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久しぶりの更新です。ごめんなさい。

 僕が浄化スキルを展開するとふと、懐かしい感じとともに、シャルさんの呆れ返る顔がよぎった。


 ――シャルさん、あはは……そうだよね。僕たちはこんなところで殺られてたまるか……何がなんでも生き残るんだ! 生き残って、シャルさんとまた冒険をするんだ。


 光を失い真っ暗な闇世界の中、僕はゆらりと揺らめいているアンクゴブリンの魔力の灯火を捉え構えをとった。


 視覚を失ったルシールに、魔眼スキルにより大きな魔力のみを塊でしか捉えることが出来なかった。


 ――――

 ――


 〈フレイ視点〉


る、しー、る、もし(ル、シー、ル、もし)かし、て?(かし、て?)


「ああ、フレイ僕に任せて。浄化スキルが使えるようになった」


 ――えっ、どうやって? ルシールはそんな大金持ってない、のに。


 私はすぐに、そう疑問に思うと、震えているルシールの足下を見た。


 ――こんな時なのに、私を安心させるために、そう言ってくれるの? でも……


 先ほどから感じるルシールの放つ気配は、シャルロッテさんみたいな神々しさがあった。


 ――シャルロッテさんみたい!? これって、浄化?


『ニンゲン、ケハイ、カワッタ、ナニシタ!』


 私がそんなことを考えていると、憎ったらしいアンクゴブリンも何かを感じとったようだ。


 腹が立つくらいはしゃぎ小躍りしていたアンクゴブリンが慌てて言葉にならない何かを叫んでいる。


「ああ? 知りたい? 答えは簡単さ。お前を倒すスキルを使ったんだよっ!」


 そんな言葉を強い口調で発したルシールが、さらに腰を低く落としたかと思えば、そのまま前傾姿勢を保ったままアンクゴブリンに向かって駆けていった。


るしー、る!(ルシー、ル!)


 私は思わずそう叫んだ。叫ばずにはいられなかった。


 なぜだが、ルシールがどこかいつもと様子が違うように感じたからだ。


 ――ルシールなら大丈夫。きっと大丈夫……!?


 けど、私はそんなルシールの違和感にすぐに気づいた。


 それは、なぜかルシールは右手に風のシルエアしか握っていなかった。


 いつもなら左手にショートソードを持っていて、盾が代わりに握りよく使い魔物の攻撃を捌くために使っているのに、それが今、私の目の前に落ちているのだ。


 ――何、あれ?


 さらによく見なくてもルシールの左腕には力が入ってないように、ブラブラと揺れている。


 ――ケガ? ケガをしているの? でもルシールには治療スキルがある。いつも多少のケガならスキルで治してしまうのに、どうしたの? もう、私のバカ!


 うまく身体を動かすことができず、言葉さえ発することのできない自分が歯がゆくもあり、悔しくて地面の土を握りしめようとしてできなかった。


 けど、私がそんなことを考えている間に、ルシールはアンクゴブリンの真正面で風のシルエアを振り抜いていた。


 一直線に向かってくると思っていなかったらしいアンクゴブリンは油断していたのか、ルシールの予期せぬ行動に顔を庇うようにクロスさせ両腕で慌てて防御の姿勢とったようだけど、ルシールはそれに構うことなく、力任せに剣を振り抜きその両腕を切断してしまった。


 ――えっ? やった、の?


 けど、それはいつも見ているルシールの斬撃とは違っていた。


 剣の振りも踏み込みも甘いし、振り抜いた後に身体が流されてスキだらけだった。


『ガァァア!』


 そのため、ルシールはすぐにアンクゴブリンからカウンターで重そうな前蹴りを受けて吹き飛ばされてしまった。


「ぐあっ!」


 ――きゃっ!


 私は思わず痺れる身体ながらも両手で顔を覆っていた。


「ぐぅぅぅ!」


 ルシールから発せられる苦痛の声に再び視線を向けて見ると、ルシールは顔を歪めながらも、よろよろと立ち上がり、ゆっくりと歩き出すと一定の距離をとり立ち止まった。


「はぁ、はぁ……ふぅ」


 そして、ルシールは息を整えると、口元から流れた赤い液体を右手の甲で拭いつつ治療スキルを使っていた。


『ウデ、モドラナイ、ナゼ?』 


 一方のアンクゴブリンはいつまで待っても再生の始まらない両腕に苛立ち始めたのか、ブンブンと子供のように短くなった両腕を振り回している。


「へへへ、だから言ってるだろう。お前を倒すスキルを使ったってな」


『グウ! オマエ、ヨクモ、ヨクモ、ヨクモオォォォ!』


 ようやく両腕が再生しないと理解したらしいアンクゴブリンは、みるみる身体を真っ赤に染めて怒り露わした。


 ――効いてる? やったルシールはやっぱりすごい。


「ルシール、浄化、攻撃効いてる!」


 私は嬉しくて思わず、そう叫んでしまったけど、倒れたままの自分が許せなくなった。


 ――私も、倒れてるだけじゃダメ。


 そう思い、まだ痺れているけど、少しは動かせるようになった身体に力を入れて――


 ――もう少し……取れ、た。


 側に落ちていたルシールのショートソードに手を伸ばし、その剣を杖代わりにゆっくりと上体を起こした。


 ――痺れはあるけど、私だってルシールのために……せめて周囲のゴブリンが襲って来ないように警戒くらいはしたい。


 私が退路を妨げるゴブリンに睨みをきかせていると、再びルシールとアンクゴブリンの動く気配が伝わってきた。


 ――ルシール。


 心配で思わず、そちらに意識を向けてしまったけど、ルシールはまた、真っ直ぐアンクゴブリンに向かって駆け出していた。


 ――……う、ウソ……


 いつもなら綺麗に避けて見せる軽やかな足捌きではなく、単純な打撃さえまともに受けながらルシールは必死に距離を詰めている。


 ――いや、ルシール。


 思わず見ていた私の方が視線を逸らしそうになった。


 ルシールは一定の間隔で治療スキルらしいものを発動しているみたいだけど、ルシールが無茶をしているのが分かった。


 ――こんなのいつものルシールじゃない。いったい何があったの? 何で私は何もできないのよ!


 明らかにいつものルシールの動きとは違う。それなのに手助けすることもできず、ただ、見守ることしかできない自分がイヤになった。


 ――もう! 何でなの! あと少し。せめてあと少し痺れが引いてくれれば、魔力だって練れるし、牽制に魔法だって打てるのに……


 気づけば私の視界は歪み、涙が溢れていた。


 ルシールは、魔力を帯びた攻撃なら、魔力の流れを見ることで防いだり、躱したりすることができていたかもしれないが――


 今のアンクゴブリンは単調な殴打の魔力を帯びていない攻撃だったため全く反応することできず、まともに受けてしまっていた。


 これは視覚を失っていることが大きな要因だが、もうひとつは魔眼スキルのレベルが低く、魔力をまだ塊でしか捉えることができていないためでもあった。


 それ故に、今のルシールには、見切りスキルや、回避UPスキル、捌きスキルをうまく機能させることができなくなっていたのだが、側から見ているフレイに、分かるはずもなかった。


 ――ルシール……は大丈夫。ルシールは負けない……


 何もできない私は祈った。視界にゴブリンを入れながらも心の中で必死に祈った。


 ――――

 ――


「はぁ、はぁ……(奴の魔力が小さくなってる、今なら……)」


 ルシールは攻撃を受けても受けても立ち上がりアンクゴブリンに向かい、必死に剣を振っていた。


 幸い今のアンクゴブリンはただ闇雲に、先の無い両腕をルシールに叩きつけているだけで、治療スキルの使えるルシールはなんとか耐え凌ぐことができていた。


『ガァァアッ!』


 ――ルシールッ。


 ただ力は強いらしく叩きつけられる度に、ルシールの身体は左右に流されて、見ている私の方が思わず目を閉じてしまう。


「ぐぅっ……」


『……オマエ、シブトイ』


 それでも、アンクゴブリンが油断していた初撃目で、鋭く尖った爪のある両手を切り落としていたルシールはさすがだと思う。ただ運が良かっただけかもしれないけど、それでも斬り落としていたルシールに抱きついて褒めてあげたい。


 側から見ると、徐々にだけどルシールが押し返し始めたように見えた。その様子に少し安堵していた、そんな時だった。


「このおおぉ! 貫通スキルっ!」


  ルシールが右手の剣を大きく弓のように引いて構えた。


 ――あっ! ダメ。


 アンクゴブリンに貫通スキルを使い突き刺そうと思ったのだろうけど、ルシールの動作は大きくスキだらけになった。


「たっ……」


『ゴアァァッ!』


 案の定、突き出す寸前に、アンクゴブリンの大きな膝がルシールの腹部にめり込んだ。


「がはっ」


『マヌケメ……』


「ルシールッ!」


 私の叫びはルシールの耳に届いたのかどうか分からないけど、ルシールが思いっきり踏み込んだことが幸いして、中途半端な位置で膝蹴りを受けたようだった。


『グウ!?』


「まだだ、まだ終わっちゃいない」


 そのため、ルシールはその膝蹴りを左手で抱え込んだかと思うと、そのまま右手を突き出した。


 動作こそゆっくりだったけど、貫通スキルを纏った一撃はアンクゴブリンの腹部にゆっくりと、そして深く突き刺さった。


『ガッ、バカ、ナ……』


 グラリと大きなアンクゴブリンの身体が揺れる。


「へへへ……どうだ効いただろう……」


 体勢を崩したルシールも、そのまま前のめりになっていた。

 けど、ルシールは前のめりなった自分の体重さえも利用し、力なくぐらついていたアンクゴブリンを巻き込み後方へと押し倒した。


「ぐうっ!」

『ガハッ!』


 激しく倒れこんだルシールを心配するも、ルシール自身は倒れた衝撃に顔を歪めるだけで、突き刺したままの剣に両手を添えていた。


「ま、まだだっ。まだ終わりじゃない!」


『ブエッ! ……ヤ、ヤメロッ』


 僅かに光ったルシールが貫通スキルを展開すると、アンクゴブリンの腹部に突き刺さったままだった剣を、左へと腹部を断ちながら払い抜き掲げると――


「いい加減に……くたばれぇぇぇっ!」


 そのままアンクゴブリンの首元目掛けて振り下ろした。


『マ、マッ……』


 アンクゴブリンの言葉は途中までしか聞こえたかった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 なぜなら、ルシールの振り下ろした剣が、アンクゴブリンの頭部を胴体から綺麗に切り離していたのだ。


「おわっ、た……」


 頭部を失ったアンクゴブリンはピクリとも動かなくなっていた。


「ルシール……」


 ――今度こそやったのね。


 溢れ出した涙を見せなくない私は、素早くローブの裾で目元を拭った。


 ――ほんとルシールはバカだ。一人で逃げればあんなにボロボロにならなくて済んだのに。ほんとにバカルシールだよ。

 もう、何があっても離れてあげないんだから。


 そう呟いたのがいけなかったのか、溢れる涙が止まらなくて焦ってしまった。


 その後は、アンクゴブリンは溶けるように形が崩れていくと、力なく両膝をつくルシールの目の前に大きく上質な魔石が転がった。


 ――ん?


 それとともに大きな顔で退路を妨げていたゴブリンたちが――


「逃げた……」


 ギャーギャーと、慌ててふためき、転がるような勢いで逃げ去り、気配察知に反応していた気配も、反転してまるで元にいた場所に戻るかのように、どこかへ行ってしまった。


 ――――

 ――


 〈ルシール視点〉


 僕が首元らしき位置に剣を振り下ろしすぐに、パーンと魔力が弾け、僕の目にもアンクゴブリンの魔力の塊が霧のように霧散していくのが分かった。


 ――やった、のか? ……なにっ!?


 霧散して安堵の息を吐き出したその時、再び、丸く大きな魔力の塊が現れた。


 ――生きていた? いや、違う。これは……


 一瞬、またアンクゴブリンが現れたのかと身構えそうになったが、丸い魔力は綺麗に光る魔力の塊だったので、あるものが頭に浮かんだところでレベルアップの声が頭の中に響いた。


【ルシールはレベルが上がった】

【魔眼スキルのレベルが2になった】


 ――レベルアップした。これで、奴を倒したのは確実だな。


「じゃあ、これは魔石かな?」


 先ほどから魔力の塊を見てるがまったく動きはない。

 そこで始めてアンクゴブリンを倒したことを実感し、思い出した。


 ――はっ! フレイは?


「フレイッ!」


 僕は周囲にいたゴブリンのことを、思い出し慌てて周囲に視線を向けた。


 ――あれ? 逃げていく?


 アンクゴブリンの咆哮に誘われ寄って来ただけのゴブリンたちは、アンクゴブリン、ボス? を倒してしまった僕たちには勝てないと思ったのだろう。


 小さな魔力の塊に見えるゴブリンたちは蜘蛛の子が散るように凄い早さで僕たちから離れていった。


 ――よかった。正直、もう、身体に力が入らないんだよな……って、あれっ? ゴブリンの、輪郭が分かる……シルエットみたいに見えるようになってる?


 周囲を見れば、土や木々等の僅かな魔力も感じるれる様になり、その輪郭をはっきりと捉えれるようになっていた。


 ――そうか、魔眼スキルのレベルが上がったからだ。


「ルシール、ありがとう」


 僕が魔力に溢れる世界に目を向けていると、背後からフレイの声が聞こえてきた。


「無事でよかったフレイ。流石に今回はダメかと思ったよ。ははは……ところで痺れはどう? もう歩けそうか?」


「ううん。まだ、少し残ってる、けど、あと少ししたら立てる」


 上体だけを起こしていたフレイに痺れ以外、ケガがないことに安堵した僕は――


「そうか……フレイはそのままちょっと待ってて」


 僕は視界に今もなお、うっすらと薄くなっているも、禍々しい魔力が煙の様に昇っている祠を捉えていた。


 ――これもさっきまでは見えてなかったのにな。聖石は取られてしまって無いんだけど、一応浄化しといた方がいいよな?


 なぜかそう思った僕は、祠の前まで行くと浄化スキルを再び発動した。


「浄化」


 パーンと何かが弾けるような音がすると、祠の中が淡く光り輝きだした。


「シャルさんのと違うけど、何もしないよりはマシだろうし、いいよね?」


 その後、魔石を拾った僕は、上体を起こしているフレイの横に座り込んだ。


「ルシール、動き変だった。今も変」


「そう、かな……」


「これ、ショートソード。落としてた」


「あっ? そうだったね。拾ってくれたんだ、あ、ありがとう」


 なんだろう、さっきからフレイがじーと僕のほうを見つめてる気がする。


「ルシールが倒れる、じゃないかと思った」


「あっ、そ、それは」


 ――仕方なかったんだよな。目の見えない僕には相討ち覚悟で向かうしかなかった。あの時、アンクゴブリンの奴が油断してくれていて、ほんと運がよかった。もうほとんどマグレだよ。


「それにルシールお金無かった。浄化スキルどうやって買った?」


「っ……そ、それは」


 さらに、フレイがじーと僕を見つめてる気がする。


「ルシール? なぜショートソード受け取らない? さっきから目の前に出してる」


「あ、ああ……」


 ――そうか。ショートソードは魔力を帯びてないから分からないのか。でも、どの辺にあるんだ。


 僕は適当な位置に手を伸ばしショートソードを受け取ろうしたのだが、どこにあるのか分からず僕の手が宙を泳ぐ。


 ――やばっ、どこにあるか分からない。


「やっぱり、ルシール変。何か隠してる。スキルのせい?」


「……あっ、う、うん」


「話して」


「……」


「ルシール、話して」


「ね、ルシール」


「……分かったよ」


 僕は仕方なくフレイに浄化スキルのこと、スキル制限解除のこと、魔眼スキルのこと、担保のこと、そして、今は左手、左腕、視角左右、聴覚左、味覚が無くなっていることを話した。


「……あはは、お金貯めないとな」


 話し終えると、フレイの身体が震えてるように感じる。


「‥‥‥私のせいだ」


「フレイ?」


 フレイの蚊の鳴くような声は、僅かに震えている様に感じた。


 ――泣いている、のか?


「私が足を引っ張ったから、ルシールは……」


「違うよ」


「違くない……」


 そう呟いたフレイからすすり泣く声が聞こえてくる。

 間違いなくフレイは責任を感じて涙を流してしまったのだろう。


 僕も、正直これから不安で仕方ないのだけど、こんなことでフレイが責任を感じて欲しくないと思った。


 だから僕は努めて元気に振る舞うことにした。


「これで良かったんだ。僕たち二人とも浄化スキルしか効かない穢れた魔物を相手して無事だったじゃないか」


 そうじゃないと今にもフレイが壊れてしまいそうで、大変なことになりそうに感じがしたからだ。


「でも、ルシールは……」


「僕は僕が生きるためにこうした。フレイのせいじゃない。

 それに、今はこんな身体だけど、担保で借りている分の金額を返せば元に戻るんだ」


「そうなの?」


 僕の話を聞いたフレイは、俯いていた顔をやっとこちらに向けてくれた。と言ってもどんな顔をしているのか分からないんだけど。


 必死に目の辺りを擦っているから、泣き止んではくれたはずだ。


「うん、そう。今回この魔石を買い取ってもらった代金を当てれば左手と左腕くらいは元に戻せると思う」


「でも、ルシール目が見えない」


「うん、それも考えがある」


「何?」


「いや、さっき確認していたら空間把握ってスキルがあったんだ。

 担保返済分にはまだまだ手が届かないけど、こっちなら80万カラですぐにでも買えそうなんだ。

 多分だけど、これを買えば今までと殆ど変わない生活できる様になると思う」


「それがあれば、いいの?」


「ああ、今の僕は魔眼スキルで魔力を帯びてる物ならその形まで分かる。

 そこに空間把握があれば、それ以外を把握できそうなんだ」


「……分かった。私も手伝う」


「あ、ああ、ありがとう。フレイにそう言ってもらえるも心強いよ」


「うん(生活も手伝うから)」


「ん? フレイ何か言った?」


「何も……じゃ、ここに居ると危険、だから町に戻る」


「そうだな。でもフレイは、痺れはもういいのか?」


「大丈夫。もうなんともない」


 フレイのシルエットが立ち上がったかと思うと同時に僕の身体が左に傾いた。


「おわっ! フレイ! 左手を急に引っ張るとびっくりするだろ、感覚が無いんだから」


 何を思ったのかフレイは僕の左手をわざと引っ張っていた。おかげでフレイの身体に頭をぶつけてしまった。思ったよりフレイの身体が柔らかくて痛くはないけど――


 ――これは……


 僕が黙って担保機能を使ったことを怒っているのだろう。


「ほんとに、感覚無いんだ。……分かった。でも、ルシール目が見えないから、前衛は危ない。私もルシールの隣りを歩く。これ絶対だよ」


 ――そうか、今のは怒っていたわけじゃなくて、僕がちゃんと前衛ができるか確かめたかったのか。今は左腕動かないもんな。


「そうだね。左側に不安があるし、それがいいかも。

 今の僕は魔力の流れしか見えないから、何かあったらいけないしな」


 僕が立ち上がると、言葉通り、すぐに左側にフレイのシルエットがピタリと近いてきた。


「……魔力の流れだけ、なの?」


「そうだよあれ、何か少し歩きずらいね?」


「気のせい」


 フレイは、嬉しそうにルシールの左手をずっと握ったまま歩いていたのだが、感覚のないルシールは気づくことがなかった。


 ――――――――――――――――――――


【名前:ルシール:LV10→11】

 ギルドランクF


 戦闘能力:171身体能力低下中(121)

 種族:人間??

 年齢:14歳

 性別: 男

 職業:冒険者

 スキル:〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉

 〈文字認識〉〈アイテムバック〉〈貫通〉

 〈馬術〉〈カウンター〉〈早寝〉

 〈早起〉 〈早食〉 〈早技〉〈早足〉

 〈早熟〉〈治療:2〉〈回避UP:3〉

 〈剣術:3〉〈見切り:2〉〈捌き:2〉

 〈毒耐性:2〉〈覗き見:2〉

 〈危険察知:1〉

 固有スキル:〈浄化〉〈魔眼:2〉up


 魔 法:

 〈生活魔法〉

 〈初級魔法:1〉


 *レジェンドスキル:《スキルショップ》

 《スキル制限解除》

 所持金 :4,513カラ

 借金残高:シャルロッテ3,949,850カラ

 フレイ  300,000カラ


 スキルショップ借入:61,200,000カラ増

 担保提供:左手、左腕、視角左右、聴覚左、味覚


 ――――――――――――――――――――


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