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ブックマークありがとうございます。
いつも更新遅くてすみません。m(__)m
「じゃあ、早速、村の精霊核門を起動するわ。ほらルシールも見てなさい。ほらほら。」
そう言って、再び僕の手を取ると早々と会議室を出た。
「ああっ、セリーナ!!」
もちろんみんなも慌ててついて来る。何故だか、族長の名前を叫ぶシャルさんの顔が少し怖く見えた。
僕が引っ張られた先は族長の屋敷の裏だった。屋敷の裏には木々が青々と生い茂っている。
「族長‥何処に行くっ‥‥わっ!!」
族長は僕に悪戯っぽく微笑むと、そのまま屋敷の裏で生い茂る木々の中の一本の木に向かって行く。
「ちょっ、わ、わっ木が‥!!族長ぶつかる!!」
右手は族長に掴まれている。何度も離そうとしたのだが、逆に力強くグイッと引っ張られ、バランスを崩したルシールは体がつんのめる形となった。
「うわぁぁ!!」
ルシールは思わず目を閉じ左手を突き出した。
ぽふっ
左手は何物も触れる事はなかったのだが、ルシールは顔と体に柔らかい感触に包まれていた。
「へっ?」
ーーなんだ!!
僕は恐る恐る目を開けると、体勢を崩した僕を族長が抱き締める形で支えてくれていた。
ルシールの顔はみるみる真っ赤になった。
ーーこ、これは胸の‥
族長は背が高い。僕の顔はちょうど族長の胸の辺り。
服装の所為で(緑の狩人の様な服に、濃緑のスヌードの様なものがついている)スレンダーに見えるのだが、不思議なくらい大きな胸の感触が伝わった。
「うおっ、うわっ、ごっ、す、す、すみません!!」
ルシールがあたふた慌てて離れようとするのだが‥族長が離してくれない。
「ぞ、族長ぉ!!」
「ふふ、ほら見て。」
族長はハニカミながら誤魔化す様に精霊核門を指差した。
「‥これが私の管理する精霊核門なのよ。」
指差した先には白い石に緑の苔が生えた大きな門があった。
細かな彫刻が彫られ如何にもと言う雰囲気を漂わせている。中央部が上方向に凸な曲線形状になっていて扉はなく開けて、奥にある木々が見えている。
「代々巫女の血を引く者は、この世界にある精霊核門を一人1つ管理するのよ‥‥ただ、血を引いてるだけでね。起動することも出来ないのによ。
ずっと夢見ていたわ。いつかきっとスキルを発現してその役目を全うすると‥‥」
「‥‥‥族長‥?」
「‥‥これを、今から起動する‥あなたのお陰‥私はやっと巫女としての役目を全うする事が出来る‥‥。」
ルシールは言葉の詰まった族長を不思議に思い、ふと、族長の顔を見上げると、この精霊核門と過ごしてきた時間を思い浮かべてるのか、族長はいとおしむような少し寂しさを感じてる様な眼差しを向けていた。
「‥‥。」
族長がこの精霊核門にどれだけの思い入れがあるのかはルシールには分からない。
族長がスキルを発現させようと何れだけ努力してきたのかルシールは知らない。
それでもルシールは胸の辺りが少しチクリとした。
ーーそんな顔しないで‥
ルシールはお金で買った事を狡いとか、卑怯だとか思ってほしくなかった。
「‥‥あの‥族長。
僕のスキルショップは適性があるスキルしか表示しません。元々適性のない人はスキルを買うことは出来ないのです。
‥ですから‥そう‥‥僕は‥‥族長なら何れ発現していたと思ってますから‥。」
ーーこれは本当だ。多分他のエルフ族の人は買えない。
僕が買えるのはイレギュラー、スキル制限解除の所為だ‥。
スキルショップは少しでも資質のあるスキルをお金を払って取得するモノだと解ったているから‥‥。
資質がある以上時間は掛かっても発現する確率は0じゃない。
「‥‥あなたは優しいのね‥‥」
ーー‥違う。
否定して欲しくなかったのだ。自身の元々あった資質の事も‥そして僕のスキルの事も。
ーー僕は何故かスキルを習得出来ない。スキルショップはそんな僕を助けてくれたモノ。
ルシールは自分の存在全てが否定されそうで怖かったのだ。
「ごめんなさいね。少し感傷的になっちゃったね。気にしないで、私は寧ろ感謝してるんだから‥本当よ。」
「‥はい。それなら良かったです。」
「ふふふ‥」
族長は今までの表情が嘘だったように、一転して悪戯っぽい顔をすると、ギッと僕を抱きして回していた手を強めた。
ふにゅ‥
「‥ふあ、わ、わぁ、族長‥当たったます、離して下さい。」
先程の比じゃなく、モロである。ルシールはセリーナの大きな胸に顔を埋めていた。
ーー柔らかい
だが、ルシールもまた、セリーナのこの行動で、焦ってはいるものの先程まで感じていた胸の痛みが消えていた。
「ふふふ‥‥‥そろそろ‥‥やっと来たわね。」
「えっ、誰が‥‥」
すると、後ろの木々の空間が急に波を打ち、シャルさんを先頭にフレイ、アルテ、エルフ族の人がワラワラ入って来た。
「る、る、ルシール、あなた達何をやってるの!!!!」
ルシールはまだ族長に抱かれ、その胸に顔の半分を埋めていた。
「あ゛‥いや‥‥ち、違うんです‥」
ルシールが慌てて離そうとすると、今度はルシールが拍子抜けするほど、すんなりと離してもらえた。
「へ、あれ‥。」
「ふふ。」
間抜けな声を出すルシールに向かって族長がまた、悪戯っぽく笑う。
ーーううっ、視線が痛い‥‥‥んん?‥ひぃぃ‥。
だが、ルシールに降り注ぐシャル、フレイ、アルテからの視線はもちろん、エルフ族からの視線は決して良いものじゃなかった。殺気すら混じっている。
「シャルロッテ。遅かったわね。」
「セリーナ、あなたねぇ‥さっきの部屋に何人いたと思ってるの、口外しないよう契約が必要だと思って引き返したのよ。」
「あら、それは悪かったわね。ふふ、らしくなく‥気持ちが高ぶってしまってたのよ。」
すると、一人のエルフ族(やっぱり美形)が一歩前に出てきた。
このエルフは軽装で、革の胸当てと、腰に剣を下げ大弓を背中に担いでいる。
村を守る自警団の者だろう。
「族長。勝手に動かれたら困ります。
こんな時に精霊核門になど‥ここは逃げ場がないので危険なのですよ。
しかも、人族の子供など連れて来て‥」
そのエルフの鋭い視線が僕に突き刺さる。
ーーう、ううっ。
でも、そろそろやめて欲しい、フレイとアルテが僕の右頬と左頬を詰まんで引っ張っているのを。
「ふへひ、はふへ。ほろ ほろはら ひへ ふへはい?」
「ん~、まだダメちゃよ。」
「‥ダメ。」
アルテはにこにこと僕に微笑み、フレイはプイッと顔を逸らした。
「ふふふ、ちょうど良いわ、貴方達もいいから見てなさい。」
「何を為さるのです?」
族長は自警団のエルフのその声に応える事なく、精霊核門まですたすた歩き、手を精霊核門に当て俯いた。
ブゥゥンと何やら精霊核門から音が響きセリーナの手を当てている辺りから幾つもの蒼白い光の線が広がり始めた。
「族長、ま、まさか‥」
自警団のエルフだけが何やら声を発しているが、他のエルフ達はその光景を信じられないのか、驚愕で目を見開きそのまま、精霊核門に釘付けになっていた。
光に当てられた苔がパラパラと剥がれていき、幾つもの蒼白い光の線が全体に行き渡ると、精霊核門のトンネルになっている空間が波打ち始めた。
それは次第に姿を成し、うっすら蒼白い扉が姿を見せた。
「‥ふぅ。終わったわ。これで、正式にこの精霊核門は私が管理者として登録されたわ。」
そう言って振り返った族長は少し疲れた様子であったが、晴れ晴れとした表情をしていた。
エルフ族達は族長に向かって片膝を付いて俯いていた。
「セリーナ様が‥」
「巫女としての‥」
「うっ、うっうっ‥」
そのエルフ族達の方からは、すすり泣く声があちらこちらから聞こえて来た。
「私達は1度、精霊界に引き上げます。」
「そ、それは‥族長‥この村を、この地を見捨てて我々は大丈夫でしょうか?」
「ここに救援は来ません‥大丈夫です。
これは議会で決まった事、咎めはありません。」
「そうなのですか‥。」
アーシュは見るからに肩を落としてるのが分かった。
「アーシュ。この地にはまた戻って来ます。」
「それでは‥」
「そうです、貴方にもまだやるべき事があるのです。
落ち込んでる暇はありません。
人族の騎士団に囲まれてる今、障壁が何時までもつか分かりません。
スグルト、アーシュ、ヘレナ直ぐに皆に伝え、速やかに行動するのです。奴等の狙いは聖石。一人の被害も出してはダメです。」
「「「はっ。」」」
スグルト、アーシュ、ヘレナは更に他のエルフ達に指示を出し、何処かへいった。
「‥セリーナ大丈夫?」
「ええ大丈夫よ。それよりシャルロッテ。ルシール達も精霊界に1度連れて行くのでしょう?」
「そのつもりよ。」
「では、女王様に挨拶に行くわね。その時に私も同行するわ。その方が話が早いでしょう?」
「‥そうね。悔しいけど、そうしてくれると助かるわ。」
「あの子のためだもん。それくらいするわ。ふふふ。」
セリーナの視線の先には両ほっぺを摘ままれているルシールの姿が映った。
「‥ダメよ。」
シャルロッテがその視線を遮るように体を移した。
「‥‥不思議な子ね。」
「‥‥そうね。」
「ふへひ、はふへ。もお はら ひへ ふへはい?」
「ん~、まだ足りないちゃもん、ルシール補充。」
「‥ダメ。」
アルテはにこにこと僕に微笑み、フレイはまたプイッと顔を逸らした。
暫くするとアーシュと呼ばれてた軽装のエルフが慌てて精霊核門の空間に入って来た。
「族長大変です!!」
「どうした?まさか、もう障壁を破られましたか!?」
「いえ、違います。何者かが、空から村の中に黒い石を放り投げてます。」
「黒い石?」
「空から?」
「はい、その黒い石は暫くすると異形のゴブリンになりました。真っ黒で角の生えたゴブリンです。
そこまで強くはありませんが、数が多く‥どんどん黒い石が降って来るのです。」
「障壁の隙間を狙われたのね‥」
「範囲障壁は真ん中に少し空間が開く‥‥でもそれを知っている者は数少ない筈‥なのに‥」
「セリーナ、それより早く黒いゴブリンを何とかしましょう。」
「そうね。アーシュ案内して!!」
「はっ!!」
「ルシール。私達も加勢するわよ。」
「ふぁい」
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「切りがないわね‥」
僕達が村の中心に行くとゴブリンがワラワラといた。長い角の生えた真っ黒なゴブリン。手の爪も鋭い。
幸い僕でも楽に倒せてるのだが、数が多く。
一向に減る気配がない。
上から雨の様に黒い石が降ってくる。
「不味いわね。」
「これは‥‥時間稼ぎだわ。このままだと‥その内けが人も出る‥。」
「あの上の奴を何とかしないと‥」
「くっ、高すぎるのよ。魔法は届かない。かといって精霊魔法のウインドウォークだと的になるようなもの。」
精霊魔法のウインドウォークは空を歩けるが速くは歩けない。飛ぶのではなく歩くのだ。とても空中戦など無理。
精々留まって魔法を放つくらいだろう。
だが、地上からでも確認できる上の奴の姿には翼が見える。
空を歩けば間違いなく奴の餌食になるだろう。
ーーでも僕なら‥飛べる‥だが、殺れるのか?
「こうなれば、精霊核門まで下がって、精霊界に撤退するしか‥ないのわ。」
「セリーナ分かってると思うけど、精霊核門の空間にゴブリンを入れたら精霊門は発動しないわよ。
皆が空間転移する間、外で誰かに踏み留まって貰うしか無くなるのよ。」
「その役目私がやります。」
「アーシュ!!あなた。」
「良いのです。これが私の役目。
それにこのままでは何れ犠牲者がでます。
時間を掛ければ、その内人族も‥雪崩れ込む。
そうなる前に私一人で済むのであればそれが、最善かと‥。」
アーシュはこの村の中で一番の猛者らしい。しかも自警団の団長。他のエルフがやるより確実だと言う。
ーーでも、それだとアーシュさんは確実に‥死ぬ。
後少しだった。後少しで犠牲者なく撤退出来る筈だった。
僕はグッと拳を強く握った。
ここからじゃ上の奴がどれ程強いか何て分からないでも、でも僕が相手すれば黒い石が投げれない筈だ。
ーーそうだ。石さえ投げさせなければいい。
「くっ、分かっ‥「待って下さい!!!!」
皆の視線が僕に集まった。シャルさんは何やら察したみたいで何か言おうとしている。
「ルシール‥ダメ‥「僕が上の奴を殺ります。ダメでも黒い石を投げさせません‥その隙に撤退お願いします!!」
ルシールは飛翔スキルを使い翼を出すと、皆の返事を聞かないまま飛び上がった。
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【名前:ルシール:LV17】 ギルドランクE
戦闘能力:330
種族:人間?
年齢:14歳
性別: 男
職業:冒険者
スキル:
〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉〈文字認識〉
〈アイテムバック〉〈貫通〉〈馬術〉
〈カウンター〉〈早寝〉〈早起〉
〈早食〉 〈早技〉〈早足〉〈早熟〉
〈治療:3〉〈回避UP:4〉 〈剣術:3〉
〈見切り:4〉〈捌き:3〉〈毒耐性:2〉
〈覗き見:2〉〈危険察知:2〉〈空間把握:4〉
〈精神耐性:2〉
固有スキル:
〈浄化〉〈魔眼:5〉〈飛翔〉
魔 法:
〈生活魔法〉〈初級魔法:1〉
*レジェンドスキル:
《スキルショップ》
《スキル制限解除》
《加護・スキル神》
所持金 :
178,913カラ
借金残高:
シャルロッテ 63,949,850カラ
セリーナ 6,000,000カラ
フレイ 1,320,000カラ
スキルショップ借入残: 0カラ
担保提供:なし
レア装備:竜のブレスレット
:風のシルエア
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