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ここはマクール王国、人族が治める国。
この国の王都クイールの周辺には森や洞窟、湿地帯、谷山などさまざまなダンジョンがあり、いや、ダンジョンまでの拠点としてできた村が発展し王都と呼ばれるまでになっていた。
そのダンジョンは誰にでも挑戦できるような簡易ダンジョンから、ベテラン冒険者でも気を抜けばすぐに命を落とすような超難易度の高いダンジョンまで広く網羅していた。
それゆえ冒険者たちにとっては始まりの街とも冒険者の聖地とも呼ばれていた。
そんな街だからこそ、行き交う商人や一攫千金を夢見る冒険者で賑わい、活気溢れる街となっていた。
「ほら、またあの子よ」
「ぷっふふふ、あの子ああやって悩んでるけど、いつも同じ依頼書を持ってくるのよ」
ここは、冒険者ギルド、そんな会話をする受付嬢の視線の先には、掲示板の前で悩み依頼を探す少年がいた。
「ぷっ……何それ笑えないんだけど、冒険者やめればいいのに」
「ほんとよね……あはは」
「見て見て、ほら取ったわよ」
「ぷっ、ほんとだわ」
「そこ、静かに!! みんな見るてるわよ」
「はいはい」
「はーい」
その少年は、自信なさげでどこか印象は薄い。
体格は線が細く頼りなく感じ、どこか幼さが少し残る黒髪の少年だった。
――――
――
僕はルシール14歳。職業は冒険者だ。
子供の頃よく読んだ英雄物語や、異世界勇者伝に憧れ家を飛び出した。
みんなの憧れる冒険者になりたかったんだ。
どんな困難があろうとも絶対に冒険者になってやろうと気合い十分で冒険者ギルドの門をくぐったんだけど……
「はい、今からあなたは冒険者ですよ」
「……えっ」
受付のギルド嬢にそう言われ、冒険者プレートを手渡された。
「試練は……?」
「はい? ルシール様……次の方が支えてますので……」
後ろを振り返えれば、僕の後ろに並んでいる冒険者が不機嫌そうな顔で睨んでいる。
「あっ、はい、ごめんなさい」
そう、僕はその日、簡単に冒険者に成れてしまったのだ。
僕は知らなかった。冒険者ギルドに登録すれば誰でも冒険者になれるということを……
そんな僕は、王都で活動している。
王都は安全なんだ。騎士団が定期的に巡回し魔物討伐しているのもあるが、冒険者の数が多いのもある。
そのため王都周辺にはスライムやウリボアなど最下級の魔物レベル2程度の魔物くらいしか発生しない。
魔物は魔素から発生するらしいく、定期的に間引く事で強力な魔物の発生を防いでいんだ。と他の冒険者が話してるのをたたまたま聞いた。
――じゃあ、その魔素は何処からくるの?
僕の疑問は絶えないが、この答えはまだ見つかってない。
そんな僕は、はっきりいって弱い。情けないほどに……
冒険者歴2年になるのにレベル3、スキルなし、魔法なし。
戦闘経験も少なく……ごめんなさい嘘です。
戦闘経験は全くないです。
はい。レベルも薬草採取の経験値で上がりました。
そう、普通に生活しているだけで誰でも経験を積むことができる。
ある一定の条件を満たせばレベルアップ時に戦闘能力が大幅に上がるらしいけど、残念ならが僕にはそんな経験はない。
だってレベル3だし……レベル1の頃から比べても戦闘能力はだったの2しか上がってない。たったの2なんだ。
だから大幅に上がるという話に期待したいけど、この話、ほんとかどうかも怪しい話なんだ。
なんせ酒でベロベロに酔っていた冒険者の話だから。
――でも、大幅にって何れくらいなんだろう。
そんな僕は「普通に生活していればお爺ちゃんになるまでにレベル5はなれるんだぜ。
それより低い冒険者なんて冒険者じゃねぇ」とよくバカにされることがあるけど、この街で、レベル5のお爺ちゃん何て見たことない。
冒険者の多い街だし、冒険者をやめた人が商売をやっていたりもするから、実際はもっと高い。
あ、でもレベル2の子どもはごろごろいる。
僕も登録時にレベル2だった……
これで分かると思うけど、冒険者歴2年でレベル3の僕は……落ちこぼれ。
要するに冒険者になって1年も経てば必然的に、駆け出し冒険者を卒業できる。
その時にレベル5に達してない冒険者は冒険者として見てもらえない。
僕だって、何とかしようと努力はしている。
――スキルさえあれば僕だって……
僕は毎日欠かさず素振りをしている。もちろん剣術スキルを身につけたいからなんだけど、未だに身に付かない。
魔法だって使えない。
他の冒険者の話によると熟練を積むと、神託があってスキルを使えるようになるとか、ならないとか……
残念ながら僕はそんな経験をしたことないから分からない。
何もない僕は、足手纏いにしかならないから誰もパーティーに入れてくれない。
一度パーティーに入れてもらった時は死ぬほど嬉しかったけど、森で囮役にされ本当に死にかけた……役に立てるから本望だろうって笑うんだ……酷いよね。
当然、そんな囮役なんて嫌だし僕は必死で逃げた。
幸い、そのパーティーはすぐに居なくなってくれたから助かったんだ。
他の町に拠点を移したのだろう。と都合良く考えている。
だからいつも僕は一人。
でも、それでいいんだ。小さい頃読んだ英雄はいつも孤独だったんだ。
僕も……孤独。
そして今日も薬草採取の依頼を手に取る。
――よし、今日も頑張ろう!
ぐっと拳を握ると手に取ったばかりの依頼書がグシャと潰れる音がした。
――あっ。
僕は慌ててしわくちゃになった依頼書を広げて、受付カウンターに持っていった。
手続きをすませ、ギルドを出ようとすると――
「やぁ、ルシール先輩。まだ薬草なんか採集してるんだ」
声がした方に振り向くと、1つ年下のアレスがいた。
アレスは冒険者歴は1年と短いのにレベルはすでに10になっている。
アレスはすごい。剣術だけしゃなく魔法も使いこなす王都冒険者ギルドでは期待の新人だともてはやされている。しかも美少年。
冒険者ランクもEになり最速最年少記録を達成したそうだ。
冒険者ランクは下からH.G.F.E.D.C.B.A.S.SSの十段階。
ちなみに僕のランクはG、やっと1つ上げてもらえた。
今はこんなに差が開いてしまったけど、会った当初は、先輩らしく冒険者の基本を教えてあげたんだ。
まあ、一月もしないうちに立場が逆転したけど……
「やあアレス。そうだよ。たまには討伐依頼もしたいけどね……」
焦って討伐なんて口走ってしまった。先輩だった、というちょっとしたプライドがそうさせた。
そんなアレスたちは人族の幼馴染みの四人パーティーで活動している。
――どうして強い人には、強い仲間がいるのだろうか。羨ましい……
「あはは……ルシールが討伐だって!! 笑っちまうぜ」
僕をバカにして言うのはラインだ。
剣術が得意な13歳。とても13歳とは思えないほど体格のいい赤髪の少年。
ギルド内からも僕に呆れたような視線が集まっている。
――しまった。周りにも聞こえてしまったらしい。
「ちょっとライン。笑ったら可愛そうよ」
「違うマリア。冒険者の恥。だから」
いつも何かと同情し庇ってくれるのが、落ち着いた雰囲気のある水色髪の美女マリアで、魔法が得意な青髪美少女フレイは雰囲気からして冷めた感じだが放つ言葉もたんたんとして冷たい。
不意に視線を感じ、アレスに目を向ければ――
――えっ……
「何ですかルシール先輩」
一瞬だがアレスまでも、僕を見下していた様に感じた……
――気のせい、だよね?
アレスは実力があっても決して驕らず、こんな僕でも先輩と慕ってくれていた。だからきっと――
「な、なんでもないよ」
僕の見間違いだと頭を軽く振った。
「あっ。そうだルシール先輩」
そんなアレスが突然、真剣な表情で僕に語り出した。
「凄い情報がありましたよ」
アレスが言うには、王都の近くにスキルのダンジョンというものがあるらしく、そこの最下層にはスキル神像があるというのだ。
何でもそのスキル神像に向かって祈ると何らかのスキルが貰えるらしいと教えてくれた。
「ルシール先輩の助けになると思うんだよね。はい、これがダンジョンへの地図です」
――ほら、やっぱり見下したように感じたのは僕の見間違いだった。よかった。
「い、いいのか?」
僕はアレスから地図を受け取りはしたが、先輩なのになんか申し訳なくてアレスと地図を交互に見ながら御礼を伝えた。
「どうぞ。気にしないで下さい」
聞いていたギルド内の冒険者たちもニヤニヤ、ニタニタしている。
――みんなも貰ったのかな。それなら僕だってスキルがほしい。
「でも、スキルが貰えるってほんとうなの?」
「先輩。みんなも最初はこのダンジョンに行ってますよ」
――知らなかった。
「そうなの? あ、いやそうだよね。
あははは……よし、スキルのダンジョンはこの地図によると思ったより近いみたいだら、うん。早速行ってくるよ。僕のためにありがとう!!」
僕は再びアレスにお礼を言って勢いよくギルドを飛びだした。
「……気分が悪いわね。あんなヤツが期待の新人だったなんて……持ってるかと思ったけど普通ね。
やっぱり、もうこの街にはいないのね」
ギルドの依頼掲示板の側で、マントを羽織った金髪の10代半ばにみえる美少女が後ろ目に小さく呟いていた。
――――
――
――ギルド内 《アレス視点》――
「あはははは!! さっきのルシールの真剣な顔、ありがとう! だってさ。
アレスさっきのダンジョンってたしか地下二階までしかない、ただの初心者用のダンジョンだろ」
冒険者なら誰でも知っている当たり前のことだった。
「そうだよ。でも昔は本当にスキルダンジョンって呼ばれていたから嘘は言ってないよ」
アレスから悪びれる様子は見られず、澄ました顔でそう返した。
すると、フレイがため息混じりに毒を吐いた。
「無知は罪。スキル貰って活躍できる話なんて物語の中だけ」
「ふっ。そうさ俺は魔物と戦いもしない、ゴブリンも倒せないような奴を冒険者だと、語っているのが我慢できなんだよ」
「アレス……でも、あの人弱いし一人よね? 大丈夫かしら?」
「おいおい、マリアぁ……たかだかレベル2のゴブリンが出るだけのダンジョンだろ? 目隠ししてたって死ねる自信ないぞ」
「そう、なら、マリアがついて行けばいい」
「フレイの意地悪。私はアレス以外とはパーティーなんて組まないわ」
「ふふふ、ありがとうマリア」
アレスが優しい視線をマリアに向けフッと微笑みを向けると、マリアの顔が真っ赤に染まる。
「……う、うん」
「ふふ、さあ、アイツの話はここまでだ。そろそろ、俺たちは南の森にでも行ってみようか?」
「いく」
「はい」
「いこぜ!!」
「じゃあ、決まりだな。Lv10の魔物が出るから気を付けていこう!」
――――
――
僕は今、スキルダンジョンの外にいる。中にはまだ、入ってない。
ダンジョン内を覗きこんみ様子を見ている。
「教えて貰ったダンジョンはここだよなぁ。近かったけど……本当にスキル貰えるのかな……凄いダンジョンのなんだよね?」
辺りを見渡すも誰もいない。
――よ、よし! は、入ってやるぞ……
僕はそろりと右足だけを踏み入れて、きょろきょろと辺りを見渡した。
自慢じゃないが、スキルや魔法が使えなく仲間の一人もいない僕がダンジョンに入るのはこれが初めてだ。
「やっぱりダンジョンだけあって魔物はいるよね?」
「……」
僕の問いに返事はない。当然だ、僕は一人なのだから。周りにも冒険者らしき人物も見当たらない。
「魔物さーん、いますか〜」
「……」
ダンジョン内に僕の声が響く。
しばらく待ってみるけど、なんの反応もなく辺りはしーんと静まり返ったままだ。
これで本当に魔物がいるのかと疑ってしまうほど静まり返っている。
――ええい。スキルのためだ。
「なるべく魔物が出ませんように……」
僕は祈るように呟くと左足も前に出しダンジョン内に入れた。
――出たらとにかく逃げよう。
不安ながらもスキル獲得という、一縷の希望を持ってダンジョンに挑んだ。
――あれっ?
僕の目の前に丸い水晶みたいなものを持った老人の巨大像がある。
「着いた、の?」
あっさりと冒険者にも、魔物にも遭遇せず、僕は最下層の奥の部屋到達した。
「着いたんだ」
ほぼ一本道だった。地下二階までしかなかったけど、隠し通路らしいものもなかったと思う。
魔物にも遭遇しなかったし、今日の僕は運がいいんだと思う。
「これがスキル神像、いや、神像様。い、意外に大きいなぁ」
僕は調べるために、ゆっくり神像様に近づいた。
――あれ?
「この後どうすればいいの?」
巨大な神像様の周囲をぺたぺた触れながら回ってみるが、怪しいところは何もない。
「素直にお願いすればいいのかな? スキル下さいって」
――ん? 今何か……
後ろから何かの足音が聞こえた気がした。あわてて通路の方を振り返ってみると……
「ゴフ、ゴブブ!!(あそこぎゃ。久し振りに人族の子供の匂いがすると思ったらいたぎゃ、久しぶりのご馳走だぎゃ!!)」
「ゴブブブ!(ご馳走俺の物だぎゃ)」
――ええっ!
「なんで、なんでご、ゴブリンが……」
ゴブリンの群れが近づいて来ている。
ここから見えるだけでも先頭に二体、さらにその奥にもゴブリンの肩や頭がチラチラ見えている。
「ど、ど、どうしよう……」
――どこにいたんだよ、一本道だったよね?
ゴブリンの方を確認しながら後ずさりした僕は、スキル神像様の後ろに隠れた。
――どうしよう、どうしよう。
でも、すでに見つかっているので隠れたって意味がないことは分かっているんだけど、気持ちの問題なんだ。
――なっ、何であんなにゴブリンがくるんだよぉ!
ズンズンッズンズンッと足並み揃ったゴブリンたちの足音が響いて聞こえてくる。
――もうダメだ、数が多すぎる。これは……詰みですか?
どうすることもできない僕はスキル神像様を見上げて正座をして両手をついた。
――いやだ、そんなの嫌だよ。
僕は大声で叫んだ。雨乞いみたいな格好だ。
「いやだぁぁぁ。スキルの神像様……スキル神様ぁぁぁ……助けて下さいぃぃ。僕にスキルをくださいぃぃぃ、おねがいしますぅぅぅ」
僕の心からの叫びがダンジョン内に響きわたるが、なんの変化もない。
ゴブリンたちの足音は近づくにつれ、ズンチャカ、ズンチャカ、とリズミカルな足音へと変わっていた。
まるで、獲物が獲れる喜びを表しているようないやな足音だった。
「ぁぁああ、もぅ、もう、ダメだぁぁぁ、そこまで来てるぅ~」
僕は、ゆっくり立ちあがると、ガクガク、ブルブル、震える右手で短剣を構えた。
足はまう辛うじて踏ん張ってはいるが、恐怖で、膝はガクガク笑っている。
これは武者震いじゃない。怖いんだ。
「う、うっ……僕は食べても美味しくないんだぞ」
誰に言うでもなくぼそりと呟いている。
「も、もう。や、殺るしかないんだよね」
ごくりと生唾を飲み込んだ僕は覚悟を極め、スキル神像様から手を離し、ゴブリンの前にゆっくり歩み出ようとしたその時――
チカチカッ!!
スキル神像様が明滅しながら輝きを増していった。
「うわっ! 眩しい」
――な、何、いったい何が!?
眩しくて目を閉じてしまうが、ゴブリンたちも足音が聞こえないから、その動きを止めてくれているはずだ。
状況の分からないがゴブリンからザワザワとギャァギャアとの騒ぎ声は聞こえてくる。
そうしている間にも益々光が強くなっていく。
「ま、眩しい……」
目を閉じていてもその光が差し込み、その強さを物語っている。
「ゴブブブ!(目が、目が痛いだぎゃ!)」
「ゴブブゥゥ!(こ、これは危険だぎゃ。逃げろ!)」
僕は、あまりの眩しさにまだ目を開けることができない。
――ゴブリンはどうなった? こっち来るなよ。
足音は聞こえないけど、こっちに近づいているかもしれない。その恐怖から、僕は見えてない空に向けがむしゃらに短剣を振り回していた。
ブン、ブン、ブン!!
――ゴブリン来るな、来るなよ!
途中で目を開けようと試みるけど、無理だと反応した僕は短剣を振り回しつつその眩しさが治るのを待った。
長い時間スキル神像様は輝き続けていたと思う。
僕がこのままだと見えない恐怖で、おかしくなりそうだと、そう思った瞬間、ふわっとした浮遊感が襲ってきた。
――こ、今度はなんだ!
見えない恐怖に備えるように身体中に力が入る。
――ぐぅっ……
しばらく力を入れ続けてみるが――
――あれ、何も起こらない?
それどころから浮遊感はすでになく、僕はどこかの地にしっかり足をつけているのが分かった。
恐る恐る目を開けるとそこは――
「あれ、ダンジョンの外?」
――何故?
辺りにゴブリンの気配はなかった。
「助かった、のか?」
そう、思った時、頭の中に何やら無機質な声が響いた。
【ルシールは《スキルショップ》のスキルを取得した】
はじめて経験する感覚だった身体の内側がほんのり温かくなっていた。
「スキルショップ?」
状況が飲み込めず思わず辺りをきょろきょろと見渡してしまったが、響いてきた声を思い出した僕の瞳は大きく見開いていたと思う。
「今、スキルって聞こえた!! 絶対聞こえたよ! あ、そうだ」
――今まで見るのも嫌だったけど……
これまでは、レベルも上がらずステータスに1つもスキルや魔法がなかったから見る必要がなかったもの。
――ステータスオープン。
【名前:ルシールLv3】
種族:人間
年齢:14歳
性別:男
職業:冒険者
スキル:無し
魔法:無し
*レジェンドスキル:《スキルショップ》
戦闘能力:15
*戦闘能力=30が一般成人男性の平均、スキルや魔法に武器の性能により誤差がある。
(例)ゴブリン:戦20 スライム:戦15
――ある……スキルがあった……
「あはは……やった、スキルだ!! 僕にもスキルが……」
涙で視界が歪むけど、僕はスキル神像様にお礼を伝えたくて仕方なかった。
「スキル神像さまぁ、ありがとうごさいます。ありがとうごさいます」
僕は何度も何度もお礼を言った。しばらく嬉しくて涙が止まらなかった。
ステータスを何度も眺め満足した僕は、ふと、そのスキルに疑問を持った。
「スキルショップってどんなスキル?」
僕がそう口にすれば、その問い応えるように、また頭の中に声が響いてきた。
【このスキルは、右手にお金を持って目を閉じることで使用しスキルを買うことができる便利なスキルじゃ。
努力した分はしっかりサービスするぞ】
「おわっ! ビックリしたぁ」
――でも、スキルの詳細が解るなんて……スキルってすごい……
この時の僕は勘違いをしていた、全てのスキルに解説があるものだと……
――――
――
――スキルダンジョンのスキル神像の間――
スキル神像の上に、その神像にそっくりな老人が座っていた。
「ふぉふぉふぉ、面白いのぉ。なんと純粋な少年が来たものだ。かなり、臆病だが、それもまたいいのぉ」
老人は楽しそうに水晶を覗いている。
「いつぶりかのぉ~、また、楽しくなりそうじゃわい。
ちと、サービスで詳細を伝えてしもうたが、うまく使えるといいがのぉ、ふぉふぉふぉ……ぬおぉ、もう時間じゃな」
そう呟いた老人は、ぐにゃりと揺らぎ光とともに消えた。
その後にはいつのも静かなスキル神像の間となっていた。
――《ルシール視点》――
僕は早速右手に全財産13カラを右手に持った。
そして目を閉じて《スキルショップ》を使う。
――おおっ!! 何か凄いぞ、何かいっぱい書いてある。
――……えーと、一番上に13とあるけど、僕の持ってる13カラと一緒。これが所持金なのかな?
あとはズラッーと黒文字が見えているけど、一番上には白文字で何か表示している、その横には0とある。
――そうだった。僕は文字が読めないんだった……
そう、僕は字が読めない。ギルドの依頼はいつも同じものを受けてたから、字の形を覚えていた。
頼めば、いやいや、受付嬢が教えてくれたていたし、覚える必要性がなかったんだ。
――取り敢えず黒い文字はダメってことだろうから、この白い文字を選択してみよう。とは思っても0のやつ、これ一つしかないね。
僕はその白い文字で0と表示しているヤツを選んでみた。
――これでっ……いいのかな?
【ルシールはスマイルスキルを取得した】
またもや無機質な声が頭に響いてきた。
――うわぁ、やったよ。これスマイルって言うのか。
今日だけで二つも……くふふ、これは凄いぞ。
あ、でもスマイルってなんだろう……試しに使ってみよう。
そう思った僕は早速そのスキルを使用してみた。
「スマイル!!」
僕がそう言った途端、顔中の筋肉がむずむずしだした。
――え、え、おわっ……な、何、顔が勝手に……
ルシールはにっこり微笑んだ。
「……」
――ち、ちがあぁぁう!! 僕はこんなスキル望んだわけじゃないんだぁぁぁ……ぅぅぅ……
僕は笑顔のまま涙を流した。
――――
――
しばくして立ち直った僕はギルドの依頼を思い出した。
「おっとそうだよ。こんなことしている場合じゃなかった。
僕はギルドの依頼を受けていたんだ、早く薬草を採取してギルドに帰ろう。もちろんアレスにお礼言わないとね」
僕は、手早く薬草を採取するとギルドに戻った。