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竜人族の集落

みなさまお久しぶりでございます、島北です。

だいぶ寒くなってきて、夜間、執筆するときになんだかつらくなってきました。精神的ではなく肉体的に。

では、第21話「竜人族の集落」、どうぞ、最後まで楽しんでください!!

「やっと着いたな」

ヴィディレス国のソディー港を出航してから波に揺られ数時間、出航の時は夜だったが、今は世界を照らすような太陽の光が降り注いでいる。集落のすぐ近くに設けられた港は、特に何かがあるわけではなく、本当にただの港だけらしい。僕たちは船から降りると、視線の先に映る集落を目指して歩き始めた。

「なんだか親切じゃないですねー、港と集落をまとめちゃえばいいのにー」

「まあ、そう言わないの。事情があるのかもしれないし」

「それにしても、集落以外は何もない荒野が広がってますねー」

「……まあ、それに関しては長くなる話があるから、集落の住民から聞いた方が早いかもな」

「そうなのですかー」

セルディは歩くスピードを変えずに、首を右に向けて西の方角に広がる荒野を見渡す。その眼には、何か虚無感を感じずには居られなかった。

「おお、なんだか活気づいてきましたねー」

次第に観光客や集落の住民の声が耳に響く様になってきた。集落の入り口はもうすぐだ。

「いたっ!」

すると、突然、アイルさんが小さく悲鳴を上げた。

「どうしたんですか?」

僕がアイルさんの方を振り向くと、その奥に小さな子供の姿が見えた。

「この普通野郎ども!なにしたんだよ!!」

竜人族の子供のようだ。民族衣装と思われるローブのような服に身にまとっていた。そして、僕たち人間と違う点、それは、腕などの四肢が鱗状になっている点と、耳が尖っている点だ。どうやら、あの子がアイルさんに向けて石を投擲したみたいだ。

「こら!何しているの!!」

男の子が僕たちを怒鳴りつけてすぐ、お母さんがやってきて、息子の男の子の頭を強引に下げさせ、自身も頭を下げた。

「旅人さん、申し訳ありませんでした」

「い、いえ、大丈夫ですよ……」

アイルさんは優しい笑顔で応える。

「ほら、あんたも謝りなさい!」

「……ごめんなさい……」

男の子はふてぶてしそうに謝罪する。

「もうこんなことしちゃだめよ」

「わかったよ……」

アイルさんに咎められてしょげる男の子は、そのまま頭を下げながら歩くお母さんと一緒に集落の方へ戻っていってしまった。

「……ほら、早く行こうぜ」

「はい……」

セルディはすぐさま、立ち止まっていた足を再び動かし始めた。僕たちはすっかり口を閉ざしたまま、竜人族の集落に到着した。

「よし、やっと着いたな」

セルディはぐーっと腕を空へ向けて伸ばす。

「まだ日が暮れるまでは時間があるし、色々なお店をあたってみようじゃねーか」

セルディは昨日、ヴィディレス国王から頂戴した金貨を、僕たちに分配した。

「宿代や食べ物とかのお金はキープしておいたが、それでも大金だ。無駄遣いはしないようにしろよ」

「わかりましたあ」

「わかってますよー」

「はい……」

……アイルさんはさっきの出来事をいまだに拭う事が出来ていない様子だ。下を向いて暗い顔をしている。

「あ、あの……」

「よし、それじゃあ解散~、日が暮れるころに宿屋の前で集合な~」

「あっ……」

アイルさんの声が小さかったのか、はたまたセルディが意図的にアイルさんの言葉を無視したのか分からないが、セルディはアイルさんの言葉を聞くことなく、お金を袋にしまってふらふらと広い集落の中を進み始めた。

「……」

「……大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、ありがとうね」

アイルさんは作り笑顔を僕に見せて、分配されたお金を持って、足取り悪く集落の奥へと向かって歩き始めた。

「気分、優れていないようですねえ……」

フランさんも不安そうな雰囲気で僕に話しかけてきた。

「ま、アイルさんが大丈夫って言ってるなら大丈夫じゃないですかー?ベタベタされてもアイルさんも困るでしょうしー」

ネーニャは腕を頭の後ろに当てて軽やかに言う。

「とりあえず、今は買い物を楽しみましょうよー。売り物もヴィディレス国のバザーとはまた違うでしょうしー」

「そうだね」

無理にアイルさんの様子を気遣うのも確かに迷惑かも知れない。僕も、今は買い物を楽しむことにしよう。


僕は昔から新しいものに目が無い性格ではあったが、やはり買い物というのは実に楽しいものだ。まして、この集落にだけ流通しているという限定性にはどうしても惹かれてしまう。いつの間にか時間を忘れてお店を回っていたら、日が暮れ始めていた。

「いけない……」

僕は、急いで道具屋から出る。そして、僕は失った鉄の剣に代わる武器を手に入れるために武器屋に向かうことにした。

「あ、あれ……」

僕の視線の先に、アイルさんがいるではないか。アイルさんは武器屋の店主さんと何か話をしている。……なんだかアイルさん、前屈みの体勢になっていて、店主さんを誘惑しているように見える……。目の前に見える銀色の高級感あふれる杖を値切っているのかな?もう少し近づいてみよう。

「ねえお兄さん……そこの杖、欲しいなあ……」

「こ、困るぜ姉ちゃん……こいつは目玉商品なんだぜ……」

「お願ぁい……欲しいなぁ……」

……まさか値切るどころか無料にしようとしていたとは……。

「あ、じゃあ……」

アイルさんは背中に背負う木の杖を自分の手で持つと、なんとあろうことか、自分の着ている服の上から木の杖を胸で挟み始め、店主さんに突き出した。

「じゃあ、物々交換で……この杖と交換……してほしいなあ……」

周りの人たちもアイルさんの方を見始め、店主さんが動揺し始めた!……それにしても、服の上から杖を胸で挟めるとは……どれだけ大きいんだ……!?

「ねえ、お願ぁい……」

アイルさんは自分の胸を激しく変形させながら杖をぐにぐに動かす!

「わ、わかった!仕方ない!!今回は特別だ!!持っていけ!!」

「やったあ!ありがとうございますー!」

アイルさんの艶らしいい雰囲気がいきなり解け、木の杖を再び自分の手で握り店主さんに渡し、銀色に輝く杖を手にした!そして、アイルさんは鼻歌を高らかに歌いながら、宿屋の方へ向かって行った。僕はアイルさんが遠ざかると、自分の武器を買うために武器屋に近寄った。

「……いらっしゃい」

店主さんは酷く疲れている様子だった。ちなみに、先程アイルさんの胸の間に挟まれていた木の杖はちゃっかり店主さんの手に握られていた。僕も触りたい。

「……この剣は、いくらですか?」

「これか?5000Gだぜ」

「じゃあ、この剣ください」

「おいよ」

僕は手持ちの5000Gを店主さんに手渡し、白銀の剣を手にする。

「こいつは竜人族の伝統の剣鍛冶が作った剣だ。魔力が込められてるとか特殊な力は無いが、切れ味は鋭いぜ」

僕は鞘から剣を少し抜くと、洗練された刃が輝きを放っている。確かに市販の鉄の剣に比べたら、非常に高級感を感じる。

「まいどぉ!」

僕は白銀の剣を差し、武器屋をあとにした。


武器屋を遠ざかると、夕暮れが一層強くなってきた。集落の東に位置する宿屋に辿り着くと、既にそこには女の子4人が待っているではないか。そして、銀色に輝く杖を背負うアイルさんもそこに立っていた。……しかし、アイルさんの顔は少し俯いているように見える。さっきの武器屋での一件は、気を紛らわすためにやっていたのかもしれない。僕には、アイルさんの心の中をのぞくことはできないけれど。

「遅いぞ」

「いつものことですけどねー」

「ごめんごめん」

僕は頭をペコペコ下げて彼女たちのもとへ走り寄る。

「ほら、早く入ろうぜー」

セルディは宿屋の横開きのドアを開け、中に入る。僕たちもセルディの後ろでドアを通過する。

「いらっしゃいませ」

中は、独特の装飾があったり自然な風情が漂っていたりしていて新鮮な気分になった。

「男1人と女4人で、2部屋空きはありますか?」

「はい、ございますよ。宿泊は1泊でよろしいでしょうか?」

「はい」

僕は宿泊費にとっておいたお金を受付の女性に渡す。

「ありがとうございます。では、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」

僕は鍵を2つ受け取ると、もう片方をセルディに渡す。

「アルタ」

セルディに鍵を渡すと、僕を呼んだ。

「なに?」

「これから風呂へ行くのか?」

「ん?まあ、そうしようと思うけど」

「じゃ、風呂入って夕飯を食べたら私達の部屋に来い。明日のミーティングをしよう」

「うん、わかったよ」

僕は自分の部屋の鍵を強く握り、廊下を歩き始める。女の子たちの部屋は、僕の部屋の真横のようだ。僕の後ろを女の子たちが談笑しながらついてきている。しかし、アイルさんの顔はどうしても作り笑顔にしか見えない。まだ朝の事を気にしているのかもしれない。

「それじゃ、またあとでな」

「うん」

セルディは鍵を施錠して、部屋に入っていった。僕は、女の子たちの部屋の奥の部屋の鍵を施錠し、部屋の中に入った。僕は部屋に入って、荷物と腰に携えた白銀の剣を床に置いた。

「ふぅ~」

僕は床に寝そべり、大きく身体を伸ばした。なんとなく疲れが軽く和らいで行く気がした。

「さてと……」

僕はシュタっと立ち上がり、部屋着を取り出し、浴場に足を運ぶことにした。


脱衣所に着くと、中は電気が消されていた。どうやら僕だけの貸し切りのようだ。僕は貸切の今のうちに風呂に浸かろうと、すぐさま脱衣所で服を脱いで、タオルを手に持ち、浴場のドアをスライドさせた。

「おお!」

広い浴場に反響する僕の声。実に気分が爽快になる。僕は身体を洗って頭を洗う。体中の汚れを取り除いて、僕はゆっくりと湯船に浸かる。

「あつっ!」

お湯が結構熱い。どうやら竜人族の人たちはこれくらいの温度が適温なのかもしれない。僕は再び湯船に身体を沈める。

「くーーっ……!」

身体全体に染み渡るようなお湯が、僕を包みこんでいく……!

「はぁぁ……」

ここまで熱いお風呂は初めてだけど、慣れたら実に癒しの力と化す。お風呂って偉大だなあ。

「……おっと……」

……なんとあろうことか、まだ数分しかお風呂に入っていないのに、もう頭がぼーっとしてきた。逆上せてきているようだ。

「……もう出ようかな」

僕は湯船から出て、ぼーっとしたままもう一度シャワーを浴びる。せっかく熱いお風呂に入ったのだから、このぽっかぽか感を残しておきたい。一瞬、冷えた水をシャワーで出そうかと考えたけど、そのままの温度設定でシャワーを流し、僕は自分の身体にお湯を当てた。

「さて、出ようかな」

脱衣所に続くドアの前で僕はタオルで自分の身体をくまなく拭く。……どうやら、他の宿泊客がやってきたようだ。脱衣所の方から微かに声が聞こえる。僕はずいぶん、運が良いようだ。僕は身体を拭き終え、ドアに手をかけようとしたところ、脱衣所側の人がドアをスライドさせた。


ぼよんっ!!


「うわっ!!」

ドアが開いたと思ったら、突然、目の前の何かに衝突して後ろに弾き飛ばされてしまった!!

「いたたたた……」

「あらあら……大丈夫ですか~?」

……女の人の声?僕は目を擦って、自分の目の前の光景を見る。……とても大きな大きな桃みたいなものが僕の目の前で浮遊している……。

「ライア姉さん、どうしたの?」

「ライアお姉さま、どうしたのです……?」

……目の前にいたのは、竜人族の女性だった。アイルさんよりも大きいと思われる見事な桃を携えた金髪サラサラロングヘアーの美人さんだった。後ろから2人分の声がする。脱衣所の方から、その声の主がタオルを携えながらも素っ裸の状態で僕の方へやってきてしまった。

「「……え?」」

……奥からやってきた2人の女の子は、僕と目が合うと、固まったように動きを止めた。

「うわあああああああああっ!?ぞ、ぞぞぞぞぞ象さんがぁぁぁぁぁ!?!?」

「きゃあああああああああっ!!お、男の方がいるですぅぅぅぅぅ!?!?」

「あらららら~……もう中に人はいなかったはずなのに……?」

後ろから現れた女の子は、すぐさま自らの身体をタオルで隠し、目を背けた。

「し、失礼しましたああああああああああああぁぁぁぁぁ!?!?」

僕は状況を読み込めぬまま、慌ててタオルで自分の大事なところを隠し、3人と入れ替わるようにして浴場をあとにする。一心不乱に服を着て、僕は脱衣所を飛び出した。

「あ、あれ!?」

おかしい!?女子風呂になってる!?僕が入るときは男子風呂になっていたのに!?……まさか、僕は素で間違えていたのか!?

「……もう、過ぎたことはしょうがないよね」

僕は一人で強引に納得して、自分の部屋に戻った。


部屋に戻って買ってきたものを整理していると、食事が運ばれてきた。洒落た風土料理だ。……しかし、見たことが無い食材も見受けられる。

「あの、これは……」

「はい、こちらは火竜のレバーでございます」

レバー……肝臓か……牛のレバーなら鉄分豊富とか言うけど……ていうか、この火竜のレバー、なんだか赤いよ?ちゃんと火は通してあるんだよね?

「では、失礼いたします」

竜人族のお姉さんは綺麗に頭を下げ、部屋をあとにした。

「……いただきます……」

僕は、手元のフォークを火竜のレバーに刺す。……よくよく考えたら、亜種みたいな存在とはいえ、竜人族の人が竜を食べるのって、共食いなんじゃ……?でも、今はそんなことは関係ない。この火竜のレバーの味が問題だ。僕は恐る恐る口に運び、火竜のレバーを咀嚼した……!

「……美味しい……」

僕はあまりの美味しさに心が奪われてしまった。普通のレバーと食感は似ているが、絶妙な辛さと、普通はあまり味わえないレバーの肉汁が堪能できて、革命的な味だった。僕は再び火竜のレバーに手が伸びてしまう。僕は、料理に夢中になった。火竜のレバー以外は普通の料理ではあったが、竜人族に伝わる味付けがなされているのか、普段は味わえない新しい味に、舌鼓を打った。

「ふう……お腹一杯だ……ごちそうさまでした」

今まで味わったことのない新しい料理の数々を、僕はすぐさま食し終えてしまった。毎日、この料理を食べ続けていても、当分は飽きずに食べていける気がする。

「さて……」

食事も終わったし、セルディたちのところに行って明日の事を話さないと。

「よっ……」

僕はゆっくりと立ち上がって、部屋から出て、鍵を閉めた。

「あらららら~、あなたは先程の……」

「あっ……!」

僕が廊下から聞こえた声の主の方へ向くと、さっきお風呂で遭遇した金髪の竜人族の人だった。後ろには、さっきと同じ構図で2人の竜人族の人が立っていた。それにしても、竜人族の人たちの民族衣装は身体のボディラインが少し鮮明に見えてしまっているので、それぞれの体格が分かりやすくなっていて視覚的に嬉しいものだ。

「さっきはごめんなさいね~……きちんと確認したはずなのに……」

「全く、姉さんはいつもそうだ!」

「しっかりしてくださいです、お姉さま……」

「ケイアちゃんもアイアちゃんもごめんね~」

ライアさんは後ろにいる二人の頭を撫でて謝った。どうやら左に立っている一本に結んでいる銀髪の、褐色肌でスレンダーな人がケイアさんで、右に立っている水色のツインテールの髪の、背が小さいのに出ているところは出ている人がアイアさんみたいだ。そして、話を聞くと、どうやらこの3人は姉妹のようだ。

「私達はここで働いてるのよ。姉さんがきちんと中を確認しないまま風呂の幕を変えたみたいでね、私達はそのまま勤務終わりだったから風呂に入ろうと思ったらあなたがいたってことだったのよ」

「昔からライアお姉さまは抜けているところがあるのです……本当にご迷惑をおかけしましたです……」

「い、いえ、僕は大丈夫ですよ……」

……姉がダメだと妹が真面目になるみたいなやつなのだろうか?

「あれ、アルタ、こんなところでなに話してるんだ?」

「あ、セルディ」

僕たちが3姉妹と話していると廊下の奥側からセルディが歩いてきた。建物の構造的に、トイレに行っていたようだ。

「てか、この人たちは誰だ?どこで知り合ったんだ?」

「あ、その……」

「さっき、お風呂でお会いしました~」

ライアさんが口を開いた瞬間、僕たちの空気が凍りついた。

「え、も、もう一度教えてくれないか?」

セルディがもう一度ライアさんに問いかけた。

「お風呂です~」

……もう言い逃れは出来ないだろう。僕は、セルディの拳が強く握られた光景を見て、歯を食いしばった。


ドガッ!!


僕はセルディの強烈な右手の拳に頬を叩かれ、地面に伏した。

「ど、どういうことか、教えてくれないか?」

「はい、いいですよ」

僕が地面に伏していると、ライアさんはセルディに手招きされ、セルディたちの部屋に入っていった。

「姉さん!?」

「お姉さま!?」

ケイアさんとアイアさんも、ライアさんを追いかけるようにして部屋に入っていった。

「ちょ……待っ……セルディ……」

僕は頬を手でおさえ、赤ん坊のように足をブルブル震わせながら立ち上がり、すぐそこにあるセルディたちの部屋に入った。


「なるほど、そういうことだったか」

ケイアさんとアイアさんと僕の話を聞いたセルディ、そしてセルディとライアさんから話を聞いていた他の女の子がようやく事情を納得してくれた。

「まったくー、アルタさんはどこでもラッキースケベを発動しますねー」

「そんな発動してないよ!?」

「……それはそうと、メイリーンさんは最近元気しているのか?」

「えっ、あんた、メイリーン族長と知り合いなのか?」

「まあな」

「あっ、もしかして……あなたは勇者級セルディさんです?」

「お、よくわかったな」

「ええっ!?こんなちんちくりんが!?」

「なっ!!ちんちくりんだと!?お前だってちんちくりんだろ!!」

「う、うるさい!!」

旅をしてきて分かったけど、実は勇者級の人たちは、僕を含め、その国の人じゃないと認知されていないケースが高いようだ。軍の人や国の偉い人たちは話が違うけど。まあ、戦後すぐだと、情報もろくに回っていなかったし、当然なのかもしれない。

「あの……勇者級セルディさんが、どうして族長を訪ねてこられたのです?」

「まあ、色々あってな」

エシュ・アジュラスの事を話すことになってしまわないように、曖昧な返事をするセルディ。

「メイリーンさんはどこにいるんだ?どうやらこの集落にいないようだけど」

「族長は、この集落の近くにある孤島にある竜人の玉座ってところで業務しているんだよ」

「なるほど、そういうことだったのか」

セルディはふむふむとうなずいた。

「ですが、最近は竜人の玉座に辿り着くまでの道に魔物が巣食い始めてしまいまして……一般人は通行禁止になっているんです」

「マジかよ!タイミング悪いなおい……」

「集落の住民同伴だったら大丈夫とのことですが……そこまでして族長のもとに行く人はいないそうです」

「お、マジか!?」

セルディが目を輝かせる。

「なあ、だったらメイリーンさんのところまで連れていってくれないか?」

「げっ!言うと思った!!」

ケイアさんがだるそうに応えた。

「いいわよ~!ケイアちゃんもアイアちゃんもいいよね?」

「私はいいです」

「ええっ!?アイアもかよ!!……じゃあ、私も行くよ……」

「おっ!ありがとう!!」

セルディは、「しめたっ!」って感じの顔を見せた。図ったな。

「……あっ……」

アイアさんはアイルさんの姿を見て、何故か言葉を詰まらせたような嗚咽を放った。

「……怪我はしていませんです?」

「!!……あなた……昼間のを見ていたの?」

「はいです……」

アイアさんは顔を俯かせた。

「ごめんなさいです……竜人族の中には、いまだ普通の人に対して嫌悪感を示す人も多いのです……」

「それってどういう……」

僕が問いかけようと声を発するが、ケイアさんが一息ため息ついた。

「まあ、最近までは普通の人との亀裂は深かったからな。迫害の歴史の方が長いんだ」

「私達は、普通の人とは見た目から違いますので……恐怖感を覚えた人も多いと聞きますです。無理は無いのかもしれませんですが……」

「でも、魔王襲来戦争が始まる少し前に、今の族長、メイリーン族長がケルヴィス王国の勇者級ディオンさんと交際を始めてから、竜人族と普通の人の亀裂が無くなっていったのよ」

「それまでは、私達はケルヴィス王国の端っこに追いやられて、苦しい生活を強いられていたのですが……2人が、共存の道を切り開いたのです。ですが……」

「ケルヴィス王国は魔王襲来戦争で崩壊し、国王や大臣も戦死して国家が消滅。生き残ったケルヴィス国民で一番権威をもっていた勇者級ディオンさんの計らいで、残った私達、竜人族がもともとケルヴィス王国だった領地を受け取ったのよ」

「結局、竜人族と普通の人が和解し始めてからすぐに国が崩壊した挙句、友好の象徴だった勇者級ディオンさんも戦後間もなく病死。私達は、僅かに生き残った元ケルヴィス王国の普通の人と共に集落の安寧に尽力したのです」

「その結果が、普通の人と竜人族の共存する集落の完成だ」

「戦前から普通の人と竜人族の亀裂は埋まりつつはありましたが……もっと早くこの亀裂が無くなっていたら、私達はケルヴィス王国と協力して魔王軍を撃退できたかもしれなかったのですが……」

「やめろアイア。それは言っちゃあいけない」

「はいです……」

「……そういうこった。さっき言ったろ、集落の住民から聞いた方が早いってさ」

「荒野が広がっていたのは……戦争の爪痕だったってこと……」

「難しい話ですねー……」

僕たちは言葉を失ってしまった。さっき、アイルさんに石を投げた竜人族の男の子は、普通の人だった僕たちを嫌がって……いや、そんな可愛いモノじゃない……憎んでいたんだ。

「……はっ!いきなりこんな話を聞かせてしまってすみませんでしたです……」

アイアさんは涙を浮かべて頭を下げた。

「おいおい、ナヨナヨすんなって!」

ケイアさんがアイアさんの頭をペシっと叩いた。

「うう、痛いです……」

「痛いようにやってるんだから当然だ」

「あらあら~、いつも仲が良いわね~」

「姉さんはのほほんとしすぎ!たまにはピシッとして!!」

「いつもお姉ちゃんはピシッとしてるわ!」

「してないよ!!」

……こうして見ていると、至って普通の女の子3人だ。僕は、誤った歴史を繰り返させないように、ケルヴィス王国と竜人族の話を胸に刻んだ。

「……それじゃあ、時間も遅くなっているし、私達は退散しよう」

「そうですね、ケイアお姉さま」

「そうねえ~」

3姉妹は、ゆっくりと立ち上がる。

「こんな時間まで居させて悪かったな」

セルディも立ち上がってお尻をはたいた。

「……そういえば、名前言ってなかったな。私は次女のケイア、ケイア・ドラディだ」

「私は長女のライアです~」

「三女のアイアです……宜しくお願いします」

ようやく3姉妹の名前を本人たちから聞くと、僕たちもそれぞれ自己紹介した。

「じゃあ、明日の朝、ここまで迎えに来るよ」

「悪いな、ありがとう」

「それでは、明日はよろしくお願いします」

僕も立ち上がって3姉妹に軽く頭を下げた。

「あんたには悪い事しちまったからな。せめてもの罪滅ぼしだって思ってくれ」

ケイアさんは手を振って気にするなというように微笑した。

「い、いや、それはこちらもです……そんな気負いしないでください……」

僕がそう言うと、ケイアさんは視線をおろし、僕の脚部……よりも少し高い一点を見つめた。

「……おう、そうだな」

ケイアさんはすぐに目線を逸らし、顔を紅潮させた。……僕は何も言うまい……。

「あらあら、ケイアちゃん、どうしたの?」

「な、なんでもない!」

ケイアさんは恥ずかしそうな様子でこちらに背を向けて部屋のドアを開けた。

「ほら、早く帰ろう!」

「あらっ、待って~、ケイアちゃん~」

ライアさんもゆっくりと部屋を去っていく。

「お、お邪魔しましたです……!」

アイアさんはあたふたしながらぺこりと頭を下げて、姉2人についていくように部屋をあとにした。

「ふう……これで勇者級メイリーンさんに会えることが出来そうね」

「よかったですう」

「ですが、竜人族という存在を知ってはいましたが、ここまで酷い迫害を受けていたとは、思ってもいませんでしたよー」

ネーニャのその一言で、部屋の空気がピシッと張りつめたように凍りついた。

「……人っていうのは、難しいものさ」

「……そうですねー……」

僕の耳には聞き取れなかったが、恐らく、ネーニャの口の動きから、「団長」と呟いたのだろう。サバーニャの団長のリディーも、ホレンツィエ国の国王と分かりあえていれば、正しい道が開けていたのかもしれない。……まず、人同士ですら分かりあう事が難しいのだ。それなのに、普通の人と竜人族が分かりあえることなど、普通ならばあり得ない話なのかもしれない。

「時代には先駆者がいる。正しい道を開拓した先駆者は、指導者となる」

「セルディ、その言葉は?」

「ディオンさんが言っていた言葉だ。あの人は、自分が勇者級であると同時に、私達、普通の人と竜人族との交流の懸け橋のような存在だということに重圧を感じていたんだ。でも、あの人は自分に言い聞かせるようにそう言ってた」

「ある意味、時代の摂理ですねー」

「そうね……」

「まー、今はほとんど竜人族とは和解していて、交流が盛んになっているんだ。昔の事は忘れることは無くとも今も引きずることは無いだろうよ」

「そうだね」

「ふぁーあ……てかもう夜遅いし、寝ないか?」

「そうですね……私も眠いです……」

「明日も早くなりそうですし、賛成ですー」

「そうしましょう~」

「それじゃ、アルタは今日はここでおさらばだな」

「うん、そうだね」

僕は指をからめて腕を上げて身体を伸ばして、そのまま部屋のドアの方へ歩く。

「それじゃ、おやすみなさい」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

「おやすみですー」

「おやすみなさいですう」

僕は女の子たちの部屋を出て、隣の自分の部屋に向かう。鍵を施錠し部屋に入って、布団を敷いた。僕は電気を消して、布団に潜った。僕はそのまま何かを考えたりすることなく、自然の内に、目を瞑って意識を静めていった……。


「うぅ……」

僕は、何か頭に違和感を感じながら目覚めると、僕の目線の先には、3つの綺麗に整った女性の顔が映り込んだ。

「あらあら、やっと起きたわね」

「本当に朝に弱いようだな」

「お、おはようございますです……」

「うわぁっ!?」

僕は慌てて布団から飛び上がり、後ずさりした!

「ど、どうしてここにいるんですか!?」

ケイアさんがいやらしく笑うと、鍵を人差し指でぐるぐる回した。

「私達はここで働いているって言ったろう?スペアキーを用意するくらい簡単なんだよ」

「あ、あのアルタさん……仲間の方々はもう用意が済んでいるようです……」

「そうだ!ライアお姉ちゃんが、お着替えさせてあげましょうか~?」

「い、いや!大丈夫です!今から着替えて準備します!!」

僕は、慌てて3人を部屋から追い出して、すぐさま服を着替えた。正直、非常に嬉しい話ではあったが、朝にこれは刺激的だ!!


「おい、遅いぞ」

「ごめん、みんな」

「なんだかこのやり取りも慣れてきましたねー」

「……面目ない……」

既にセルディ達と3姉妹の人達は宿屋の外で待機していたではないか。せっかく案内してくれるのに、遅れてしまうなんて……。

「遅れてしまってすみませんでした」

僕は深々とライアさん達に頭を下げる。

「あらあら、気にしないでいいのよ!私もいつもこんなだし……」

「そこは威張ることじゃないよ!?」

「うえ~ん!ケイアちゃん意地悪!」

……やはりどうしてもケイアさんの方がお姉さんに見えてしまう……。ライアさんは見た目通り、かなりおっとりしている人のようだ。昨日の雰囲気から察していたけど。

「……まったく、いつもぐーすか眠っているからそんなに大きくなるんだよ……」

「大丈夫だよケイアちゃん!まだ希望はあるわ!」

「余計な御世話だー!!」

「あ、あの、ケイアお姉さま……そんな怒らないでください……!」

「うるさいよ!アイアだって無駄に乳だけ大きくしやがって!!」

僕、ケイアさんに似た人をすぐ近くで見たことがある気がする。

「おお!お前、この苦しみが分かるか!!」

うん、やっぱりね。

「くっ……なんだか複雑な気分だよ……」

セルディに手を掴まれたケイアさんは、すこぶる悲しい顔をして肩を落とした。

「ほら、みなさん、おっぱいの話はそこまでですよー。早いところ竜人の玉座ってところに行きましょうよー」

「そ、そうだね……グフン!」

ケイアさんは一息つくと、集落の東に見える、橋のような道の方へ指を指した。

「それじゃ、行くとしますか。あそこの道には魔物が出るから、まあ、あんたらがそこまで苦戦を強いられることは無いだろうが、気をつけてくれ」

そう言って、ケイアさん達は先導するように集落の道を進み始めた。僕たちも3姉妹の後ろをついて移動を開始した。


集落を出発して1時間ほど経った。竜人の玉座に向かう道は予想以上に長く、ようやく竜人の玉座がある孤島が見えてきた。道中、魔王残党軍の魔物に何度か襲われたが、今はライアさん達3姉妹もいることがあって、ほぼ苦戦することなく進むことが出来た。

「っかーっ!!やっぱり長いよ!!どうして族長に会うためだけにこんな長い道を歩かなきゃならん!」

「まあ、メイリーンさんにも事情があるんだよ」

「事情って何さ!?」

「あっ……」

セルディは慌てて口を塞いだ。何か言ってはまずいことでも言おうとしたのだろうか?

「もーっ!!集落のみんなの苦情を聞いてないよ、絶対!!」

「まあまあ、ケイアちゃん、落ちついて。あと少しよ」

「分かってるよ……」

苦情まで出てるのか……まあ、確かにこんな道を通ることになるのなら、集落で仕事してくれる方がありがたい話だ。ケイアさんが愚痴を溢しながら話していると、ようやく竜人の玉座と呼ばれる場所に着いた。そこには確かに玉座はあったが、人の姿は見当たらなかった。

「あれ?メイリーンさんいないじゃん」

「いや、あの玉座は飾りみたいなもんなのよ。普段はあそこの小屋の中で業務してるんだよ」

ケイアさんは玉座の右手前に建てられた小屋を指さした。僕たちは小屋に向かって進んだ。

「失礼します、族長」

ノックしたケイアさんが、中にいるメイリーンさんの応答を待った。

「どうぞ」

中から静かで綺麗な女性の声が聞こえてきた。ケイアさんはドアを開けて、小屋の中に進入する。僕たちもその後ろについて小屋に入る。小屋の中に用意された机の上で事務作業をしている美女がいた。恐らく、この人がメイリーンさんだろう。

「あっ、セルディ!?」

「久しぶりです、メイリーンさん」

メイリーンさんはセルディの顔を見たと同時に驚いた表情を見せ、すぐさま木組みの椅子から立ち上がり、僕たちの目の前まで歩いてきた。

「まさか、こんなところまで来るとは……一体何の用じゃ?」

尻部まで届く、非常に長い金髪を靡かせる。遠目で見ると、ライアさんに少し似ているが、顔立ちはライアさんとは違って大人っぽく、目もキリッとしている。近くで見たら別人だとすぐわかる。

「単刀直入に言います……。エクスカリバーを譲っていただけないでしょうか?」

「なんじゃと!?」

メイリーンさんは先程よりもより大きな驚きを見せた。

「……セルディが欲するという事は、何か事情があるのじゃろう。……だが、簡単に渡すわけにはいかないのじゃ」

メイリーンさんは机に立てかけられていた錫杖を手に取り、鋭い眼光を向けた。

「ディオンは死ぬ前に、こう言ったのじゃ…『エクスカリバーの力を託せるのは、再び世界が混沌としてしまった時にそれを抑えられる人のみ。だから、メイリーンに勝てた人にだけ、エクスカリバーを託してほしい』と……」

今のメイリーンさんの発言から推測して、どうやら僕たちがエシュ・アジュラスという組織を追っていて、そのためにエクスカリバーの力を必要としていることを知っている様子だ。恐らく、国という組織のトップではないが、一つの大陸に唯一存在する集落の族長であることから、エシュ・アジュラスについては他国の偉い人から聞いているのだろう。

「セルディ、ならびに同伴している旅人たちよ、エクスカリバーが欲しいのならば、まずは私を倒してからにしてもらうのじゃ!」

「望むところです……!」

メイリーンさんは錫杖を一度鳴らして、小屋を出た。僕たちも、小屋から出ようとする。

「あんたら、一体何者なのよ……」

「旅人ですよ」

僕はそう一言、ケイアさんに答えた。僕たちは玉座の前に立つメイリーンさんを相手に、それぞれ武器を取りだした。

「ハンデとして、セルディたちはパーティで戦っていい。その代わり、私も本気で行かせてもらうのじゃ……!」

メイリーンさんは錫杖を再びチリンと一度鳴らす。すると、信じられない程のプレッシャーが、僕を威圧した!!

「メイリーンさんはディオンさんに次いで強い!舐めてかかったら死ぬぞ!」

メイリーンさんは、目を瞑り意識を集中させる……!

「……!!」

すると、僅かなその一瞬、メイリーンさんは、疾風陣来の如く僕の目の前に佇み、腰を落として正拳に力を込めた!!

「遅いのじゃ……!!」


第21話「竜人族の集落」、最後まで読んでいただきありがとうございました!!

今回はお色気要素もありましたが、人種差別的な話が出てきて、シリアスな話が展開されました。現実社会でも難しい話題ではありますが、あえて、僕はこの話を盛り込みました。正直、セルディ(というよりかはディオンですね)が言っていた「先駆者が指導者~」の理論は、正しい理論ではないと思っています。それは何故か。これからの話の展開で、僕の考えが見えてくると思います。その時を待っていただければと思います。

さて、次はお色気シーンの話へ。ドラディ3姉妹の初登場!!が、まさかの裸での初登場という衝撃的な話が展開されましたね。ちなみに、長女ライアさんはアイル以上、メグちゃん以下のおっぱいの持ち主、作中第2位のおっぱいの大きさの持ち主です!!さらに言うと、三女のアイアもかなりの巨乳の持ち主です。フランちゃんよりも大きいです。と、言うよりも、アイアのおっぱいはメグ、ライア、アイルに続いて作中4番目に大きかったりします。え?ケイアのおっぱいはだって?……察して下さい(涙)。

話は変わって、勇者級メイリーンとの邂逅(セルディにとっては再会)。メイリーンは恋人ディオンの言伝を守るため、アルタパーティに戦いを挑みます。初手いきなりアルタがピンチな展開に!?次回のメイリーンとの戦闘にご期待下さい!!

では、ここからは次回予告を。次回第22話のタイトルは「エクスカリバー」です。メイリーンの試練に打ち勝つことはできるのか!?是非、お楽しみに!!

次回の投稿は、11月の月末近くになる予定です(ただし、これから予定が忙しくなりますので、変更になる可能性が少々高めです、ご了承ください)。では、また次回、お会いしましょう~!!

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