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出国

皆様、お久しぶりです、島北です。

いろいろとやらなくてはならないことをすべて終わらして、なんとか執筆。島北の体力はかなり限界まで達しています。

というわけで、第6話「出国」。どうぞ、最後まで楽しんでお読みください。

「うーん…やはり、人が多いところはどうしてもなれないですねー…」

「まあ、城下町だからね」

僕たちは今、世界の中心などとも呼ばれている、シュヴェッラ城の城下町にいる。綺麗な石畳の舗装された道のわきに並ぶ道具屋や武器屋、宿屋も他の町や村では見ることが出来ないすごいきれいな建物だらけ。奥の広場には芸術的な大きい噴水が設置されており、多くの人が観光に訪れている。観光に来た外国人の和気藹藹とした話声、城下町に店を構える男店主の客引きの声、城下町に住む富裕層の家族の子供のはしゃぐ声…実に色々な声が聞こえてくる。大いに賑やかなこの風景は、世界の平和を感じさせてくれる。

ちなみに何故、世界の中心などと呼ばれているかというと、過去の魔王襲来戦争時に、人類軍本部がおかれたのがここシュヴェッラ城であり、人類軍の総帥がシュヴェッラ国王だったことからである。魔王軍の攻撃を初めて受けたのもこの国であるが、一年を通して過ごしやすい環境である国内での食物の生産性や、国領西部の狩りをして生計を立てている国民たちによる定期的なバザー等、戦後とは思えない経済効果の爆発的な上昇で大きな利潤を得たことにより、復興は目覚ましく進み、今でもなお、世界最大の国と謳われている程までに国は安定した。ここは、そんな国の王様がいるお城に隣接する街なのだ。

「うう…人が多すぎて酔ってきましたよ…こういうところは苦手なんですよ…」

「ネーニャさん、大丈夫ですかあ?私の回復魔法で癒して差し上げましょうか?」

フランさんはニコニコした顔でネーニャに手を伸ばす。

「あ、いや、そこまでしてくれなくて大丈夫ですよー。ありがとうございますね」

ネーニャはだるそうな背中を直立させ、健康体をアピールする。

「そうですかあ?辛くなったら、お気軽に言ってくださいね」

「その時はよろしくです、フランさん」

過去の経歴を振り返りたくはないけど…なんやかんやでネーニャは強い女の子だ。じきに環境に慣れていくだろう。

セルディは、何故かときどき、フランさんの方を向いて、何か警戒しているかのような表情を見せていた。僕はこの表情が気になったため、セルディに不意に質問を投げかけた。

「ねえセルディ?」

「ん?なんだよ?」

「…さっきから、なんでフランさんを警戒しているの?」

セルディは突然僕のほうに近づき、かなり小さな声で話し始めた。

「…フランの兄ちゃん、いただろ?」

「うん、アルジェロさんでしょ?それがどうかしたの?」

「…あの男…どうにも私は信用できなくてさ…」

「…それはどうして?」

「いや、なんとなくだ。なんていうか、私の意識がそう告げているかのようなんだ」

「そんな理由で…そりゃあ言いがかりでしょ?」

「…だけど、あの男は何か虚空の存在を睨みつけているかのように見えた…ああいう眼をした人間は必ず何か心に抱えてるものだ」

「でも、妹思いの良いお兄さんだと思ったけどなあ…」

「確かに、フランに対する愛情は私にもうかがえたよ。でも、なんというか、人間や神様をあまり信じているようには見えないんだ」

「それはどういう…」

「私にもそこまではわからん。だが、あの男から普通の人間が持っていないような覇気みたいなものを感じたのさ…ましてや上級神父という身ながら騎士団の剣を持っているのもいささかおかしな話だとは思わないか?」

「ま、まあ、言われてみたら確かに……ていうか、アメイラ修道院でアルジェロさんに上から接してたのって…」

「ああ、あの男が気に入らなかったからだ」

「あー、やっぱりね…」

僕は何とも言えない微妙な笑みをこぼした。

「でもまあ、フランには特に変なところは見えないし、まずいいやつだ。そこは気にしなくてよさそうだな」

「そう…ならいいんだけどさ」

長い時間僕たちがくっついていたのが気に入らなかったのか、いきなりアイルさんが僕たちの間に割り込んできた。

「さーーーっきから、なーーーーにいちゃいちゃくっついているんですか?」

アイルさんは笑顔ではあるが、どことない恐怖を感じ得る雰囲気に、僕は圧倒された。

「い、いや、なんでもないですよ」

僕は後方に後ずさる。

「うっ!」

全く後方を気にしていなかった僕は、軽くふらふらしながら歩いているネーニャとぶつかってしまった。

「な、なにするんですかアルタさん…」

「あ、ああ、ごめんよ、ネーニャ…」

「とりあえず、出国許可証を貰うためには城内の総督府に行かなきゃならないんだ。とりあえずゲボは吐かないでくれよ」

セルディは鼻歌を歌いながらネーニャに注意した。というか、女の子がゲボなんて言葉を使うのはちょっと…。

「わかってますよー…」

僕たちはネーニャの機嫌を伺いながら、街を城の方へと縦断する。大きな噴水を抜け、少し歩くと、シュヴェッラ城に入るための検問所にたどりついた。ただの施設、されど施設、といったところであろうか、多くの兵士が駐留している検問所は、非常に大きく、まるで来客者を威圧するかのようだった。大きな扉は固く閉ざされており、2人の兵士が扉を守っている。僕たちは、検問所に入り扉の前へと進む。

「申し訳ありません。確認の為、身元の確認と荷物の確認をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

扉を守る兵士が携えた槍で僕たちを止め、行く手を阻んできた。

「私は勇者級セルディだ。今日は外国への出国許可証の発行をお願いしたくシュヴェッラ城へ赴いた。後ろについてきている者たちは一緒に出国する仲間たちだ。通してくれないだろうか?」

セルディは、普段見せる幼い表情をかき消し、勇者級としての威厳ある雰囲気で兵士にお願いした。すると、どうやら上の階で待機していた上司と思われる兵士が慌てた表情でこちらにやってきた。

「おいお前たち、なにしてるんだ!!この方は勇者級セルディ様だぞ!!身元の確認など無礼な事をするな!!」

「も、申し訳ございませんでした!!」

2人の兵士は、膝をついてセルディに頭を下げる。

「いや、構わないでくれ」

セルディは少しあたふためいた様子で制止する。

「勇者級セルディ様、此度の無礼、御許し下さい。…扉を開けろ!!」

あとからやって来た兵士が大きな声で命令すると、上の階で待機していた兵士が何やらボタンを押した。すると、扉は重たい音を響かせ、城側に向かって開門した。

「ありがとう、助かったよ」

「いえ、最近は平和ボケしてしまっている兵士も多くて少し困っているのです…最近は魔物も活性化してきていると言うのに……あ、いやはや申し訳ございません、愚痴を聞いてもらいたかったわけでは無いのですが…」

偉い職にいると思われる兵士は頭に手を当てて謝罪する。

「いちいちそんなことで謝らないでくれ…反応に困る……だが、お前の言うことは一理あると思うぞ。お前はどうやら偉い立場にあるようだし、部下の兵士たちを再教育してみるのはどうだ?」

「そうさせていただきます…ご指導ありがとうございます」

「ま、頑張ってくれ」

セルディは、扉の奥に向かって歩き出す。そして、振り返らず歩きながら偉い兵士に向かって手を振る。僕たちは、兵士の方々に一礼した後、セルディについて行く。

「…セルディさんって、あんな真面目な顔もできるんですねー…」

「なんか、いつものセルディさんとは別人に見えましたあ…」

やり取りを見ていたネーニャとフランさんは扉を抜けた今もなお、信じがたいと思う表情を見せ、話し合っていた。普段のおてんばなセルディしか見たことが無いから、先程のギャップに戸惑っているのだろう。無理もない。僕だって真面目なセルディは少し苦手なんだから…。

「さーて、やっとシュヴェッラ城だ…」

セルディはお城の扉の前で立ち止まる。僕たちの視界には、先程の検問所よりもさらに大きい、より強固な扉が現れた。防衛している兵士がボタンを押すと、扉はゆっくりと手前側に開く。

「どうぞ、お入りください」

兵士に誘導され、城内に入る。

「うわあ…」

「す、凄いわね…」

「そこもかしこも金ぴかですなー…」

「綺麗ですう…」

僕たちは目の前に広がるホール、黄金に塗りたくられた壁、天井、床。床に敷いてある赤いシートが僕たちの行く先を示してくれる。僕たちは、しばしの間立ち止まっていると、セルディがパンパンと手を叩いて僕たちの意識を引き戻す。

「ほら、早く行くぞー」

セルディは、広いホールを進むと、ホール右側の通路の方へと体の向きを変えた。どうやら、ホールの左側の道は演説用の大広間へと続く道、直進して大きな階段を上ると王家の部屋、そして僕たちの進む右側の道には総督府を含む、色々な国の運営に関わる役所へと続く道のようだ。

僕たちは長い長い廊下を進んでいくと、ようやく役所の施設みたいになっている広間へと到着した。

「ほら、あっちの方が総督府だ」

セルディは奥にいくつか用意されている部屋の内、1つのドアに向かって指を指す。そこには「シュヴェッラ国総督府」と書かれた看板が用意されていた。僕たちは、総督府に入ると、カウンターに座っている応対担当の綺麗な女性役人さんに笑顔で迎えられた。

「シュヴェッラ国総督府へようこそ。本日のご用件はなんでしょう?」

「出国許可証が欲しいんですけど…」

「畏まりました、では、こちらの必要項目に答えていただいてよろしいでしょうか?一度こちらで確認してから、総督府長に提出いたしますので」

「わかりました」

僕は、人数分の書類を女性役人さんから受け取ると、全員に分配した。いかにも高級そうなソファーに腰掛け、僕たちは名前や住所などの情報を書き込んでいった。10分ほどして、僕は全員が書類に必要事項を書ききったのを確認すると、全員の書類を回収し、再び役人のいるカウンターに向かう。

「宜しくお願いします」

「はい、確かに承りました」

役人の女性は、じーっと書類を見る。どうやら5人分の書類をきちんと確認するのは時間がかかるようで、僕はカウンターで長い間立たされた。ようやく、女性役人がふぅっと安堵の息をつくと僕に笑顔で書類を返した。

「はい、確かに確認いたしました。あとは総督府長の許可と許可証の発行を行えば手続き完了です。左手奥側に総督府長室があります。そちらで許可をもらってきてください」

「わかりました、ありがとうございます」

笑顔で接してくれた役人の女性に一礼すると、待ち合い席のソファーへと戻る。

「ファ~…ながかったな」

「そんなこというんじゃないよ、役人の人たちも大変なんだから」

どうやら居眠りをしていたセルディは、目を手で擦りながら文句を垂れる。まったく、僕はずっと突っ立ってたと言うのに…僕も少し寝たかった…。

「まあ、とりあえず確認してもらえたならいいじゃないですかー。早く許可証を発行してもらいましょうよー」

「……そういえばさ、ネーニャの経歴とかってどうしたの?」

ネーニャがあまりにも自然体でいたからすっかり忘れていたけど、ネーニャは僕たちと出会う前までは盗賊団サバーニャに所属していた。先程の書類には経歴を書く項目もあった。

「あー、テキトーに書いておきましたよー」

……仮にも国に提出する書類なのに、よくそんな犯罪みたいなこと出来るなあ…。でもまあ仕方ない、あまり気が進みはしないが、ここは目を瞑ろう…。

僕たちは、先ほど言われた通り、カウンターの右側に伸びる通路を進み、総督府長室と書かれた部屋へ続く扉を開けた。総督府長は、大きな机で頭をぽりぽり掻きながら事務作業を進めていた。僕たちが部屋に入って来たことに気付くと、客人用の机に僕たちを案内し、先程同様の高級品と思われるソファーに僕たちを座らせた。

「いやはや、まさかこの時期に新しく出国許可証の申請に来るものが現れるなんて、ビックリだよ」

総督府長は書類に目をやりながら僕たちに語りかけて来た。

「最近は魔物の活発化に伴って、外国に行く人なんてほとんど商人とかに限られたんだけど…君たちみたいな旅人が来るのは本当に久しぶりだよ」

総督府長が全員分の書類を確認し、怪しい部分が無いことを確認すると、僕たちに真剣な顔で問いかけて来た。

「…この質問はいささか無意味なのかもしれないが、敢えて聞かせておくれ…君たちは何故、外国へと旅立つのだ?…戦争は終わり、旅に時間をかけるのは一向に構わない。だが、さきほどいったが魔物が次々と凶暴化している、まして魔王襲来戦争で我が国に甚大な被害を出したバルザムが復活して間もないこの時期に、何故?」

「…ある人を探すためです」

僕はゆっくりと口を開いて答える。

「…なるほど…」

総督府長がうーむと口に手を当てる。

「今は他の国でも続々と魔物の凶暴化が問題になってきている…下手すれば、この国に帰ってくることだって出来なくなるかもしれないのが正直なこの世界の現状だ。それでも、君たちは行くというのかい?」

「はい、行きます」

僕はまっすぐと総督府長を見つめ、意思を示す。総督府長は、自身の中で何か折り合いをつけたようにして頷くと、僕たちを見渡し、言葉を発した。

「…わかった。君たちの出国許可証を発行しよう」

「ありがとうございます!」

総督府長は、よっこいせと立ち上がると、事務机の後ろに設置されている数百もの収納が用意されている非常に大きな引き出しから、出国許可証を取り出すと、机に置かれていた高性能魔道コンピュータを起動し、カチカチと宙に霧のように現れたキーボードを打ち始めた。

「最近はこのような便利な道具が増えて嬉しいものだ。まったく、機械産業に関してはガルガンティには敵わないな、はっはっは…」

ガルガンティとはシュヴェッラの南部に位置する大国で、機械産業が非常に進んでいる国だ。魔王襲来戦争でもマシンを投入した次世代型の軍隊を用意したことでも有名であり、今現在、ガルガンティが保有する軍隊でもマシンが引き続き利用されていることが問題視されている。

「よし、これで完了だ…」

総督府長は座席から立ち上がると、僕たちにカードのような出国許可証を手渡した。

「これが出国許可証だ。久しぶりに発行するものだから発光に少し手間取ってしまったよ…」

僕たちは、受け取った出国許可証を荷物袋にしまうと、総督府長に感謝の意を述べ、部屋を後にしようとした。

「…君たちの無事な帰国を祈っているよ」

総督府長は、つぶやくようにして僕たちに何かを語る。僕は一瞬振り返ったが、うまく聴き取ることができなかったため、そのまま部屋を後にした。


===================


総督府長は、アルタ達が部屋から出たことを確認すると、総督府長室のさらに奥にある、自身のプライベートルームに向けて目を睨ませた。

「…これでよかったかね?」

「はい、十分です」

プライベートルームから、2人のローブをかぶった謎の人物が姿を現した。顔まで隠れたフードをつけているため、素性は確認できないが、声からして少なくとも言葉を発している1人は女性なのは総督府長は理解できていた。

「…君たちは、なぜこのような真似をする?」

「今は語れません。いずれ、分かるはずですよ、総督府長…」

一言、ローブをかぶった女性がそういうと、一言もしゃべらなかった側の謎の人物が紫色の葉っぱのようなものを用意する。

ピューーーーーーーーーーーーッ!!

紫の葉に口をつけ、葉笛のように音を鳴らすと、謎の人物2人は、紫の魔法陣に包まれ、その場から姿を消した。

「…今の私には…このような真似しか出来ないのか…」

総督府長は、机に腕を突き、頭を手にもぐらせると、深い思考のループに惑わされていった。謎の人物たちの目的は何なのか…そして、自分と接触してきた第一の理由は何だったのか…。

総督府長は、頭を痛めた様子でゆっくりと立ち上がると、軽い仮眠をとるため、奥のプライベートルームへと向かってふらつき始めた。そして、ふかふかの高級ベッドに横たわり、魘されるが如く、何かに苛まれるように無の意識の世界に飛びたったのであった。


===================


「ふー、ひとまず、出国許可証をゲットできて良かったっすねー」

「そうね…でも、総督府長さん、何か困っているようにも見えたけど…」

「まあ、終わりよければなんとやらですよー」

「うふふ、そうですねえ」

再び来た道を戻るように大広間の方へ向かおうと長い道を進んでいると、突然、綺麗なドレスに包まれた女性が、道の端から現れ、僕たちの道をさえぎった。

「うむ?君たちがバルザムを盗伐した旅人達かな?」

「えっ、はい、そうですが…」

「…って、ああ!セルディ!?」

「…メローネ姫…あいかわらず元気ですね」

セルディははあっとため息を吐いて困った顔を見せる。

「ああっ!?本当だ!!一瞬気付かなかったけど、メローネ姫だ!!」

僕はびっくりして錯乱したまま言葉を発してしまう。

「君、それはどういう意味だい?」

「す、すみませんでした!!」

僕は一心不乱に頭を下げる。

「ああ、大丈夫だよ、気にしないで」

メローネ姫は慌てて僕の行動を制止した。僕は頭を下げる動作を止めると、メローネ姫の美貌に目を奪われてしまった。非常にきれいな黄金の髪、長く伸びる髪は腰に届くほど長いのにも関わらず綺麗に整えられており、枝毛なども一切存在しない。そして、綺麗な青い瞳、整った顔立ち、プリンセスドレスが似合う綺麗なスタイル。僕は、活発姫と言われ、お姫様らしくないなんて言われているかが嘘のように感じてしまう。

「おやおや?もしかして、私に見惚れたのかい?」

僕はぼーっとしていた意識を戻し、慌てて首を横に振った。

「そ、そんな!僕がそんなことを思うなんて恐れ多い!!」

「別にそんな恐れ多いなんてことは無いと思うよ…ただ、生まれが王家だっただけの違いなんだし」

「…それはそうと、なんで私達がバルザムを盗伐したってわかったんですか?」

「いやあ?セルディがいたってのもあるけど、なんとなくかな?」

「なんとなくって…」

「ははっ、私、なんか感性が強いって言うの?嘘とかそういうのとか、空気とかがなんとなくわかっちゃうのよね」

セルディが呆れるまでに破天荒な感じの女性に会うのは僕も初めてかもしれない。こんなセルディが圧倒されているのも珍しい。

「というか、私、君たちのいた祠の近くまで行ったのよ?」

「ほ、本当に言ってるんですかプリンセス・メローネ!?私だって近寄りたくなかったのに…!!」

「…全く…とんでもないプリンセスですねー…」

「驚きですう…」

「…全く…メローネ姫の行動力の高さには驚かされるばかりですよ…」

全員が驚きの表情を見せる。一国のお姫様1人で魔物が現れる場所に行くなんて、普通ならばあり得ない話だ。

「でも、兵士の人たちに見つかっちゃってね…仕方なく戻って来たのよ…だから、どんな感じだったか、聞いておきたかったのよ!…バルザム、どうだった?」

メローネ姫は目をキラキラさせながら僕に顔を近づける。…近くで見たら、本当にきれいだな…。まるで芸術だよ…。

「あっ、メローネ姫!!こんなところにいましたか!!」

大広間側から、複数人の兵士が慌ててこちら側にやって来た。そして、兵士は「失礼します」と一言言うと、メローネ姫の腕を掴んでしまう。

「あっ、ちょっと!今から旅人の人たちとお話ししたかったんだけど!?」

「そのような事をしている時間は無いでしょう!メローネ姫、あなたはあなたのお仕事を早くお済ませになってください!!王様もお怒りですよ!!」

「そんなー!」

「行きますよ、メローネ姫!」

メローネ姫は、兵士たちに連れられ、いやいや歩き始めると、こちら側に振り向き、最後に叫ぶ。

「今度会ったときに、旅での話、聞かせてねー!」

そう言うと、メローネ姫たちは大広間を右へと曲がり、王室の方へと向かっていった。

「いやー…なんというか、すごいお姫様ですねー…」

「私もびっくりしたわ…まさかここまで活発なお方だったなんて…」

「世界は広いですぅ…」

それぞれが茫然としていると、セルディが疲弊した表情で行動を催促する。

「ほら、早く行くぞ。このままじゃ日が暮れちゃうぞ」

セルディは一人で先の方へ進み始める。それに連動して、僕たちもセルディの跡をついて行く。

お城から出た僕たちは、ようやく外に出たというのにもかかわらず、全くまぶしさを感じ得なかった。お城の中が黄金で塗りたくられてて明るすぎたのだろう。僕たちはお城を出ると、城下町の道具屋でゲルモート港街へと行くまでに必要な薬草などを購入する。僕たちは、用意を済ませると、僕の故郷、ゲルモート港街へと向かうことにした。


途中、魔物たちに襲われたが、そこまで致命傷を負うことなく済んだ僕たちは、日が沈む前になんとかゲルモート港街に到着した。今日は、僕とセルディは実家で、他のメンバーは宿屋を利用して一夜を明かすことになった。僕は、メンバーと明日の朝の行動などを確認すると、メンバーから離脱し、数日ぶりの自宅へ帰宅した。

「ただいま…」

僕が家の中に入ると、驚いた表情を見せた両親が眼に映る。

「ア、アルタ!!」

「なんだ、思った以上に早い帰還じゃないか?」

「いや、今日は明日から外国に出発するから、ここで一夜過ごすことになっただけだよ。明日からまた旅だよ」

「そ、そうなのか…まさか、お前が外国に行く時が来るなんて、思ったこともなかったなあ…」

お父さんは感慨深い表情を見せ、手元にあったコーヒーを一口飲んだ。

「これから夕御飯だから…一緒に食べるかい、アルタ?」

「もちろん!」

僕は、荷物を地面に置いて、いつもご飯を食べていた長机の前に用意されている椅子に座る。僕は、今までの旅の話を両親に語りつくす。新しいメンバーが増えたこと、ラフィーやバルザムといった難敵をたおしたこと、とにかく全てを語った。母さんは時にびっくりするような顔を、父さんは澄ました笑い顔をしながら僕の話を聞いた。夕食を食べ終わると、僕は久しぶりに自分の家のお風呂に浸かる。なんとなく安心してしまった僕は、1時間も湯船につかってしまっていた。僕は、風呂から出ると、明日の朝も早かったので、すぐに家に用意してあったパジャマに身を包み、2階の自分の部屋のベッドに伏した。僕は、久しぶりの自分のベッドが気持ち良すぎて、すぐに眠ってしまった。そして、夜が明けた…!


僕は、朝食を食べると、荷物をまとめて両親と共に待ち合わせの港へと向かう。そこには、もうセルディ、アイル、ネーニャ、フランの4人がそろっていた。

セルディ以外の3人はこちらを向いて驚いた表情を見せる。母さんは、3人に向けて、挨拶を始めた。

「はじめまして。私がアルタの母です。息子が色々と迷惑をかけるとは思いますけど、宜しくお願いしますね、みなさん」

「父の私からも、宜しくお願いする。よく無茶をする子だから、みんなで見守ってあげてくれ」

母さんと父さんは、頭を下げて3人にお願いする。

「わかりました。こちらこそ、宜しくお願いします」

「大丈夫ですよー」

「わかりましたあ」

母さんと父さんはお互いの顔を見てニコッと笑うと、次はセルディの方を見て話し始めた。

「ごめんねセルディちゃん…もうちょっとだけ、アルタのわがままに付き合ってあげてくれないかしら?」

「もちろん!最後までお供しますよ」

セルディは笑顔で答える。

「ありがとうね…」

最後に、母さんと父さんは僕の方を向く。

「アルタ、無理はするんじゃないよ」

「頑張って、リィラを探し出してくれ…お父さんは、お前の帰りを待っているからな」

「うん、ありがとう…」

僕は、停泊している船の方へ眼をやる。あの船はホレンツィエ国に向かう船、つまり、外国へと向かう船だ。僕たちはついに、外国へと飛び立つのだ。

「…さてみんな、行こうか」

「おーっ!」

僕が指示を出すと、一列になって桟橋を渡る。そして、船に入る前に役人の人に出国許可証を提示して、船の中に入る。そして、僕たちと一部の商人が船に乗ると、しばらくして、船は汽笛を鳴らし、ゆっくりと港を出発した。

僕たちは、船の屋上の観覧スペースから出航を見送る僕の両親に手を振った。数分すると、ついに港は遠く豆粒のように小さくなってしまった。

「…さて、ついに外国だな」

「そうだね、セルディ」

「最初はすぐに音を上げるかと思ったけど…どうやら杞憂だったみたいだな」

「当たり前だよ、セルディ」

僕は、何気ない笑顔を見せると、セルディは顔を赤くして、反対側に俯く。

「…頑張って探そうな」

「うん、そうだね…」

セルディはこちらを向いた。僕たちは、お互いに顔を見合うと、何故か笑顔がこぼれて来た。

「はいはいはいはい!!イチャイチャはここまでですよ!!」

アイルさんは強引に僕たちを引き裂き、僕の方を睨みつける。

「まったく、私達もいること、忘れないでくださいよー」

「そうですよお!私達も、アルタさんの仲間なんですからねえ!」

ネーニャとフランさんもこちらにやってくる。…この賑やかな雰囲気は、僕はとても好きだった。僕は、女の子4人が和気藹藹と話しているのを余所に、再びゲルモート港街の方に顔を向ける。だが、そこにはもう、港は無かった。僕は、不意に外国へ向かっていることを再認識した。

「どうしました?まさか、親元恋しくなったんですか?」

アイルさんは意地悪な顔をして僕に聞いてきた。

「…いいやというと嘘になるけど…リィラを探し求めるまで、僕は旅を止める気はないですよ…」

「…フッ、生意気」

アイルさんは僕の鼻にツンっと人差し指を置いて挑発すると、船の1階の方へと戻って行った。

どうやら、屋上の観覧スペースにいるのは僕だけになったようだ。僕は、故郷、ゲルモート港街に背を向け、みんながいる1階の方へと戻る。


ついに、旅の舞台は、シュヴェッラ国からホレンツィエ国へと移る。僕は、更なる覚悟と、新たな世界に対する期待を胸に抱き、メンバーとともに、船での長い時間を過ごすのだった。

第6話「出国」、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ついに第6話。無事にここまで連載できるなんて思ってもいなかった。まさか3日坊主の俺がここまで頑張れるなんて思ってもなかった。はい。

というわけで、今回の話はサブタイトルの「出国」という通り、シュヴェッラ国を出国し、新たな国に物語が移る。というところまでを書きました。そして、普段は主人公のアルタ君視点で進む展開をしているこの物語ですが、初めてアルタ君視点以外の所謂、第三者視点と呼ばれる展開が盛り込まれました。もちろん、無作為にこのような展開をしているわけではありません。が、今はまだ多くは語れません。これからを期待していてください(笑)。そして、総督府長と怪しい関係を持つ謎のローブを被った人物達が現れました。これから、この人達はどのような行動をとっていくのか、非常に楽しみですね。

そして、今回をもちまして、シュヴェッラ国編は終了となります。次回からは、ホレンツィエ国編となり、舞台はホレンツィエ国に移動します。この国のシナリオは作者の僕の欲望が詰まったシナリオが展開される予定ですので、僕の欲望の意を察せる貴方様は楽しみにお待ちください(ニヤリ)。僕の意を察せない貴方様も、恐らく興奮待ったなし(?)です!お楽しみに!!

さて、次回のサブタイトルは「ニュー農村」です。ニュー農村には、僕の欲望を詰め込んだかのようなキャラクターが登場します(村の名前から察した方もいるかもしれませんが(笑))。楽しみにしていてください!!

ということで、次回の投稿は7月後半か8月前半になると思います。今しばらく、次回を待っていただければ幸いでございます。では、また次回、会いましょう~!!

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