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すみません、タイトルを少し変更いたしました

「はい、確かに薬草10束あります。こちらがその報酬の300カラだね、毎日ルシール君が薬草を持って来てくれるから助かるよ。ランクが上がっていくと誰も薬草の採集はしてくなくなるからね」


 ここはギルト内の完了報告と報酬を貰うカウンターだ。

 いつもの恰幅のいいおばちゃんが笑顔で対応してくれる。


「は、はい」


 いつもおばちゃんは褒めてくれるけど、気持ちとしては複雑なんだ。


 僕はギルトに薬草収集の完了報告を終えた。


 300カラ、これが何時もの僕の報酬。馬小屋に50カラで寝泊まりさせてもらって残りの250カラで生活している。


「よお、ルシールどうだった。スキルは手に入ったか?」


 声を掛けられ振り向くと、アレスたち四人がいた。

 今の声はラインだと思うけど、そのラインは気分がいいのか、にやにやにたにたしている。


「アレス! ありがとう。一応だけどスキルは身に付けることができたよ」


 でも僕は言いたくなかった。


 文字の読めない僕には過ぎたスキル《スキルショップ》と、戦闘に役に立たない《スマイル》が取得できただなんて。


「ル、ルシール先輩。それはよかった、ですね……」


 アレスの歯切れが悪い、どうしたのだろう。ふと、そんなことを考えていると僕を見るラインの目が鋭くなった。


「おいルシール本当かよ! ウソつくな」


 ラインが強い口調で詰め寄ってくるが、僕にはそれがどういうことだか意味が分からない。


 ――だってみんなもスキルもらったんだよね?


「本当だよ。アレスの言った通りだったんだよ」


 いつの間にか、アレスのパーティーメンバーや、聞き耳を立てていた他冒険者たちから疑いの眼差しが僕には集まっていた。


 ――どうして……


 僕が「アレスの言った通りだ」と言えば言うほどみんなからの視線が鋭くなる。


「……本当だって。もしかしてみんなは疑っているの?」


 みんなが何で疑うのか分からない。


 僕はただアレスに教えてもらった通りにスキルを授かったのだから。


「お前……ふざけるな! あんな弱っちいゴブリン相手で直ぐにスキルを身に付けることなんてできるわけないだろ!!」


 僕はラインの剣幕に思わず後ずさりしてしまう。一応、僕の方が年上なんだけど……


「だってアレスが……それにゴブリンじゃなくてスキル神像様に僕は……」


「こいつ、まだ言うのか!」


 僕の胸ぐらを掴もうとしたラインの手をアレスが掴んだ。


「やめろライン!! それじゃあ、ギルドの受付で鑑定してもらいましょう。そうしたらみんなも納得できるだろう。ルシール先輩もそれでいいですよね」


「え、あ、う、うん」


 僕は嫌々ながらも頷くしかなかった。


「さすがアレス。そうだな、それならルシールが嘘つきだってすぐに分かるな!」


「すみません、セレさんこのままでは、収拾がつかないのでギルドにも迷惑かけてしまいます。ルシール先輩を鑑定してもらえませんか?」


 アレスがギルド受付嬢のセレの前まで歩いていくと、頭を下げ丁寧に頼んだ。


 突然、話を振られた受付嬢セレはアレスに声を掛けられ戸惑いを見せながらも嬉しそうに答えた。


「アレスくんの頼みならしょうがないわね。そうね、みんなにも迷惑かけてるしね」


 アレスに笑顔を向けていた受付嬢のセレさんは僕を見下すように睨んだ。


「さぁ、ルシールさん他の人に迷惑です。早く、こちらの鑑定水晶に触れて下さい」


 受付嬢のセレさんがカウンターの下から鑑定水晶を取り出した。


「は、はい」


 僕はみんなから急かされながらも鑑定水晶に触れた。


 触ってみたけど水晶がヒンヤリ冷たいくらいで何も反応がない。これで本当に鑑定してるのだろうか? 僕がそう疑問に思っていると――


「はい、もう結構です……鑑定結果ですが、スキルが……一つあります」


 受付嬢のセレが驚き戸惑いながらも、みんなにそう口にした。


 疑っていたみんなからどよめきが起こる。


 ――あれ、一つ? スキルは二つあるはずなんだけど……


 僕は慌ててステータスを確認してみた。


 ――よかった。


 そこにはたしかに二つ表示されていた。


 ――でも、なんでだろう?


 僕が疑問に思い思案している間にもアレスたちは受付嬢のセレにその詳細を尋ねていた。


「セレさん、それはなんと言うスキルですか?」


 よく見ればアレスは引きつった表情で笑みを浮かべている。


「それは……〈スマイル〉というみたいです。わたしも初めて見るスキルですね」


 ――スマイルなんだ……


 でも僕には〈スキルショップ〉ある。どうしてだか理解できない。

 一人で思案の渦に飲み込まれいる間に周りで話がどんどん一人歩きして、大きくなっていた。


「おい、お前〈スマイル〉だって聞いたことあるか……」


「いや、知らねぇ」


 みんなが首を捻り隣や周りに確認するが、みんな初めて耳にするスキルだった。

 みんながルシールに驚嘆し、それは次第に賞賛する声が上がりだした。


「すげーな。このギルドから未登録スキルでたよ」


「ああ、すげーな」


 そんな声に、どういうスキルか知っている僕の

 心の内はヒヤヒヤだった。


 ――バレる前に早く帰りたい。


「すみませんでした、ルシール先輩」


「いや、いいんだ、ホントだって分かってくれさえすれば僕は別に……それじゃ僕はこれで」


「待って下さい、ルシール先輩」


 そそくさと逃げるようにギルドを出ようとしたルシールにアレスから待ったの声がかかる。


 まずい嫌な予感がする。


「ど、どうしたのアレス?」


「あの、その、ルシール先輩。俺は〈スマイル〉というスキルを初めて聞きました。俺にそのスマイルのスキルを見せてください」


「えっ」


「お願いします」


 アレスが深々と頭を下げた。すると他のメンバーもアレスが頭を下げたからか、嫌々ながらも遅れて頭を下げた……


 ――アレスに頭を下げられるなんて……あれを見せる? いや、あれは見せたくない。笑われてしまう。


 戸惑い返事をしない僕に、今度は周りから批判が飛んでくる。


「見せてやれよ」

「そうだそうだ」

「それとも俺たちには見せたくないのかよ」


「あの、その……」


「見せろよルシール。減るもんじゃないんだろ、それともここじゃ見せれないほど強力なのか?」


 ラインが待ちきれなくなったのか、苛立ちを隠しもしないで、強く強要してくる。脅しているともいう。周りもだ。


 ――もうダメだ……言い逃れできそうにない。


 そう思った僕は仕方なく頷いた。


「わ、分かったよ」


「本当ですか、ルシール先輩。ではお願いします」


 ――うっ、美少年の笑顔が眩しい。


「……笑わないでほしい」


「笑う?」


 アレスは僕の言っていることが分からないみたいで、首を傾けていた。


「それじゃ、はっ!」


 僕はスマイルスキルを使った。


 ――か、顔が勝手に……


 ルシールはニッコリ微笑んだ。


「ふう、これをすると顔の筋肉が、引っ張られて……」


 ギルド内がシーンと静まり返っている。


「……」


「な、何をしたんですかルシール先輩?」


「い、いや、だからスマイルを使ったんだけど……」


「……」


「ぷっ、はははは、ただ笑っただけじゃないか、なぁアレス。くっははは」


「ル、ルシール先輩……くっ、俺はこんなのに頭を……」


 ギルド内は静寂と爆笑の渦に包まれた。


「いや~さすがルシールだわ、凄い威力だったぜ、みんなの期待を裏切らないわ」


 ラインがニタニタ笑みを浮かべ、ぽんぽんと僕の肩を叩いた。


「行こうライン。あっ、ルシール先輩ありがとうごさいました」


 アレスは僕を見ることなくそう言うと、そのままギルドを出ていった。

 ギルドにいた他の冒険者も……まだ、笑っている人もいるけど、ほとんどの冒険者は酒場の方へ消えていった。


 ――こうなると思った。でも、いいんだ。これで何か変わるわけじゃないから……


「ねぇ、そこの少年」


 帰りに売れ残ったパンでも買って、それから今日はもう帰って寝よう。


「……」


 とぼとぼと肩を落としてギルドを後にしようとしていた僕の肩に誰かが手を置いた。


「!?」


 びっくりして振り返ると、そこにはマントを羽織って魔法使いらしい格好をしたエルフ族の綺麗なお姉さんがいた。


「こら、無視するなスマイル少年」


「えっ、すみません、僕のことだったんですね」


 エルフのお姉さんは身長は僕より少し高く、長く金色に輝くストレートの髪をしていた。


「きみ、なかなか面白いね」


「そ、そうですか」


「私も丁度ソロに飽きたところなのよ。どう、私とパーティー組まない? こう見えても私、このギルドではAランクなのよ」


「ぶっ! そんな凄い人が……からかわないでください」


「からかってないわ。本当よ。本気で君を誘ってるの」


「な、なんで、ですか?」


「ふふふ、それはね」


「それは……」


「君、持ってるでしょ。レジエンドスキルの……」


 エルフのお姉さんは僕の耳元で小さくスキルショップと呟いた。


 咄嗟のことに僕は反応できなかったが、お姉さんの顔の近さとお姉さんから漂ういい香りに、思わず顔が火照っていくのを感じた。


「ねぇ、ルシールくん」


 ――はっ!?


「お姉さんがどうして、それを」


「んー、じゃあ……ちょっとあそこで話をしましょうか」


 僕はお姉さんに手を引かれギルドの一番端のテーブルに座った。


「私はシャルロッテって言うのよ。シャルっ呼んで」


「あっ、はい。シャルさん?」


「うん、それでいいわ。それで……理由よね」


「は、はい」


「それはね……簡単よ。私が鑑定魔法を使ったからよ」


「えっ、そんな魔法もあるんですか?」


 知らないだけだと思うけど、僕は鑑定魔法なんて聞いたことないし使っている人を見たこともない。

 それでギルドに鑑定する魔道具が置いてあるんだと思っていた。


「ん、あるわよ。エルフ族にはね」


「エルフ族に……じゃあ人族には……」


「ないと思うわ」


「……やっぱり、凄いんだ」


「そんなのいいから、ほら、それより返事は?」


「ぅ……はっきり言って僕は弱いです。それはもう……」


「そんなのは分かってるわよ。だって私は鑑定魔法で君を見てるのよ。かなり弱いってこともね」


「……」


「でもここまで弱い人見たことないわよ」


「ぅ、そんなの言われなくても……分かって……」


「でっ、どんなスキルなのよそれは」


 なんてマイペースな人じゃなくてエルフ。僕の話しは遮られた。これは、ただ僕のスキルに興味があるだけ? だろうな。


 綺麗なお姉さんじゃなかったら逃げ出したい。


「えっと、簡単に言うとお金でスキルが買えます、そんなスキルです」


「へぇ〜何それ面白いわね。それで、どんなスキルが買えるの?」


「うっ。僕は……その……沢山あるのは解るんですけど、文字が読めなくて、何て書いてるかさっぱり……なんですよね……ハハハ」


 ――ぁ!?


 一シャルさんが一瞬だけ眉間にシワを寄せた気がしたけど……


「ぷっ。なーにそれ、ルシールくん面白すぎよ……ふふふ」


 気のせいだったようだ。シャルさんは一頻り笑った後、また口を開いた。


「ごめんなさいね、少し笑い過ぎたみたい……そうね、この文字、は解らないわよね……この形に似た文字はある? あったらいくらするか教えて」


 シャルさんは紙にその文字を書いてくれた。


 僕にはそれがなんて書いているのか分からなかったけど、僕はその形をした文字を探してみた。


 しばらく探していると……


 ――あった!! これが似ている。


 僕は、片目を開けたり閉じたりして紙に書いてある文字と見比べ確認した。


「えっと、その文字の形は……ええっ1と5に0が4つですね」


「ん~そう。15万カラね、はい、これで試してみて」


 シャルさんはポンっと1万金貨15枚を僕の手のヒラに乗せてきた。


「ぶっ! 何ですかこのお金は」


 初めて見て触れた金貨の重みに右手が震える。


「何ってそのスキルを買ってみてよ」


「スキル買ったら金貨返せませんよ、たぶん」


 買ったことないからはっきりとは言えないけど、そんな気がする。


「いいから使ってみて、ね」


 そう言ってシャルさんは軽くウィンクする。


 思わずドキッとするけど、それで分かりましたとは素直に言えない。


 だって、この金貨一枚でも僕は返せる気がしないんだ。


「……でも」


「いいの」


「だって僕が見たことのない金貨が15枚ですよ。15枚……

 これってとんでもない金額ですよね?」


「もう、いいから早く(・・)しなさい、ね」


 シャルさんは物腰は柔らかいけど、断わったら僕の人生が終わりを迎えるような凄みがあった。


 ――うっ。


 はっきり言って怖い。これは納得できなくても承諾する選択肢しかないのだと悟った。


「はい!!」


「ほら、早くしなさい」


「う、うう……分かりました。いいんですよね。いきますよシャルさん。も、もう知りませんからね?」


 僕は右手に金貨15枚を持って瞳を閉じた。


 すると、ほとんど黒かった文字の一部が白く表示されている。


 僕は早速、シャルさんに書いてもらった形に似た文字を選択しすると、右手にあった金貨の感覚が無くなり頭に無機質な声な響いてきた。


【ルシールは文字認識スキルを取得した】


 ――おお。


「文字認識だったんですね」


「凄いわね。本当にスキルが増えたわ」


 シャルさんは驚きながらも声を小さく周りに聞こえないように言った。


「分かるんですか?」


「ええ。増えるところが見てみたくて、ずっと鑑定魔法のサーチを使い続けていたのよ。

 ところで、これでルシールは文字が読めるようになったのかしら?」


「えっ」


 試しに僕の全財産313カラを握って瞳を閉じてみる。


「す、すごい。全部読める。読めますよシャルさん」


「そう」


 次が〈お辞儀15〉その次が〈競歩30〉またその次が〈木を研ぐ35〉だった。


 間違いなく読めるようになっているけど、その意味まで分からないスキルも沢山あった。


「ありがとうございますシャルさん」


 僕は嬉しくなってシャルにお礼を伝えた。


「ん? 誰もあげるとは言ってないのよねぇ」


「へっ? じゃあ僕は、どうすれば……」


 ――これって騙されたってこと?


「そうだね、身体で払ってもらうとするわ」


 シャルさんが、ニタニタ、してやったり顔をしている、かなり嬉しそうに見えるのはなぜ。


「そ、そんなぁ」


「戦えないとお金払えないわよね。そうだわルシールくん。後いくら貸したらいい? お姉さんに言いなさい、ほら」


「ひぇぇぇ」


 僕はそのあと料理、洗濯、剣術レベル2、治療レベル2、回避力UPレベル2、を買った。


 ふふふ、僕は知らなかったけど、料理と洗濯ができる男はカッコよくてモテるんだってシャルさんが教えてくれた。


 思わずシャルさんにお願いしてまで買ってしまったけど、シャルは心良くお金を貸してくれた。


 剣術は素振りをしていたお陰で150カラの値引きがあったけど、それでもシャルさんから2,840,850カラも借金することになった。



 ――――――――――――――――――


【名前:ルシールLv3】

 

 戦闘能力:15→60

 種族:人間

 年齢:14歳

 性別: 男

 職業:冒険者

 スキル:〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉

 〈剣術レベル2〉〈治療レベル2〉

 〈回避UPレベル2〉〈文字認識〉


 魔法:無し

 *レジェンドスキル:《スキルショップ》

 所持金 :313カラ 

 借金残高:2,840,850カラ


 ―――――――――――――――――――


 ★スキル・魔法レベル補正(目安)★

 Lv1=威力1.2倍・(初心者レベル)

 Lv2=威力1.5倍・(騎士レベル) 

 Lv3=威力2倍・(騎士団長レベル)

 Lv4=威力2.5倍・(将軍レベル) 

 Lv5=威力3倍・(達人レベル)



 ★簡易魔法補足★

 火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、空間魔法、回復魔法……など。

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