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エクスカリバー

みなさまお久しぶりです。島北です。

寒い日々が最近続いています。勘弁してくれ。執筆するときに手がかじかむんのだよ……。

さて、そんな話はさておき、第22話「エクスカリバー」、どうぞ、最後まで楽しんでお読みいただければ……!

腰を落とし、正拳突きの構えを取ったメイリーンさんの拳からは、魔力が放出されていた!

「はっ!」

メイリーンさんの右拳は、身動きとる暇を与えることなく、僕の腹部を突いた!!

「がはっ!!」

僕は、激しく突き飛ばされ、地面に数回バウンドしてようやく地面に伏した。

「ぐぅっ……!」

あまりの激痛に声が出ない……これが、勇者級の実力……!!

「ほら、どうしたのじゃ!?」

メイリーンさんが一喝する。すると、セルディが剣を構えてメイリーンさんに突撃した!!

「アルタさん!今、痛みを和らげますう!」

フランさんは自分の手に魔力を込め、治療の光≪ヒリング・シャイン≫を唱えた!僕の痛みが和らいでいく!!

「……ほう……優秀な回復魔法の使い手がいるのか……」

メイリーンさんは錫杖でセルディの剣を叩くと、メイリーンさんはすぐさまこちらに向かって突撃を開始した!

「煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

「雷光波≪ライジング・エッジ≫!!」

僕とアイルさんはほぼ同時に魔法を唱えた!!メイリーンさんに、炎の弾丸と雷の波動が襲いかかる!!

「ぬるい!!」

メイリーンさんは僕たちの攻撃をいとも容易く回避し、僕とフランさんの場所まで辿り着いてしまった!!

「ひっ……!」

フランさんは腕を自分の前に構えて、防御の姿勢を取った!!メイリーンさんは錫杖を剣のように取り扱い、フランさんを薙ごうと構えた!!


キンッ!!


「……なんと」

僕は白銀の剣を縦に構え、錫杖の攻撃を防ぐ!!

「あの攻撃を喰らった直後にここまで動けるとは……大した回復の力じゃな」

「ぐっ……!」

しかし、メイリーンさんの力が徐々に強くなり、僕の抑える力が競り負け始めてきた!鍔迫り合いで動きが制限していると、疾風瞬郷≪ウィンディネッド≫で加速したネーニャが、サラマンダーを構えてメイリーンさんに攻撃を放った!!

「甘いのじゃ!!」

「うわっ!?」

「おっと……!!」

ネーニャのサラマンダーがメイリーンさんを捉えたと思われたその瞬間、メイリーンさんは大きく錫杖を横に薙ぎ、自身の後方にいたネーニャまで吹き飛ばされた!サラマンダーで攻撃を防いでいたとはいえ、奇襲返しを喰らって体勢を崩してしまっていた!!

「さて、まずは一人……」

メイリーンさんは錫杖を僕に向け、刺突する構えを取った!!

「させるかっ!」

セルディがメイリーンさんを背後から剣で攻撃しようとするも、メイリーンさんは錫杖を地面に突き刺し、錫杖を手に持ちながら、後方にいたセルディに蹴りを一発放った!!

「甘いっ!!」

セルディは、メイリーンさんの肩を掴むと、宙を舞うように飛翔し、メイリーンさんの背後を取り、宙に浮きながら思いっきり蹴り飛ばした!!

「ぐっ!!」

メイリーンさんはセルディの蹴りを受け、前方に吹き飛ばされた!セルディは再び宙を舞い、バック転を繰り返し、再び剣を構えて攻撃に転じた!!

「甘いと言っているのじゃよ……!」

メイリーンさんはセルディの剣戟を転倒している状態にも関わらず錫杖で封じこみ、大きく薙ぎ払った!!セルディの剣は大きく弾かれ、その隙にメイリーンさんはセルディに足払いをかけた!!セルディは地面に剣を突き刺し、メイリーンさんの蹴りを防ぐと、メイリーンさんに激しい正拳突きを放つも、掌で防がれてしまった!!

「なかなかやるのう……!」

「そんなことは……!!」

セルディがメイリーンさんから後方に跳ねて離れると、疾風の如く差し迫ったネーニャのサラマンダーが、メイリーンさんの身体を捉えた!!

「遅いのじゃ!」

「おっと!!」

しかし、メイリーンさんは無駄のない動きで華麗にかわした!ネーニャは前方で身体を地面に伏せるようにして、手をついて動きを止めた。

「雷光波≪ライジング・エッジ≫!!」

僕は、白銀の剣を鞘に収め、手を前方に突き出し、メイリーンさんに目掛け、雷光波≪ライジング・エッジ≫を唱えた!!雷の矢が、メイリーンさんに襲い掛かる!!しかし、メイリーンさんは再び軽いステップで僕の放った雷を避けると、手に力を込めて紋章を浮かび上がらせた!!

「んっ……!!」

するとなんと、僕の身体が、何かに締め付けられているかのように身動きが取れなくなってしまった!!

「私に小手先な攻撃は通用しないのじゃ……!」

メイリーンさんは素早い動きで僕に差し迫り、錫杖を僕にめがけて突き放つ!!

「うわっ!!」

しかし、錫杖が僕の身体を突く直前に、ネーニャが僕を思いっきり突き飛ばした!!

「つっ……」

ネーニャは微かに錫杖の刺突を受けてしまったようで、右の脇腹から血を流していた。

「いててて……少し踏み込みが甘かったですかねー……」

ネーニャは自分の脇腹を手でおさえる。急ぎ足でフランさんのもとへ急行し、フランさんの治癒を受ける。

「やはり数が多いと面倒じゃ……」

メイリーンさんは錫杖を2回鳴らし、錫杖の中央を持って回転させ、地面に刺突した!!錫杖が刺された地面から紫色に輝く魔法陣が現れると、僕たちパーティ全員を全て内包する大きさの紫色に輝く魔法陣が空と地面に浮かび上がった!!

「はあっ!!」

メイリーンさんは錫杖に念を込めると、頭上に浮かぶ魔法陣から雷が蓄電されているかのような音が鳴り響く!!そして束の間、激しく轟く紫色の雷が、僕たちを一斉に襲いかかった!!

「うがああああああああああああああっ!!」

僕は雷に撃たれ、気を失う寸前、茫然状態に近い状態でその場に倒れ伏せた。周りの女の子たちも、大きく悲鳴を上げ、その場に倒れこんでしまった……ただ一人、セルディを除いて。僕は意識が定かではない状態ではありながらも、虚ろな目をセルディとメイリーンさんの一騎打ちの方へと向ける。激しい攻防戦が展開されている。互いに剣と錫杖で素早い攻撃を放ち合い、鬩ぎ合いを繰り返し、時に互いに徒手空拳を用いての格闘戦を展開する。その動きは、目で追う事もやっとだった。怒涛の攻撃の嵐は、素人目で見ても、セルディが劣勢なのは明白だった。しかし、周りを見渡してみれば、僕とセルディ以外は気絶して地面に倒れた状態から僅かにも動かない。僕も動こうとしても、感電してしまっているのもあって、立ち上がるという行為すら危うい状況にあった。……しかし、魔法を唱えることは辛うじて出来そうだ……。

「……聖なる心の涙を落とされたまえ……聖雨の祝福≪レイニー・ブレッシング≫……!」

僕は頭上に魔法陣を展開させ、聖なる力が宿る雲を形成し、癒しの雨を身に浴びせた!!浴びた雨が僕の身体を癒し始める……幸いなことに、どうやらこの光景にセルディとメイリーンさんは気付いていないようだ……ならば……!!

「くっ……」

いまだ意識は明快ではないものの、動けるまでには身体は回復しているようだ……僕はゆっくりと立ち上がり、白銀の剣を再び鞘から抜き、一心不乱に、メイリーンさんに向けて走り出す……!

メイリーンさんは、僕の動きに気付き、セルディを蹴り飛ばして、防御の姿勢に入った!しかし、その瞬間……メイリーンさんは何かに動揺した素振りを見せ、動きが遅くなった!!

「はああああああああああああああっ!!」

僕は白銀の剣を思いっきり振りかざし、メイリーンさん目掛けて叩き斬った!!

「くうっ……!」

しかし、メイリーンさんはすぐに我を取り戻した様子で錫杖を横に構えて僕の剣戟を防いだ!!

「はあああああああああああああああああああああっ!!」

僕は再び強い力でメイリーンさんの錫杖を抑えつける!!すると、メイリーンさんは何かに驚いた様子で僕を見つめながら錫杖を構える!!しかし、僕は火事場の底力のような何か不思議な力が僕を縛りつけ、徐々に構えている錫杖が地に下ろされていく!!

「なっ……!!」

ついにメイリーンさんの錫杖は手から離れ落ち、カランと音を立てて地面に落ちた。そして、僕はメイリーンさんの前から横に一歩、跳ねた。……セルディが、僕の後ろから剣を構えて襲いかかる!!

「がはっ……!!」

セルディは鋼の剣の地肉の部分でメイリーンさんの腹部を押すように打撃する!メイリーンさんは激しく頭から後方に倒れこんでしまった!!メイリーンさんは辛そうに呼吸を開始するも、僕の白銀の剣と、セルディの鋼の剣が、メイリーンさんの動きを封じるように向けられた。勝負は決したのだ。

「……人数の差こそあったが……完敗じゃ、私の負けじゃ」

メイリーンさんは錫杖を地面に刺して、それに縋るように立ち上がる。しかし、息が整わない様子で、非常に辛そうだ。両刃剣の刃と刃の中腹の部分での打撃攻撃だったのもあって、下手したら骨が折れてしまっているのかもしれない。いつの間にか意識を取り戻していたフランさんをセルディが既に読んでいたらしく、すぐさまメイリーンさんのもとに連れて来て、治療を開始した!

「……先程と同じことを言うが……実に優秀な回復魔法じゃ……痛みが引いていくのじゃ……」

呼吸が整い始め、顔の血色も良好になってきた。ようやくメイリーンさんは錫杖の支えなしで立ち続けることが出来るようになった。

「……まさか、人数差があったとはいえ、この私を打ち砕く者が出てくるとは……ディオン以外に私にかなう者などいないと思っていたのじゃが……私の力も鈍ったものじゃ……」

メイリーンさんは今までの険しかった顔を崩して静かに笑う。

「……それにしても、お主は一体……?」

僕の顔を鋭い視線でメイリーンさんが覗く。うーむと声とも呼吸ともとれない音を発しながらじろじろと見てくる。……なんだか恥ずかしい……。

「……いや、まさかな……」

「メイリーンさん、どうしたんですか?」

「あ、いや、なんでもないのじゃ」

メイリーンさんの視線がようやく僕から逸れた。

「……では、約束は守らなくてはな……。エクスカリバーは、竜人族が管轄する地の中のもう一つの孤島に建てられたバベールの塔の最上階に安置してあるのじゃ。これからお主たちを塔の中にに転送しよう」

メイリーンさんは錫杖に魔力を込めて目を瞑った。

「……と、その前に……」

メイリーンさんは魔力を込めながら何かを思い出したかのようにポツリと言葉を呟く。

「塔の中にはルルから貰った戦闘用マシンが配備されているのだが……私としたことが、うっかり制御する機械を無くしてしまってのお……お主たちに襲い掛かってくるだろうから気をつけるのじゃよ」

「ええっ!?」

僕は素っ頓狂な声を上げる。

「あと、念のためにお主たち三人も、セルディ達に同行して欲しいのじゃ」

「「「えっ……?」」」

ケイアさん達は耳を疑うようにして驚きの声を上げる。

「では、行ってくるのじゃ……!」

メイリーンさんは軽く地面に錫杖を叩き、シャンと音を鳴らす。すると、僕たちの真下に黄色の魔法陣が現れ、光の球が僕たちを包みこんだ!僕たちは、何か反論する余裕もなく、すぐさま光に包まれ、気付けば、塔の中に立っていた。


「ああもう!族長はいつもああやって!!」

ケイアさんは地団駄を踏んでキーッと悔しそうな声を上げる。

「こんなところまでつき合わせることになってすみません……」

僕は三姉妹に深々と頭を下げて謝罪する。

「い、いや、あんたのせいじゃないよ!族長が制御する機械とやらを無くしていなければ良かっただけだし」

「メイリーンさんはああ見えて案外抜けてるからな……困ったもんだ……」

セルディは頭に手を当てて溜息をつく。まさか、竜神の如き力を誇る麗しい女性に天然属性があったとは……世の中外見で判断するのは良くないな。

「それにしても、こんな塔があるなんて初耳だぞ」

「この塔は、戦後に建てられた塔なのです。戦死したケルヴィス王国の国民や竜人族の人たちを弔うために、竜人族の集落の住民が総力を結集した、云わば平和の象徴なのです」

「まあ、ガルガンティ国の援助のおかげなのも大きかったけどな。伊達に天を突く60階建てのバカでかい塔じゃないってことさ」

「私達も、この塔の建設には苦労したわね」

ライアさん達は懐かしむように、はるか遠くに見える塔の天井を見る。ライアさん達は、憧憬に浸っているかのように静かに、塔を見渡した。

「……それじゃ行こうか。かなり長い道だが、数時間あれば頂上まで行けるはずだよ」

ケイアさんは、背中に携えていた銀色の槍を構え、目の前の長い階段をのぼりはじめた。ライアさんは芸術的な外見をもつ木製と思われる杖を、アイアさんは小さな棒のようなものを手に携えてケイアさんの後ろに続けて階段を昇り始めた。僕たちも、それぞれ武器を構え、戦闘用マシンに警戒しながら階段を昇り始めた。

「はあ……はあ……な、長いわね……」

「つ、疲れてきましたあ……」

「頑張って。まだ半分も昇ってないわよ」

だんだんと歩くスピードが遅くなってきたアイルさんとフランさんにケイアさんが励ます。

「やっぱり、胸に大きなものを持ってたら、大変なんですかねー」

「あ、あんたは呑気なものね……」

「ケ、ケイアちゃーん……私も疲れてきたわ……」

ライアさんも疲れが溜まって来たらしく、とうとう杖をついて壁にもたれかかってしまった。

「もう、情けないわね……竜人族は、普通の人より体力がついているはずなのに……」

ケイアさんは一息ついて、足を止めた。

「それじゃあ、休憩にしましょうか」

ケイアさんの一言で、僕たちはその場に一斉にしゃがみこんだ。

「はあー……流石に長いな……」

「こんなんでへばってちゃ、最上階に着く前にマシンにやられておじゃんだぞ」

「わかってるよ……」

僕は水を一口、喉に通して再び立ち上がる。

「それじゃ、行くわよ。このままじゃ、日が暮れちゃうわ」

ケイアさんは立ちあがって、僕たちに喚起する。僕たちは、再び長い塔を昇り始めた。


昇り始めて数時間、ようやく半分近く昇り切ると、ケイアさんは順路では無い横に逸れた道に進み始めた。

「あれ、どこに行くんですか?」

「こっちのほうに昇降機があるの。これがあれば、一気に最上階の近くの階層まで行けるわ」

細い道を通って、僕たちはようやく昇降機まで辿り着いた。

「動いてくれればいいんだけど……」

ケイアさんは複数のボタンを押す。すると、ランプが点灯し、起動音が鳴り響いた。

「よし!やった!」

ケイアさんは昇降機の作動を確認すると、ドアを開け、中に乗り込んだ。僕たちも続けて昇降機の中に入る。ケイアさんはレバーを反対側に持っていく。すると、昇降機のゲートが自動で閉まり、ゆっくりと上に向かって動き始めた。この昇降機は魔力の力で動いているようだ。静寂を生み出すかのように、ただただ上へ動き続けている。

「……懐かしいわね……」

「そうですね……」

「ああ……本当に……」

この塔には至る所に女神の彫刻や天使の彫刻、そして竜の彫刻が飾られ、古代的かつ神秘的な構造が目立つ。これは、まさしくお互いの文化を尊重した結果の産物と言えるだろう。

「さて、もうそろそろ到着だ……」

昇降機は動きを止めた。そして、静かにドアが開く……。

「……!くそっ!!」

しかし、ドアが開いたその先には、数十にも及ぶ戦闘用マシンが徘徊していた!戦闘用マシンは僕たちに照準を定めると、機械音を鳴らして襲いかかってきた!!

「これくらいなら私達でなんとか出来るか……!」

「そうですね、ケイアお姉さま!」

「そうね、ケイアちゃん!」

「あんた達は、族長との戦いで疲れてるでしょ。ここは、私達に任せなさい!」

ケイアさんは貧相な胸をドンっと貼ると、三姉妹が昇降機から飛び出し、戦闘態勢に入った!

「輝く閃光、顕現せよ……」

ライアさんの杖が、見る見る剥がれ落ちるように姿を変え、なんと、黄金に輝くメイスと化した!メイスを、前方に向けると、魔法陣が展開され、光が収束されていく!!

「光伸分綴≪ティルムド・フィリス≫!」

魔法陣から放たれた光の波動が、乱れ撃たれる矢の如く、戦闘用マシンに襲い掛かる!!

「具現せしあまたの精、霧鐘の音色に惹かれ弾けろ……」

ケイアさんは槍を地面に刺し、腕で空気を薙ぐ。すると、魔法陣から現れた小さな炎の塊が、辺りを浮遊し始めた!!

「煉獄衝裂≪パーガトリィ・ドラグナー≫!!」

ケイアさんが指をパチンっと鳴らすと、炎の塊が一斉に破裂し、大爆発を引き起こした!!戦闘用マシンが、粉々に砕け散る!!

「……ミョルニル……!!」

アイアさんは棒を頭上に掲げると、なんと、棒が見る見る伸びていき、先端部分が膨張する!!そして、変形を終えると、巨大なハンマーと化し、アイアさんは軽々とそれを構え、頭上で振り回す!!

「アクア・ミョルニル・ハンマー……!!」

アイアさんがハンマーを前方に向けると、なんと、先端の鉄球の部分が鎖に繋がれて飛翔し、鉄球に浮かぶ水色の魔法陣から放たれる水の圧で、敵陣に向かって飛んでいく!!

「……はは……こりゃすげえな……」

セルディも、三姉妹の攻撃の激しさに顔を少し青くさせる。僅か三者一撃で、何十といた戦闘用マシンが、全て廃品と化してしまった。三姉妹はそれぞれ武器をしまい、僕たちのもとへ戻ってきた。

「ま、私達にしてみたらこんなものよ」

ケイアさんはニカッと笑う。

「……お前たちなら、メイリーンさんに勝てるんじゃねーか……?」

「さすがにそれは無いよ。私達三人で一気に片付けようとしても、逆にこっちがやられちまうよ」

ケイアさんは腕をぐるぐる回して関節を鳴らし、再び昇降機のドアから外に出た。

「よし、それじゃあ行こうか」

僕たちはケイアさんの言葉を受けて、昇降機から出て、再び通路を歩き始めた。しばらく歩くと、厳重に閉められた扉が僕たちの目の前に現れた。

「よいしょっと……」

ケイアさんは重たい扉を奥に押し込む。

「よし、行くぞ」

僕たちは扉の奥に進む。暫くして、扉は自動的に閉められた。扉の先には、階段があった。僕たちは階段を昇る。

「……ここは……?」

僕はただ広い空間に疑問を隠せなかった。

「ここから上の階層は、死没者のお墓だ」

目を凝らすと、確かに奥の方には墓石と思われる石がいくつも置かれていた。僕たちはゆっくりと広い空間を歩き続ける。そして、再び階段が僕たちの前に姿を現した。僕たちは無言のまま、階段を昇る。すると、また同じように広い空間と、今度は空間を埋め尽くすように並べられた墓石が僕たちを出迎えた。僕たちは再び広間を歩き続け、階段を昇る。また、僕たちの前には広間が広がっていた。そして、お墓も。広間を進むと、また階段があった。僕たちは昇る。そして、慣れてきた光景が広がっていた。いくつもの墓石。気が狂いそうなほど、同じ光景が僕の目に映る。同じ階層をずっと回っているのじゃないか、そう錯覚してしまうほど。また階段だ。僕たちは階段を昇る。……ようやく、僕は慣れた光景から解放された。49階。ここには、如何にも高級そうな墓石がいくつかあるだけだった。僕はここに来るまで、一体何人分のお墓を見たのだろう。数えるのも億劫になる。いや、数えることなど出来ないだろう。

「ここにある墓は、ケルヴィス王国の国王と大臣達、そして、先代族長、メイリーン族長の父の墓よ」

この空間の左右には、天井に吊るされた虹のアーチの端を掴む女神と竜神の彫刻が安置されていた。虹のアーチは、言うまでもない、共存を意味するものだろう。

「……さて、行きましょう。次の階が、勇者級ディオン様の墓、そして、エクスカリバーが眠る階よ」

僕たちは、何も言うことなくただ頷き、目の前に構える階段を昇る。すると、再び大きな扉が現れた。僕たちは、扉を開ける。

「……あれが……エクスカリバー……」

僕は、一つの墓の前に刺された金色に輝く剣に目が奪われた。鍔には緑の宝石が埋め込まれていた。見るものすべてを神秘の世界へ誘う、文字通り、魔法の剣だった。僕は、何も意とすることなく、エクスカリバーに近づく。

「……シンニュウシャ……ハイジョ、ハイジョ……」

エクスカリバーに近づくと、剣の上からケーブルでつながれた、レーザー砲を携えたマシンが僕の目の前を塞いだ。

「……」

僕は、腰に携えた白銀の剣をとっさに抜き、目の前のマシンを叩き斬った!!

「ガガガ……」

マシンは、真っ二つに両断され、ケーブルにぶら下がったまま動きを停止した。僕は、マシンのケーブルを斬って地面に落とし、端の方へ蹴り飛ばした。……そして僕は、エクスカリバーの目の前に立ちつくした。僕は、エクスカリバーの柄を握った。

「ぐうううううううううっ!!」

僕は手に伝わる激しい痛みに、ただひたすら耐える……!!

「アルタ!!」

セルディが心配そうに僕の名前を呼んだ。その声が僕の耳を通った瞬間。


僕は、エクスカリバーを、引き抜いた。


エクスカリバーは、僕を認めてくれたみたいだ。剣身の周りを光り輝く粒子が包み込むと、鞘となった。僕は、白銀の剣を墓の前に静かに横に置き、エクスカリバーを、僕の腰に差した。

「……やったな、アルタ」

「……うん」


パンっ!!


僕とセルディは、大きな音を立ててハイタッチをした。すると、どこからともなく、メイリーンさんの声が響いてきた。

「お疲れ様じゃ。さて、今から私の力で集落まで送り返してやるのじゃ。そこを動かずに待っているのじゃ」

メイリーンさんにそう言われて、僕たちはその場に佇む。すると、先程と同じように、魔法陣が現れ、僕たちを光の球体が包み込んだ!!そして、僕たちは気がつくと、神秘的な塔の中では無く、ごく普通の一般的な家の部屋の中に立っていた。

「改めて、お疲れ様なのぢゃ」

……ん?なんだか僕の下の方から、幼い子供の様な声が聞こえてきたような……。

「……あれ?」

僕は幻覚でも見ているのだろうか。僕が視線をおろすと、メイリーンさんと同じ服を着た、金髪の美少女がいるではないか。

「あら、君は誰かな?お母さんはどこなの?」

「一人でなにしてるんですかー?」

「一人でお留守番ですかあ?偉いですねえ!」

「あれ、誰だこの子?」

「この子、凄く可愛いです!」

「妹にしたいわ~!!」

部屋の中で一人、静かに立つ女の子に僕たちが優しく接する。

「バ、バカにしてるのかー!!私ぢゃ、私!!メイリーンぢゃ!!」

「「「「「「「え?」」」」」」」

僕たちは一斉にキョトンとした顔になる。女の子は、部屋の壁に立てかけられていた女の子の身の丈よりも長い錫杖に手を伸ばし、シャンっと鳴らした。魔法勇者武装はそれ相応の力をもつ者しか装備できない。つまり……。

「「「「「「「ええええええええええええええええっ!?!?」」」」」」」

確かに、僕たちの目の前にいる女の子は、メイリーンさんだったのだ!でも、なんで幼女の姿に……これはこれで見ごたえがあるけども……。

「メイリーンさんは魔力を大きく消費してしまうと子供の姿になってしまうんだ。まさか、竜人族もこのことを知らなかったとは……」

「だって、ばれたら恥ずかしかったのぢゃ!!」

メイリーンさんは頬を膨らましてセルディをぽかぽか殴る。……しかし、姿が子供の姿になるだけで、性格は大人の時と同じようだし、どうやらメイリーンさんは普段はしっかりした雰囲気を醸し出しているけど、本当は表情豊かな人間味ある人みたいだ。

「それにしても、まさか再びエクスカリバーが誰かに装備されている光景が見られるとは……」

メイリーンさんは目尻に涙を浮かべて、僕の腰に差されたエクスカリバーを見る。

「懐かしいのぢゃ……ディオン……」

メイリーンさんはかつての恋人の名を口にして、涙を垂らして静かに泣く。

「……今をクヨクヨ生きてもしょうがないな……ぐすっ」

メイリーンさんは自らの強い意思で涙を止め、小さな手で自分の目を拭いた。

「……さて、お主たちはこれからどうするのぢゃ?」

メイリーンさんは僕に訪ねてきた。

「た、大変です、族長!!」

すると突然、竜人族の青年が、部屋に飛び込んできた!!

「な、なんぢゃ!騒々しい!」

「あ、あなたは……?」

「メイリーンぢゃ!いったい何があったというのぢゃ?」

メイリーンさんは幼い姿ながらも、威厳のある顔を作り、錫杖をシャンと鳴らした。

「い、今はその姿の事は何も言わないことに致します。そ、それが……」

「なんぢゃ?」

「なんと、シュヴェッラ国で、大規模なクーデターが発生したらしく……!」

「なんだって!?」

セルディが大きな声を上げて青年に喰いつくように近寄った。

「それは本当なのか!?」

「は、はい!先程、族長が玉座から集落に戻ってくる間に、ガルガンティ国のルル国王陛下から連絡がありまして……どうやら旅人の人たちにもその情報を掴んでいる者がいるらしく、集落内で動揺が広がっています!」

「そんな……!」

すると、部屋の机に置かれていた魔法通信機器が鳴り響く!空かさずメイリーンさんは通信機器を手に収め、応答した。

「メイリーンぢゃ!一体どうした!?」

「お久しぶりです、メイリーンさん。ガルガンティ国国王代理、ルル・アルザベージです」

通信機器から聞こえてきた声は、ルルさんの声だった。セルディはルルさんの声が聞こえると、咄嗟にメイリーンさんの手から通信機器を横取りし、ルルさんの声に応答した!

「お、おい、セルディ、何をするのぢゃ!?」

「ルル、聞こえるか!私だ、セルディ・コーレリンだ!!」

「セルディ!?何故あなたがメイリーンさんのところに……それよりも緊急事態よ」

「聞いたよ!なんでシュヴェッラでクーデターなんて!?」

「エシュ・アジュラスよ……」

「なっ……!?」

「どうやらアメイラ修道院の関係者の中にエシュ・アジュラスとつながりを持った存在がいたらしくてね……修道院はあっという間にエシュ・アジュラスによって蹂躙され、シュヴェッラ国国王陛下は殺害されたわ」

「馬鹿なっ!?」

「そ、そんな……嘘ですよお!修道院の人にそんな……!」

フランさんが珍しく動揺した表情を見せる。僕たちはあまりに突然すぎる出来事に、茫然とその話を聞くことしかできなかった。

「だけど、今回のクーデターの首謀者は既に判明しているわ」

「一体、誰なんだ!?」

「首謀者の名は……」

ルルさんは、何故かそこで言い淀んだ。一息つく音が聞こえた。

「首謀者の名は……」

そして、もう一度ルルさんは同じ言葉を発言した。

「……アルジェロ・エンジェ上級神父よ」

「なっ……!!」

「……う、嘘……」

フランさんは茫然とした表情を見せ、絶望に駆られたかのように胸のあたりを自ら鷲掴んだ。

「ルルさん……嘘ですよねえ……お兄ちゃんが……クーデターの首謀者なんてえ……?」

フランさんは絶望した表情で通信機器に向かって声を放つ。

「……ごめんなさい、フランさん……」

「……そんな……お兄ちゃん……なんで……なんでえ……!?」

フランさんは、今まで見せたことが無いような絶望にもがく様な顔を見せ、胸のあたりを掴んでいた手は、今度は自らの髪をしわくちゃにした。

「……そういうことか……」

「どういうこと、セルディ?」

「ケナフス国のゴルディオン街を破壊したのは、アルジェロだったんだ!」

「そうか!だからあの時、ソレスタンの街にアルジェロさんが!」

「何か裏がありそうな奴だとは思っていたが、まさかエシュ・アジュラスの一員だったとは……!」

セルディは悔しそうに床を蹴った。

「とりあえず、急いでシュヴェッラ国に戻ろう!!」

「そうするしかないみたいだな……!!」

「でも、ここからシュヴェッラ国まで通っている船は無いですよ!」

「仕方ない!私の船を使って行くのぢゃ!」

「メイリーンさん……ありがとうございます!」

「エクスカリバーに許された少年、必ず、私の船を返しに来るのぢゃぞ!」

「はい!」

「……お兄ちゃん……お兄ちゃん……」

フランさんはただひたすら、お兄ちゃんと独白する。

「フラン、しっかりしろ!!」


バチンッ!!


セルディはフランさんの白く綺麗な頬を平手打ちした!

「しっかりしろ、フラン!!今は、本当にお前の兄ちゃんがやらかしたのか、確認しに行かなきゃだろうが!!」

「…………はい……!」

フランさんは涙を拭い、自分の両手で自分の両頬をパンっと叩き、縦に首を振った!

「ライアさん、ケイアさん、アイアさんも、今回はありがとうございました!」

「今はそんなこと言ってる暇ないでしょ!」

「そうです!早く皆さんの母国へ戻るです!」

「頑張ってね~!」

セルディはメイリーンさんに通信機器を返し、僕たちは急いで部屋を飛び出した!港に着くと、後ろから幼い姿のメイリーンさんがやってきた。

「この船ぢゃ!大事に使うのぢゃぞ!」

メイリーンさんは港の一番端に停泊されている船を指さす!

「大切に使わせていただきます!」

僕たちはすぐさまメイリーンさんの船に乗り込み、操縦席へ向かう!

「……この操作なら簡単に扱えそうだ……!」

僕は船の操作盤に貼られたマニュアルを参照しながら船を起動する!

「よし!!」

船から魔鉱石が消費される音が響いた!!

「じゃあ、戻ろう……シュヴェッラに!!」

大きなペダルを力強く踏む。船が波に揺られながら前進し始めた。行き先は、旅の始まりの地、ゲルモート港街だ。


僕たちの、長くて短い航海が、今、始まったのだ……。


第22話「エクスカリバー」、最後まで読んでいただきありがとうございました!!

メイリーンさん、強し!だけども実は表情豊かで大雑把な性格というギャップも強し!!そして、魔力を使い過ぎるとロリになる……強し!!!!

個人的な話をすると、メイリーンさんはなんだか動かしやすいのか動かしにくいのかよく分からないですね(笑)。奇想天外に動くので、メイリーンさんは。

そして、ついにアルタ君が手にしたエクスカリバー。勇者級ディオンの形見でもある剣。勇者魔法武装は、シュヴェッラ国王に賜れた本人以外にも、装備はできます。ただ、その人と同等かそれ以上の力が無いと、装備することはおろか、触ることもできないのです。ジェニシスが賜ったロンギヌスを謎の人物が装備出来ているのもこれが理由です。しかしそうすると、アルタ君にはディオンと同等の力、またはそれ以上の力を持つということになりますが……?いったいどういうことなのでしょうか?

そして、アルタパーティの一人、フラン・エンジェの実兄、アルジェロ・エンジェがエシュ・アジュラスとしてクーデターを起こしました。アルジェロに、いったい何があったのか……物語の舞台は再びシュヴェッラ国に戻り、物語は終盤に差し掛かってきました。これからいったい何が起こるのか。是非、お楽しみにしていただければ嬉しいです。

では、ここからは次回予告を。次回第23話のタイトルは「アルジェロ、忌まわしき記憶と共に」です。アルジェロの目論見とは?神父の立場でありながら、クーデターに走ったわけとは……?

次回の投稿は11月月末近く~12月中旬になる予定です。……というのも、前話の後書きにも書きました通り、これから予定が忙しくなるので、狭い範囲で予定が組めないのです。ご了承いただけば嬉しい所存であります。

では、また次回お会いしましょう!!

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