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22

 姿を現したゴブリンが、僕とフレイを見て鼻をヒクヒクさせたかと思えば、汚らしい笑みを向けている。


『ウマソウナ、ニンゲン……』


 大きなゴブリンは完全に僕たちをご馳走だと認識したようだ。


「くっ……」


 この完全に姿を現したゴブリンは五メートルもの巨体のため、僕は自然と奴を見上げる形になっている。


 ――あんなに大きいんだ。必ずスキがあるはずだ。


 いつでも動けるよう前傾姿勢の構えをとった僕は風のシルエアとショートソードを両手に握り力を入れた。


「ルシール」


「分かってる……」


 僕は背を向けたままフレイにそう返した。


 ――分かっているよ……フレイ。


 そう、アンクゴブリン(ゴブリン穢れ)の先ほど放たれた咆哮に応えるように、ゴブゴブの森の中で、僕たちの気配察知スキルに引っかかっていた魔物がこちらに向かって来ているのだ。


 ――のんびりはしてられない。でも、あんなデカイゴブリン、僕にやれるだろうか……いや、僕がやるんだ。スキを作るんだ。


 僕は流れ出していた額の汗を雑に手の甲で拭いとると――


「僕が奴に斬りかかったら、フレイはすぐにポーションを使ってくれ」


「ん」


 フレイからの返事を背中で聞き僕はアンクゴブリンに向かって駆け出した。


「このおおぉ!」


 ――――

 ――


「はぁ、はぁ……」


 動けないフレイの方にアンクゴブリンの意識を向けたくない僕は、常に足を動かし、休みなく二つの剣を振り回していた。


「そんな、攻撃……」


 ――今だ!


 力任せで振り下ろされたアンクゴブリンの攻撃を見切りで躱すと、一気に距離をつめアンクゴブリンの片足に足を掛け蹴りつけ、その反動で飛び上がった。


「たあああ!」

 ザシュッ


 飛び上がった先には伸びきったアンクゴブリン右腕ある。僕は身体を回転させ風のシルエアを伸びきった右腕に叩きつけると、抵抗なくアンクゴブリンの右腕を切断した。


「はあぁぁ!」


 ――やったか!


 何度か斬りつけていて分かったが、このゴブリンはシャルさんと一緒に討伐した穢れ魔物よりも動きが鈍い。


 だから僕でも、スキをつけばゴブリンの右腕くらい切り落とせるだろうと思ったが、これほどうまくいくとは思わなかった。


「っよし!」


 僕は着地と同時に転がり起きるとすぐさまアンクゴブリンに向き直り、奴の右手を確認したのだが――


『グゲ……チョコマカト……コザカシイ』


 アンクゴブリンは表情を変えることなく、左手を振り上げ攻撃する体勢に移っていた。


「ちっ! これもダメ……効いてない」


 ――これで右手も足首もダメ。首元だって斬りつけたのに……!?


 うまく切断した奴の右手も黒い煙に包まれてすぐに元に戻ってしまった。


 ――やっぱり、シャルさんの浄化がないと……無理なのか。


 一向に疲れを見せないアンクゴブリンと違い、僕の額からは大粒の汗が流れはじめていた。


「はぁ、はぁ……」


 ――体力がついて自信もあったのに。これ以上はさすがにまずい。思った以上に体力を消耗させられている。


 僕がどう攻めようか、攻めあぐねていると――


「ルシール!」


 フレイが不安そうにこちらを見ている。僕は右手を軽く上げまだまだ余裕のあるところをみせる。


 ――フレイにバレたかな……はぁ、情けない。気を引き締めないと!


「フレイ、大丈夫だ」


 フレイには周囲を警戒してもらい、僕が危ない時に魔法を放ってくれている。

 アンクゴブリンには効かないと分かっているけど、それでもわずかにゴブリンの手が止まってくれるので助かっている。


 けど、そのためフレイも少しずつ魔力を消費している。周囲に気を配っているのだろうフレイの額にも汗が浮き出ている。


 ――このままじゃ、やばいな。


 僕は横目に帰路を一瞥した。


 ――くそぉ。


 退路はアンクゴブリンの咆哮で集まって来たゴブリンに断たれてしまった。僕たちの気配察知にもかからなかった雑魚だっただけに油断した。


 ――あの数じゃあ。


 今はこちらのやり取りを眺めているだけで、手を出してくる素ぶりは見られないが、数が多くて簡単には突破できそうにない。


 ほんとうは退路を遮るゴブリンに向かってフレイの魔法を軽くぶつけて、開いた退路を一気に駆け抜けるってことも考えてみたが、そううまくいくとも限らないし、それが切っ掛けで一斉に襲って来られたら元も子もない。


 ――どうしたらいいんだ? シャルさんならどうしただろう……


「ルシールこのままだと」


 フレイから、また不安そうな感じがする声が聞こえてくる。


「あ、ああ、分かってる」


 そうフレイに強がって見せているが、もうあまり時間はなさそうだ。僕たちが戦闘を避けてきて危険察知スキルに反応する魔物が近づいて来ている。


 ――どうにかして、退路を遮るゴブリンを……


『グゲゲ……ニゲルナ……』


「え!? な、んで……」


 のらりくらりの動いていたアンクゴブリンから退路にいるゴブリンに意識を向けていた僕は油断し、不意を突かれた!


 アンクゴブリンは復元したばかりの右手と、左手から鋭利な爪を長剣のように伸ばし襲ってきていた。


「ぐっ、やばっ!」


 ――み、右か。


 アンクゴブリンからの爪撃に一瞬ヒヤッとするが……


「くのぉ」


 僕は見切りを使って紙一重で避け、大振りして体勢が崩れたアンクゴブリンの懐に転がりこんだ。


 ――危なかった……!?


 バランスの崩れたアンクゴブリンは前傾姿勢となっていたため、僕のすぐ目の前にはアンクゴブリンの腹部がある。


「はぁぁあっ!」


 僕は、立ち上がり際に、両手に握る剣を突き刺し腹部から顎にかけて力一杯斬り上げる……


「たぁ! ……!?」


 僕が斬り上げた両手の剣には、肉を断ち切る感触はなくスルッとアンクゴブリンの身体を抜けた。


「うわっ!」


 今度は僕のほうが体勢を崩しそうになり、慌てて踏ん張って体勢を整える。


「はぁ、はぁ……」


 ――危うく、後方に倒れるところだった。せっかく、奴の身体を斬れているのに……斬った感触がない。


 正確には、斬り込んだ感じはあるのだが、皮一枚斬り込んだ瞬間からスルッと抵抗が無くなるのだ。


 だからこそ、奴の身体の中にスライムみたいに魔核らしきものでもあれば倒せなくても、ダメージを与えれるかもと思ったのだけど……


 ――ダメか……


『ニンゲン、チョコマカ、ウットウシイ!』


 アンクゴブリンは斬られて? いることを気にすることもなく僕を身体ごと掴もうと、両手で突き出してきた。


 ――まずい! 掴まれる……


 そう思ったのだが、長く伸びた爪がアンクゴブリンの掴むという行動を妨げてくれ――


「く、う……」


 僕は身体を屈めることで辛うじて躱し、アンクゴブリンの間合いから素早く後転して逃れることに成功した。


「はぁ、はぁ……」


 ――でも、このままじゃ……


「ルシール! 時間ない」


 ――ここまでか……


 うまくスキを作ることはできなかったけど、時間は稼げたはずだ。


「フレイ、そろそろ足はどうだ?」


 ――無理そうならもう少し時間を稼がないと……痛む足のままじゃ長い距離を走れないだろうし、今までやってきたことが無駄になってしまう。


 正直、近づいてくる正体不明の魔物の気配が怖いところだけど、ゴブリンたちのように見守るだけで、何もしてこないかもしれない。


 そうであってくれ、と祈るような気持ちで都合よく考え、多少現実逃避をしてしまったが、フレイは僕に大丈夫と頷き地面に足をトントンとつけてくれた。


「ポーションが効いた」


 その返事に安堵した僕は――


「良かった。じゃあ、ここから離脱しよう。今から僕がアンクゴブリンの足下を狙って蹴りを入れ転倒させてみるから、蹴りを入れたら直ぐに……あっちをやれる?」


 アンクゴブリンはバカのひとつ覚えなのか、僕が近づくと力一杯両腕を振り回すのだ。


 それさえ凌げば、前傾姿勢になった奴に蹴りを入れてやるだけで僕の力でも転倒させれると考えていたのだ。


 フレイだって気がついていたのだろう、僕の考えてに同意して、すぐに――


「大丈夫。あいつらに魔法を打つ」


 フレイは視線だけを動かし退路を妨げているゴブリンに向けた。


「うん。その後は、すぐに僕が退路にいるゴブリンに突っ込むから、フレイはすぐに僕の後を着いてきてくれ」


「分かった」


 フレイが退路に意識を向け魔法の準備をしているのを確認した僕は、アンクゴブリンに向かって一気に駆けた。


「はあぁぁ!」


『グゲッ、オマエタチニゲルキダナ……ナラバ、ニゲレナイヨウ、スレバイイ、ゲヘゲヘッ』


 ――……何を言ってる。いや、今は関係ない。僕が近づけば奴が攻撃してくるはずだ。


『ゲヘゲヘ……』


「!?」


 だが、そのアンクゴブリンが先ほどまでと様子が違った。今までは僕が近づくだけで殴る、もしくは蹴る、などの単調な攻撃しかしてこなかったアンクゴブリンが――


 ――なんで……両腕を振り上げてないの……まさか、蹴りか? 蹴りならば尚さらいい。


 僕が構わず駆けていると、アンクゴブリンは僕の予想に反して、両手を広げ指先をこちらに向けてきた。


『グヘヘ、ニガサナイ……!』


 アンクゴブリンが口元がニヤリと弧を描く。すると、両手からではなく、奴は口から緑色の何かを飛ばして来た。


「まずい!」


 駆けながらも咄嗟に顔の前で両手の剣をクロスさせ防御の体勢をとってみたが――


 ――……なんともない、外れた?


 僕の身体に変化はない。身体に痛みもなく、傷を負った感じもしない。

 ならば、予定通りこのままアンクゴブリンに蹴りを入れる。


 そう、僕が判断したところで――


「きゃっ」


 後方からフレイの悲鳴とドサッと倒れこむ音が聞こえてきた。


「フレイ!?」


 僕は叫びながらもスピードが乗っていて急には立ち止まれなかった。


「こっのぉぉおっ!」


 僕はフレイの様子が気になり焦りながらも、ニヘラと満足そうな笑みを浮かべ棒立ちになっていたアンクゴブリンに駆け上がり、胸部を強く蹴りつけた反動で身体を反転させた。


 残念ながら蹴りつけたアンクゴブリンを転倒させることはできず、多少グラつかせ二、三歩後退させただけだったが、それよりも今は――


 ――フレイ!


 僕は慌ててフレイの傍に駆け寄った。


「フレイどうした! 大丈夫か!」


「らめ、しひ……れ、へる」


 倒れ横になっていたフレイが呂律の回ってない言葉を発して必死に訴えてくる。


「痺れ? ……ん!?」


 ふと、フレイの左肩で何か光った。


 ――これは針っ!


 それは、よく見なければ分からないほど細長い針だった。その針がフレイの左肩に刺さっていた。


「フレイ、左肩に針が刺さってる。これは痺れ針っ!」


 フレイは苦しそうにゆっくり頷いた。


るしーる、らけ……(ルシール、だけ……)れも、にへ……へ……(でも、逃げ……て……)


 フレイの発する言葉は分かりずらかったが、僕には、なんとなくフレイが言わんとすることが分かった。


「それはダメだ」


 僕は首を振って否定する。するとフレイは泣きそうな顔をしながらも、どこか必死に、口を開いてくる。


お、れがい。ころ、(お、願い。この、)まま、らと、(まま、だと、)るしーる、まれ(ルシール、まで)


 ――そんなこと分かってるよ。


「ダメだ」


 僕はまた首を振って否定する。


 ――そんなこと、分かってる。でもそれは嫌だ。嫌なんだ。


 僕は焦りながらも必死に考えた。フレイとともに生き残るすべを……


 ――どうすれいい、僕はどうすればいいの? シャルさん……


『グゲゲゲ……』


 アンクゴブリンが勝ちを確信したかのように、のそりのそり余裕の表情で近づいて来る。


るしーる、はあく(ルシール、早、く)


「フレイ。それは……ダメだ。ダメなんだよ」


 ――くそぉ……シャルさんの浄化さえあれば。


 何もできない自分が悔しくて、気づけば僕の握りしめていた両手に爪が食い込んでいるのか、赤い液体が流れ出していた。


るしーる……(ルシール……)


 ――浄化さえ、僕に浄化さえあれば……浄化!? そうだ、僕が浄化を買えれば!


 僕はフレイを庇うように立ち上がりると、半身を前して構えをとった。これは少しでも警戒され時間稼ぎにでもなればという打算からだ。


『グヘヘ……』


 警戒はされなかったが、勝ちを確信しているアンクゴブリンは僕らを舐めているのだろう。腕を組んだまま舌舐めずりし、何かする気か、好きにすれば、とでも言わんばかりに弧を描いた笑みを浮かべつつ僕らを見下ろしていた。


 ――くそぉ。でも今はそんなことどうだっていい。スキルショップだ。


 僕は素早くスキルショップを展開した。


るし、ーる?(ルシ、ール?)


「フレイ。浄化だ、浄化さえ買えればいいんだ」


 僕は背を向けたままフレイにそれだけ伝えると、開いている片目をアンクゴブリンに向けつつも、意識はスキルショップに向けた。


 ――急げ……


 スキルショップを展開した僕はいつもの無機質な言葉に迎えられるも、それを遮り、すぐに、浄化のスキルと念じた。


 すると、検索します、の声の後には、浄化のスキルが現れたが、その文字は黒い文字だった。


 ――100万カラ……でも、これならフレイに借りればなんとか……


 バカ高い値段ではなく、フレイに借りればなんとか手の届く範囲の金額に安堵していると――


【浄化スキルはエルフ族の固有スキルです、現状では購入出来ません】


 ――うそ、だろ……


 僕は返ってきた言葉に肩の力が抜けた。


 ――エルフ族の固有スキルだなんて……


 でもここで諦めたら、フレイと僕は奴に喰われてしまう。そう思った僕は再び折れそうになっていた心を奮い立たせ食い下がる。


 ――そんなの……何とかならないのか!


 するとどうだ――


【……スキル制限解除を持っていれば購入出来ます】


 しばらく沈黙が続いたが、スキルショップが対策立案してきたのだ。僕は思わず聞き返していた。


 ――スキル制限解除? そのスキル制限解除って……あ、いや、それが必要ならそのスキル制限解除を買いたい。


 僕に反応するように、スキル制限解除のスキルが表示されたが、僕はその金額に愕然とした。


 ――5000万カラ! ウソだ、ろ……これじゃとても手が届かない……


 今度こそどうしようもない金額だった。しかしどうしようもないと分かっていても、諦めきれない僕は――


 ――頼む、これをどうにかして買えないだろうか? 買えるのならなんだってやる。


【なんでも……では、お奨めできませんが、担保機能をご利用されますか?】


 ――え? 担保? 担保機能って何?


【はい。それは、ルシール様ご自身の身体機能を預け入れてもらうことでそれに見合ったお金を貸し与えることができる機能です。

 ただし、このお金はスキル購入のためにしか使えません。

 また、身体の機能は完済するまで元に戻りません】


 ――そんな機能が、分かった。それは、どうすればいいの?


【はい。貸付できる金額はご覧の通りです】

【手:左右それぞれ…………50万カラ】

【腕:左右それぞれ…………50万カラ】

【足:左右それぞれ…………100万カラ】

【視覚:左右それぞれ……1000万カラ】

【聴覚:左右それぞれ……1000万カラ】

【味覚…………………………2000万カラ】

【触覚…………………………2000万カラ】

【嗅覚…………………………2000万カラ】


【但し返済金額は貸付した金額の1、2倍の金額が必要になります】


【貸付した場合の返済金額はご覧の通りです】

【手:左右それぞれ…………60万カラ】

【腕:左右それぞれ…………60万カラ】

【足:左右それぞれ…………120万カラ】

【視覚:左右それぞれ……1200万カラ】

【聴覚:左右それぞれ……1200万カラ】

【味覚…………………………2400万カラ】

【触覚…………………………2400万カラ】

【嗅覚…………………………2400万カラ】

【……です】


 ――わかった……


る、し、ーるろ、う(ル、シ、ールど、う)ら、の。じょか、わ?(な、の? 浄化、は?)


 僕は一旦瞳を閉じ深く息を吐いた。


 ――よし。


「フレイ、何とかなりそうだよ」


 不安そうな声をかけてくるフレイに僕はそう返していた。


 ギャァギャァ……

 グギャギャ……


 ちょうどその頃、周りのゴブリンたちまでもが騒がしくなっていた。


 いよいよ時間稼ぎも限界らしい。もうすぐ俺たちを狩れると歓喜の声でも上げているだろう。


 アンクゴブリンもそれに釣られてバカみたいにはしゃぎ踊り始めた。


 ――担保機能を利用します。担保にするのは左手、左腕、視覚左右、聴覚左、味覚だ。


【……。畏まりました。それでは身体の機能を担保に5100万カラ貸付いたしました。

 返済金額は6120万カラになります。よろしいですか】


 ――それでいい。


【……。では身体の機能を担保提供いただきます】


 ――うん。分かった。


 そう頭に声が響くとプツッと、視界が真っ暗になり、何も見えなくなった。


 左手左腕には感覚すらない。


 ――これが担保機能を使った代償。や、やばい、何も見えない早まったか?


 恐怖で冷や汗が背中を伝っていく。視覚を失うということが、僕の思ってた以上にヤバかった。


る、しー、る(ル、シー、ル)くる、よ(来る、よ)


「……ああ、フレイ。あと、少しだ。後少しで終わるから」


 ――片耳だけどフレイの声は聞こえる。そうだ。今はこの場を何とかしないと。後のことは、それから考えればいい。


 そう考えると、幾分が心が気持ちが軽くなった。


 ――浄化とスキル制限解除を購入する。


【ありがとうございます】


 そんな声とともに――


【ルシールは浄化スキル、スキル制限解除スキルを取得した】


 スキルを取得した声が響いてきた。


 ――よし。


 目の見えなくなった僕が、これをどうやって奴に使おうと考えていたところに――


【カラーンカラーン】


【おめでとうございます。今回、購入しましたスキル制限解除には特典が付きます】


 当たりを知らせるような祝福のベルのような音とともにそんな内容の無機質な声が頭の中に響いてきた。


 ――へっ? 特典?


 すると、どうだ。僕が深く考える時間もないまま――


【魔眼スキルを取得した】


 気づけば新たなスキルを取得する声が響いてきた。


 ――魔眼……?


【魔眼スキルは魔族の固有スキルです。レベル1では魔力を感知出来ます。ご利用は計画的に】


 ――あれ、今のが説明……


 僕が色々とついていけなくて、疑問符を浮かべいる間に、プツリとスキルショップが切られていた。


 ――なんだったんだ……あれ? ぼんやりと魔力の塊が見える様になったぞ。

 ……助かった。近くにいるのがフレイで、あっちがアンクゴブリンだな! 魔力の塊がでかいな。これならヤレるぞ。


【ルシールは浄化を発動した】


 ――――

 ――



 〈スキル神〉


『かー、なんて無茶をするんじゃ、この少年は。人族をやめてしまったぞ。しかし、なかなか粋なことをするもんじゃ。ふぉふぉふぉ、さすがワシがスキルショップを与えただけある少年じゃわい。

 少年よ。ワシは嫌いじゃないぞい。お主の心意気。咄嗟に担保なるものを創ってしまったが、まあ良いじゃろ』


 スキル神は何やらマイクらしきものを片手に頷き、にまにましながら水晶を覗きこむ。


『魔眼はサービスじゃ、本当は魔族しか扱えんのじゃが、スキル制限解除もあることじゃし。よいじゃろう。

 まったく、いきなり目が見えなくなったら戦えんだろうに、少年よ感謝するのじゃ。

 なあに。お礼ならもっともっとスキル取得に励めば良いのぞ。ふぉふぉふぉ』


『スキル神様何をぶつぶつひとりで呟いてらっしゃるのですか?』


 ギクッ!


『神使スキラよ、どうしたのじゃ、な、なにようかのぉ?』


『スキル神様、おかしいですね。何か強いスキルの気配がしたのです、よ?』


『そ、そうか? ワシは知らんぞ、ちと小腹が減ったわい。ワシはちとお茶してくるでな。後はよろし〜』


 ガシッ!


『神使スキラよ。どうした。何故にワシの頭を掴むのじゃ。

 な、何怖い顔してるんじゃ、そんな顔してると、また皺が増えて深くな……』


『皺ですか? 皺……へぇぇぇ、スキル神様がそれを言います、か』


『そ、その笑顔は……ま、まってくれ、話せばわか……グハッ』


『えっ、何ですか? よく聞こえませんが……はっきりおっしゃってください、ね? スキル神さ、ま』


『ふぎあああぁぁぁぁ……』



 ――――――――――――――――――――


【名前:フレイ:Lv11】ギルドランクE


 戦闘能力:80

 種族:人間

 年齢:13歳

 性別: 女

 職業:冒険者

 スキル:〈棒術:1〉〈文字認識〉

 〈魔力操作:2〉〈魔力回復:1〉

 〈魔力量UP:1〉〈毒耐性:1〉

 〈危険察知:1〉

 魔 法:

 〈生活魔法〉

 〈水魔法:2〉

 〈風魔法:2〉


 ――――――――――――――――――――


【名前:ルシール:LV10】

 ギルドランクF


 戦闘能力:151

 種族:人間??

 年齢:14歳

 性別: 男

 職業:冒険者

 スキル:〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉

 〈文字認識〉〈アイテムバック〉〈貫通〉

 〈馬術〉〈カウンター〉〈早寝〉

 〈早起〉 〈早食〉 〈早技〉〈早足〉

 〈早熟〉〈治療:2〉〈回避UP:3〉

 〈剣術:3〉〈見切り:2〉〈捌き:2〉

 〈毒耐性:2〉〈覗き見:2〉

 〈危険察知:1〉

 固有スキル:〈浄化〉new 〈魔眼:1〉new


 魔 法:

 〈生活魔法〉

 〈初級魔法:1〉


 *レジェンドスキル:《スキルショップ》

 《スキル制限解除》new

 所持金 :4,513カラ

 借金残高:シャルロッテ3,949,850カラ

 フレイ  300,000カラ


 スキルショップ借入:61,200,000カラ増

 担保提供:左手、左腕、視角左右、聴覚左、味覚


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