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「はっ! またやってしまった」


 僕は慌てて部屋中を見渡した。


「……良かった」


 一応ドアの前には、守り鈴を数個転がせていたけど、動いた形跡ない。

 これで、この安全部屋には誰も入って来てないことが分かる。これはシャルさんに教わったことだ。


「ふぅ危なかった……」


 僕たちは食事後、野営にと買っていた分厚いマントを掛け布団かわりに交代で仮眠をとることにした。


 けど、思いのほか僕は疲れていたらしく、ぐっすりと眠ってしまっていたようだ。


 ――シャルさんがいたら、また身ぐるみ剥がされていたかも……ははは……


 また同じことを繰り返してしまった自分に飽きれてしまうが、やってしまったものはしょうがない。

 僕は次こそは気をつけようと心に誓った。



 ――ええっと、体感ではそろそろ朝だと思うんだけど……さて朝食の準備でも……ん? あれっ? 



 僕は立ち上がろうとしたけど立ち上がれず、それどころか自身の太ももに何らかの重みとが痺れがあることに気がついた。


「痛っ」


 ――くぁっ……あ、足が、太もも辺りが痺れてる……なぜだ? 僕はたしか……フレイとアルテより先に仮眠をさせてもらったよな……


 その時僕は、いざという時にはすぐにでも動けるよう剣は抱き抱え立て膝になった。


 ――それから……あとは少しでも身体が楽になるようにと部屋の壁に寄りかかるように寝たんだ。


 そうそう先に寝たのもフレイとアルテは二人で楽しそうにお喋りしていたから、邪魔したら悪いと思ったからで……決して仲間はずれみたいで寂しかったわけじゃない。


 僕は足の痺れがあることに不思議に思い視線を下ろす。


 ――え!?


 するとどうだ。フレイとアルテが、僕の太ももを枕に気持ちの良さそうに寝ているではありませんか。


 ――はて?


 起こそうかと思ったけど、気持ち良さそうにしていて少しかわいそうだと思った僕は、自分の羽織ってたマントを枕サイズまで小さく畳み、僕の太ももと入れ替えた。


「ん、んん……」

「むにゃ……」


 二人の頭を両手で持ち上げたから、起きるかもと少し心配したけど――


「大丈夫そうだな……」


 二人は朝食ができた頃に眼を擦りながら起きてきた。


 その後、軽く朝食をとった僕たちは安全部屋を出た。


 ――――

 ――


「よし、行こうか。今日は少し様子を見たいから奥まで行こうと思ってる」


「分かった」


「は~い」


 僕たちはコボルトを狩りながら、奥へと進んで行った。

 慣れたもので昨日よりも断然効率的に狩ることができている。


 皆のレベルもすぐに上がってしまった。


「結構早くにレベル上がったね」


「ん」


「そうっちゃね」


「でも、不思議。上位種こコボルトが出てこない。コボルトリーダーも……」



「そう言えばまだ見てないな。でもフレイ。出なくて助かっているのはたしかだよ。

 普通のコボルトでもこの強さになってるんだもん」


「……ん」


「私もコボルトがこんなに強いって、知らなかったっちゃ」


「アルテ違う。普通のコボルトは弱い」


「え、そうやっちゃか。でも、さっきからコボルトの数が少なくなってる気がするちゃけど、気のせい?」


 アルテが立ち止まり洞窟の少し奥を眺めた。それは僕も薄々感じていたことで、ずっと空間把握内を探っていた。


「うん、実はそうなんだ。僕もおかしいと思ってた」


 すると突然――


「!? ルシール。あそこから壁が変」


 フレイが僕の空間把握外のところを指差した。


「え、それ本当……っちゃね。わぁ、なんか動いてるように見えるっちゃね」


 アルテまで少し気持ち悪いものでも見たかのように眉間にシワを寄せていた。


「二人ともちょっと待って、僕が先に行くから後ろをついて来て」


「うん」

「分かったっちゃ」


 横一列に並んで歩いていたけど、何があるか分からない。二人の前に僕が出た。


 ――咄嗟の回避は僕のほうが断然早いからな……


 僕は慎重に歩を進めた。進めて徐々にその壁に近づくと――


「な、何だよこれ。壁が……」


 僕は言葉を失った。


 その洞窟の壁は脈打っていたのだ。しかもそれは、壁だけじゃなく地面まで……


「どうなってるんだこれは」


 僕は恐る恐る一歩だけ足を踏み入れてみた。すると――


「うげっ」


 グニャリとしたイヤな感触。まるで焼く前の柔らかな肉を踏んずけているようだった。


「やだぁ。気持ち悪いっちゃよ」


「ぬ、ぐにゃぐにゃする」


 でもそれだけだった。


「じゃあ……横の壁はどうだ?」


 少し警戒しつつも、僕は横の壁には手で触れてみた。


 グニャ。


 とても嫌な感触だ。見た目は岩なのに気持ち悪いくらい柔らかい。


「ルシール、これって」



「うん、分からない……でも穢気の影響なのかもしれない」


「私も、そう思う」


 二人が調べようと頷いてくれたので――


「柔らかくて歩きにくいけど、あと少しだけ先に行ってみよう」


「「うん」」


 もう少しだけ先に進んでみるのことにした。


「おかしい……」


 しばらく道なりに進む。でも不思議なことに地形が変わってからまったくコボルトが出てこない。


「どういう事だ? コボルト一匹出てこない」


「うん」


「ま、待ってください」


 柔らかい地面になかなか慣れないアルテは、少し遅れ気味だった。


 僕たちに追いつこうと、少し駆け足になったアルテだったが、柔らかい地面に足をとられよろめき倒れた。


「あ、アルテ大丈夫?」


「痛くないけど、この地面やっぱり歩きにくい……ほぁぁ……骨が……骨があるっちゃ」


「うぇっ。ほんとだ、こっちにも」


「あわわわ、こっちにもあるっちゃ!!」


 慌てて起き上がったアルテが、よろめきながらも必死で駆けてくると僕にしがみついてきた。


 むにゅ


「うお……」


「アルテ、離れる。一箇所に纏まってると危ない。ね、ルシール」


 すぐにフレイによって引き離されたけど、アルテはとても柔らかかった。


「そ、そうだね」


 空間把握で洞窟の奥を見たら、人骨らしい物が所々落ちていた。


「他にもたくさんあるようだぞ」


 ――これって冒険者たちの骨なのか?


 僕が疑問に思っていると、俺の隣にいたフレイが口を開いた。


「!? ルシール。危険察知に二つかかった」


「二つ? 僕の危険察知にはまだ、何も……っ!?」


「何? 何? 二人とも急に黙ってどうしたっちゃたか?」


「僕の危険察知にも反応があったよ。でもどうやら……奴らに見つかってるようだ。

 何かが凄い勢いでこっちに向かって来きてる…… 念のため浄化するよ」


「うん」


 僕は戦闘に備えようと浄化スキルを皆に使った。すると、すぐに僕たちを暖かい光が包み込み、その光は洞窟内にも広がった。


「ふぁっ。キレイ、それに暖かいっちゃ……」


「ルシール壁見て」


「どうしたフレイ……!?」


 フレイの声に僕とアルテが指差す壁に目を向けた。すると驚いたことに僕たちの周りだけ脈打つ壁が普通の壁に戻っていた。


「ルシール凄いちゃ。何したっちゃ?」


「え、あっ、いや。僕はただ今から戦うヤツ等に備えて僕のスキルを使ったんだ。

 それがまさか脈打つ壁にまで変化を与えるなんて僕もびっくりしたというか……

 って、あれ? アルテのその顔。吹き出物が治ってるぞ? 目元の腫れも……」


「へっ? そうなの? 自分じゃ見えないから……」


 そう言ったアルテが自分の顔に触れる。


「んんっ? あれ、‥‥‥か、顔がさらさら……サラサラしてるっちゃ!」


 ――アルテの顔も浄化によって穢れが落とされたってこと?


 僕には、どうしてそうなったらのか理解できなかったが、アルテのパンパンと腫れ吹き出物のだらけだった脂顔がスッキリきれいになり、パッチリと大きな瞳が露になっていた。


 どこか憎めない愛嬌のある顔だ。


 それだけじゃなくアルテは身体中腫れていたらしく、おデブちゃんからぽっちゃりちゃんへと体型が変わっていた。 


 お腹がへこんで嬉しそうにするアルテだけど、ローブの上からでは胸のほうが大きく出ているから、そのお腹がどうなっているのか分からない。


 ――や、やばい。これは目のやり場に困る……ん? そうだ僕は空間把握で見てるから見ててもバレないのか……ははは……なぁーんだ。


 それでも胸のランクはEランクからDランクにダウンしてしまっているようだった。

 でもアルテのお腹が出ていない分、大きな胸が強調されていてとても嬉しい。


 ――神様ありがとう。


 思わず神様にお礼をいってしまったけど――


 ――んっ? シルエットも治ってるぞ。


 よく見れば、ほっそりと不自然だったアルテのシルエットが、見た目通りのぽっちゃりとした体型のシルエットへと変わっていた。


 ――なんだったんだろう?


 たしか〈浄化〉とは、エルフ族固有スキルで”不浄なる有りとあらゆるモノを取り除く”ものだと思っていた。けど、アルテや元に戻った壁を見るに、それだけではないようにも思える。


 実のところ僕はこのスキルことをよく分かってない。


 ――シャルさんに会ったらこのスキルのことを尋ねてみようかな……


 そんなことを考えていると――


「ルシール、敵が来た」


 フレイの少し緊張した声が聞こえてきた。


 皆の意識が前方へ向けられる。


「来たっ」


 前方から黒っぽい体毛を纏った獣が二匹、四本足走行でこちらに向かって来た。


 グルルァァ


 その獣も僕たちに近づくに連れ少しずつスピードを落とした。まるで、こちらの出方を見ているように思える。


「黒いコボルトだっちゃね」


 アルテは腰を落とし二つの盾を構えた。


「気をつけて。アイツら土魔法レベル2相当の魔法が使えるようだ」


 これはレベルの上がった魔眼で確認したことだが、未知なる相手なのに、戦う前に相手の魔法属性が知れるってことがこんなにも心強いとは思わなかった。


 僕もいつでも飛び出せるよう腰を少し落としニ本の剣を抜いて構えをとった。


「アルテ。一匹押さえてくれ。フレイはアルテの補助を……僕はその間に残り一匹の相手する」


「ん、分かった」


「はいっちゃ」


 アルテは返事をするとすぐに僕の左側から一歩足を踏み出し、二つの盾を打ち付け激しく音を出して黒いコボルトの注意を引いた。


「こっちに来るちゃよ。ワンちゃん」


 これは相手を挑発して引き付ける盾術のスキルだ。


グルルァァ!

グアオーン!


 アルテのスキルにまんまとハマった二匹の黒いコボルトは、身体を震わせだから咆哮すると、その真っ赤でギラついていた視線をアルテに向けた。


「かかった」


 アルテのそんな声に、二匹の黒いコボルトが姿勢を低く落としたかと思えば、次の瞬間にはアルテに向かって襲い掛かって来た。



 ――――――――――――――――――――

【名前:アルテ:Lv11】up

 ギルドランクF

 戦闘能力:105up

 種族:人間

 年齢:14歳

 性別: 女

 職業:冒険者


 スキル:

 〈棍棒術:2〉〈盾術:2〉

 〈文字認識〉〈魔力操作:1〉

 〈魔力回復:2〉up〈薬草の知識:1〉

 〈精神耐性:3〉


 魔 法:

 〈生活魔法〉〈回復魔法:2〉


 状態: 魔力溜まり病:弱


 ――――――――――――――――――――


【名前:フレイ:Lv13】up

 ギルドランクE


 戦闘能力:115up

 種族:人間

 年齢:13歳

 性別: 女

 職業:冒険者


 スキル:

 〈棒術:1〉〈文字認識〉

 〈魔力操作:3〉up〈魔力回復:2〉up

 〈魔力量UP:2〉〈毒耐性:1〉

 〈危険察知:2〉〈治療:2〉


 魔 法:

 〈生活魔法〉

 〈水魔法:2〉

 〈風魔法:2〉


 レア装備:誓約の指輪ルシール


 ――――――――――――――――――――


【名前:ルシール:LV13】up

 ギルドランクE


 戦闘能力:225身体能力低下中(220)

 種族:人間??

 年齢:14歳

 性別: 男

 職業:冒険者


 スキル:

 〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉

 〈文字認識〉〈アイテムバック〉〈貫通〉

 〈馬術〉〈カウンター〉〈早寝〉

 〈早起〉 〈早食〉 〈早技〉〈早足〉

 〈早熟〉〈治療:2〉〈回避UP:4〉up

 〈剣術:3〉〈見切り:3〉up〈捌き:3〉up

 〈毒耐性:2〉〈覗き見:2〉

 〈危険察知:1〉〈空間把握:3〉

 固有スキル:〈浄化〉〈魔眼:4〉up


 魔 法:

 〈生活魔法〉

 〈初級魔法:1〉


 *レジェンドスキル:《スキルショップ》

 《スキル制限解除》


 所持金 : 258,913カラ増

 借金残高:シャルロッテ3,949,850カラ

 フレイ 1,320,000カラ


 スキルショップ借入:60,000,000カラ

 担保提供:視角左右、聴覚左、味覚


 レア装備:竜のブレスレット

 :風のシルエア


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