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フラン・エンジェ

どうも、島北でございます。

早いもので5話目!!だんだんとこの話の世界観に慣れてきたころなのではないでしょうか?

さて、前書きはこのくらいにしておきますかね。では、第5話「フラン・エンジェ」、是非、最後まで楽しみながら読んでください。

「はあっ…はあっ…まっ、待って下さいー…!」

…そんなに僕たちの歩くスピードは速いかなあ?…アイルさんは、ものすごい疲れた表情を見せながら僕たちの遥か後ろをゆっくり歩いている。

「アイルー!早くしないとおいてくぞー!!」

「そっ、そんなあ!待って下さいー!!」

セルディが無情な一言を突き付けると、アイルさんは涙を垂らしながら走って来た。アイルさんの豊かな胸部が走る動作に連動してたぷんたぷん揺れている。素晴らしい光景だ。

「いやあ、すばらしい乳袋ですねえ、あれは確かにすぐ疲れちゃいそうですねえ…ねえセルディさん」

「なっ、なんだよその憐れんだ顔は!!私の胸見ながら言うんじゃねー!!」

…これが格差なんだなあ。

「ってか、お前だって乳無いじゃないかよー!」

「残念ですが、私はあなたほどつるぺたぺったんじゃないのですよー」

「くっ…」

セルディは落胆した表情を見せ、肩を落とした。戦いで敗北を味わったことがないセルディだが、胸囲に関しては常に敗北を味わっていると思うと、なんかかわいそうになってくる…。小さくたって需要はあるよ…僕は大きい方が好きだけどね。

「はあっ…はあっ…やっと追いついた…」

僕たちが与太話していたからか予想外に早く僕たちのもとに追いついてきた。アイルさんは汗だくになって膝に手を当て息を整えている。

「…やはり、近くで見るととんでもない破壊力ですねえ…」

ネーニャはすぐ近くにある双丘をじーーっと見つめて感嘆の息を漏らす。呼吸を整えようと息を吸ったり吐いたりするその動作だけで揺れる胸は、汗の水分で濡れた服もあってとてもエロティックだ。

「いったい、どんやって生きてきたらここまで育つんですかねえ…」

「む、胸の話は…いいでしょ…」

アイルさんはツッコミを入れるのも辛いのだろうか、呼吸も乱れ、くたくたになっている。

「…まったく、仕方ないな…近くに宿泊施設がある修道院があるし、そこに行くか?」

パーーっと明るい笑顔を見せたアイルさんは、笑顔で首を縦に振って肯定した。

「ま、体力がない状態で魔物に襲われてもあれだしな、どうするよ、アルタ」

「僕は良いと思うよ。疲れてちゃ、いざというときに危険だしね」

「それじゃ、行くとするか」

セルディは、アイルさんを一瞥すると、さっきまで向かっていた方向とは角度をわずかに変え、僕たちの先頭に歩き始め、修道院に向かって歩みを始めた。


5分ほど歩いたところだろうか、道添にそこそこ大きな建物が見えた。スタンド硝子が貼られた綺麗な建物だった。

「おー、なかなか綺麗なところですねえ。私、こういうところあまり来ないので、なかなか新鮮な気持ちですよー」

「まあ、修道院だからな、綺麗じゃなかったらそれはどうなのよ?」

「はあっ…や、やっと見えてきましたか…」

アイルさんは息を切らしながら修道院を眺めた。木の杖をついて歩くさまは、なかなかに歳不相応に見え、少し残念だった。

「あと少しだ、早く行くぞー」

セルディは再び歩みを始めた。ネーニャもそれに合わせて並行して歩き始めた。貧乳同士ということなのだろうか、なかなか二人は仲が良くなったみたいで、僕は安心な気持ちになる。


「ほら、着いたぞ。アメイラ修道院だ」

建物は近くで見たら結構な大きさを誇っていた。遠目でも確認できたスタンド硝子は太陽の光を反射して綺麗な光を放ち、神聖な雰囲気を演出している。扉は重々しくも聖なる風格を見せ、左右には聖堂騎士が警護の為に立っている。まさに聖なる場所を意識させてくれる。

どうやら勇者級セルディを知っているからだろう、僕たちは何も怪しまれることなく扉を開けることができた。扉の中には、一本の道が隠れていた。扉を抜けた左手には、宿泊施設が内包されていた。一般の宿屋とは違う、神聖な雰囲気が漂う宿泊施設には、通路の角に聖女を象られた像が置かれており、まさしく旅で疲れた旅人たちの心も体も癒してくれる、そんな雰囲気がする気分だ。

「早く休みましょう…もう一歩も歩けないわ…」

「セルディさん、アルタさん、おっぱい魔神さんがもうそろそろ限界そうですし、部屋を確保しちゃいましょうよ」

「そうだね…とりあえずチェックインしちゃおうか」

僕は受付のカウンターに向かって歩いて行くと、突然、僕の右側から強烈なダメージが与えられ、ふいに体が地面に倒れてしまった。

「ひゃわっ!す、すみません!大丈夫ですか!?」

僕はお尻を強く打ったのでお尻を擦って上を見てみると、シスター服を着た美少女が手を差し伸べていた。髪は綺麗な桃色で、ウェーブしており肩まで伸びている。少々体つきはふっくらとしており、胸部もアイルさんほどではないけどかなり大きく、お尻も官能的に膨らんでいる、いわゆる安産体型の女性だ。

「君、大丈夫かい?」

僕がシスターの女の子の手を掴み立ちあがると、彼女の後ろからすらっとした美形の男性がやってきた。キリっとした眉毛をしており、神父服を着ているのに聖堂騎士が装備する剣を装備している。どことなく威圧的な雰囲気を感じ得ない、何か危険を孕んでいそうな瞳は、僕を見つめている。

「はい、なんとか大丈夫です」

「そうか、それは良かった…」

神父の男性は安堵のため息をつき、シスターの女の子の頭をなでた。

「私の妹がすまないことをした。妹は少し急いでいたのでな」

えっ!?…妹!?信じられない!?まったくと言っていいほど似ていないじゃないか!?

「…どうやら、私達が兄妹と思えないようとでも言いたいような顔をしているな。まあ、無理はない、確かに私と妹は似ていないしな」

神父服の男性はそういうとかすかに笑った。

「…私はアメイラ修道院の上級神父、アルジェロ・エンジェだ。こちらは妹のフランだ」

僕たちも自分の名前をアルジェロさんに伝えた。セルディのことを、やはりアルジェロさんは知っていたようで、セルディが名前を言いだす前にアルジェロさんが名前を呼称し、セルディのことを知っている旨を話した。全員が自己紹介した後、アルジェロさんは少し険しい顔をして、話を始めた。

「…それはそうと、君たちは連絡道の強力な魔物を討伐したという話を聞いた。…突然の話で実に申し訳ないのだが…少し、妹の手伝いをお願いできないだろうか」

「構わんぞ」

「ちょっ!?」

なんと、僕が返答しようとしたら、セルディが返答してしまったじゃないか!?しかも、出来るだけ早くシュヴェッラ城に行きたかったから話を断ろうとしたのに!!

「流石は勇者級セルディ、話がわかりますね」

アルジェロさんはふうっと息を漏らすと、フランさんの肩をぽんと叩き、話を再開した。

「最近、魔物の行動が活発化しているのは、君たちも薄々感づいているとは思う。それに影響されたのかは定かではないのだが…かつての魔王残党軍の強敵であった魔物…バルザムが封印から解かれてしまったのだ」

「なんだって!?」

まず大きな反応を示したのはセルディだった。…バルザム…僕も名前は聞いたことがある。魔王襲来戦争時、多くの魔物を率いてシュヴェッラ城に攻め入ろうとした魔物であり、姿は腕が4本生えた人のようなものと聞いている。とんでもない強敵だったらしく、バルザムは討伐では無く、封印と言う形で人類軍に対処された。その際にここ、アメイラ修道院の聖堂騎士団が封印を行ったのもあり、すぐ近くに存在する『バルザムの祠』に封印され、厳重にその魂が保管されている。そんな魔物が復活してしまったのならば、確かに尋常な事ではない。

「…実は、バルザムの祠の調査に妹が駆り出されてしまってな…私も妹についていこうとは思っていたのだが、どうしても抜け出せない非常に重要な用事があって同行できないのだ…戦闘能力が乏しい妹にだけ行かせるのは非常に不安なのだ。まして、最近は魔物が活発化しているのもある。聖堂騎士団もその対処につきっきりだ。ここはひとつ、お願いできないだろうか」

セルディは顔をしかめた。そして、一人でコクっと頭を頷かせ、何かを見ていたかのような表情を見せ、アルジェロさんの方を向いた。

「わかった。確かに心得たぞ」

「…まあ、仕方ないけど、僕はセルディが決めたことは曲がらないって知ってるから止めはしないよ」

僕は今の表情から、セルディの過去の因縁の一つに決別しようとしているのが確認できた。バルザムは、この国を戦火の渦に巻き込んだ許されざる魔物だ。しかも、「封印された」ということからもわかるように、セルディの戦闘力をもってしても倒すことができなかった魔物だ。だがしかし、祠の中で復活したバルザムと戦闘になることだって考えられる。…ここで封印直後の弱ったバルザムを討つことで、セルディは過去の因縁を晴らすつもりなのかもしれない。

「ありがたい!…そうしたら…フラン、出発は明日だったかな?」

「うん、そうだよ」

フランさんはコクっとアルジェロさんに頷く。

「だったら、今日はゆっくり休んで行ってくれたまえ…ここの宿の代金は私が払おう。気にしないでほしい、妹を助けてくれることに対する感謝だと思ってくれ」

「あっ、だったら、今日は私もここで泊っていい?冒険者さんの話とかも聞きたいし…」

「ううむ…少し懐に響くものがあるが…フランの頼みだ、仕方ないな」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

フランさんはやった~と万歳している。兄であるアルジェロさんは妹に弱いのだろうか。少し怖い顔つきをしているけど、妹思いの人であるようだ。

「それと…早く彼女を部屋に連れて行った方が良いのではないか?杖をついて寝てしまっているぞ」

「ああっ!?」

後ろを振り返ると、杖をついてぐっすりと眠っているアイルさんがいるじゃないか!!どれだけ疲れていたのだろう…というより、あの体勢で寝れるの凄いなあ…。

「フッ…愉快なものだな…さて、私はそろそろ職務に戻らなくてはいけないから、失礼させてもらうぞ。妹の事、宜しく頼んだ…ご加護のあらんことを」

そういうと、アルジェロさんは宿泊施設のカウンターに行き、お金を払って廊下の奥の教会に向かって帰って行った。

「おい、アイル、起きろー、ほら、部屋に行くぞー」

セルディはペチペチとアイルさんの頬をたたき、目を覚まさせた。

「フランといったか…ほら、お前も行くぞ、明日の作戦会議だ」

「あっ、私はまだお仕事が残っているので、終わってからそちらに行きますう」

いきなり馴れ馴れしくされたというのにニコニコして答えるフランは、まさしく優しいシスターの如くだった。僕だったらいきなりこんな馴れ馴れしくされたら少し怖いなあ。


「…どうしてこうなったの…」

僕は部屋に入ると、今まで溜まっていた疲労感が更に無駄に溜まってしまった。

「どうして部屋が女の子と同じなのさーー!!」

アルジェロさんも仕事に急いでいたのだろうか、はたまたカウンターの女性が僕を遠目で女性と勘違いしたのだろうか、僕たち5人は同じ部屋で寝ることになってしまったのだ。というか、アルジェロさんも普通気付くよね?仕事があって急いでたとはいっても、一応ここは修道院なんだし、男女同じ部屋っていうのは…なんというか…

「いやあ、やはり凄いですねえ」

「きゃあっ!ちょっと、どこ触ってるのよ!?」

「!?!?!?!?」

仕事を終えてこの部屋にやって来たフランさんを含め、お風呂に入っている4人は、セルディの裸の付き合い大事とかいうよくわからない理論によって中で楽しく女子会していた。…そして、同じ部屋にあるお風呂…女の子4人のワイワイした声は、壁を隔てた僕のところにも届いて来る。

「おいアイル、お前、また育ってるんじゃねーか?…私にもよこせ!!」

「やっ…!セ、セルディ…さん…!…そんな激しく揉まないでください…!!」

壁越しでもセルディの恨みの声、そしてアイルさんの興奮した声は伝わって来る。色々と分かりやすいなあ、ほんと。

「というよりも…フランさんもなかなかのものをお持ちですねえ…やはり神様にお祈りしてるとおっぱいも加護を受けるものなんですかねえ」

「いえいえ、神様に祈ったからと言って、おっぱいが大きくなるとは限りませんよお?」

「な、なんかまともに突っ込まれてしまいましたねえ…」

神様に祈ったらおっぱいが大きくなるって…それだったらセルディはとっくに神様に毎日祈ってるよ、ネーニャ。そういう簡単な世界じゃないんだよ、多分。

「てか、フランはおっぱい大きいけど、少しぽっちゃりしてるよな。運動とかはしてるのか?」

「うう…ぽっちゃりと言うのはやめてください~…」

「別に良いではないですかセルディさん。最近はそういう需要も増えてきていますし、おっぱいがあるからといってフランさんをいじめるのはやめてあげて下さいよ、それは僻みですよ」

「うっ、うるせえ!!お前だって小さいくせに生意気な!!」

「だから、私はあなたみたいなまな板じゃないのですよー、ほら、膨らんでるでしょー」

「キーーーーーーーーーーーーーッ!!どうせ私はまな板だよ!!もういいよ!!私はもう風呂出る!!」

…自分から裸の付き合い云々言って一番最初に風呂出るってどういうことなのセルディ……

「というより、もう結構長い時間お風呂に入ってますし、もう皆さん出ませんかね?」

「私はいいですよお」

「そうね…なんか疲れてきたし…出ましょうか…」

セルディがお風呂から出ると、他の女の子たちも順順にお風呂を出始めた。着替え終わった女の子たちは風呂場につながるドアから一斉に出てきた。

「ほらアルタ、次はお前が風呂入っていいぞー」

「うん、わかったよ」

僕は着替えを手に携え、お風呂に浸かり艶やかになった女の子たちとすれ違う。…アイルさんとすれ違う時、彼女の口から僅かな声量の声が聞こえてきた。

「…セルディさんが入ったお風呂だからといって、湯船のお湯を飲んだりしたら…殺すから」

「!?」

僕はとっさに首がひん曲がるくらいに後ろを振り向いた!!アイルさんが顔に影が入るように僕を見て笑っている…うん、幻聴、そう、幻聴だったんだよね。そうだよね。というか、流石に僕はそこまで特殊な性癖とか持ってないからね。


なんとなく心静かにお風呂に入れなかった僕は、さっさと体を洗ってお風呂から出た。…女の子がたくさんいる部屋のお風呂にいて、時間をかけて入っているのも緊張してしまうからね。

「やーっと出たかー!男にしては長かったなあ!」

「いつもより早くお風呂出たつもりだけど?」

「まあ、細かいことは気にすんなって!」

「う、うん…」

セルディはガハガハ笑っていた。どうやら他の女の子と談笑していたようだ。

「あー、話に弾みをつけるのもいいですけど…そろそろ明日の件について話した方がいいんじゃないですかねえ」

楽しい話をしていたのだろうが、ネーニャは少し落ち着いた表情を見せて他の女の子たちに注意を促した。なんやかんや言って、こういうときに真面目に動いてくれそうなのはネーニャくらいしかいないのはある意味情けなくも感じるけど、そこがまた、彼女たちの良いところなのかも知れないのかなあ?

「そ、そうだったわね…作戦会議が終われば、またセルディさんと一緒にお話しが出来ますし…一度真面目に話し合いましょうか…」

どんだけセルディと話がしたいの!?パーティで一緒になってからいっつも一緒に話してるよね!?

「そうだなあ…」

セルディは、先程までの女の子らしからぬ爆笑をしていた顔を真剣な表情に作り替えた。流石に過去の大戦の強敵の話となってくると、魔王討伐主力隊の一員だったときの戦士のセルディが垣間見えてくる。

「…なあフラン」

「はい、なんでしょう?」

「今回、修道院側からはどのような対処をしてこいって言われたんだ?」

「いえ、ただ、調査をして来いとだけしか…」

「…ならば……丁度いい機会だし、明日、バルザムを討伐しようか」

セルディは息を詰まらせるようにゆっくり言葉を吐いた。やはりバルザムを倒すつもりでいたようだ。僕はセルディの言いたそうなことはある程度分かるからこのような事を言うのも想像していたが…やはりまわりの女の子たちの反応は驚きに満ちていた。

「そ、そんな!?冗談はその胸だけにしてくださいよ!?」

「セルディさん、分かっているのですか!?バルザムは、非常に強力な魔物とされてます!!例え復活したばかりで弱っているとしても、危険すぎます!!」

「そう言うのはわかっていたよ。でも、もしも復活から時間が経って、祠から出てきたらどうするんだ?…それこそ大惨事になるだろう」

「修道院長のオギル様がおっしゃるには、祠の結界も長い時間の経過で効力が弱まっているとのことでした。セルディさんの推測通り、大変な事になる可能性も否定はできません」

フランさんはセルディの発言について補足の情報を付加し、危険性を伝える。どうやら、フランさんは討伐することに異論はない模様だった。

「魔物さんたちを倒しちゃうのはかわいそうですけど…いたしかたない部分はあると思います…」

こういうところでもフランさんは天使的な考えを持っているのかあ。…過去のネーニャと対極的な考えを持つ人も、いるものなんだなあ…ネーニャのは過激すぎてたけど。

「というよりも、また封印をするってのはダメなんですかねえ?」

ネーニャがごもっともな質問を投げかけた。僕もこれに関しては思っていた。セルディの意見には賛成だったので敢えて口にはしていなかったけど。

「封印を繰り返しても、また封印をしなくちゃいけなくなる…近い未来、魔王襲来戦争を生き抜いた人類がいなくなって、平和ボケした世界になって、100年後とかにまたバルザムが復活してみろ。誰も対処しなくなるだろ。人ってのはそういうもんだ。だからこそ早く対処をしないと後々大変な事になるぞ」

達観した考えだ。僕はセルディがここまで考えていたとは全く想像していなかった。だけど、僕もこれは同意せざるを得ないだろう。人類の歴史って、風化したら忘れられるものだからね。

「そういうものなんですかねえ…」

「それにだな!私はバルザムにリベンジマッチを申し込みたい!!」

セルディは声を大にして訴えた。恐らく、セルディの動力…これこそがある意味野生的なセルディの思いなんだろう。

「…そうですね…セルディさんは、負けるのが嫌ですもんね…!このアイル、どこまでもセルディさんについていきますよ!」

アイルさんは右腕を高く天に挙げ、戦う意思を固めた。

「おっぱいに関してはアイルさんに完敗の模様ですがねえ」

「くそっ!!今はそれは関係ないだろ!!」

「…でもまあ、セルディさんがそういうふうに言う気持ちは分からないわけじゃないですよ。んー…まあ、ここでいっちょ、本気出してみますかあ…」

ネーニャも普段通りにおちゃらけたことを言うものの、どうやら戦う覚悟は決めたようだ。

「そんじゃ、明日は調査じゃなくて討伐って事になるが…いいな、フラン?」

「大丈夫ですよ!…それでは…明日は宜しくお願いいたします、みなさん…!」

「おーーーーーっ!!」

僕たちはアイルさんのように一斉に腕を天に挙げた。僕たちを待つバルザムは強敵だ…でもここで勝たなくちゃ、また魔王襲来戦争の時のような被害が出てくるかもしれない…そうならないためにも、戦わなくちゃ…!

「ふぁーあ…お風呂に入って眠くなってきましたし、少し早いですがもう寝ますかねえ?」

ネーニャはあくびを吐いて眠たそうに眼をこすっていた。確かにまだ時間としては夜になったばかりではあるが、ここ最近は移動が多いのもあって疲れがたまっていた。一度、体をリセットするには絶好なタイミングかもしれない。

「そうだね…今日は早く寝ようか…」

ところで僕は気付いた。この部屋にはベッドがツインのもの2つしかない。…うん、これは即ち、そういうことだよね。

「あ、アルタ、お前は床で寝ろよ」

「うん、分かってた」

僕はふかふかなベッドで寝たかったが、女の子…それも皆揃って美人な女の子のいるところで寝るのも僕的には色々危険だし、仕方なく固い地面に体を横にした。

「アルター、電気消してくれー」

せっかく横になったのになあ…僕は「分かったよー」と淡々と答え立ち上がり、部屋のドアの近くにある電気のスイッチを逆向きにした。部屋は真っ暗になった。僕は暗闇の中をゆっくりと歩いて先程横になった位置にたどりつく。僕は疲労の溜まった体を床に侍らせ、目を閉じた。


「おーーーーーい!!朝だああああああああっっ!!」

朝から怒号の様な声が聞こえてくる。この可愛らしい声の主は言わずもがなセルディの声だ。僕は夢の世界から叩き起こされたように目を覚ました。どうやら周りの女の子たちもセルディの声で起きたようで、目をさすったりして寝ぼけている表情を見せている。

「朝からうるさいですねえ…まだ私は眠り足りませんよー…」

「もう電気消してから9時間経ってるぞ!!ほら、目を覚ますんだ!!」

ネーニャは横で寝ていたセルディに体を揺さぶられたので、しぶしぶ体を起こし、ベッドから足をおろし、僕の方に向かって歩いてきた。

「あいたあっ!?」

「あっ、アルタさん、ごめんなさいです」

仰向けに寝ている体勢の僕の顔面を踏んできたネーニャは僕のことなんて全く気にせず、ふらふらあっと洗面所の方に向かって歩いて行った。

「うーー…おはようございます、みなさん…」

フランさんもようやく軽く目を覚ました様子だ。ぐーっと伸びをして肩を落とした。もう片方のベッドから足をおろしたフランさんは手を組んでぶつぶつと神様に対して挨拶をしたあと、ネーニャと入れ替わる形で洗面所へ向かって歩いて行った。…今度は踏まれなかった。ふう、よかった。

「おい!アイル!!早く起きろ!!もうそろそろ出発だぞ!!」

よほど疲れていたのだろうか、アイルさんだけは一度目を開いたようではあったが再び眠りに着いてしまっていた。

「このぉぉ…起きろぉぉぉ!!ガウウゥゥゥゥッッ!!」

セルディはベッド間を飛び越え、アイルさんに頭からダイブした!

「ぐっ!?…セ、セルディさん!?」

「ほら、起きろ!起きたか!?起きたのか!?」

ネーニャはアイルさんのたわわなおっぱいを激しくもみしだき始めた!アイルさんはとんでもない笑顔を見せている…

「や、やめてください、セルディさん…!ぐへ、ぐへへ…」

デジャヴしか感じさせないこのやり取り。でもやはりこの光景は僕にとって良い目の保養になる。…アイルさんの顔は残念な感じだけど。

「全く、セルディさんもいつもいつも何かあったらすぐにおっぱい揉みしだいて…そんなことしてもあなたの胸はボインボインにはなりませんよー」

いつもの露出度の高い服に着替えていたネーニャは憐れんだ顔でセルディに対して挑発する。というか、いつの間にか着替えていたのか…全く気付かなかった…というか、僕もいたのに、よく着替えられたものだなあ。

「いつもいつもうるせえやい!こうでもしてやらないと、私の気がおさまらない!!」

「はいはい、もうアイルさんは起きたみたいですし、これ以上おっぱい揉んでてもまたアイルさんが疲れるだけですよー」

「そ、それもそうだな…」

「えっ…」

…なんで感嘆の声を漏らしたんですかアイルさん。まあ、理由はわかるけど。

ようやく全員が起き、僕は皆が着替え終わるまで部屋の外で待たされることになった。朝の風はやはり冷えるなあ。なかなかに寒い。

「おい、入っていいぞー」

セルディがドアを開けて僕に手招きした。僕は部屋に入ると、床に置いていた荷物袋にしまってある外着を手に取り、着替えるために洗面所に入った。

「……ア、アルタさん……?」

「………えっ…?」

僕の目の前には、ピンク色の大人なパンツだけしか履いていない、綺麗な裸体を曝しているフランさんがいた。…幼げな風貌を残した可愛さに反比例している大きな胸は柔らかそうに膨らんでおり、官能的だ。…そして…その先端の桃色のした小さな蕾は綺麗な形をしており芸術的にすら感じてしまう。お腹周りは、昨日セルディやネーニャが言っていたように確かに少しぽっちゃりしている…が、その肉付きは健康的な色気を携えていた。パンツに乗っかっているお腹の肉も…非常にそそられる…。そしてふっくら膨らんだ綺麗なお尻…。僕の思考が全てをめぐり切った直後…

「きゃああああああああああっっ!!!!」

パチィィィィン!!

左腕で胸部を隠したフランさんは、右手で僕の左頬を強くたたいた。そして、洗面所から飛び出していってしまった。


「すまなかったよ、フラン」

「ううっ…まさか男性の方に裸を見られてしまうなんて…神よ、淫らな私をどうか御許し下さい…」

ベッドルームで着替えを済ませていたフランさんはしくしく泣きながら神様に懺悔している。

「なんでまだフランさんが着替えてたのに僕を部屋に入れちゃったのさ!?」

「いやあ、だってお前男だし、普通に部屋で着替えると思ってたんだよ」

セルディ…僕にも一応は羞恥心はあるんだよ…。

「てか、もうこんな時間じゃねーか!!早く行かないと帰る頃には日が暮れちまうぞ!!」

「いや、流石にそれは盛ったよね、セルディ」

「いいからいいから!!ほら、早く行くぞ!!」

セルディは荷物をまとめて足早に部屋から飛び出して行ってしまった。

「ああっ、待って下さい、セルディさーん!!」

「全く…あの人はいつも強引ですねえ…まあ、そこがあの人のいいところなのかもしれないですが」

「みなさん!待ってくださいー!!」

女の子たちはセルディが飛び出ると、急いで身支度を済ませて追いかけて行った。僕ものんびりするわけにはいかないので、さっさか荷物をまとめ、女の子たちの跡をつけて走り出した。


アメイラ修道院を出発して30分程度たった頃であろうか。僕たちの目の前に、円形のした建物が現れた。修道院の北西に位置するこの円形の建物こそ、バルザムの魂が封じ込められた祠だった。厳重に守られている扉には、何重もの魔法陣がかけられていた。…この中に…復活したバルザムがいるのか…体が震えてくる…尋常じゃない恐怖が煽られるこの感覚…。僕はすさまじい恐怖を感じ得なかった。

「…みなさん…準備はよろしいですか…?」

フランさんは問いかけた。

「ああ、いいぞ…いつでもかかってこいだ!」

「もちろんよ。さっさと片付けてしまいましょう!」

「いいですよー」

…フランさんは僕の顔を見た。

「…いいよ…行こう…!」

「…では…行きましょう…!」

フランさんは魔法陣に右手を添え、扉開放の文言を唱え始めた!扉に描かれた魔法陣はゆっくりと消え失せ、扉は重々しい動作で、ついに奥に向かって開いた…!

僕たちは、それぞれ武器を構え、バルザムの祠の中に進入した…!

うす暗く照らされている祠の中は、ただひたすらに不気味だ…一本道になっており、左右には等間隔に設置されている光の魔鉱石…まさしく、ダンジョンとでも形容できるものだ。

僕たちはゆっくりと歩みを進める…いつ、バルザムが現れるかわからないこの状況は非常に心臓に悪い…僕はこの空気に殺されるんじゃないかとさえ思えてきた。…僕は必死に一本に続く細い道を警戒しながら歩く…。

「…最深部に来ちゃいましたねー…」

僕たちは、バルザムに遭遇することなく、祠の中央部に位置する封印の間の目の前に到着してしまった…。…つまり、この扉の奥には、かつての強敵、バルザムがいる…恐ろしさはついに極みを超えた。僕は立ちすくむように扉を見ることしかできなかった。

「…行くぞ…」

「……はい…」

セルディの小さな声の催促…それに応えるフランさん……ついにご対面だ……僕は再び携えた剣を強く握りしめた…。

「では、開けます…」

扉に掛けられた魔法陣は先程の入口の扉と同じように、フランさんの詠唱によって消滅した。…そして…ついに……この扉はゆっくりと開いた………。


「っ!?……まさか……!!」

セルディは目の前に映る光景に目を疑っている。…そうだ、僕たちの前には、確かに居た……魔王襲来戦争でこの国を破滅へ導きかけた魔物、バルザム……だが、どうみても大戦中のバルザムとは違う風貌をしている……。まるで胎児のように小型化した身にまとう謎の球状の液体……見れば見るほどその姿はバルザムとは似ても似つかない…。

「…来たか、人間…」

バルザムは、その胎児のような身に合わぬ低音の威圧を感じえん声を発した。僕は身ぶるいが治まらなかった。

「お前…バルザムなのか…!?」

セルディはひどく動揺した表情を見せながら問いかける。

「…もしや貴様は…あの時、私に怪我を負わせた女戦士か……そうだ、私は貴様たちの言うバルザムで合っている…貴様たちが施した奇妙な攻撃で姿は退化してしまったがな」

「……はあああああああああああああああっっ!!」

バルザムは問いに答えると、セルディは携えていた短剣を逆手持ちにし、バルザムに突っ込んでいった!!

「…愚か…」

そう一言発すると、バルザムから、激しい風の刃がセルディに襲いかかる!!

「ぐっ!?」

セルディは間一髪で回避に成功したものの、バルザムはぶつぶつと何かをつぶやいている…これは…!?

「…烈破の風よ、弾けろ…爆陣裂≪イオーディ≫…」

「!?まずいわ!!みんな、体を地面に伏せて!!」

アイルさんが指示を出すと、僕たちは一斉に地面に体を伏せた!!

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

頭上では空気が爆発して激しい音を立てている!!今のバルザムの魔法は爆発の呪文だったのか!!

「…ほう、確かに体が鈍っているとはいえ、私の呪文を予測し回避させるとは、なかなかの才能を持つようだな。そこの女剣士とは違う意味合いでな」

「それはどういう…!?」

アイルさんが声を荒げてバルザムの言う言葉に問いかけようとするも、セルディの猛攻によって音はかき消されてしまう!!

「だあああああああああああああっ!!」

ダガーナイフはバルザムの頭上を断とうとしたその時!

「…真っ直ぐすぎる」

バルザムは液体ごと体を回避させ、何かを見つめるかのような素振りを見せた。

「…貴様は…不幸だな…」

「なにっ!?」

セルディは訳の分らぬ突然の憐れみの言葉に動揺を隠せなかった。

「……やはりな」

「なにがっ!?」

素人目の僕にもセルディの動揺が剣筋に見える…!これでは当たるものも当たらない…!

「…今の貴様が何を言おうと、確かに変わりはしないのかもしれないが…だがいずれ、貴様は絶望することになる…これは私からの忠告だ」

「何が言いたいんだよ、お前は!?」

ぶんぶん振り回しながら放つ斬撃は、バルザムには届かない。華麗にかわされ、体当たりのような攻撃でセルディは体勢を崩される。

「全く…そんな妄言に付き合ってちゃ、的にゃ当たりませんよ!!疾風瞬郷≪ウォンディネット≫!!」

詠唱を飛ばして自身の身に魔法陣を通過させたネーニャは、その瞬間、一閃の剣戟を放つ!!

「…ほう、なかなか芯の強い攻撃だな。だが、詠唱しないで身体強化の魔法とは、いささか無謀に感じるが」

「ガハッ…!!…あなたに心配されるほどじゃあないですよ…」

ネーニャは血を吐きだしながらもなお、その飄々とした雰囲気を崩さずに、攻撃をかわしたバルザムの言葉に反応する。

「よそ見してんじぇねーぞ、コラアアアァァァッ!!」

「甘い…!」

背後からの一閃!しかし、バルザムは攻撃を予測したかのように回避したのち、詠唱しないで爆陣裂≪イオーディ≫を唱えた!!

「があああああぁぁぁっっ…!!」

セルディは爆発によって体のいたるところから血を流している…!このままではまともに戦えない…!

「セルディさん!!」

フランさんは急いでセルディのもとに走り寄り、膝をついた。

「癒しの光、加護を与えん…治癒の光≪ヒリング・シャイン≫…!」

フランさんの手が神聖な光につつみこまれた…!その手がセルディに近づくと、みるみるセルディの傷が回復していく…!…が、まだ動けるまでには回復できていない、傷が深すぎる…!

…僕はひるんでいたその足を…ついに動かすことができた…!

「はああああああああああっっ!!」

僕は剣を持ち、走る。…バルザムを倒すために…!!

「剣に気持ちが乗りすぎだ」

バルザムが僕の攻撃を回避したその時…!

「いけっ!サラマンダー!!」

ネーニャの持つ短剣から横薙ぎの炎の波動攻撃を放つ!!

「煉獄の炎よ、あまたの生血を燃やしつくせ…煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

ネーニャのサラマンダーから炎が放たれたと同時に、アイルさんは煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫を放つ!!

ネーニャとアイルさんの連続攻撃…!!だが、バルザムは同時に放たれた攻撃を見事よけきって見せ、バルザムは真空波を放とうとしたその時…僕はそのわずかな隙を見逃さなかった!!

「雷光波≪ライジング・エッジ≫!!」

僕はバルザムのすぐ下から、無詠唱ではあるが、その瞬間にかけ、雷の矢を放つ…!

「だが遅い…!」

バルザムは真空波を放った!!僕はもちろん、ネーニャやアイルさんも風にあおられ後方に吹き飛んでしまい、同時に波動によって烈傷を負ってしまった!!

だけど僕は、更にもう一つ、見逃していなかったんだ…!

「だあああああああああっっ!!」

「……っ…何ッ……!!」

背後を取っていたセルディは、一気にバルザムに攻め寄り、縦に叩き斬った!!バルザムも間一髪のところで回避はしたものの、背中にダメージを負った様子だ!!

「まさか…私の呪文を直撃で受けたのに、この短時間で動けるまで回復するなど…この体ではそこまでなのか…!?」

「もらったあああああああっっっ!!」

僕は一気に突っ走る!!この様子ならば…ここで倒せる…!!

僕は剣を振りかざし、バルザムに斬撃を放つ…!!

「だが、剣に気持ちが乗りすぎている…!」

なんとあろうことか、バルザムは僕の方に向かって突っ込んできた!!

「ガッッ!!」

僕は体当たりを食らってしまい、そのまま背中から倒れてしまった!!…このままではやられる!?僕は恐怖で足が動かない…このままじゃ、僕は…!!

「…さらばだ」

バルザムは再び真空波を放つ構えに入る…だけど僕は…!!

「なにやってるんですかアルタさん!!死にたいんですかあなたは!?」

バルザムは再び真空波を放った!!…僕は…この攻撃をもろに受け、ここで夢半ばに果てる…そう思っていた…だが……!

「こんなところで棒立ち…いや、棒座りなんて、自殺行為ですよ!?」

ネーニャが間一髪のところで僕を救い出してくれた…!僕はいまだに震えが止まらない…僕はあの時…ネーニャがいなかったら…!僕は恐ろしさに体が震えるしか出来ない…!!

「まったく…しっかりしてくださいよね、アルタさんよ。…サラマンダー!!」

ネーニャは僕を地面に置くと、その場からサラマンダーの炎の波動の斬撃を放つ!

「この程度、この体でも避けきれる…」

バルザムは余裕の一言、発すると、見事、ネーニャの攻撃をかわす!!

「……ぐっ……」

「!!…今ならいける!!雷光波≪ライジング・エッジ≫!!」

僕はバルザムの痛みに耐える声を聞き逃がさなかった!!先程のセルディの攻撃は効いている!!ならば確実にここで叩く!!

「うっ…!…くっ…こうなったら…焦壁嬋≪ウォデッド≫!」

バルザムの目の前に、光り輝く壁が現れた!!そして、僕の放った雷光波≪ライジング・エッジ≫はバルザムに直撃した!!

だが、バルザムは大きなダメージを受けていない!!

「気をつけて!今の呪文は魔法のダメージを減らす呪文よ!!バルザムも無詠唱とはいえ、こちらの無詠唱の魔法じゃほとんどダメージを与えられないわ!!」

アイルさんが叫ぶ!ここにきて防壁系統の呪文とはやってくれる…!万一に危険が及んだときの為にとっておいたのか!!

「こうなったら、肉弾戦ですかねえ…はあッ!!」

ネーニャはバルザムの背後を取って攻撃を放つ!

「まだだ…!」

バルザムはネーニャの背後を取り、直後、真空波を放った!!

「ぐわあああああああああああああっっ!!」

ネーニャから鮮血がほとばしる…!!おもいっきり吹き飛ばされたネーニャは壁に叩きつけられ、風の刃を全身に喰らって見るに堪えない姿をしている…だが、ネーニャは笑っている…そう、バルザムの背後には、フランさんの呪文で完全に回復したセルディがダガーナイフを持ち、突き刺す体制を取っていた!

「ほら、セルディさん…隙は作りました…今です…よ…」

「はあああああああああああっ!!」

「だが、まっすぐだ!!」

バルザムは大きく回避せず、セルディの腹部に当たるであろう部分に回避した!!だが、セルディはなんと、バルザムを包む球体の頂部をわしづかみにし、自らのスピードに身を任せ、ハンドスプリングのような動きを見せた!!セルディはバルザムの背後を取った!!

「なにっ!?」

「これで…終わりだああああああああああああああああっっ!!!!」

セルディは、思いっきりダガーナイフをバルザムに突き刺した!!そして、思いっきりほじくり回し、ダガーナイフを縦に斬る!!

「グウウウウウウウウウウッッッ!!!!」

そして、ついにバルザムは地面に球体ごと身を落とす!…ついに…2年という長い月日を経て、バルザムに勝利したのだ!!

「……フフッ……」

「何がおかしい?」

バルザムは不気味に微笑む。セルディは冷静な反応を見せた。

「…魔の気が満ち始めている…あと少し…あと少しであの方は復活する…!…その時…貴様は後悔するだろう、女剣士……私は……!!」

バルザムは何かを言い残すようについに消滅した。…勝ったんだ…弱っていたとはいえ、バルザムに…!

「ふう…あのバリアを使われた時はどうなるかと思ったけど、なんとかなったわね…」

「まあ、アイル姉さんは所謂、魔法使いタイプですからねえ。あんなバリア貼られたらやばいですよねえ」

「って、あんた、もう動いて大丈夫なの!?」

「ああ、フランさんが回復の魔法使ってくれたんで、もう大丈夫ですよー。いやー、あれほど魔力活性率の良い回復魔法は受けたことがないですよー」

「ふう…実戦でこのような形で魔法を使うことはなかったので、緊張しましたあ」

僕は立ちつくすセルディに近寄る、と同時に、他の女の子たちもセルディのもとに走りよって来た。

「いやー、やりましたねー!ついにバルザムに勝ったんですよー、もっと喜んでもいいんじゃないですかー?」

「あっ、ああ…そうだな…」

「…もしかして、気になってる?バルザムの言葉」

僕は単刀直入に聞いた。ネーニャの顔には何か不安げな雰囲気が見える。

「あー、後悔するとかなんとかですかー?気にしなくていいですよー、どうせハッタリか何かですよ、きっと」

「そうですよ!セルディさんに何かがあったとしても、このアイル、絶対セルディさんについていくと決めてますから!!」

「そうだな、そうだよな…気にするだけ、無駄だよな」

セルディは半ば強引にニコッと笑って見せた。が、どうみても不安げだ。僕はまた聞きただそうと思ったが、何回も同じことを聞くのもあれだと思い、僕のこの思いは心に封じ込めることにした。

「それじゃ、もうここには用は無いし、修道院に戻ろうか?」

僕がそう言うと、それぞれ肯定の意を示した。

僕たちは、達成感とわずかな不安感を胸に、バルザムの祠を後にした。来た道をみんなで談笑しながら進み、ようやくアメイラ修道院に戻って来た。神聖に輝くスタンド硝子を見た僕は、今更ながら、まだ生きているんだという実感がわいてきた。

重たい扉を開き、宿泊施設のある道なりをまっすぐに進み、礼拝堂へとやってきた僕たちは、壇に立ち、祈りをささげる修道院長のオギルさんにバルザムの討伐の報告をした。

「おおっ、それは誠か!?いやあ、なんということだ、まさかバルザムを倒してきてしまうとは!!」

腰を曲げ、杖をつきながら興奮気味に話すオギルさんは非常に嬉しそうだ。すると、礼拝堂のさらに奥右手にある騎士団の宿舎の方からアルジェロさんがやって来た。

「君たち、よくやってきてくれた!オギル様と同じことを言うことになるが、まさか倒してきてしまうとは思ってもいなかったぞ、ありがとう」

「…アルジェロ、あれを持ってきてくれないか?…今回のお礼に渡したいのだ」

「畏まりました」

そういうと、アルジェロさんは再び宿舎の方に戻って行ってしまった。しばらくすると、何かを持ってアルジェロさんが戻って来た。どうやら指輪のようだ。

「これは魔法力…要は魔法が使える回数を増やす魔法の指輪じゃ…よかったら使ってくれ、きっと君たちの旅の助けとなるだろう」

「いいんですか!?」

僕はまさか魔法の指輪をくれるなんて思ってもいなかったので、思わずもらっていいのか聞いてしまった。魔法の力を宿すこのような装飾品は非常に高価なのだ。

「構わんよ。ここで眠っているより、使われる方が嬉しいだろう」

「では、いただきます…ありがとうございます!」

僕は魔法の指輪をアルジェロさんから受け取り、袋にしまった。あとで誰が装備するか皆で話し合おう!

「あ、あの…オギル様、お兄ちゃん…」

僕はハッピーな気分になってると、突然、フランさんが重々しくその口を開く。

「うん?どうした、フラン」

アルジェロさんは優しく、だが真剣なまなざしで答える。

「…私も…この方の旅について行ってはダメでしょうか?」

「…それは何故?」

驚いたりせず、冷静な態度でアルジェロさんは聞く。

「…私、気になるの…バルザムが言っていたあの方が復活するっていうあの言葉が…」

「どういうことだ?」

「バルザムが消滅する前に言ったの、魔の気が満ち始めている…あと少しで、あの方が復活するって……最近、魔物が活発になってきたのと、もしかしたら関係があるかもしれない…だから、私、確かめたいの!」

「…なるほど…」

アルジェロさんは複雑な表情を見せる…それもそのはずだ、実の妹が旅に出たいなんて言ったら、それは悩むだろう。

「…わかった…」

アルジェロさんは、悩みぬいた末、しぶしぶと決断を下した。

「勇者級セルディ並びに旅人の君たち…どうか私も妹を、宜しくお願いできないだろうか?」

僕は全然かまわなかった…だけど、他のメンバーの意思も聞きたかったので、敢えて発言は控えた。

「いいんじゃないか?」

やはり、最初に口を開いたのはセルディだった。

「いつも言ってるが、来たいなら来ればいいじゃないか。拒む理由は無いんだし」

「…では、妹を頼んでもよろしいということでいいので?」

「…わかりました、大丈夫です」

僕は流れに乗るまま、了承を出した。もちろん、こちらには拒む理由はないし、逆に回復に長けた仲間が増えるのは都合がいい。

「宜しくお願いします、みなさん!」

「私からも宜しく頼む」

「宜しくお願いしますねー」

「よろしく、フランさん!」

「それじゃ、荷物の準備をしてきてくれ!私達は昨日と同じようにここの宿で休んでるから、荷物をまとめたら部屋まで来てくれ!!」

「はい、わかりました!」

フランさんは笑顔で振り返り、聖堂騎士の宿舎と反対側に位置するシスターの宿舎に向かって走った。というか…

「セルディ!偉そうにしすぎでしょ!?」

「まあ、気にすんな気にすんな」

「気にするよ!」

「フッ…君たちは仲が良いな…今日の宿泊代も私が出そう。今回のバルザムの件と妹の件に対する感謝だと思ってくれ」

「指輪までもらったのに、そんな…」

「おっ、ありがとうよ!」

「だから!なんでセルディはそんなラフな感じなのさ!!」

「フッ、私は気にしていないぞ、心配するな…。では、宿泊所まで行こうか。早いところ、チェックイン済ませててしまおう」

アルジェロさんはオギルさんに一礼すると、ゆっくりと礼拝堂の扉へと向かって歩き、礼拝堂を出た。僕たちもそれについて行く。宿泊所に着くと、アルジェロさんはチェックインを済ませ、どうやら仕事があるようだったので、急いで礼拝堂の方に去って行った。…そして気付いた、肝心な事を言うのを忘れていたことを…。

「なんでまたこうなるのーーーー!?」

「うるせーよ、フランの兄ちゃん、急いでたんだし仕方ないだろ」

…またまた、僕は他の女の子4人と一緒の部屋になってしまった…アルジェロさん、わざとなんじゃないのかな、これ…。

「さて、私達は風呂入ってくるから、覗いたりするんじゃねーぞー」

「しないよ!!」

セルディはいつもの雰囲気で僕をからかってきた。……アイルさんの目が怖い…。

女の子たちがお風呂に入った後は、前日同様、僕がお風呂に入った。無論、湯船のお湯を飲んだりはしていない。やはり落ちつくことは出来なかったので、素早く体を洗い、風呂を出た。そして、僕は早々と着替えて部屋へと戻った。

「お待たせしましたあ!」

お風呂から出て少ししたら、やっとフランさんがやって来た。普段のシスター服でどうやら旅にでるようだ。…でも靴は動きやすい靴になっている。ボーっとしているように見えて、意外とこういうところはしっかりしているんだなあ。フランさんは部屋に入ると、荷物を置いて、僕たちを見た。

「これからの旅のお供として同行します、フラン・エンジェです。みなさん、宜しくお願いします!」

こうして、僕たちに新しい仲間、フランさんが加わった!!…ついに明日はシュヴェッラ城に行ける…リィラの手掛かりを探しに外の国に行ける…僕は新たな大陸での期待を胸に抱き、夕食を食べるべく、皆と一緒に部屋を出て、食堂へと向かい、歩き始めた。

読者の皆さま、第5話「フラン・エンジェ」、最後まで見ていただき、ありがとうございました!!

今回のお話は新しいヒロインであるフランの加入、そして魔王襲来戦争のときに封印された強力な魔物であるバルザムとの戦いという、大きなイベントが同時に繰り広げられるという内容であり、普段よりも長い話となってしまいましたが、今回の話は非常に重要な回であるので、これから話が進んで行ったときに「おや?」って思った時、この回を見返すと何かが見えてくるかもしれませんよ?(笑)

それはさておき、フラン!!ぽっちゃり巨乳!!島北が大大大大好きなキャラクターですよ!!いやあ、フランの描写を書けて本当によかった!!途中で執筆を諦めることなく、フランが登場出来て、本当によかった!!アイルも好きなんですけど、ぽっちゃり要素もあるということで、フランはアルタのパーティの中で作者一押しですね!(笑)。というよりも、今回のアルタ君の心理描写の中で気付いたかもしれませんが、アルタ君の好みのタイプの女性は島北のものと全く同じです。巨乳好きです。もっと言うとぽっちゃり巨乳好きです。だからと言って、アルタ君はフランに恋したわけではないですがね(笑)。

さて、ここからは次回予告を。次回のサブタイトルは「出国」です。ようやくシュヴェッラ王国領を出て、次の大陸へ旅立つ!というところまでを書いていきます。次回は今回のようなバトル展開はないので、戦闘描写は次回以降をお楽しみください。次回の投稿は7月の上旬(もしかしたら早くなるかも?)となります。是非、ご期待下さい。ということで、また次回、お会いしましょう!!ではでは~!!

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