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強敵遭遇

「伝説の神と勇者の冒険」シリーズ、3話目です。

いろいろなスケジュールがあった中、なんとか無事に3話を投稿することになりました。

それでは、どうぞ、楽しんでお読みください。

ショットの街で、宿屋の娘、アイル・ディショットを仲間に迎えた僕たちは、本島へ向かうために、東島と本島を結ぶ連絡道へと進んでいた。

そういえば、アイルさんが仲間になってから知ったのだが、アイルさんはあの宿屋の娘さんだったらしい。ということは、相当いい暮らしをしているのだろう。栄養に良いものを食べているから、あちらこちら女の子らしい体型をしているのだろう。僕はそう感じた。


ショットの街の出発直前、僕たちは良からぬ話を聞いてしまった。なんと、連絡道はつい最近、魔物が居座ってしまっているらしく、通行が出来なくなってしまっているというのだ。しかし、こちらには魔王襲来戦争で魔王アレクサンドラを倒した者に贈られる勇者級の称号を得たセルディがいる。僕は、その点で少し安心していた。なので、そこまで不安に思うことなく僕たちは連絡道へと歩みを進めることができた。

「はあ…はあ…ねえアルタ、一度休憩しない…?」

少し大人しめな声で、アイルさんは僕に休憩を求めた。……まだショットの街を出発して15分も経っていないんだけど……。

「くっ…」

すると突然、セルディが軽く俯いて謎の悔しそうな表情を見せた。

「これか…」

セルディは、眼を鋭くし、眼光を走らせると、その眼をアイルさんのたわわな胸部に向けた。

「このおっぱいが悪いのかああああああああああ!!」

「きゃああああああ!!!!」

セルディは、アイルさんの胸を下から掬いあげるように持ち上げた!

「この…この…!…こんなおっぱい、こうしてやる…!!」

セルディは一心不乱にアイルさんの豊かな胸を揉み始めた!!セルディが揉むと、それに連動して胸の形がぐにゃんぐにゃんと変形している。なんてすばらしい光景なんだ!!グッジョブ、セルディ!!

「いっ、いやっ!!や、やめて…下さい…!……グヘヘ」

必死に抵抗するそぶりを見せながらも、どうやら愛しのセルディに自身の胸が揉まれていて嬉しいようだった。笑顔なのはそれが理由かあ。この光景を見ているのも一興であったが、先を急ぎたかった僕は、心を鬼にすることにした。

「げふん!…まだ出発して全然時間経っていないじゃないですか…もうちょっと頑張ってください」

「へへっ、残念だったな、アイル!」

僕が言うと、セルディは胸を揉むのをやめて、何故か誇らしげに胸を張ったセルディはアイルさんに言葉をかけた。どんだけひがんでるんだセルディよ。

「ううぅ…」

胸をはげしく揉まれてしまったこともあってさらに疲れた様子を見せ、嗚咽の声を出した。


「ピキーーッ!!」

すると突然、目の前の草むらから緑色の何かが飛び出してきた!!

「あっ、あれは…!!」

「スライム!スライムだ!!」

僕が指を指して緑色の何かに向かって叫ぶと、セルディがその問いに答えるが如く声を出した。

スライムは、緑色の体をしておりつぶらな瞳を持ち呆けたように口を開いており、正直可愛かった。若干ジェル状に溶けており、どうやら滑るように移動するようだ。そして、ジェルの弾力を使って跳躍することも可能のようだった。

「ピキッ!?ピキーーーーーッ!!」

スライムは、こちらを発見すると、体を地面に滑らせ、僕たちの方へと迫って来た。

魔物…というよりも魔王そのものを見たことがある僕だったが、実際に魔物と戦うのは初めてだ。体が震えてしまっている。回避が遅れてしまった僕は…

「ぐわっ!!……って、あれ?」

スライムに体当たりされた!しかし…全く痛くなかった。柔らかい何かがぶつかってる、そんな感じだった。しかし、懸命にスライムは僕に体当たりを続けている。もはや可愛かった。

「ピキッ!…ピキッ!…ピキーッ!!」

スライムは少しいらだっているようだ。それもそのはずだ、懸命の攻撃をしているのにもかかわらず、相手はニヤニヤしているからだ。

「…アルタ…もう倒しちゃっていいわよね?」

「えー…」

セルディはこの光景に飽きたのか、ダガーナイフを逆手に携え、構えていた。僕はもうちょっとこの可愛い魔物と戯れていたかったが、時間ももったいなかったのは事実なので、仕方なく攻撃を承諾した。

「はあっ!!」

セルディは素早くスライムに近寄り、飛び上がった。そして、ダガーナイフでスライムを斬撃した。

「ピキーーーーーーーーーッ!!」

スライムは、縦に真っ二つにされ、消滅するかのように消えていった。僕はなんか、悲しい気持ちになってしまった。

「……いくわよ、二人とも」

僕は、セルディの目を見た。セルディの目は、どこか儚げで、どこか悲しそうだった。恐らく、スライムの死を悲観しているわけではないだろう。魔王襲来戦争の時に何匹もの魔物を倒してきたんだ、一匹のスライムごときで悲しみはしないはずだ。


僕たちは、3時間かけてようやく連絡道に到着した。しかし、入口にはシュヴェッラ城から派遣された兵士が立っていた。

「なんでですか!?なんで連絡道が使えないんですか!?」

「大変申し訳ございませんが、ただいま、この道の先で魔王残党軍の魔物たちが居座っております。犠牲者が発生しないためにも、今はこの道を使うのはご遠慮ください」

恐らく、本島から来ていた女性だろう。兵士に詰め寄っている。

「どうやら、僕たちが街で聞いた話は本当だったみたいだね」

「うん、そうね。でも、ここを通らなきゃ本島にはいけないな」

「セルディさん、どうにかなりませんか?」

「…兵士の人も、多分、私の事をわかるはず。とりあえず交渉しよう」

僕たちは、兵士のもとへ行き、セルディに事情を話してもらうことにした。

「あ、あなたは…勇者級セルディ様!」

兵士の方からこちらに気づいたようだ。兵士は驚いた顔を見せ、セルディに敬礼した。

「私達、本島に行きたいんだけど…ここを通ってもいい?」

「し、しかし今は魔王残党軍の魔物が…」

「あんた、まさか、私がそんな魔物に負けると思っているの?」

「で、ですが…!」

「ここで私が魔王残党軍を蹴散らしてくれば、他の人たちもこの道を使えるようになるわ。いわゆる一石二鳥っていうやつじゃない?」

セルディはおつむがそこまで強いわけではないが、威厳を見せたいのだろうか、難しい言葉を使っている。兵士は、非常にあたふたしていた。少しして兵士は腹をくくったよう頷き、セルディに討伐をお願いした。

「…でしたら…魔王残党軍の討伐、お願いできますでしょうか?」

「フンッ、任せなさい!!私達が全員蹴散らしてくるわ!!」

僕は、改めてセルディが凄い女の子なんだなあと言うことを思い知らされた。兵士の人が敬意を表し、さらに魔王残党軍の討伐まで依頼した。普通の人には到底頼めない話だ。

「さて、行くわよ、二人とも!!早くしないと、置いていくぞー!!」

セルディは妙に張り切って、連絡道へ入って行った。

「ちょっと!待ってよー!!」

「ああっ、セルディさん、待って下さいー!!」

僕とアイルさんは、急いでセルディを追いかけていった。


僕たちは、薄暗い道を進んだ。連絡道は地下を掘って作られたいわばトンネルのような道だ。電気や光の魔鉱石がなければ、まともに道を通れない。魔王残党軍の仕業で荒れてる道の壁は傷が付き、一部、発光するアイテムも破損されていた。

「ピキーーッ!!」

どうやら、瓦礫の後ろに隠れていたらしいスライムが、僕たちに襲いかかって来た!!先程遭遇したスライムとは色が違う。今度は紫色をしている。どうやら先程の亜種みたいだ。しかし、僕は全然恐れをなさなかった。スライムの戦闘力は非常に低いと先の戦いで分かっていたからだ。

紫色のスライムは、アイルさんに向かって滑走し始めた!!しかし、アイルさんも怖がっていない様子だ。

「おいでおいでー」

アイルさんはその場にしゃがみ、ニコニコしながらスライムを手招きを始めた。

「バカッ、何しているんだアイル!!早く逃げろ!!」

なんとあろうことか、セルディは紫色のスライムを危険視しているようだった。アイルさんはびっくりして、セルディの方に顔を向けた。

「えっ、なぜですかセルディさん!可愛いではありませんか!!」

「紫のやつはポイズンスライムといってさっきのスライムとは違うんだ!!」

「そっ、そうなんですか!?」

ポイズンスライムの攻撃から避けられない位置にいたアイルさんに向かってセルディは突撃した。しかし、セルディの攻撃も間に合いそうになかった。

ポイズンスライムは、飛び上がってアイルさんに体当たりした!しかし、アイルさんは全く痛そうな表情をしていなかった。

「セルディさん!全然痛くないですよ!!」

ポイズンスライムは、アイルさんに体当たりして、服に粘着した。アイルさんはスライムを見てにやにやしていた。それは、可愛いモノを見ている表情だった。

「早く取りはらえ!溶けるぞ!!」

「えっ…溶けるってどういう…」

セルディが促すと、アイルさんは自分の服を見た。すると…

「えっ…えええええええええええええっ!?」

なんと、アイルさんのドレスが溶け始めていた!!

「いわんこっちゃない…だから言ったのに…」

ドレスはエロティックに破れ始め、ついに上半身がほとんど露出してしまったアイルさんの肌を守るのは、黄色の大人っぽいブラジャーのみになってしまった。僕はこの状況を興奮せずにはいられなかった。

「アルタ、見ないでよ変態!!」

僕は、つい覗き込んでしまった目線を誰もいない壁に向けた。どうやら、ポイズンスライムには粘着した対象の布を溶かしてしまう特性があるみたいだ。

「ど、どうすればいいんですかあ!?」

アイルさんは、ブラジャーまで溶かされあらわになってしまったたわわな胸を両腕で隠しながら、セルディに聞いた。

「ポイズンスライムを倒せば自然に服は元通りになる!とりあえず早く倒すん…なっ!?」

セルディは、ポイズンスライムに突撃していたところ、なんとあろうことかポイズンスライムのカウンターを食らってしまい、服に粘着されてしまった。

「くっ、くっそー!!2年のブランクがあるとは言っても、こんなザコモンスターにカウンターされるなんて…!」

ポイズンスライムに粘着されたセルディの服は見る見る溶けていき、先程のアイルさんのようにブラジャーだけが肌を守るアイテムとなってしまった。しかし、セルディのブラジャーは小さい子供が使うような色気も何もないブラジャーだった。僕は、少し哀れに感じてしまった。

「ちょっと!今、子供っぽいなあとか思ってたでしょ!!」

「い、いやっ!そんなことは…!!」

やはりセルディには心を読む魔法が使えるんじゃないか。僕はそう思った。

そして、ついにセルディのブラジャーも溶けてしまい、その身にまとうものは何一つなくなってしまった。

「グへへ…セルディさんの裸体…グへへ…」

…アイルさんは自らも裸体をさらしているのにセルディの裸を見て興奮していた。…まるで残念美女みたいな感じだ。ちょっと残念で、ちょっと不気味だった。

「アイル!早くそいつ倒してよ!!寒いんだから!!…それに、恥ずかしいし…」

「わ、わかった…」

仕方ない。このあらわになった胸を隠す巨乳と貧乳の女の子二人の恰好が観賞できなくなるのは仕方ないけど、このままじゃ時間を浪費してしまうだけ。心を鬼にして、ポイズンスライムを鉄の剣で斬撃した。

「だああああああっ!」

「ピキーーーーーーッ!!」

僕はセルディから剥がれたポイズンスライムを薙ぐように強く斬った。真っ二つになったポイズンスライムは、べチャっと音を立てて地面に落下し、消滅した。消滅したと同時に、二人の溶けた服は光り輝きだし、溶けた部分が再生した。どうやら、服が溶けるのは魔力が関係していたらしい。

「はあ…一時はどうなるかと思った…」

セルディは、ほっとした表情を見せ、自分が服を着ていることを確認した。

「ちっ…まだセルディさんの裸体を拝み切っていなかったのに…」

セルディは安堵の息を漏らしたが、アイルさんは何故か不満を漏らしている。僕は悪いことは何もしてない。むしろ、二人を助けたつもりだったのに。

「服が溶けてなかったら、コロッと倒してやったのに…」

セルディは負け惜しみみたいなことを言っている。自分でも言っていたが、2年間、魔物とは戦っていなかった分のブランクがあるとはいえ、やはり魔王襲来戦争で魔王アレクサンドラを倒した勇者級の一人がポイズンスライムにカウンターを許してしまったのは屈辱的であっただろう。

「敵が悪かっただけだよ、とにかく、先へ進もう」

僕は、セルディが励ましの言葉や世辞が好きではない性格なのを知っていたので敢えて深く励まさず、次へと進むことを提案した。

「うん、そうだな…」

セルディは、首を二回横に振り、頬を自分の手でパチンとたたいた。

「行こうか」

セルディは、とことこと、先へと進み始めた。

「…もうちょっと、励ましの言葉とか無いの?」

アイルさんは僕に近寄り、小さな声で言った。

「セルディはあまり励まされるのが好きじゃないんです」

僕は淡々とそう言うと、セルディの後ろをセルディに追いつくように早歩きで歩き始めた。アイルさんも、少し不安な顔をしながら、僕の後ろを早歩きでついてきた。


丁度、連絡道の中央あたりに着いただろうか。休憩用の小さな広場みたいなところがあったのだが、そこに魔王残党軍の魔物が数匹、たむろしていた。ベンチには、大きな剣を携えた狼のような魔物がいた。どうやら、あの魔物がここの魔王残党軍のボスのようだ。ちなみに、魔王軍の魔物の残党は一括して魔王残党軍と呼称されているが、実際にこのような組織の概念は魔物たちには存在しない。魔王軍は敗北後、たくさんのグループに分かれ、今に至っている。魔物同士でも今は戦うこともあるくらいだ。つまり、ここにいる狼がグループのボスなだけであって、魔王残党軍の総大将と言うわけではない。

「お前たちがここの道を塞いでるふざけた連中ね!!私達が殲滅してあげるぞ!!」

セルディは、声を大にして魔物たちに宣戦布告し、左腰に装備しているダガーナイフを手に取り、敵陣に突っ込んだ。しかし、魔物は数十匹いる。ここは不意打ちでいくらか魔物を消滅、分散してからの方が戦いやすかったのだが…セルディは直線的な性格だ。そのような作戦は取らず、魔物の群れに突っ込んでいった。

「ガウウウウウウウウウッ!!」

狼のような魔物は、雄叫びをあげた!すると、部下の魔物たちが、一斉にセルディに襲いかかって来た!

「だああああああああ!!」

「ピキーーーーーッ!!」

「グゥオッ…!!」

セルディは、スライムやあばれ犬のような魔物、カマキリの様な魔物…いろんな魔物を相手に、応戦を開始した。まるで、戦場に咲く一輪の花のように、かつ、狂乱の戦士のように。

しかし、セルディは前方の敵に気を取られていたようだ。背後から襲ってきたカマキリの魔物に気付いていなかった。

「…煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

アイルさんは、木の杖をカマキリの魔物に向けた。すると、魔法陣が浮かび上がり、杖の先に炎の球が現れ、直径50cm程度になったあたりで、弾丸のように射出した!!

「シャーッ!!」

見事、炎の球はカマキリ型の魔物に直撃し、燃え尽き、消滅した。

僕もセルディに加勢するため、鉄の剣を装備し、魔王残党軍の群れの中に走った。アイルさんの魔法のおかげで、敵の戦力は分散した。スライムの群れも多くいると厄介だ。僕は、強めの相手をしているセルディから離れた位置にいたスライムの群れに突っ込んだ。実戦経験が極めて少ない僕だったが、スライムの群れの撃破には1分もかからなかった。僕は、セルディの援護をするため、遠距離からの魔法での攻撃を開始した。

「雷公波≪ライジング・エッジ≫!!」

僕は呪文名を発し、右手を前方に突き出した。魔法陣が現れた手の前で蓄電された電気を、一気に波動のごとく敵に放出した!!

セルディの周りを囲む魔物たちを薙ぎ払うほどの魔力を消費し、僕は、一斉に魔物たちを薙ぐように攻撃した。

「グゥゥ…!」

「シャーーッ…!」

セルディの周りにいた魔物たちは、電撃を喰らい感電したように硬直し、電撃の波に飲まれ消滅していった。僕は、魔力を多く消費してしまったため、魔力を回復させるために戦線から後退した。


僕たち三人と魔王残党軍の長い戦闘の末、ようやく魔王残党軍側の魔物は狼型の魔物のみになった。

「ガウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!」

狼型の魔物はベンチから起立し、剣を振り回ながら攻撃を開始してきた!

僕とアイルさんは、実戦経験が豊富ではないため、近接戦闘はセルディに任せることにし、魔法での援護攻撃に専念することにした。

セルディは、狼型の魔物に攻撃しようとするも、敵の攻撃スピードが速い上に一撃が重いため、うかつに近づけずにいた。しかし、一瞬の隙を見逃さないセルディは、一瞬の隙をついて攻撃を試みていた。一撃一撃、浅い攻撃ではあるものの、確かに狼型の魔物の肉を斬り、ダメージを与えていた。

「煉獄の炎よ、あまたの生血を燃やしつくせ…煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

セルディが攻撃を立ちまわれていない様子なので、詠唱文言を唱えて放ったアイルさんの煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫は、先程の2倍ほどの大きさの炎の球となり、狼型の魔物に撃ち放った!!

「ガウウウウウウウウウッッッ!!」

見事、煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫は狼型の魔物に直撃し、狼型の魔物の体は発火した。もだえ苦しむ様子だったが、突然、自身の体をはげしく回転させることによって、セルディの近接攻撃を防ぐ攻守一体の行動を行うことで、風の力を利用し、燃え盛る炎を鎮火させてしまった!!

「そんな!!詠唱までしたのに、こんな簡単に消されるなんて!!」

「ちっ…こうなったら、一気に片をつけるしかないみたいだな…だあああああっ!!」

セルディは、回転を終え、足元が若干ふらついているわずかな瞬間を狙い、狼型の魔物に特攻した!!

「グゥウウ……ガウウウウウゥゥゥォォォォオオン!!」

狼型の魔物は、激しい雄叫びをあげると、狼型の魔物の体の目の前に魔法陣が出現した。

「まさか…呪文を唱えたの!?」

「だあああああああああああっ!!」

セルディが斬撃を加えようとしたその瞬間…魔法陣は、狼型の魔物の後方に向かって体をすり抜け、消滅した。しかし、セルディはお構いなしにダガーナイフを逆手に持ち、腹部に斬撃を加えた…!!

カァァァァァン!!

「なにぃ!?」

なんと、セルディの攻撃をはじいたのだ。しかも肉体で。セルディは、弾かれた反動を利用し、空中でバック転を行い、見事地面に着地した。しかし、構えていた右手は若干震えていた。恐らく、衝撃で痺れてしまっているのだろう。

「今のは…まさか、さっき発動した魔法の効果!?」

「つまり、今の呪文は肉体強化の魔法ってわけか…へっ…なるほど、私の攻撃をはじいたってことは、かなり強い魔法の様だな…。伊達に魔物達を率いているってわけじゃないみたいだね…」

アイルさんが今の攻撃をはじいた肉体について、先程の魔法の効果と読んだ。どうやら、実際に間違ってはいない様子だ。つい先程まで、斬撃したダメージは負っていた。突然、効果が薄くなる、まして効かなくなれば、魔法の効果を疑うはずだ。

セルディは右腕を抱え、痺れを治そうとしている。しかし、そのようなことはお構いなしに、狼型の魔物はセルディに襲いかかって来た!!

「ガウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!!」

「避けて、セルディ!!」

セルディは思うように腕が動かない様子だった。僕は危険を伝えた。が、彼女は防御の姿勢を取らない。いや、取れなかった。激しく固い物同士を打ちつけ合った衝撃は尋常ではないはずだ。恐らく、腕を通り越して、右半身全体が痺れている可能性もある。

「くっ…!!」

セルディは、左足に力を入れ、回避しようとした瞬間だった。

「煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

とっさの判断を下したアイルさんは、詠唱は出来なかったものの、瞬間的に煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫を狼型の魔物に撃ち放った!!

狼型の魔物は、攻撃態勢をとっていたために防御することができず、アイルさんの煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫をもろに喰らった。

「ガウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッッ!!」

狼型の魔物は態勢を崩し、背面から倒れてしまった。

セルディは、ようやく腕の痺れを治めると、再びダガーナイフを構え、狼型の魔物に飛びかかった!!

「だああああああああああああっっっ!!」

咆哮の如き叫び声をあげ、倒れている狼型の魔物の腹部に向かって飛びかかった!!

「ガウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッ!!!!」

腹部にダガーナイフが突き刺さり激しい呻き声をあげた!!どうやら、転倒した時に魔法の効果が切れてしまったようだ。普通にダガーナイフの刃は狼型の魔物に隠れている。

「だあああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」

セルディは、狼型の魔物からダガーナイフを引き抜くと、とてつもなく素早く、連続で激しい斬撃を放つ!!

二十回くらい斬撃したところであろうか、ついに狼型の魔物は悲痛の咆哮と共に消滅した。

「……ううっ……」

セルディは、狼型の魔物が消滅した瞬間、重力に引かれ地面に落下した。

「セルディ!!」

「セルディさん!!」

僕とアイルさんはすぐにセルディの元に駆け寄った。セルディは、腕を抱え、つらそうな表情をしていた。どうやら、完全に腕の痺れは治っていなかったようだった。

「聖雨の祝福≪レイニー・ブレッシング≫!」

僕は回復系統の魔法、聖雨の祝福≪レイニー・ブレッシング≫を唱えた。周囲には魔力の雨が降り始め、僕たちを癒し始めた。そして、セルディの腕の痛みも、何とか回復することができた。しかし、セルディは悔しそうな表情をしていた。かなり落ち込んでいたようだった。無理もない、勇者級の一人が、魔物の生き残りにここまで苦戦を強いられてきたんだ。相当悔しいはずだ。セルディの悔しい顔を見ていられなかったのか、アイルさんは、僕たちに目を合わせない。どこか、遠くを見ているような目線を運ばせていた。

僕は魔王襲来戦争が終戦してセルディがゲルモート港街へ帰還した時に頭に思っていたことが不意に再び蘇った。セルディは何故、「デュランダル」を使わないのか。セルディは戦闘中に刃渡りの短いダガーナイフを使っているが、実は、セルディは戦争時に人類軍の総帥であったシュヴェッラ国王から非常に強力な魔法の剣を賜っている。剣の名は「デュランダル」といい、終戦後、勇者級の者に与えられた勇者魔法武装の一つである。しかし、セルディは一度もその剣を使ったことはない。それどころか、ゲルモート港街への帰還を迎えた日以来、一度もその剣を見ていない。セルディ曰く「長い間使って来たダガーナイフの方が使いやすい」とのことだが、本当にそうなのだろうか。どう考えても市販のダガーナイフなんかよりデュランダルの方が戦闘中に使いやすい。戦闘スタイルにもよるが、セルディのスタイルには合う剣だ。僕は疑問で仕方なくなった。まるで、セルディは何かを隠すためにデュランダルを使わないようにも見えた。だが、僕は深くは詮索しなかった。セルディの使う武器なんだし、僕が意見を言うことはないと思ったからだ。今、デュランダルはどこにあるのか、最早、それすら謎である。セルディの家にあるのだろうか、それとも、どこかに隠してあるのだろうか…残念ながら、僕にその答えはわからなかった。

しばらくして、セルディは自分からシャキッと立ち上がり、いつものテンションに戻って僕たちに向かって言い放った。

「メソメソしてても仕方ねーよな!!私らしくないし!!早く本島の方に行こうか!!」

言葉に嘘偽りはない、だが、心に嘘偽りを持っているかのようなどこか暗雲じみた発言を、僕は聞き逃さなかった。しかし、僕たちは続けなくてはならない。僕は、「うん」とだけ一瞥し、セルディの後ろを追いかけた。アイルさんはいつの間にかセルディの横で並行していた。


僕たちは、本島側の連絡道の先に到達し、警備していた兵士に魔王残党軍の討伐を完了したことを伝えた。そして、そこでリーダーの狼型の魔物の名前が「ラフィー」であることを知った。

本島に上陸した僕たちは、続いて、シュヴェッラ城に向かう前に、ここから近い村、エディスンで休息をとることに決めた。僕たちは、各自、何とも言えない心持ちで、エディスンの村へ歩みを進めることにした。

「伝説の神と勇者の冒険」シリーズ、第3話、「強敵出現」を読んでくださり、ありがとうございました。

さて、今回の話は魔物が登場したり、魔法が唱えられたりと、ようやく冒険もの的な感じになりましたね!魔法の名前を考えるのはかなり疲れました(笑)

今回はスライムをはじめ、いろいろな名前のモンスターが現れましたね。一種族ごと、裏設定も交えて説明していきますね。

スライム→今作における一番弱い敵。見た目はDQシリーズにおけるバブルスライムを連想していただければ…。

ポイズンスライム→スライムの亜種。魔法の力が身にしみこんでおり、粘着した布を溶かすという、エロ要素たっぷりのモンスターである。倒すと布は復活する。

暴れ犬みたいな魔物→名前は「アバレイヌ」。そのまんななネーミングである。牙でかみつく攻撃が得意。

カマキリみたいな魔物→名前は「シャッキリ」。鎌で攻撃する際に「シャッ」と音を鳴らすことからネーミングが来ている。鎌での攻撃が得意。

ラフィー→連絡道にいた魔物たちのボス。狼型の二足歩行。意外と賢く、自分の筋肉を活性化させる呪文「兆抗≪アデイン≫」を唱えることができる(物語中に唱えた呪文)。また、没設定となってしまったが、炎を吐くこともできる。


こんなところでしょうかねえ。いやあ、モンスターも設定作るのおもしろいです(笑)。ちなみに、人の言葉が使えない魔物たちも魔法を使うプロセスがわかっていれば普通に使えます。いやあ、便利ですねえ。

まったく、ポイズンスライム万歳ですね、はい。


さて、話は変わって次回予告へ…。

次の話のサブタイトルは「ネーニャ・ブルテン」でございます。人名です。次回の舞台はエディスンの村、ということなので、この村に住む一人の少女がメインに活躍します。今度は猫系ロリキャラです!最近の某アイドルアニメで登場している猫系キャラとはまたベクトルが違うキャラです(笑)。

次回の投稿は4月の上旬から中旬を予定しています。次回の投稿を待っていただけたら幸いでございます。それでは、またお会いしましょ~!

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