崩壊寸前の国、ケナフス
おはようございます、島北です。
私事ですが、最近、生活習慣が悪くなっているのか、風邪をひきました。反省しています。
そんな話はさておき、第16話「崩壊寸前の国、ケナフス」、どうぞ最後までお楽しみに読んでいただければ……!
「……なんだか街がどんよりしてるな」
「そうだね……」
僕たちはガルガンティ港街を出航してから数時間、波に揺られてケナフス国領の玄関口、ソレスタンの街に到着した。船旅の中で夜を越していたため、既に時間は朝だった。朝の眩しい光を受けている町並みは、どうにも暗く感じられた。
「なんだか、鬱な気分になりそうですねー」
「みなさん、どうしたのでしょう~?」
桟橋を渡り、ソレスタンの街に降り立つ。しかし、町の住民たちの顔は暗く俯いている人が多く、活気を感じられない。
「なあ、知ってるか?東のゴルディオンの街が賊に潰されたらしいぞ」
「魔王残党軍の魔物たちも調子づいてるし……この国も終わりなのかな……」
街の人たちの話を聞く限り、どうやら東に位置するゴルディオンの街がエシュ・アジュラスによって滅ぼされたみたいだ。
「くそっ……エシュ・アジュラスめ……」
セルディは怒りを露わにしている。せっかく取り戻した平和な世界を、再び物騒な世界に変えようとしていることが許せないのだろう。
「……おや、フラン。まさか、こんなところで会うとは」
「あっ、お兄ちゃん!?」
なんと、街の中を歩いていると、反対側からフランさんの兄、アルジェロさんがやってきた。
「お、お久しぶりです」
「久しぶりだね」
アルジェロさんはこちらを一瞥する。
「この国は気をつけた方が良いぞ。東のゴルディオンの街が謎の賊に壊滅させられたらしい。君たちが下手に負けることはないだろうが、念の為に忠告をしておこう。……ご加護のあらんことを……」
アルジェロさんは簡単に祈りを捧げて僕たちの旅の安全を祈ると、停泊している船の方へ歩いて行ってしまった。
「お兄ちゃんは、色んな国に行って、悩める人の声を聞いたりしているんですよお。上級神父になると、色々な教会に行くことになるので、大変らしいですう」
「アルジェロさん、大変なんですね」
フランさんは自分の兄に敬意を示しているようだ。全世界の教会関係者の中でも高い地位にある上級神父は、関係者の中では憧れらしい。
「……」
セルディは、後ろを振り向き、アルジェロさんを鋭い視線で見つめている。
「セルディ?どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
そう言うと、セルディは街の出入口を目指してゆっくりと歩き出した。僕たちも、セルディに歩調を合わせてついて行く。
街を出発し、僕たちは大陸の中央部に位置するケナフス城を目指して歩みを進めた。
「なんだか、あまり国民の方とすれ違いませんねー」
「それはそうでしょ。街一つが滅ぼされたってのに、ふらついて歩いている人がいる方が不思議よ」
「エシュ・アジュラスもそうだけどよ……」
セルディが口を開くと、急いで鋼の剣を取り出して構えた。
「魔王残党軍の魔物もいるって事を忘れんなよ」
僕たちの目の前に、槍を携えた獰猛そうな獣のモンスターが現れた!!
獣のモンスターは、槍を振り回し、一閃の攻撃を放ってきた!!
「全く、単調な攻撃なこった!」
セルディは素早く身をかわすと、鋼の剣で魔物の胴を斬った!!
「グルルルルルル……」
しかし、魔物は血を流しながら立ちつくす。どうやら生命力あふれる魔物のようだ。
「ったく、こういうタイプのモンスターは巨人馬鹿だけでいいっての!」
魔物が再び槍を頭上で振り回し始めた瞬間、セルディはすかさず斬撃を放つ!!
「グルルルルァ……!」
ようやく魔物はその場に倒れ、消滅した。
「全く、魔王残党軍たちも活気づきやがって」
セルディは鋼の剣に付着した魔物の血を振り払い、鞘におさめた。
「……全く……戦時中を思い出させてくれるぜ……」
虚ろな目を行く先へ向けているセルディは、ゆっくりと道を歩き始めた。
「ま、セルディさんの言うことも分かりますよー」
「そうね……魔物の魔力を、以前よりも強く感じるわ……まるで……」
「やめましょう、アイルさんー」
「……わかったわ」
アイルさんとネーニャは、小さな声で呟くように話すと、セルディについて歩き始めた。
「……私も感じますう。魔物さん達が、嫌な力をつけているようなあ……どうしてでしょう~……」
フランさんも、先程消滅した魔物がいた場所を見つめて語る。
「今までの強力な魔物たちが語っていたように、何者かの復活が近付いているということなのでしょうかあ……」
「考えているのは時間の無駄かもしれません……今は進みましょう」
「はい~……」
フランさんも感じ得ているのだろう。魔物たちが活気づいている背景に何があるのか……。
僕とフランさんも、心の中の靄を溜めたまま、ゆっくりと先行く3人たちについて行った。
「ふう、やっと着いたな」
城門の前にいる門番兵の人たちに許可を得て城下町に入ると、他の国の城下町のような活気づいた雰囲気は無く、出歩く人はほとんどおらず、稀に見かける人は暗い表情を浮かべている。
「なんだかさみしいわね……」
「そうですねえ……」
「ま、街が一つ滅ぼされた後なんですから、分からなくもないですがねー」
「とりあえず、この国の国王様に話を聞きに行こう」
「ああ、そうだな」
僕たちは、閑散とした城下町を抜け、ケナフス城に辿り着く。どうやら昼間の間は自由に城内に入ることが出来るようだったので、開放されている城門をくぐる。城内には暗い顔をした兵士が数人歩いているだけだった。
「城内もこんな雰囲気なのか……」
城内に入って第一声、セルディがぽつりとつぶやいた。
「どうやら、謁見の間はこの先の廊下の突き当たりのようだな」
看板を見ると、2階から上は王家関係者と兵士以外は進入禁止らしい。僕たちは、看板に従って、広い道幅の廊下を進むことにした。長い廊下を歩いて行くと、ようやく謁見の間が見えてきた。謁見の間は開放されていたので、僕たちは衛兵に一度一瞥されたが、そのまま謁見の間の中に入った。
「……!……おお、そなたは……」
「お久しぶりです、国王陛下」
「勇者級セルディ……まさか国の崩壊をまじかに控えたこのタイミングで来るとは……不幸な事よ」
国王は、どんよりとしたあまりに国王らしからぬ顔を向けていた。
「一体、この国に何があったのですか、国王陛下?」
「……」
国王は渋るように口を開かない。
「エシュ・アジュラスですか?」
「そ、そなたら!!どこでその言葉を!?」
酷く驚いた様子で立ち上がった国王は、渋々立ちつくしたまま言葉を続けた。
「……勇者級セルディの言う通りだ……この城から東に位置する街、ゴルディオンがエシュ・アジュラスによって破壊されてしまった……。ゴルディオンの街に住んでいた勇者級ジェニシスもエシュ・アジュラスに討たれ死んでしまった……」
「そんな!ジェニシスが死んだのですか!?」
「ああ……この国の兵士でもある勇者級ジェニシスの死で次々と兵士が辞めていってしまってな……。しかも、最悪な事に、壊滅したゴルディオンの街に魔王残党軍が居座り始めてしまったのだ。もし、魔王残党軍に城を攻められたらこの兵力では抵抗できるかもわからん……もうこの国は終わりなのだ……」
「……そうでしたか……まさか、あのジェニシスが死んでしまうとは……ですが……!」
「……悪いことは言わない……早急にこの国を立ち去るが良い……それが、そなたらの為でもあろう」
「……わかりました……失礼いたします」
セルディはサッと立ち上がると、僕たちも慌てて一斉に立ち上がる。国王に一礼して、僕たちは謁見の間をあとにした。
「ちょっとセルディ!あの国王陛下の言う事を信じるの!?」
「もうあの国王陛下はダメだ。何も希望を受け入れないだろう」
「だけど……」
「どちらにせよ、あのまま話していたって無駄だったでしょうね」
アイルさんも、国王の様子に失望しているようだ。
「ま、それでも、私達の進路に変更はないですよね、アルタさんー?」
「えっ……?」
「えっ……じゃないですよー。なんで、私達はエシュ・アジュラスなんてわけわかめな組織を追って、ここまで来たのですかー?」
「……リィラの手掛かりを見つけるため……リィラを探し出すため!!」
「でしょうー?だったら、自ずと行くべき場所が分かるんじゃないですかー?」
「ああ……僕たちの次の目的地は、東にあるゴルディオン街だね!」
「全く……アルタさんは真面目ですねー。あの弱虫国王の言う通りにしなくてもいいのにー……」
「よし……それじゃ、そうと決まれば、早速出発しようか」
「そうと決まればって、はじめから決まったようなものだけどね」
僕たちは、ゴルディオンの街に向かうべく、ケナフス城を出発し、城下町から出た。
「この国は親切じゃないですねー。まるでホレンツィエ国のガレス地方を思い出しますよー」
僕たちは、城下町を出ると、整えられていない道なのか道じゃないのか分からないようなところを歩いていた。
「ソレスタンの街からケナフス城に行くのも手こずったって言うのに、もし道に迷って日が暮れたらどうしてくれるのよ!」
「まあ、この国はそもそも観光名所がある国ってわけじゃないな」
「そうなの?」
「おう、ホレンツィエみたいに農業が盛んなわけでもない、ガルガンティみたいに工業が発展してるわけでもない、小さな国なんだから」
「……なんだか凄いいいようだね」
「あんな情けない国王を見てたらこの国の良いところを言う気になれん」
「そ、そう……」
やはりというべきか、セルディは先程の国王の態度に不満爆発だった。もともと、なよなよしている男が嫌いだったし、無理もないよね。……僕も嫌われてたりしないだろうか?なんだか心配になってきた。
「……魔物の気が濃くなって来たわね……」
「ま、なんとかなりますでしょー」
「ネーニャ、調子乗ってると、痛い目見るわよ」
「うー……そういうもんですかねー?」
「……ほら、来るわよ……!」
アイルさんとネーニャが話していると、前方から筋肉隆々の魔物が2匹現れた!!
「煉公の轟炎≪スレイサ・ファイヤ≫!!」
アイルさんは、先手を打って攻撃を開始した!!
「キシャアアアアアアッッ!!」
マッスルな魔物は、炎に包まれて消滅した!!残るはあと一匹だ。
「それじゃ、私の番ですねー!」
ネーニャは、サラマンダーに炎をともしてマッスルな魔物に攻撃を仕掛けた!!
「キシャウ!シャウウッッ!!」
すると、マッスルな魔物は短い雄叫びをあげる!!その瞬間、魔物の足元周りに魔法陣が浮かび上がり、消滅した!!
「シャアアアッ!!」
なんと、マッスルな魔物は、今まで以上に素早い足取りでネーニャに向かって走り抜け、ネーニャの攻撃を自らの爪で防いだ!!
「マジですかー!?」
「あれは、ネーニャの疾風瞬郷≪ウィンディネッド≫と同じ、素早さを上げる呪文だわ!!」
「しかも、私と違って範囲が設けられてるとはー……なかなかですねー……ですが……!!」
ネーニャも負けじと、サラマンダーを再び構え直して、呪文を唱えた!
「疾風瞬郷≪ウィンディネッド≫!!」
ネーニャの身体に魔法陣が抜ける!!その瞬間、ネーニャは目で追うのが難しくなるほど素早くなり、マッスルな魔物に一気に詰めよった!!
「たああああああああああっ!!」
炎に包まれたサラマンダーをマッスルな魔物に刺突する!
「キシャアアアアアアアアッッ!!」
魔物は、弱点に攻撃を喰らった様子で、ばたりと倒れ、消滅した!!
「ふー、危なかったですねー」
こちらに戻ってきたネーニャは、なんだか阿呆な顔をして額の汗を拭っていた。
「だから言ったでしょ。気をつけなさいね」
「わかりましたー」
……こう見てると、まるでアイルさんがネーニャの姉のようだ。というよりも、一番精神的に成熟してるのはアイルさんだと思うし、妥当なポジションなのかな?
「それじゃ、進もうか」
僕は、パーティのみんなに催促して、再び道なのか道じゃないのかよくわからない草むらのわけ道を歩き始めた。
先程のマッスルな魔物との戦闘から数時間。マッスルな魔物との戦闘以降にも幾重にわたる戦闘を経て、ようやく街が見えてきた。
「……実に廃墟って感じですねー……」
ネーニャは自分の目の上に手を当てて緊張感ない声で言う。
「あそこに魔王残党軍が駐留してるって話だ。油断しないようにしろよ、ネーニャ」
「わかってますよ、セルディさんー」
僕たちは、緊張感に包まれた空気でゴルディオンの街へ向かう。うまい具合に魔物と遭遇することなく街に向かう事が出来た僕たちは、思ったより早くゴルディオンの街に辿り着くことが出来た。
「こりゃ酷いな……」
街に入ると、焼け落ちた建物や腐りかけた人の死骸が、あちらこちらに転がっていた。
「それはそうと、なんかおかしくないか?」
「何が?」
セルディが、不意に質問を投げかけたので、僕は生返事を返してしまう。
「どうして魔王残党軍の魔物がいねーんだ?」
「言われてみれば確かに……」
そういえば、国王も言っていた。この街に魔王残党軍が居座り始めた、と。なのに、見渡す限り街の中には瓦礫や人の死骸しか目に映らないではないか。
「……あの奥の家の廃墟……ジェニシスの家か……?」
セルディは、不安定な足場を足早に歩き、奥に見える大きな家の廃墟に向かって移動し始めた。
「ちょっ、一人で歩いてたら危ないよ……!」
僕たちは、急いでセルディのあとをつけ、合流した。僕たちは、大きな家の廃墟に辿り着く。綺麗な装飾が施された豪邸のようだったが、見る影もない。2階へ続く階段は確認できるが、そもそも2階以上の部屋が既に存在していなかった。
「……!そういえば、あれはどこだ!?」
セルディは慌てて廃墟の中に進入し、瓦礫をどかしながら何かを探し始めた!!
「どうしたのセルディ!?何を探してるの!?」
「ここがジェニシスの家なら、あるはずだろう!魔法勇者武装が!!」
「確かにそうだけど……魔法勇者武装が無くなってたら何かまずいの?」
「当たり前だ!魔法勇者武装には常人には扱えないほどの魔力が込められているんだ!変に悪用されたらたまったもんじゃない!!」
「……まさか、この街を襲撃したのは……」
「……私も確信は持てないが……ジェニシスの持つ魔法勇者武装が目的だったのかもしれないな」
「でも、なんでそのジェニシスさんって人の武器じゃないといけないの?それこそ、ルルさんが持ってたあの杖だって、あの時の状況なら奪えたのに」
「……ジェニシスが受け取った魔法勇者武装……あれに意味があるんだろう」
「ちなみに、ジェニシスさんが受け取った武器って……?」
「……魔法勇者槍ロンギヌスだ」
「ロンギヌスですかあ!?」
フランさんが、珍しく驚きの声をあげた。
「ロンギヌスといえば、かつての神を刺した兵士の名前ですう……本当に死んだか確かめるためにロンギヌスは、自らが持つ槍で神を刺し、その後、神は復活したことから、復活を司る槍として語り継がれたという伝説の武器ですう」
「復活を司る槍……まさか!?」
「そういうこった。ロンギヌスを、エシュ・アジュラスが何かの復活に利用する気なんだろう」
「ってことは、またエシュ・アジュラスに出し抜かれたってことですねー」
「……!!誰だ!?」
セルディは、咄嗟に立ち上がり、鋼の剣を構えた!!すると、物陰から、漆黒の鎧に包まれた巨大な魔物が姿を現した!!
「私からしたら、君こそ何者だ、と聞きたいのだがな」
鎧をまとった魔物は、手を頭上に掲げると、召喚された紫のオーラに包まれた剣を握った。
「……それに、そこの少年……君もだ……君は……まさか……!?」
「あの鎧野郎、さっきから何を言ってるんですかねー?」
ネーニャは嘲るように言うと、サラマンダーを構え、臨戦態勢を取った。
「……なるほど……確かにあの者がいう通りだ……この者たちは……!」
「あの者……!?もしかしてお前は!?」
「勘違いしないでほしい……私はこの街を滅ぼした者たちの一員ではない。だが、訳あってあの者たちの協力をしているだけだ」
「協力をしてるだけって言われてもですねー……」
「私達からしたら、完全に敵じゃない……」
「でも待って……あの魔物からは、何か特別な力を感じる……いったい何で……?」
僕は、あの鎧の魔物から感じる何か不思議な力を感じていた。ただの魔物では無いのは風貌から分かるが、だけど、真に悪い魔物とも思えない……。この感覚は一体……?
「……君は感じるか……私の力を……やはりそうか……」
「さっきからお前は何を言ってるんだ!?」
「……小柄な少女よ……君もだ……君は……!!」
「……!!来るぞ、気をつけろ!!」
謎の鎧の魔物は、人の叫びか、獣のおたけびか、どちらとも言えない大声を上げた!!鎧の魔物は、召喚した剣を携え、左腕に構えた巨大な盾をこちらに突き出し、突進してきた……!!
第16話「崩壊寸前の国、ケナフス」、最後まで読んでいただきありがとうございました!!
今回は珍しく(というか初めて?)、戦いが始まる寸前で終了となりました。さて、今回の話は世界観に関わる重要なファクターがいくつか眠っています。ここでそれを語ってしまっては無粋というものです。私はそれを語りません。ただ、ロンギヌスの槍について語るフランちゃんのセリフに「かつての神」という言葉がありますね。この言葉が、非常に重要なキーセンテンスです。この言葉が何を意味するか。皆様の想像をお任せしたいと思います。
また、最後に出てきた鎧の魔物……この魔物は何者なのでしょう?……これも、これからの展開を楽しみにしていただければと思います。
では、ここからは次回予告を。次回、第17話のタイトルは「謎の魔物、シェード」です。サブタイトルで名前がネタバレされてしまうというある意味(!?)不運な展開に、作者の私自身もびっくりしています(笑)。
次回の投稿は、10月中旬の予定です!是非、次話の投稿を楽しみにしていただければ嬉しいです!!それではまた、次回にお会いしましょう~!!




