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「くうっ、やっぱりだ。ここのコボルトも奥に進むにつれて強くなってる……くっ、のおぉっ!」


 僕は対峙していたコボルトを斬り――


「たぁぁぁっ!」


 すぐにアルテが盾で押さえ込んでいたコボルトを背後から斬り倒した。


 グルアァァァァ


 コボルトの断末魔が洞窟内に響き渡り、コバルトは魔石を残して消えていった。


 グルァァ!


「むっ!」


 更にもう一匹のコボルトが僕たちの右側に回り込み襲いかかろうとしているが――


風魔法(ウィンド)!!」


 フレイの風魔法でボロ雑巾のように切り裂かれ、そのコボルトも断末魔の叫びを上げ魔石を残して消えていった。


「フレイありがとう」


「ん……当然」


 フレイはなんでもないと、構えていた杖を少し上げて応えてくれる。


「うん。それで……アルテは大丈夫か? コボルトの膂力も強くなってるから……」


「これくらいどうってことない平気っちゃよ。ほらっ」


 アルテも両手をひらひらさせて僕に見せると――


「ねっ」


 得意気に笑みを向けドンっと胸を叩く。ボヨンとアルテのお腹と胸が揺れた。


「うん。アルテも大丈夫そうだね。それにしてもコボルトの数が多かったな……

 次から次に襲いかかってきてよく凌げたよ」


「コボルトの動き、単純。簡単に先を読める」


「そうだね。フレイの魔法にかなり助けられたよ。でもほんとコントロールが上手くなったよね。よくあんな所から魔法を当てるよね……」


「これくらい大した事ない」


 僕が少し離れた位置にあるフレイが身を潜めていた岩を指差すと、フレイは照れているのか耳を少し赤くしていた。


 コボルトは特に嗅覚が優れているからいつも以上に距離をとっていたようだ。それでも魔法を当てるのだからフレイの集中力も大したもんだ。


 でもフレイは僕には言わないけど、あの時の戦闘から、自分が狙われて足を引っ張ることを恐れている。


 ――たまに離れすぎるからな……予想外の敵から狙われでもしないかと心配はあるんだよな……


 ――――

 ――


 お昼過ぎにコボルトの洞窟にやってきた僕たちは、始めこそ順調に洞窟を進んでいたが、奥に進むに連れて一度の戦闘時間が長くなってきていた。


 コボルトの洞窟は地下二階までの洞窟で、地下一階層はそうでもないが地下二階層は迷路みたいになっていて広い。


 少し高かったけど、その地図をギルドで買って正解だった。


 奥にいるコボルトは、集団で行動するヤツが増えて剣や槍、おまけに魔法まで使ってくるようになって、厄介な魔物へと変わってきた。


 救いは集団で行動するコボルトたちだが、コボルトリーダーが居なかったことだ。

 コボルトリーダーが居ないとコボルトたちは連携することなく見かけた僕たちをただ闇雲に襲いかかってくるだけ……


 まあ、それだから僕たちだけでも今は何とかなっているんだけど……


「フレイにアルテ。ちょっと考えたんだけど、奥に進むにつれてコボルトが強くなってきている。

 戦闘も長引くようになったし、これでコボルトリーダーでも出てきたら連携をとって危険になると思うんだ」


「じゃあ、私も攻撃に参加したほうが……」


「いや、アルテは今のままでいい。

 アルテが盾で押さえてくれるから、皆ケガをすることなく狩れてるんだ」


「ん、そう。アルテそこだけは自信持っていい」


 このコボルトの洞窟に入ってからアルテには両手に盾を装備してもらっている。

 ちょっと奮発して皮の盾を二つ買ってやったのだ。


 だってアルテは冒険者になって日が浅く、咄嗟の判断が遅い。


 それならば下手に攻撃に参加させてケガするよりは、防御のことだけに専念して動いてくれたほうが僕も安心できる。


 でもその甲斐あって、アルテはレベルが一つ上がった時に盾術スキルが二になっていた。

 レベル10で盾術レベルが二ってかなり凄いと思う。


「あ、ありがとう……ちゃ……」


 フレイに褒められて嬉しかったのか、アルテが顔を少し赤くした。


 ――仲良くてうらやましい……


「……うん。だから、ほんとなら浄化をしてとっとと帰りたいんだけど、もう少しレベルを上げようかと思っている。

 幸いこの地図によるともう少し先に地下二階への階段があって、そこを下りてすぐに安全部屋があるみたい。

 そこを拠点にして活動すればかなり安全だと思うんだ」


「ん。私もそれでいい。問題ない」


「私が一番レベル低いちゃもんね。私頑張るよ」


 アルテは気合いを入れているのか、脇を閉めてグッと拳を作った。


「ははは……アルテは張り切りすぎてケガがしないでよ。

 アルテが入ってくれたから僕は攻撃に集中できてるんだから。ねぇフレイ」


「むう。悔しいけどパーティーは安定した」


「そう……よかった……ちゃ」


 いつも元気で気合いを入れているアルテが、珍しく安堵の表情を浮かべている。


 ――あ、そうか……アルテも不安だったのかも。いつも元気だから気がつかなかったけど、アルテは冒険者になったばかりだもんな……


 僕は気配りが足りていなかったことを反省し、アルテはもちろんフレイに対してもう少し気を配ろうと思った。


「……よし、決まりだね。それじゃあ今日は安全部屋で野営だよ」


「私、野営は始めてや……きゃ!? ルシール。私何も準備してないっちゃよ」


 アルテが口元を押さえて不安げな顔を向けてくる。


「それなら大丈夫。いつも僕が皆の分を準備することになってるんだ」


「へ?」


「そっか。アルテは初めてだから知らないのか……」


「は、はあ……」


「僕にはアイテムバックっていう便利なスキルがあってね。野営に必要なものは全部その中に入れてあるんだ」


「全部っちゃか!?」


 アルテは目を見開き驚きを隠せないようだ。


 ――へへへ。


 僕はなんだが気分が良くなった。


「そう、いいかいアルテ。いついかなる時でも、皆に安心を与えるのが男の役目なんだ。だから初めての野営でもアルテは安心していい」


 ――ふふふ、シャルさんに習ったことだけどね……


「ルシールは一家に一人いると便利」


「ほぇ凄いっちゃねぇ……一家に一人のルシール。私も欲しいちゃ」


「ダメ、上げない」


「え~、じゃあ仲良く半分っこしょっちゃ、ね? ね」


「ふふふ」


 ルシールはすでに手遅れなレベルくらいシャルロッテによって、料理、洗濯、旅の準備などの細々とした雑用はなんでも男がするもんだと躾られている。それが男の甲斐性だと……信じて疑うことはない。


「ねぇ。そこ、仲がいいからって、何わけの分かんないこと言ってるのさ」


 ――ほんと仲がいいんだからな……僕も男の子友だちがほしいよ。


「早くコボルトを狩るよ。

 まったく、二人は分かってないのかな……男はこうするのが当然の事なのに、便利ってなんだよ。

 もっとこう、頼りになるとか、格好いいとか、言ってくれるなら分かるけど……

 あぁあ……どうすればいいんですかね僕分からないんですけどシャルさん?」


 つい愚痴ってしまったけど、僕は仲良しの二人を置いて先に進む。空間把握が有るから少し位離れても問題ない。


「はあ、ルシールスケベのクセに鈍感」


「……そこがまたいいちゃよね。他の人は嫌そうな顔で、見下した感じだったっちゃから……

 でもルシールはそんなことないっちゃもん。こんな私でも普通に接してくれて、チラチラ胸とか足とかも見てくれる。とぉっても嬉しいちゃよ」


 アルテが嬉しそうに身体全体を揺らした。


「ぬ、それは知ってる。でもルシールは私の太ももをじっと見てる。

 私の太もも見てる時間のほうが長い」


「……ああ、それは確かにそうかもしれないっちゃね」


「う、うん」


 アルテに知られている分かると急に恥ずかしくなったのか、フレイは耳を赤くした。

 アルテはそんなフレイを見ておかしそうに微笑んだ。


「私はそれでもいいちゃもん。フレイそろそろ行こう。ルシールとの距離が開くと危ないちゃよ」


「ん」


 フレイはこくりと頷いた。


「二人、まだ立ち止まってるよ……じゃあちょとだけ……ふふ」


 ルシールはいつも空間把握でアルテやフレイを見る。


 ただ戦闘時の状況把握とは違う意味で……


「ふふ……」


 これは健全な男の子には当然の行為で、思春期真っ只中のルシールにはだからしょうがない。


 だが、ルシールの知らぬところで、この覗き見というこの行為は二人に気付かれていたのだった。


 それはもう全部。女の勘が鋭いことをルシールはまだ知らない。


 ――――

 ――


 その後、僕たちは、安全部屋を目指して地下二階に下りた。


 当然、コボルトも遭遇したけど、そこはレベルを上げる意味で手当たり次第狩っていった。


「ルシール、そろそろ」


「そっか……よし、じゃああの安全部屋に入ろう」


「はいっちゃ」


 そして、フレイの魔力が尽きかけたタイミングで僕たちは安全部屋に入った。


 安全部屋は洞窟内というのにドアがあってその中にあった。


 そのドアには結界石のようなモノが埋め込んであって、その石のお陰で安全部屋として機能しているようだった。


「あれれ、誰も居ないちゃね?」


 部屋の中を見渡したアルテが不思議そうな顔をした。


「そう、だね。地下一階では、少ないけど他の冒険者たちを見かけたんだけどね。

 どこかの冒険者が聖石を獲って帰ったから奥は人気がなくなったのかな?」


 フレイがトントンと僕の肩を軽く叩いてくる。どうやらフレイは僕に話しを聞いてほしいようだ。僕がフレイのほうに顔を向けると頷いたフレイが口を開く。


「コボルトの魔石、濁ってて安い。ゴブリンと同じくらい。だから、野営してまで狩る魅力ない」


「なるほど。フレイはよく知ってるな。そうか、コボルトってゴブリンと同じくらいの価値なんだ。

 そのくせに、ボブゴブリンより強いもんな。今の時期ならゴブリンを狩ってたほうが楽に稼げる、か」


「うん。当然。私たちはルシールのアイテムバックがある。

 他の人は違う。重い荷物を持ってまで足を運ばない。奥行っても何もない。これコボルト洞窟の常識」


「へぇ。そうやっちゃね」


 アルテが僕のことを見ているけど、その眼差しが、なんというか、尊敬の眼差しとでもいうのかな。そんな視線を受けたことのない僕は嬉しくなり、すぐに舞い上がってしまった。


「えへへ……」


「できる男ルシール」


「おおぉ、フレイもそう思ってくれるのか……

 そうか、そうか……よぉぉうしっ!!

 二人ともそこでゆっくり座ってていいよ。僕はご飯の準備するから。これはできる男の仕事なんだぞ」


 気合を入れた僕は袖をまくり上げると、すぐに食事の支度を始めた。


「えっ、えっ。あれ、い、いいっちゃか?」


「ルシール期待して待ってる」


「おうよ。任せて」


 気分の乗った僕は生活魔法を使い、簡易の釜戸を作り鍋をしかける。


「ほぇ、ルシール凄いちゃねぇ」


「うん、ルシール凄い」


――二人が僕のこと褒めてる……や、やばい、にやにやが止まらない。


 フレイとアルテ、二人の会話が聞こえてくるけど、全部僕のことで、なんだが褒め言葉が多い。僕はさらに嬉しくなった。


「へへ……え、えっと。具材はどれにしよっかな……あ、まずは干し肉だろ……それからじゃがいもに……」


 シャルロッテの居ない間も、ルシールはフレイからうまく乗せられ操られるようになっていた。


「ルシールいい匂いしてきた」


「うん。ルシールの料理が食べれて嬉しいっちゃ」


「そうか、そうか。ふふ……二人とももう少しだからね待ってて」


「ん」

「はいっちゃ」


 そしてそれはアルテにも伝染し、アルテは無意識にルシールとの付き合いかたを学ぶのだった。


 ――――――――――――――――――――

【名前:アルテ:Lv10】up

 ギルドランクF

 戦闘能力:95up

 種族:人間

 年齢:14歳

 性別: 女

 職業:冒険者


 スキル:

 〈棍棒術:2〉〈盾術:2〉up

 〈文字認識〉〈魔力操作:1〉

 〈魔力回復:1〉〈薬草の知識:1〉

 〈精神耐性:3〉


 魔 法:

 〈生活魔法〉〈回復魔法:2〉


 状態:???


 ――――――――――――――――――――


【名前:フレイ:Lv12】

 ギルドランクE


 戦闘能力:95

 種族:人間

 年齢:13歳

 性別: 女

 職業:冒険者


 スキル:

 〈棒術:1〉〈文字認識〉

 〈魔力操作:2〉〈魔力回復:1〉

 〈魔力量UP:2〉〈毒耐性:1〉

 〈危険察知:2〉up〈治療:2〉


 魔 法:

 〈生活魔法〉

 〈水魔法:2〉

 〈風魔法:2〉


 レア装備:誓約の指輪ルシール


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