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 〈フレイ視点〉


 私たちは道なりに進んでいた。出てくる魔物はポイズンスネーク、ポイズントード、ポイズンスパイダーといった毒毒しく癖の強い嫌なヤツらばかりだった。


 でも魔物のレベルは変わらないはずなのに少しづつ強くなっている? そんな気がした。


 私は特に気を付けないと、一撃受けるだけでも大変なことになる。

 ここに来てルシールに情けない姿なんて見せたくないし、私は注意深く警戒していた。


 その結果、危険察知のスキルを取得したのは僥倖だった。


 つい、ルシールを見て笑みを浮かべてしまった。


 基本的にシャルロッテさんは魔物に手を出さない。バインドの魔法だけ。


 たまに危ない時は、こっそり処理してくれている。ルシールは鈍いからそんなことは気付いていない。


 でも、私としてはレベルの低い私とルシール二人にだけに任せてくれている、それが嬉しい。


「うーん。ここがいいわね」


 どうやらここがシャルロッテさんの目指していた目的地みたいだ。

 濃くなった霧のせいで沼地の奥が全然見えない。


 このただの霧がシャルロッテさんがいう穢気だなんて未だに信じられない


「浄化の魔法を使うわね」


「分かりました。フレイ、僕たちは後ろで待機だ」


 私はコクりと頷いて肯定した。私は空気が読める。即座に移動する。


 ルシールが私を庇うように前に来てくれた。ルシールは自然となんでもないことのようにそんなことをしてくれる……ルシールのくせにずるい。


 アレスやラインは自分の力に自信があるから、ただ魔物に突っ込んでいくだけで、私やマリアを魔物から庇うといったことなんてしない、その逆で私たちがフォローすることの方が多いのに……


 そんなことをふと、考えているうちにシャルロッテさんは祈るような仕草をして、浄化の魔法という見たことも聞いたことない魔法を唱え出した。


「……ゎぁ」


 シャルロッテさんが神々しく光輝き、空からキラキラと光の粒子が舞い降りて、何やら小さな建物のような形をとっていく。


 ――綺麗、これが浄化……


「綺麗だ」


 前にいるルシールからもその呟きが聞こえた。私はなぜかムッときたけど、本当に綺麗で私も見惚れてしまうくらいだからしょうがない。と思うことにした。


「ルシール……これが浄化の魔法?」


「多分……」


 ルシールが私に振り向き自信なさげに言った。何故? とすぐに頭によぎったけど答えは直ぐに分かった。


 パリーンッと薄い氷が割れたような音が辺り一帯に鳴り響くとシャルロッテさんが私たちを見て、えへへと頭を掻いている。


 ――可愛い……


 超美人なのに可愛く感じるなんてズルいと思った。けど、すぐにそんな思いも吹っ飛んでしまった。


「あれ?」


 上空に凄い勢いで濃い霧が集まり出した。


 それが何やら大きく膨れ上がっている。


「二人とも少し離れて」


 シャルロッテさんが私たちの位置まで下がりその霧から距離をとった。


「あーあ、シャルさんまた失敗しましたね……」


 ルシールが珍しく非難じみた視線をシャルさんに向け、そのシャルさんもあはは、と軽い感じで受け流している。


 ――むっ、シャルロッテさんに向かって、気に入らない……


 そう思ったけど――


「私、浄化魔法苦手なのよね」


 その言動で理解した。成功したことがないのだと……


 私は理解力のある女にのだ(自称)。そう思っている間にも綿あめみたいに膨れた霧が何かの形になった。


 ――綿あめが……わあ、蛙っぽい何かに見えてきた……


「しゃ、シャルさん。デカイくてグロテスクなカエルに成りましたよ。こいつ気持ち悪いですね」


 ルシールが口をポカンと開けて見たまんま、的確な感想を述べていた。


 これには私も同意見だった。体長五メートルほどのイボイボがあるカエルが、背中のイボから紫色の煙を漂わせている。


 ――うっ……


 鳥肌が立ちそうなほど気持ち悪い。


 ――でもあの煙、あれは何……毒?


 私のそんな考えを肯定するようにシャルロッテさんが答えてくれたけど……


「参ったわね。こいつは毒蛙の魔物アッシトードを大きくしたような魔物だわ。あの紫の色の煙は酸と毒だから気を付けてね」


「シャルさん。もしかして穢気は酸を扱う魔物になるんですか? あのスライムもそうでしたよね」


「そうね……そんな傾向はあると思うわ」


「あれって跳びますよね? 飛び跳ねて違う場所に行ったら不味くないですかね……」


「大丈夫よ。浄化魔法が失敗した時に結界を張っているのよ。私はいつもそうやって……」


 二人だけで話を進めていくことを少し寂しく思ってしまった。

 けど、すぐにシャルロッテさんがハッとしたような表情を浮かべて私を見た。


 ――大丈夫です。私は空気読めますから。言いふらしたいなんかしませんよ。


 グエェェェッ!


 シャルロッテさんの視線が逸れたの見計らったかとように、ビックアッシトード(勝手に命名)が口から13匹ものポイズントードを吐き出した。


 ――うゎ……嫌なものを見た。


 たぶん今の私の顔色は最悪だと思っていると、私の前にいるルシールの方からも絶句する声が聞こえてきた。


「うっ」


 私だけじゃなかったことにホッとする間もなくシャルロッテさんか攻撃支援の指示がきた。


「取り合えず殺るわよ。私が機動力を奪う水魔法のアイスミストを放つから二人はポイズントードを近づけないように援護して」


「「はい」」


 シャルロッテさんは私の隣で何やら効いたことない言葉で魔法を唱え始めた。


「フレイ」


「うん」


 ルシールの合図で、私はポイズントードに風魔法ウィンドアローを放って一匹ずつ確実に仕留めていくことにした。


 ――逃がさない……


「ウィンドアロー」


 これも魔力操作があるから動き回るポイズントードに狙い打つのも容易だった。と思ったけど、私はまだまだだったようだ。


「このっ!」


 ルシールが、打ち漏らしたポイズントードに斬りつけている。


 ――……すごい。


 ルシールはとてもレベル9に見えない速度で、ポイズントードを縫うように駆け抜けポイズントードを一撃で狩っていく。


 今のルシールはアレスとラインより間違いなく強くなっている。

 レベルはアレスやラインの方がまだ高いだろうけど、もうラインは、いえアレスさえも足元にも及ばないとだろうと思う。


 ――ふふ……


 何故だか私は嬉しくなった。


「フレイ。ポイズントードは!?」


 ビックアッシュトードを警戒しつつ、見逃したポイズントードがいないか辺りをきょろきょろと見渡しているルシールに――


「大丈夫。もういない」


 後方から確認した私がそう伝えた。こんなやり取りでもなんだか嬉しく思う自分がいる……


 ――よかった……!?


 ポイズントードを片付けてホッとしていると、ピリッと後方で動かずにいたビックアッシトードから感じた。


 ふと、顔を上げ視線を向けてみるとビックアッシトードが大きな口下にある袋を膨らませている。


 ――ぁっ……


 グエェェェッ!!


 不味いと思った時にはこちらに向けて毒性の強酸を吐き出していた。


 ――いけないっ!!


 咄嗟に水魔法のウォーターシールドを、吐き出した強酸にぶつけてみたけど、強酸の方が強くてウォーターシールドを突き抜けてきた。


 ビックアッシトードの強酸が雨の様に降ってくる。


 ――ダメっ!


 私は両腕で頭を庇うようにして強酸からのダメージに備えた。


「……」


 ――あれ……?


 いつまで経っても強酸からのダメージが無い。不思議に思いゆっくりと両腕を下ろして目の前に視線を向けると、ルシールが私とシャルロッテさんの前方で脱いだらしい藁の外套を振り回している。


「ルシール?」


 ルシールは所にどころ強酸で火傷をしているがけど〈貫通〉スキルを使ったのだろう、うっすらと光の膜に覆われた藁の外套を広げ振り回して強酸を打ち消していた。


「いてて……でもよかった。何となるもんだね……」


 ――……ぁ!?


 ルシールの意外な柔軟性に感心したけど、まるで自分のことはどうでもいいかのような態度に少しムッとした。


「ルシール。それ……」


「あはは……」


「僕は治療スキルがあるから大丈夫」と強がりを言ってるけどかなり痛そうだった。


 すぐに水魔法の水鉄砲をかけてルシールの身体に付着した酸を落としてやったら……


「フレイありがとう」と返事が返ってきた。


「いい」


 アレスとラインだったら私たちに構わず敵に斬り込んでいたと思う……


 たぶん二人は、マリアが回復魔法を使えるから大丈夫だと鼻っから当てにしているフシがある。


 けど、そんなのシャルロッテさんだって使えるし、レベルだって高い。それなのにルシールは……


 やっぱりルシールは優しいのだと思う。


 そんなことを考えていると――


「ルシール、フレイ待たせたわね……これで終わりよ、くらいなさい! アイスミスト!」


 詠唱を終えたシャルロッテさんが右手のヒラを向け上級水魔法のアイスミストを放った。


「……凄い」


 ビックアッシトードが凍りついていく。蛙は変温動物だ。見るからに動きが鈍くなっていった。


「ルシール」


「はいっ」


 ルシールがシャルロッテさんの肩に手を当てると、間髪いれずシャルロッテさんが左手のヒラを向け中級水魔法アイスニードルをビックアッシトードに放った……


 上級、中級と連続で魔法を放つシャルロッテさんを純粋にすごいと思ったけど――


 ――こんな時に、何でルシールはシャルロッテさんの肩を触ってるの……


 何故かルシールに腹が立った。すごくムカムカする。

 でも、その間にもビックアッシトードの大きな身体を優に超える程の無数の氷の針が凄い速さで飛んでいく。


「……ぇ……」


 それはあっさりとビックアッシトードの身体を突き抜けていった。


 ――貫通……したの?


 無数の針は滑りのある分厚い皮をも簡単に突き抜け、その針の量によってビックアッシトードは原型すら無くなっていた。


「……凄い」


 ビックアッシトードはしばらく散らばった肉片がモゴモゴ蠢いていたけど、光の粒子となって消えてしまった。

 そして、私が今まで見たこともないような大きな魔石が残っていた。


「上手くいきましたねシャルさん。それに僕、またレベルが1上がりました。あと、毒耐性も1上がりました」


 ――私も風魔法がレベル2なった。でも……


「ええ、助かったわルシール。でも、無茶しすぎね。外套で酸を払うなんて非常識だわ」


 ――そうだ。非常識だ。


「あーでも、二人が火傷するよりはいいかと思って、時間もなくそう思ったら身体が動いてました……」


「もう」


 ルシールはまた、にやにやと笑みを浮かべながら大きな魔石を拾いつつレベルを確認している。


 シャルロッテさんは魔法で祠を建てていた。


「うん。できたわ。これで当分は大丈夫よ」


 ――ああ、終わったんだ。


 私はこれで、この旅も終わりになるのかと思うと今まで感じたことのない寂しさがこみ上げてきた。


 どうしてだろうと思ったけど、その理由はすでに分かっていた。


 凄く楽しかった。こんな気持ち初めてだった。


 私はまだルシールとシャルロッテさんと旅がしたい。別れたくない。


 考えてはいけないとことだと思ったけど、ついそんなことを考えてしまっていた。


「フレイ、元気ないけど。どうした?」


 ふるふる頭を振って否定する。だって口を開けたら泣くかもしれない……


「も、もしかして酸が掛かったのか?」


 ――やっぱりルシールは優しい……


 ルシールが凄く心配そうに私を見てくる。こんなに誰かに心配されたことなんて、今まであったのだろうか……


 ズキリと胸が苦しくなった。でもこのまま心配させたままもダメだと思い、やっとの思いで少しだけ口を開くことができた。


「……違う」


「それならいいんだけど……ここも無事にシャルさんが祠を建ててもう大丈夫だって……

 ほら、みんなびしょ濡れだから早く馬車小屋に戻って着替えないと風邪引くといけないね」


「そうね」


 私たちは馬車小屋に戻ると、シャルロッテさんと直ぐにお風呂に入った。


 シャルロッテさんとお湯につかっているとシャルロッテさんが笑みを浮かべ私を見ている。


 ――可愛い。シャルロッテさんはなんかズルい。


 そう思っていると――


「ねぇ……フレイはこの後どうしたい?」


 ――えっ……


 不意打ちだ。まさか、シャルロッテさんからすぐに、そんなこと聞かれるとは思わなかった。


 私は言葉が詰まった。


「私は……」


 ――まだ私はまだ一緒に旅がしたい、です。


 でもその言葉が出てこない。だって私はアレスたちとパーティーを組んでいるし、仲間に入れてほしいと言ったところで叶うとも思えない。


 なかなか思うことを口にできずお風呂場では沈黙が続いた。


「フレイはまだ13歳なんだから……なんでも素直が一番よ。今ならまだ大丈夫、と思うけどな」


 シャルロッテさんがにこりと微笑でくれる。


 ――えっ何? もしかして私の気持ちはシャルロッテさんに気づかれる?


 恥ずかしくて思わずカーッと耳まで赤くなるのが分かった。


「理由が欲しいの?」


 私は迷ったが、ゆっくりと頷いて肯定した。


「そう。ルシールは何が危険か、まだ認識が足りないのよね、今のままだとすぐに騙されたり、ぽろっとスキルのこと漏らしそうで危いと思うのよね」


 わざとらしく、シャルロッテさんが片目を閉じてウィンクしてきた。そして、左手薬指の指輪を私に向けた。


 その仕草を見て、やっぱりシャルロッテさんは綺麗なのに可愛くてずるいと思う。


「フレイは私と……ほら、お揃いでしょ。楽しくいきましょう、ね」


 私はコクりと頷いて肯定して、そのままお風呂に顔をつけた。


 だって涙が勝手に溢れて出て恥ずかしかった。


 ――シャルさんはやっぱり……


 誰にも言ってないけど、本当は誰かに必要とされたかった。冒険者を頑張っていたのもそのため。


 アレスたちからはやること見つかるまでついてくるか? とかそんな感じパーティーを組んでもらっていたから、たまに体調が悪くて冒険者活動ができなくても回復魔法の使えるマリアさえいれば問題なさそうにしていたし、皆からちやほやされているアレスたちは、私一人欠けたところで、パーティーに入りたいという若い娘たちが代わりに入っていたのも知っている。


 だから私はたまに外されることがあった。


 そんな時はマリアが心配して迎えに来てくれていたけど、私は居場所がいつなくなるのか不安でいつも怖かった。


「そうだわフレイ。心配ならルシールに……ふふふ……」


 私はシャルロッテさんのその提案にこくりと頷いて肯定した。


「ルシール」


「お、その顔、元気が出たなフレイ」


「ルシールお風呂上がったら話ある」


「え、うん。分かった」


 その後、お風呂から上がったルシールを捕まえてルシールに30万貸した。


「ルシールは危ない。前衛なら危険察知は必要」


「た、たしかに……でも」


 そしてルシールに危険察知レベル1を買わせた。


「ああ……借金が……」


 また借金が増えたと嘆いていたけど、直ぐに返されても困るので、先に貸しているシャルロッテさんに9割で、私はたまに1割でいいと優しく言ってあげた。



【ルシールの借金が30万カラ増えた】



 ――――――――――――――――――――


【名前:フレイ:Lv11】ギルドランクE


 戦闘能力:63

 種族:人間

 年齢:13歳

 性別: 女

 職業:冒険者

 スキル:〈棒術:1〉〈文字認識〉

 〈魔力操作:1〉 〈魔力回復:1〉

 〈毒耐性:1〉〈危険察知:1〉

 魔 法:〈生活魔法〉〈水魔法:2〉

 〈風魔法:2〉up



 ――――――――――――――――――――


【名前:ルシール:Lv9→10】ギルドランクG


 戦闘能力:138→151↑

 種族:人間

 年齢:14歳

 性別: 男

 職業:冒険者

 スキル:〈スマイル〉〈料理〉〈洗濯〉

 〈文字認識〉〈アイテムバック〉〈貫通〉

 〈馬術〉〈カウンター〉〈治療:2〉

 〈回避UP:3〉〈剣術:3〉〈見切り:2〉

 〈捌き:2〉〈毒耐性:2〉up

 〈覗き見:1〉〈危険察知:1〉new

 魔 法:〈生活魔法〉〈初級魔法レベル1〉


 *レジェンドスキル:《スキルショップ》

 所持金 :2,213カラ増

 借金残高:

 シャルロッテ4,849,850カラ

 フレイ  300,000カラnew


 ――――――――――――――――――――

 ↑は付与魔法中の印です

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