46
ブックマークありがとうございます。
嬉しいです。
僕が目が覚めてから2日目の事、やっと普通に歩けるようになった。
これには僕の飲んでいた水に理由があった。
あの冷たくて美味しい水は、どうも精界樹の雫と言って、かなり貴重な水だったのだ。
これを定期的に飲まされていたから、僕は筋力が衰える事なく体調を万全の状態に保ち、更に成長出来たらしいのだ。
僕が歩けなかったのはただ単に、感覚の違い‥‥つまり、精神が身体に追い付いていないから。
僕の頭は14歳の感覚のまま、当然、そんな状態出歩けば違和感もあるし、おかしくもなる‥そんな所です。
そして、なんと嬉しい事に、僕の背はシャルさんをも抜いていたのです。えへへ。そりゃ感覚が狂うのは無理もない筈だよね。
でもそれもこの2日間で慣れました。すこぶる身体の切れが良いような気がする。
ーーよし、これなら。
明日からは走り込みを始めようと思うルシールであった。
そして、フレイとアルテはと言うと、当初は格好よくなったルシールに照れもあった。
だが当のルシールは身体は17歳、頭脳は14歳。つまり子供っぽい。
変にルシールが気取らなくてホッとした二人であったが、すぐにこれではいけないとルシールにお姉ちゃん風を吹かす様になるのだが、ルシールに知る由もない。
ーーーーーー
ーーーーー
ルシールが普通に歩ける様になった翌日ー。
「シャルさん、誰を待ってるんですか?」
僕はシャルさんに城の中の小さな応接室に案内された。といっても置いてある調度品は高級そうで、大人しくするしかない。
ーー僕、弁償できないから‥。
でもさすがエルフ族のお城だ。僕がお世話になってる部屋から階段を上ったり下ったり、上ったりと20分くらい歩いた。
この応接室から一人で戻れと言われても戻れる自信はない。
「今から私の一番上の姉が来るわ。」
「へぇ、シャルさんのお姉さんですか。このお城に勤めてるんですか?」
「ん~、まあそんな所ね。」
ーーやはりシャルさんに似て美人さん何だろうか?あっでもエルフ族はみんな美形だもんなー。
「そう言えば、フレイとアルテはどうしたんですか?何時もならついてくるのに‥。」
「フレイとアルテには、もう会った事があるからいいのよ。それに今日は二人とも訓練してるわよ。」
「えっ、二人は訓練してるんですか?」
「そうよ。二人はルシールが寝ている間も、みっちり訓練してたわ。レベルも確か40に入った筈よ。」
「よ、よ、40ですか!!」
ーー不味い、僕いらない子になってない‥‥?またソロに逆戻り‥‥?
「そんな不安な顔しなくても大丈夫よ。はっきり言ってルシールの戦闘能力は異常よ。レベル17の能力じゃないもの。」
「い、異常ですか?」
ーーそんな筈は‥僕負けてばかりだし‥。
「そうよ。それに身体が成長して、また少し能力が上がっているみたいだしね。」
「あっ、そう言えばそうですね。370になってますね。嬉しいです。でも二人は何れくらいになってるのですか?」
「ん~。そうね。500近いんじゃないかな。」
シャルさんは人指し指を頬にあて、少し考えるとそう教えてくれた。
「‥へっ!?」
ーー500近いって、全然ダメじゃん。
「ほらほら、また、すぐにそんな顔する。
大丈夫よ、すぐに追い付くわよ。
それにね。二人は3年前に、自分の力の無さを酷く悔いていたのよ、だからこそ必死に頑張ってきたの。少しは花を持たせてあげなさい。」
「は、はい。」
ーーそうか‥‥僕も頑張らないと‥。
「そう、分かったならいいわ。」
「ふふふ、話し込んでる所悪いわね。私もいれてもらえるかしら。」
キレイな声に振り向けば、シャルさんにそっくりな人が笑みを浮かべ応接室の入口から入ってきた。
裾が長く所々透けていて神秘的なドレスを身に纏っている。
背はシャルさんの方が高いが、胸は‥‥ひぃぃ。
「ルシール‥何よ!!」
「何でもありません。」
「ふん。」
シャルさんが腕を組んでそっぽ向いてしまった。
ーーシャルさんの胸を見たのがバレたのだろうか‥。
内心ドキドキして何て声を掛けようかとあぐねいているとー。
「ふふ、シャルも変わったわね。」
シャルさんにそっくりな人が柔らかい笑みを浮かべながらそう口にした。
「そうかしら。私は別に変わったつもりはないけど‥。」
「ふふふ。」
「あのぉ~シャルさん。この方がお姉さんですか?」
ーーそう言えば、シャルさんって、普通に城にいるけど何なんだろ‥城に住んでるようなお姉さんもいるし、でも族長はシャルさんを聖樹姫と言っていた。もしかしてお姫さまなの‥‥か?
「そうリード姉様よ。って何よルシール。人の顔ジロジロみて。」
「い、いえ。ほんとにそっくりだと思って‥。」
「ふふふ、似てない所も有るんだけどね。」
そう言ってリードさんはまたくすくすっと笑いながら僕達の前のソファーに腰掛けた。ほんと姉妹揃って美人さんだ。
「どうせ、胸って言いたいんでしょう、お姉様は‥。」
「そうね。否定はしないわよ。」
「もう。」
シャルさんはプクッと頬を膨らませた。リードさんの前ではシャルさんは少し幼く感じた。そんなシャルさんもまた新鮮だ。
ーー‥‥おっそうだよ。姫様なら屋代に自身の聖石を捧げたりしない筈だもんね。偉いエルフになる訳だし‥。
「ふふふ。」
リードさん曰く、シャルさんはここまで感情を出す方じゃなかったらしい。
いつも何処か、冷めたような感じだったらしい。でも、僕はそんな感じのシャルさんを見たことない。
「そうなんですか、信じられないですね‥‥。」
僕がシャルさんをジロジロ見てるとシャルは顔を真っ赤にしてまたそっぽ向いた。
ーーあれ?
「さて、ルシール。」
リードさんの声は何故か背筋を伸ばさないといけないような気がして、ルシールは慌てて背筋を伸ばした。
「は、はい!!」
「私はこの3年間、毎日のようにシャルから貴方の事を聞いてきました。」
「ちょっ、ちょっとお姉様。何んて話をするのよ。」
ーーえっ、僕の事を‥‥シャルさんが?へへ。へっ?あれ僕、シャルに格好いい姿を‥‥‥見せたことないよ?
「ど、どんな事ですかね。僕ちょっと帰っても‥」
「シャルを助けてくれてありがとう。ずっと礼を言いたかったの。」
「えっ、ど、どういう事ですかリードさん?僕の方が助けられてばかりいるんですけど‥。恥ずかしい姿ばかり見られたり‥。」
リードさんは首を振った。
「いいえ。貴方がスキル使ってエルフ族を逃がしてくれなかったら、このシャル達はどうなっていたか分からないもの。」
「そんな筈は‥シャルさんは凄く強くて‥」
リードさんはまたも首を振った。
「うんん、あの村のエルフ族は特にシャルとは仲が良かったのよ。
だから尚更、力のあるシャルが撤退戦の殿を買って出た筈なのよ。そのつもりで始めは村に向かってた筈なのよ。
でも村で戦える者は小数、それにシャル一人が加わったからといっても、人族の数の力には敵いません。
それにルシール。貴方が戦った‥。」
「ああ、なんかオーガみたいでした。まあ、オーガは空を飛びませんから違うんですけど。僕が勝手にそう呼んでたんですよね。」
「ルシールあれはね‥。」
「シャル。私から話すわ。」
「はい。お姉様。」
「ルシール。貴方には人族の事を少し教えてあげるわ。」
「人族の事?」
リードさんはこくりと頷き言葉を続けた。
「ショックを受けないでね。
人族は元来邪鬼だったのよ。邪鬼。つまり鬼よ。」
「へっ?お‥に?‥あの‥角がある‥オーガ?なんで?意味が分かりません。」
「そうよね。いきなりそう言われても分からないわよね。
オーガは魔物よ、これとはまた違うわ。」
「そうなんですか‥」
ーーと分かった振りをしたけど、訳が分からないんだけど。
「それで、今の人界からはとても想像出来ない事でしょうけど、元来、人族の世界(人界)は誰彼構わず殺戮し、手当たりしだい破壊する、そんな鬼の住む世界だったの。」
「殺戮と破壊‥って‥」
「それが地獄王と名乗る者が現れ、すぐに地獄王が人界全てを統べる世界になった。
やがてそれは精霊界や、獣人界、魔法界にも影響を及ぼし始めたわ。」
「地獄王に、影響‥?」
「簡単には言うと侵略ね。
地獄王は鬼の世界だけでは満足しなかった。
そして何処で知ったのか分からないけれど自身が所持する固有門スキルを使って別世界に殺戮と破壊を求めた。
己の欲望を満たす為に。」
「それはまた‥。」
ーーなんて奴だ。
「地獄王の邪鬼軍団は強力だったと聞き及んでいるわ。それで精霊界、獣人界、魔法界は圧されていったの。」
「3界連合でですか?」
「いいえ、その時は固有門の存在が無かった為に、攻められる一方よ。精霊界人は獣人界、魔法界の存在すら知らなかったわ。」
「それって‥」
「そう、各々の世界が破壊されるのも時間の問題だったらしいわ、攻められ守るだけだもの、こちらからはどうしようもないわ。
そんな時、地獄王を危険と判断した神界の神様が力を授けてくれたの。
今後も鬼の世界を管理することを条件に固有門スキルを各世界の代表にこれが巫女ね。
更に私達エルフ族は一番長寿であることから力を奪う力と押さえる力を賜ったわ。それが聖石と浄化の力。
獣人族は抵う強力な力の覚醒。
魔族も抵う力と魔法技術。更に文化を築く為の魔法具技術。」
「そして、三界連合で初めて押し返した。
獣人族が力で押さえ、私達エルフ族が浄化と聖石を使い穢れを払い弱体化を図ったわ。
邪鬼は、すぐに弱体化し鬼人族になった。
でも弱体化した筈の地獄王は、それでも倒す事の出来なかったらしく、封印したするのがやっとだった伝えられているの。
それでも鬼人族になった者に、魔族が文化を築く手伝いをし、理性と知識を身につけさせた。
それが、やがて鬼の心を忘れ今の人族の姿に落ち着いた。
でも、人族の心には常に鬼がいる。
何者かが再び人族を鬼人族に、やがて邪鬼へと企んでるようなのです。若しくは地獄王にも何か‥。」
「では‥‥僕が相手したあいつはオーガじゃなくて‥」
「そうね。ルシールがあの村で相手したのは元人族の鬼人。成り立てだったから今のルシールでも相手出来たのよ。
そんなのが姿を誤魔化し、今人族の中にごろごろ交じってるわ。
だから話は戻るけど、前のエルフ族の撤退戦は精鋭がいようがシャルがいくら善戦しようが無理だったのよ。
最終的には鬼人族の集団が襲って来てたからね。
分かったかしら?」
「‥‥はい、分かりました。」
「そこでルシール。貴方にはこれまで通りシャルを助けて欲しいの。」
リードさんがこれまでにない真剣な面持ちでルシールに目を向けた。
「へっ?そんな事でしたら、頼まれなくても僕はシャルさんについて行くつもりでしたし喜んでしますよ。
こう見えて僕、料理、洗濯得意になりましたからね。」
「ふふふ、そう言った意味じゃないけど、良かったわねシャル。」
さっきの真剣な面持ちが嘘の様にリードさんはくすくす笑い始めた。
「んもう。お姉様‥‥からかわないで下さい。」
シャルさんがリードさんにからかわれて顔を赤くしている。こんなシャルさんを見るのも珍しい。
「ルシール。ありがとう。そうと決まれば姉として私からも何か手助けしないといけないわね。後で私からも何かプレゼントするわ。」
「いやいや、今もお世話になってますし、それだけで十分ですよ‥。」
「‥ん~、でもそれは私が直接してる事ではないからね。まあいいじゃないの。」
そう言うとリードさんはまたくすりと笑った。よく笑う人だ。でも美人さんだからその笑う仕草にもドキっとしてしまう。
「ルシールでも、分かってるの?
私はほら、セリーナの村のように他の村の撤退の手助けに、撤退が終われば、魔族と獣人族と連合で一気に鬼人族を封じたりもするのよ。」
「そんな事までシャルさんが‥」
「そうよ。それでもいいの?」
「はい、僕はレベルが低いし何処までやれるか分かりませけど、勿論ついて行きたいです。」
ーー僕ももっと力をつけないと。シャルさんを聖石なんかにさせない。僕にも何か出来る筈だ。
「ルシールまた後日会いましょう。」
「へっ?後日?」
「シャルも、無理はダメよ。」
リードさんはゆっくりと立ち上がると応接室の扉の方へ歩を進めた。
「大丈夫よ。バカみたいに無理するのはルシールの方だから、私が見ててあげないと‥。」
「ふふふ。」
リードさんはシャルさんの言葉を満足そうに聞くと嬉しそうに応接室から退室していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前:ルシール:LV17】 ギルドランクE
戦闘能力:370
種族:人間?
年齢:17歳
性別: 男
職業:冒険者
スキル:
〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉〈文字認識〉
〈アイテムバック〉〈貫通〉〈馬術〉
〈カウンター〉〈早寝〉〈早起〉
〈早食〉 〈早技〉〈早足〉〈早熟〉
〈治療:3〉〈回避UP:5〉 〈剣術:4〉
〈見切り:5〉〈捌き:5〉 〈毒耐性:2〉
〈覗き見:2〉〈危険察知:3〉〈空間把握:5〉
〈精神耐性:2〉
固有スキル:
〈浄化〉〈魔眼:5〉〈飛翔〉
魔 法:
〈生活魔法〉〈初級魔法:1〉
*レジェンドスキル:
《スキルショップ》
《スキル制限解除》
《加護・スキル神》
所持金 :
178,913カラ
借金残高:
シャルロッテ 63,949,850カラ
セリーナ 6,000,000カラ
フレイ 1,320,000カラ
スキルショップ借入残: 0カラ
担保提供:なし
レア装備:竜のブレスレット
:風のシルエア
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




