騎士
スキル:
〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉〈文字認識〉
〈アイテムバック〉〈貫通〉〈馬術〉
〈カウンター〉〈早寝〉〈早起〉
〈早食〉 〈早技〉〈早足〉〈早熟〉
〈治療:3〉〈回避UP:5〉 〈剣術:4〉
〈見切り:5〉〈捌き:5〉 〈毒耐性:2〉
〈覗き見:2〉〈危険察知:3〉〈空間把握:5〉
〈精神耐性:2〉
固有スキル:
〈浄化〉〈魔眼:5〉〈飛翔〉
魔 法:
〈生活魔法〉〈初級魔法:1〉
*レジェンドスキル:
《スキルショップ》
《スキル制限解除》
《加護・スキル神》
借金総額: セーバス管理 約7100万カラ
レア装備:竜のブレスレット
:風魔剣・風のシルフィールド
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