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強襲準備

みなさま、お久しぶりです。島北です。

最近、寒かったり暑かったりと気候の変化にイライラする季節が続いていますね。寒いなら寒い、暑いなら暑い、そんな感じでお願いしたいところであります。

では、雑談はさておき、第19話「強襲準備」、どうぞ最後までお楽しみください!!

「ふう……なんだか久しい気分だぜ」

「私~、このお城に来るの初めてです~」

ソディーの街を発ち数時間、ようやくヴィディレス城と城下町の城門に辿り着いた。城門には鎧を纏う国の兵士が配備されていた。兵士たちはニーディさんの姿を見ると、重い城門を開いた。ニーディさんは一言「ありがとう」と伝えると、開いた城門の先へくぐる。

「ほらお前ら、早く行くぞー」

ニーディさんに呼ばれ、僕たちも城門をくぐる。城門の先には、広い城下町が広がっていた。城下町はソディーの街のカジノの影響か人が多く賑わっていた。

「うぷぷ……ここも人が多いですねー……」

「あ、そーいや、カジノの経営開始に合わせてこっちの城下町でも大規模なバザー市が行われるんだっけか」

「なるほど、そういうことだったのね」

城下町の中央に流れる川を左側へ渡ると、物を売っている商人さん達がシートを敷いて陣取っていた。

「バザーを回りたいのは分かるけど、まずは国王陛下に会いに行こう。それからでも大丈夫だろ」

「そ、そうですね」

僕としたことが。ついバザーの方に目が向いてしまっていた。今はヴィディレス国王に会って闇の遺跡へ行く許可を得なくては。

「ほら、せっかく交渉役に適任な私がいるんだ。早く行こう」

ニーディさんは川を渡りバザー市の会場となっている通路を通る。客引きの商人の声と掘り出し物を探す人の声が辺りに木霊している。バザーを回りたい気持ちを抑えてお城がある奥の方へと向かう。

「そういえば、メグはどこまでついて来るんだ?」

ニーディさんは城門の前でメグさんの方へ振り向く。

「私は~、みんなに着いて行くわ~」

「ややこしいことになるかもしれないぞ?」

「構わないわ~」

「そうか」

メグさんはどうやら僕たちについて来るみたいだ。

「勇者級ニーディ殿!お疲れ様です!」

「お疲れ様」

ヴィディレス城に辿り着くと、僕たちはニーディさんと一緒にいたおかげですぐさま城内に入ることが出来た。城内はかなり広く複雑な構造になっているようだが、謁見の間に行く道は階段を上って右手に進んで突きあたりのようだ。

「ほら、早くついてこい」

ニーディさんに催促されて止めていた足を再び動かす。城内入ってすぐの階段を上り、長い廊下を抜け、突きあたりの謁見の間のドアの前に辿り着く。

「これは勇者級ニーディ殿!本日はいかがなさいましたか?」

「国王陛下にお話しがある。通してもらえないだろうか?」

セルディもそうだけど、真面目な事になると人が変わるように発言が厳かになるのは、勇者級としての威厳なのかもしれない。

「畏まりました。どうぞ」

門番兵は門を開ける。奥には国王が玉座に座っていた。しかし、どうやら疲れているらしく、ウトウト眠っている様子だ。隣に立っていた大臣らしき男性が国王を起こすと、ようやく僕たちに気付いた。

「……これは失礼した。勇者級ニーディ殿、本日はどのような案件で?」

国王は一度目を擦り、威厳良い態度でニーディさんに話しかける。

「本日は、闇の遺跡への進入についての許可が欲しくて参りました」

「……今は忙しくてその名前は聞きたくないが……理由は如何に?」

「話については、ここにいる旅人達が話してくれます」

ニーディさんは右手を僕たちに向け、話を託す。

「ほう、君たちは?……言わずもがなかな、勇者級セルディ殿」

「いえ、用件がございますのは私の横にいる少年です」

「申し遅れました。アルタ・グレーテと申します」

僕は自分の名を述べる。

「ほう……何故、君は闇の遺跡への進入を望む?」

国王は顎髭を撫でて問う。僕は、今までの旅路の説明、そして僕の大切な妹、リィラのことについて国王に説明した。

「……なるほど……機密事項のエシュ・アジュラスについて知っているという事は余程、他の国で功績を残したのだろう……」

国王は顎髭に手を当て何かを考え始める。

「……君たちに託しても良いのかもしれないな……」

「こ、国王陛下!?本気ですか!?無名の旅人に託すなど……!!」

「大臣……この状況を打破するには、遥かシュヴェッラ国から幾重の困難に打ち勝ったこの人たちに託すのも良いのかもしれん……私はそう考える」

「失礼ですが国王陛下。先程から何を危惧しているのでしょう?」

ニーディさんが話に割り込み入る。

「……エシュ・アジュラスの魔物を使役する力があるという話しはどうやら本当だったらしくてな……対応を考えていたのだが、国を動かすのはエシュ・アジュラスという機密情報が漏れてしまう可能性が高くて、迂闊な行動が出来ないでいたのだ」

「国王陛下や私、軍の一部の将軍たちで毎日、エシュ・アジュラスへの対抗の案を考えているのだが、上手く案がまとめられずにいるのだ……」

「我が国の軍を動かせば、真っ先に狙われるのは我が国だろう。挑発はしたくないが、魔王残党軍の魔物だけではなく、エシュ・アジュラスの使役された魔物を相手に防衛戦を続けてはジリ貧になって軍の戦力が削られていく一方になる……どうにかしてエシュ・アジュラスを叩こうと思っていたのだが……と、考えていた矢先に君たちが私のもとに訪ねて来てくれたということだ」

「……つまり……僕たちの旅の目的とヴィディレス国の目的が一致するという事ですか?」

「そういうことになる」

「では、私達の闇の遺跡の進入を許可していただけるということでしょうか?」

セルディがすかさず国王に許可を求める。

「……わかった。許可しよう」

「国王陛下!?よろしいのですか!?」

大臣は慌てて国王に視線を向ける。

「ああ。報酬も用意しよう」

「あ、ありがとうございます!」

僕は頭を下げる。

「ただ、君たちだけに押し付ける形になってしまったら私としても申し訳ない。我が国を代表して、勇者級ニーディ殿。君に、旅人達の同行を頼みたい。よろしいか?」

「はい、了解致しました」

「では、明日の正午、ソディー港に専用の船を用意しよう」

国王は大臣に即席で書いた紙を渡すと、大臣は国王に一礼して謁見の間を去って行った。どうやら、船の手配を依頼しに行ったのだろう。

「では、私も一度席を外すとしよう……君たちは明日に備えて準備をしておきなさい」

そう言うと、国王は玉座から立ち、ゆっくりと謁見の間の後方にある階段を上り、自分の部屋に戻って行った。

「……それじゃ、一度城下町に戻ろうか」

「わかりました」

ニーディさんは誰もいない玉座に一礼し、玉座に背を向ける。僕たちも一礼した後、ニーディさんの後ろを歩き、謁見の間をあとにした。


「ふう……お願いしに行ったはずが逆にお願いされるとは……」

「まあ、よかったんじゃないか?結果的に闇の遺跡に行けるんだし」

城下町に出た僕たちは、川の流れる音と、少し遠くに聞こえるバザーの会場の声を聞きながら話をしていた。セルディの言う通り、結果的に許可を得られたのは好都合だろう。

「それよりも、さっきと似た質問になるが、メグよ。これからどうするんだ?」

「そうね~……」

メグさんは大きすぎる胸を支えるような体勢で腕を組み悩んでいる。

「……私もついて行くわ~」

「そう言うと思ったよ。宜しく頼む」

「えっ……!でも……」

「いいえ~、私が決めたことですから~」

僕はメグさんを止めようとしたが、それより先にメグさんが僕の言葉を封じた。

「あの時、助けてもらいましたから~、その時の恩返しです~」

「でもメグ。闇の遺跡では苛烈な戦いになるだろう。それでも大丈夫なのか?」

セルディは鋭い眼光を光らせた。

「メグは私に届くレベルの力を持ってるんだ。心配しなくても大丈夫だと思うぞ」

「……それならばいいんですけど……」

「今回は少人数での戦いとなるが、ある程度の戦力は欲しい。メグがいれば戦力補強になる」

ニーディさんは冷静に状況を整理する。

「それに、今回の闇の遺跡強襲はアルタ達だけでなく、ヴィディレス国の目的でもある。下手に失敗するわけにもいかないからな」

「全く……褒美をくれるとはいえ、私達に押し付けるとは、余程手詰まりだったんだろうよ」

セルディは溜息を吐く。

「ま、ここでこんな話してるのも辛いだろ!今日は私の家にみんな泊めてやるから、今からバザーを楽しんでこいよ!部屋を片付けておくからよ」

ニーディさんはガハガハ笑って僕の背中を叩く。

「おお!久しぶりの姉御の家だ!!」

「私だって女だ。部屋は綺麗にしておきたいんだよ。さあ、行った行った!!」

そう言ってニーディさんは一人、城下町に構えた大きな豪邸の方へと足を運んで行く。

「夜までには家に来いよ!飯も用意しておくからよ!!」

「わかりましたー!」

僕はニーディさんに応答する。

「それじゃ、私達はバザーを楽しみましょうか!」

「そうしましょうー」

アイルさんとネーニャは足早にバザーが行われている広い通りへと向かう。

「んじゃ、ここからは別行動だな」

「そうだね」

僕は、女の子たちと別れ、バザーへと足を運ぶ。

「おっ!らっしゃい、旅人さん!!」

麦わら帽をかぶった横に大きなおじさんがシートの上に座っている。僕は同じシートの上に並べられた道具を見る。

「へえ、ガキンチョのくせに魔鉱石に興味あるのか?」

「い、いや、そういうわけじゃないんですけど……」

「ありゃ、そーなのか?」

おじさんは残念そうに肩を項垂らす。

「おじさん、昔は炭鉱父だったから魔鉱石には詳しいんだぜ?ほら、この光属性の魔鉱石を見ろ。今はただの石だが、これを握って念じれば……」

おじさんはそこらへんの石と変わらないような魔鉱石を握って力む。

「うわっ!」

なんと、目を開けるのも困難なくらいな眩しい光がおじさんの手から放たれた!

「おおっと、悪い悪い!ちょっと魔力かけすぎちまった」

おじさんはすぐさま手から魔鉱石を離し、シートの上に静かに置いた。

「ま、こんな感じで暗い所で使うにはもってこいだぜ?旅人のあんたには、使えるんじゃないか?」

確かに、今みたいな眩しい光が放てる魔鉱石なら旅でも使えるだろうし、戦いのときに目くらましにも使えるだろう。買っておいて損は無いかも。

「それじゃあ、今の石、買います」

「おっ!ありがとよ!んじゃ、1000Gだ!」

んん……意外と高いなあ……。僕は袋から1000Gを取り出し、おじさんに渡した。

「毎度ッ!」

おじさんは1000Gを箱にしまった。僕は魔鉱石を袋にしまって、他の店を回る。

「いらっしゃい!ここは魔力調合水のお店だよ!」

これは珍しい。魔力調合水を取り扱ってるお店は初めて見た。人体の魔力に関して作用する水という事で希少価値も高く、普通、お店に出すものではなく、軍隊や一部のお金持ちが製造会社にお金を払って郵送されて得られるものなのだ。

「お、君は恰好から推測するに旅人だね。どうだい、この賢者の水は。これがあれば体内の魔力が底尽きそうになっても瞬時に復活する代物だ」

確かに、これがあれば戦いのときに有利だ。魔力を回復させる水なんて普段買えないし、ここで安く売られているときに買ってもいいんじゃないかな?

「それじゃあ、一番小さいサイズのそれを3つください」

僕は一番小さいボトルの水を指さす。1本当たり200Gはこの小さいサイズでもなかなか安い。僕はまとめて買うことにした。

「600Gだね」

僕はさしのばされた手の中に600Gを添えた。

「はい、ありがとう!」

「どうも」

僕は静かに袋の中に魔力調合水『賢者の水』をしまって、他の店を見ることにした。


「……まだ見足りないなあ……」

魔力調合水を買ってから、いくつもの店に出向いていたら、すっかり日が暮れ始め、辺り一面が橙色に染まって行っていた。バザーの商人たちも荷物をまとめ、撤退を開始し始めた。

「もうニーディさんの家に行こうかな」

僕は少し重くなった袋を携え、目線の先に見える白い豪邸を目指し歩き始めた。城下町の中央に走る川に架かる橋を渡り、少し小高くなっている地面を上り、階段を駆け上がる。

「おお……」

流石は勇者級の家とでも言うべきなのか、近くで見たら凄まじく大きな家だ。ここで一人で暮らすとなると、少し広すぎるんじゃないだろうか?僕は鍵が施錠されていないドアを開けて、家の中に入った。

「お、誰か来たのか?」

奥の部屋から女性の声が聞こえてくる。ドアから出てくると、その女性はニーディさんだった。室内着と思われるゆったりした服装に着替えていて、白いエプロンをしていた。綺麗な女性にこうやって家で歓迎されたいものだな……。

「アルタか、遅かったな。もうすぐ夕飯出来るぞ。手を洗って部屋に来い」

「わかりました」

僕は玄関からすぐの洗面所で手を洗う。手に掬った水でうがいして水を吐く。服の袖で口元を拭いて、ニーディさんが出てきた部屋へと向かう。僕は閉まっていたドアを開けた。

「お、やっときたな」

「お待たせしました」

セルディたちは既に椅子に座って料理が出るのを待っていた。広い台所に目を向けるとニーディさんが真剣な目つきでフライパンを返していた。

「アルタも、席に座って待っとけ!私の渾身の料理を奮ってやるからさ!」

フライパンを見つめるニーディさんに言われて、あいていた席に腰を落とす。


他の女の子たちとバザーで買って来たものについて談笑していると、暫くして、台所から火の音が消えた。どうやら料理が終わったようだ。

「よーし!終わったぞー!」

ニーディさんは意外と似合っていた白いエプロンを台所にあるハンガーにかけると、お盆の上に料理を乗せて僕たちの待つ食卓へ来た。

「ほーら!美味しそうだろー!」

机の上に置かれた大きなプレートには野菜と肉の炒め物がたっぷりと入っていた!

「「「「「「おーーっ……!」」」」」」

料理を待ちわびていた僕たちは大きな感嘆の声を上げた。

「久しぶりに肉を食えるぜ……」

「旅に出てから贅沢できなかったですからね……!」

「うはー……これはまた贅沢なお肉を使っているようですねー」

「凄く美味しそうですう……!」

「久しぶりのニーディのご飯~、美味しそうね~!」

女の子たちからは涎を我慢するかのような声が漏れる。

「ほら、これだけじゃないぞ!」

台所に再び戻って、お盆に乗せてきた料理は、新鮮なサラダだ。色合い豊かな野菜たちはとても新鮮な艶を放っている。

「野菜も食べるんだぞ!」

そう言って、最後にご飯と取り皿を僕たちの前に置く。何も乗せていないお盆を机の端に置き、ニーディさんは誕生日席に腰かける。

「ニーディさん、凄いですね……!私の家の宿屋の料理長にだってなれますよ!」

「褒めるなよ、照れるじゃんか」

顔を少し赤らめてそっぽ向くニーディさんはとても可愛らしかった。外では、勇者級としての威厳を保たなくてはいけないという意識の表れなのだろうか?僕の知る由では無いけども。

「ほら!冷める前にさっさと食え!」

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

僕たちは一斉に皿に盛られた料理を小皿に取り分ける。セルディを除き、全員がサラダを小皿に盛る。それを見たセルディも、渋々、肉の炒め物の上に被せるようにサラダを少量盛る。僕は、持ったサラダをフォークで刺し、口に運ぶ。

「お、美味しい……!」

口の中に溶けるように甘いサラダの素材の味が広がった。そして、すぐさまサラダに合うドレッシングの味が舌を伝う。オニオンドレッシングだ!絶妙にすりつぶされたオニオンが新たな触感を創り出している!!市販品では味わえないこの感覚は……もしや……!

「ニーディさん、このドレッシングってもしかして……」

アイルさんも僕と同じことを思ったのだろうか。ニーディさんに質問する。

「ああ、私の手作りだ」

「す、凄いわ……!」

「まさか、ここまで料理が得意とはー……私も驚きを隠せないですねー」

「……!!この野菜、美味いぞ!!」

セルディは行儀悪く口の中にサラダを残したまま大声で叫ぶ。普段、野菜を食べない、というか苦手としているのにも関わらず、すぐに小皿に持ったサラダを食し、大きなお皿からまた小皿へ移して食す。

「凄く美味しいですう!」

「やはりニーディの料理は絶品ね~!」

フランさんとメグさんもサラダを口にすると、頬が落ちるかのような仕草を見せた。

「な、なんか嬉しいじゃねーか……」

ニーディさんは照れながらサラダを食している。あっという間に無くなってしまったサラダの皿から、僕たちの手は肉野菜炒めへと移った。先程、お肉しか取っていなかったセルディは、野菜にも手を伸ばしていた。僕も小皿に肉野菜炒めを盛り、ワンテンポ置いてお肉を口の中に運んだ。

「これは……!」

僕は思わず感嘆の声を出してしまう!流石に焼き肉のたれを手作りしているようではなさそうだけど、口いっぱいに広がる肉の旨み!一番おいしく食べれる焼肉の焼き時間を駆使して作ったかのような絶妙なお肉の味に舌鼓を打った。

「うっひょう!この野菜もうめえ!!」

お肉と一緒に野菜もほおばるセルディ。目をキラキラ輝かせてご飯を口に放り込む。行儀の悪いこと極まりないが、子供のようで可愛げがあった。


その後、僕たちはニーディさんが作った料理を存分に楽しみ、城下町の中にある小さな温泉へと足を運んだ。どうやらニーディさんは洗い物をガルガンティ国製の食器洗い機に入れてきたらしい。僕たちを温泉へとナビゲートしてくれた。温泉に着いて、僕は女の子たちと別れ、小1時間ほど、ゆったりと温泉を楽しんだ。温泉から出て、僕はレンタル品の浴衣に着替えた。どうやら次の日に返せば問題ないらしい。ニーディさんのご厚意で今まで溜めてきた洗濯ものを一気に洗うことになったので、余計な服の消費は避けるために、ニーディさんが浴衣レンタルを教えてくれたのだ。慣れない浴衣に着替えて更衣室から出ると、浴衣姿の女の子たちが待っていた。

「遅いぞ!待ちくたびれたぞ!」

「ごめんよ、セルディ」

僕は浴衣姿のセルディについ見惚れてしまった。湿り気を残す髪は普段のツインテールでは無く自然の状態にされていて、少し色っぽかった。水も滴るいい女的なやつだろう。他の女の子たちの浴衣も、つい一望してしまう。アイルさんやメグさんは今にも胸を零してしまいそうな際どい着こなし方をしていて、目のやり場に困る。フランさんも、豊かな谷間が少しのぞいていたが、神に仕えるシスターという事もあって、露出を少なくするように着こなしている。セルディとネーニャはちんまりしたその体系に実にフィットしていて可愛らしい。ニーディさんも、大人の健康的な色気を感じさせている。美少女が揃うと、華やか過ぎて素晴らしい。

「何をぼーっと突っ立ってるんだ?早く家に戻るぞ、作戦会議する前に眠くなって寝ちまうだろ」

「す、すみません……」

ニーディさんに指摘されて頭を下げて謝る。そして、ニーディさんは長い髪をなびかせて、自分の家の方へと歩を進めた。僕たちもニーディさんについて行く。


ニーディさんの家に着いて、僕たちは先程ご飯を食べた部屋で同じ配置で着席する。なんだかイーヴァディエルの時を思い出してきた。デジャヴという奴なのかな?

「さて、明日の件だが……恐らく、エシュ・アジュラスの輩が結界を張っていることだろう。まずは結界を私が上書きする。それからが本番だろう」

「どうして結界を張っているって分かるんですか?」

アイルさんはふと質問を投げかける。

「私はこう見えて結界術を得意とした魔法使いでな。エシュ・アジュラスが闇の遺跡に居座る前まで、私が結界を張っていたんだ。もともとニュー農村に住んでいながらこの国に引っ越してきたのは、結界を張る仕事をこなせるようにだしな。だが、エシュ・アジュラスの何者かに破られたみたいでな。それでエシュ・アジュラスの潜伏が把握できたんだ」

「なるほど……」

「私の結界を破れるほどの実力者がいるってことだ。心してかからないとこちらがやられるだろうな」

ニーディさんは少し悔しそうな表情を見せる。

「それに、イーヴァディエルを一撃で仕留めたローブの野郎もいるしな」

「そいつ、強いのか?」

「私やルル、そしてここにいる全員をたった1人で動きを止めて逃げた奴です」

「マジか……勇者級2人を相手に逃亡に成功するとは……」

「あのローブの人は、尋常じゃない魔力を蓄えていました。恐らく、持っていた杖が更にあの人の魔力を底上げしていたのでしょう」

「あの人と出くわしたら厄介な事になりそうですねー」

「まあ、今回は私以外にもメグがいる。人数で押すのもありかも知れないな」

「私も力になりますよ~!」

メグさんは笑顔で身体を跳ねさせる。

「エシュ・アジュラスは魔物だけじゃなく、実際の人間も敵になる。しかも魔物を使役するほどの力を持つ魔法使いもいる。さっき言ってたローブの奴然りな。相手もこっちを数で押してきたら危険だろう」

「でしたら、私やセルディさんのような斬りこみ先手を打つ戦法は厳しいですねー。ハチの巣にされたら終わりですしー」

「なら、魔法で遠距離から仕掛けてから近接格闘を始める形で攻めましょうか」

「妥当だな。それなら、私の魔法とメグの魔法で魔力を底上げできるから、アイルの初手一発のドでかい呪文攻撃で敵の数を減らそう。そこからならこの人数でも対応できるだろう」

「でも姉御。奥の方にいる奴らに同じ手が通用しますか?」

「要は援護に来た奴らをどう対処するかってことだろ?あの遺跡は一か所を除いたら広い場所は最下層まで無いんだ。狭いところでアイルの魔法頼みじゃ地下に続く闇の遺跡が崩れて私達もろともおさらばだ。普通に戦うしかないだろう」

「なるほど……どれだけ最初の一撃で敵の数を減らせるかが重要って事ですか」

「ま、そういうことだ」

部屋の中に張りつめたような緊張の渦が流れた気がした。

「それじゃ、話をまとめると、初手は私とメグの補助で底上げした魔力でアイルが魔法攻撃、その後、セルディとネーニャで敵陣に攻撃をかける。私とアルタは中距離から剣でも魔法でも対応できる位置で応戦。アイルは後衛のまま魔法攻撃、メグは前衛中衛の援護、フランは後衛で回復を。このフォーメーションのまま一気に最下層まで突破、エシュ・アジュラス総帥を討つ!」

ニーディさんは力強く言い切ると、その場に立ちあがり、机に身を乗り出す形で腕を差し出した。

「……これをやるのは久しぶりですね、姉御」

セルディはニーディさんの手の上に自分の右手を添えた。

「ほら、お前たちもだ!」

ニーディさんは僕たちに手を差し出すように催促する。どうやら簡単な円陣を組みたいようだ。僕たちはそれぞれ、メグさん、アイルさん、ネーニャ、メグさん、そして僕の順で手を添えた。

「ほら、パーティのリーダーよ。掛け声頼むぜ」

「ええっ!?」

いきなりニーディさんに振られて動揺してしまう。

「……明日は厳しい戦闘になるかもしれない……。でも、頑張ろう……!」

僕はみんなの顔を見渡しながら……力強く言葉を吐く。

「ファイトーーーッ……」

「「「「「「「おーーーーーっ!!!!」」」」」」」

僕たちの手は宙高くへかざされた。……明日はついに魔神信仰団体エシュ・アジュラスとの直接決戦……緊張しながらも、リィラの行方が分かる重要な手掛かりになるかも知らないエシュ・アジュラスとの接触に期待を寄せる。

「それじゃあ、今日は寝るとしよう。奥の部屋に布団を人数分敷いてあるから、好きなところで寝ていいぞ!……ただし、アルタは一番端のところな。男はいつ獣になるかわかったもんじゃねーからな」

「け、獣になんかなりませんよ!!」

必死に否定すると、周りから微かな笑い声が聞こえてくる。ニーディさんもげらげら笑う。……セルディが姉御と慕う気持ちがわかってきた気がする。この緊張した雰囲気を和ませられる、そういう素質があるようだから。


僕たちは浴衣のまま布団の中に入る。温泉のお湯の効能か、まだ身体はぽかぽかと暖かい。十分、気持ちよく寝れそうだ。

「……アルタ……」

僕の隣から……といっても少し遠い位置だけど……幼げの可愛らしい声が聞こえてきた。間違えるはずもない、セルディの声だ。僕はセルディの方へ身体を向ける。セルディは僕の方を向いて横になっていた。

「どうしたの?」

「……明日は頑張ろうな」

「……うん……」

「……おやすみ、アルタ」

「うん、おやすみ、セルディ……」

……僕は、セルディの声が聞こえなくなると、すぐに目を閉じる。そして、そのまま意識は眠っていった……。


「……それじゃあ、行くぞ」

太陽が頭上を照りつける。時刻は正午。僕たちの立つ桟橋の目の前には、国王が手配した豪華な船が停泊している。ぐっすりと寝た僕たちは、戦闘の為に荷物を整理し、ソディー港へとやってきた。ニーディさんは豪華な装飾のなされた鎧を着こなし、両腰に青く輝く双剣を携える。メグさんも今まで着ていたドレスにサポーターのような関節部分に取り付ける装飾品を装着していた。普段はほんわかしているメグさんも、これからは戦闘になるからだろう、威圧を感じ得る雰囲気だ。僕たちは、順に船の中に入る。全員が船に乗ったところで、ついに桟橋にかかる通路が船の中にしまわれた。出発の時だ。

「リィラ……」

僕は、探し求める大事な妹の名を不意に呟いてしまった。エシュ・アジュラス……今まで多くの人に言われてきたように、エシュ・アジュラスにリィラの行方がつかめるヒントがある可能性があるとは限らない。でも、僅かな可能性も、僕は見過ごすわけにはいかない。まして、エシュ・アジュラスを放っていたら再び戦争になる可能性だってある。そうなったら、僕みたいに大事人と離れ離れになる人も出てきてしまう。そうなる前に、僕たちが討たなくてはいけないんだ……!!

「アルタ……リィラの手掛かり……見つかるといいな」

「……そうだね……」

僕は隣に来たセルディの言葉に淡い期待を寄せて応えた。


……船が、ついに港を離れた。船は、北を向き、闇の遺跡への進路を進み始めた。戦いのときが、近づいていた……。

第19話「強襲準備」、最後まで読んでいただきありがとうございました!!

さて、今回はタイトルの通り、強襲準備ということでバザーを見たり、作戦会議をしたりと、RPGゲームで言う装備の見直しやアイテムの準備の時間のようなシナリオが展開されました。いかがでしたでしょうか?

さて、ここからは次回についてお話を。次回はついに魔神信仰団体エシュ・アジュラスとの決戦です。最初はリィラを探し求めるためにセルディと2人で旅に出たアルタ君。今では仲間を増やして、リィラの手掛かりになり得ると感じたエシュ・アジュラスの行方を追い続け、ついに決戦の地・闇の遺跡へ。作者の僕も、ここまでめげずに書けるとは……驚きを隠せません。3日坊主だなんてもう言わせません(笑)。1話を投稿した日が懐かしく思えてきます。……おっと、話が私事に逸れてきていますね。申し訳ありません。アルタ君たちの決戦にご期待下さい。

では、ここからはきちんと次回予告を。次回第20話のタイトルは「エシュ・アジュラス」です。闇の遺跡でのエシュ・アジュラスとの戦闘が始まります。乞うご期待です!

次回の投稿は11月後半を予定しております。次回の投稿をお楽しみください!では、また次回、お会いしましょう~!!

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