表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

アトランデュス

こんにちはorこんばんは。島北です。

信じられないくらいどんどんと閃く執筆欲が僕の指を支配し、まさかの3日書き上げです。シルバーウィークで時間が普段よりあるとはいえ、本当に僕もびっくりしています。さて、そんな自分のことはさておき、第12話「アトランデュス」、どうぞ、最後まで楽しんでお読みいただければ……!

「……ここがガレスの洞窟……」

ガレスの村を出発し、村の東南に位置する洞窟に向け歩き始めた僕たちは、魔物たちとの戦闘を交えつつ、1時間ほどで洞窟の入り口に到着した。

「……酷い惨状だな、こりゃあ……」

洞窟の入り口には、大量の鮮血が付着しており、見るに堪えない雰囲気だ。不意に右を見ると、フランさんは、手を握り合わせ、眼を瞑って祈りをささげている。

「……魔物に喰われてしまった多くの人の無念を晴らすためにも……私達はアトランデュスを倒さなくてはならない……覚悟は良いかい、アルタ君?」

「……はい……大丈夫です……」

僕は、恐怖の念を胸の内にしまい、岩壁をくり抜いたような洞窟へと入った……。


洞窟の中にはところどころに炎の魔鉱石が設置されていて、そこそこ明るかった。まるで人工的に作られているかのような洞窟だ。

「アトランデュスは見た目こそ腐敗した獣のような姿をしていると聞くが、賢い魔物であるとも聞いている……恐らく、殺した商人が持っていた魔鉱石を有効活用しているのだろうね」

洞窟を進んでいくと、人工的に掘られたような大きな広間のようなところが見えてきた。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

すると、広間の方から、人間の男性の悲鳴が聞こえてきた!!僕たちは急いで広間に向かって走る!!

「ギキャキャキャキャ!!」

ボリボリ……バリバリバリッ!!!!

……僕たちの目の前に、信じられない光景が広がっていた。

「ううっ……!!」

僕はその光景に吐気が込み上げる。なんと、たくさんの人間の『パーツ』が、数体の魔物の周りにばらまかれていた。そして、池のように溜められた大量の血が、広間に臭いを充満させていた。……魔物によって、たくさんの人間が食べられていたのだ。

「あなたたち!!助けて!!助けて!!」

魔物に腕を掴まれた細身の女性が、恐怖で青くした顔をこちらに向け、助けを請う。

普段の澄まし顔を怒りの形相に変えたレニングさんは、すぐさま背に携えたグングニルを取り出し、魔物に向けて投擲する!!

「グキャキャーーーーーーッ!!」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっ!!!!!!」

なんと、グングニルが投擲されたその時、女性の腕を掴んでいた魔物が、女性の脇腹を食し始めた!!甲高い悲鳴が広間に鳴り響く。……そして、残響が響き渡った後……女性の下半身が地面に落ちた。

「グキャーーーーーーーーーーーッ!?!?」

女性を食し終えた魔物は、こちらに気づいていなかったのか、突然の槍撃に驚きの喚きを残し、その身をグングニルに突かれて消滅した。グングニルは、魔物の血では無いだろう、赤い血をこびり付けて、レニングさんの手元に戻ってきた。レニングさんは、顔を曇らせながら槍を振り、血を撥ねる。

「……こんな残虐な……」

レニングさんは一言、ぽつりとつぶやく。この光景に、アイルさん、ネーニャ、フランさんは目を背け、身をすくませていた。

「……戦時中を思い出させるな、こういうのは」

セルディは、極めて真面目な視線を血の池に向けてレニングさんに語る。

「……私達も……このような光景に慣れてしまっている現状に目を背けたいよ」

レニングさんは槍の持ち手をカツンと地面に叩いて応える。

「キシャーーーーーッ!!」

2人が話を進めていると、その場に居合わせていた魔王残党軍の魔物たちが広間の奥にいた魔物を呼び集め、一斉に僕たちに襲いかかって来た!!

「くっ……これだけの魔物と戦う上でグングニルの力に頼り切ってしまったら流石に魔力を消費しすぎてしまうか……!」

レニングさんはいつもジャベリンのように使っている槍を両手に構え、僕たちを奮起した!

「これだけの魔物だ!気を引き締めて!!」

パーティ全員が、一斉に武器を構える!!

「はああああああああああああああああっ!!」

レニングさんが先陣を切って迎撃に入ると、続いてセルディも短剣を構え、迎撃を開始した!!

「気分が晴れませんが……疾風瞬郷≪ウィンディネッド≫!!」

ネーニャは、自身に疾風瞬郷≪ウィンディネッド≫を唱えると、サラマンダーに炎を灯し、敵陣に突っ込んだ!!

「煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

アイルさんは杖を前方に突き出すと、炎の球が形成され、魔物に向かって放たれる!!

「グギャアッ!?」

炎に包まれた魔物たちは、塵を残すことなく消滅していく!

僕も、鉄の剣を右手に携え、魔物に向けて攻撃を開始する!!

「だあああああああああああああああああああああっ!!」

「ギシャアアアアアッ!?」

先陣を切ったレニングさんとセルディが多くの魔物を蹴散らしているおかげで、魔物の量は減ってはいるが、それでも普段、5人で倒す魔物の量を1人で倒すとなると、かなり体力が疲弊する。

「雷光波≪ライジング・エッジ≫!!」

剣を地面に刺し、手を前方に構えて雷を発射する!!魔物たちは、雷の矢に撃たれ、次々と消滅していく!!


……数分が過ぎた。ようやく魔物の群れを退けたが、至る所に人間の『パーツ』が散乱していて、非常に不気味な空間と化していた。

フランさんは、僕たちの受けた傷を癒すべく、天使の歌≪エンジェル・ボイス≫を歌いながら、涙を流していた。フランさんは、洞窟の入り口で行っていたのと同様、手を握り合わせ祈るように歌う。そして、僕たちの傷が癒えたその時、天使の歌≪エンジェル・ボイス≫とはまた違う、綺麗な歌を歌い始めた。この曲は僕も教会で聞いたことがある。……そう、この歌はレクイエムだ。フランさんは、涙を流しながらそのきれいな歌声を響かせる。

レクイエムを歌い終えたフランさんは、涙を拭い、呟くように言葉を発した。

「……これで、ここで魔物さん達に食べられてしまった多くの人たちの魂は、天の世界に送られたでしょう……」

フランさんは、見えるはずもない天を見上げるように上を向く。そして再び、目を閉じて、手を握り合わせて祈りを捧げた。

「時間を取ってしまって申し訳ありませんでしたあ」

「いいや、大丈夫ですよ」

僕は鉄の剣を鞘に仕舞う。

「さて、奥に進みましょう」

僕は、全員に号令をかける。残虐極まりない魔物たちの長、アトランデュスへの怒りを胸に、僕たちは広間の奥の道を進み始めた。


広間から一本道を進んでいくと、木片で作られた扉が僕たちの行く手を遮った。

「この先にアトランデュスが……」

「……よし、行くぞ……!」

セルディが短剣を構え、軟弱なドアを蹴り飛ばした!!すると、そこには豪華な堅牢そうな椅子に座る魔物が鎮座していた!!

「……どうやら、お前たちが洞窟を騒がせている人間どものようだな……」

そう言うと、腐敗したような身体を椅子から起き上らせて、左手に杖を構えて立ちあがった。

「俺の名はアトランデュス。この地域の魔王残党軍を統べている。お前たちは何用でここに来た?」

「やはりお前がアトランデュスか!!お前を倒し、ガレスの村を奪還してみせよう!!」

レニングさんは素早くグングニルを右手に携え投擲する!!

「うぐっ!!」

グングニルは、見事アトランデュスの身体に突き刺さり、レニングさんの手元に戻ってきた。しかし、突き抜かれたアトランデュスの身体の穴は、みるみる塞がっていく!!

「なんだとっ!?」

「甘いな……お前たちが俺のところに襲いかかって来た時の為に、既に手は仕組んでいたさ」

「アトランデュスにかけられている魔法……あれは回復魔法だわ!」

「なるほどー……さしずめ、勝手に傷が癒えていくタイプの回復魔法ってところですかー」

「……仕方ねー……こうなったら一気に仕留める必要があるな……!」

「だったら、私とセルディさんでアトランデュスの動きを止めましょう!そしたら、アイルさんとアルタさんは魔法で、気色悪い澄まし顔はグングニルで攻撃してください!」

「私は、後方支援に回りますう!」

「よし、ネーニャの作戦で行こう!!」

「それじゃあ早速……疾風瞬郷≪ウィンディネッド≫!!」

ネーニャは再び、自身に魔法陣を通過させると、疾風の如く攻撃を開始した!!それに合わせるように、セルディも短剣を構えて攻撃を開始する!!

「ぶふぁぁぁぁあっ!!」

すると、アトランデュスは、火炎の息を吐き出した!!

咄嗟にセルディとネーニャはアトランデュスから距離を取る!しかしその瞬間、身体に不釣り合いな大きな右手をセルディの脚に運び、巨大な爪で薙ぎ払った!!

「うぐっ!!」

セルディの脚はアトランデュスの爪で引っ掻かれ、多量の血を流していた!!

「セルディさん!!」

セルディは足を引きずるように後退し、フランさんの傍に戻る。

「癒しの光、加護を与えん……治療の光≪ヒリング・シャイン≫!!」

フランさんの手に宿る癒しの光が、セルディの傷を癒す!!

「さて、不覚を取っちまったが……次こそは!……そうだ……」

するとセルディは、何故か僕のもとにやってきて、手を差し出してきた。

「剣を貸してくれ!」

「……わかった……!」

僕は背中に携えていた剣をセルディに与えた。そして、セルディは剣を片手に、再びネーニャと交戦状態にあるアトランデュスのもとへ走る!!

「何度来ようと同じことだ!」

アトランデュスは携えた杖を地面にたたきつける!

「キシャーッ!!」

なんと地面から、アトランデュスの配下の骨のような魔物が2体現れた!!

「俺の回復量を超える攻撃を同時に与えるタイミングを模索しているみたいだが……俺以外の魔物とも戦いながら、決定打を与えることが出来るかな?」

配下の魔物たちは、飢えているかのように後方にいる僕たちに襲いかかって来た!!

「はああっ!」

武器を持っていなかった僕に襲いかかって来た魔物を、近くにいたレニングさんがグングニルで一閃し、撃破した!!

「麗錣の氷凍≪メイジス・アイス≫!!」

もう1体の魔物は、アイルさんの麗錣の氷凍≪メイジス・アイス≫によって氷漬けにされ、粉々に砕かれた!!

「なるほど……私の精鋭の配下たちがここまでいとも容易く倒されてしまうとは……流石はここまでたどり着いただけの事はあるか」

「もう小細工は通用しませんよ!サラマンダー!!」

ネーニャはサラマンダーに魔力を込めると、炎の一閃が放たれた!!

しかし、寸断されたアトランデュスの身体は、すぐさま元通りに回復してしまった!!

「何度やっても同じことだ……」

アトランデュスは、身体を反らし、深く息を吸い込んだ!

「少しからかってやるとしよう」

そういうと、アトランデュスは、怪しい息を吐き出した!!炎の色とも違う赤い息の波が、近接していたセルディとネーニャに襲いかかる!!

「な、なんだこりゃあ!?」

「身体が……動かないですよ……!?」

なんと、2人の身体が止まってしまった!!

「身体が痺れて動けねえ……!!」

「不用意に近づくからこうなるのだ」

アトランデュスはニヤリと笑うと、巨大な右手に炎をともし、セルディの目の前に立つ。

「させません!……絶ち払う絶対の壁、我が前に現れん!浄魔波≪シャウィンド≫!!」

フランさんが呪文を唱えると、靄のような壁が、セルディの目の前に現れた!!

アトランデュスが炎を灯らせた爪でセルディに攻撃を行うも、靄の壁に阻まれ、セルディに攻撃が通らない!!

「なっ!?」

アトランデュスは不意に身体を後ろに反らせてしまう!!

「身に降りしきる厄を払え!抗異≪キルルク≫!!」

その一瞬の隙をついて、フランさんは再び違う呪文を唱えた!!すると、手から放たれた魔力の結晶が、セルディの体に付着する!!

「おおっ!?痺れが消えたぞ!!」

セルディは地面に落してしまっていた鉄の剣を再び構え直し、アトランデュスへの攻撃を再開した!!

そして、ネーニャの痺れも治り、ネーニャもサラマンダーを手に構え、攻撃を再開した!!

「どうやら小細工は本当に通じないようだな……だったら、俺も本気でやらせてもらおう……」

アトランデュスは、杖を左手でくるくる振り回す!

「迅風衝≪ウィル・プスク≫!」

杖から放たれた風の刃が、僕たちに襲いかかる!!

近接していたセルディとネーニャは辛うじて回避に成功したが、風の刃は勢い衰えることなく後方の僕たちに向かって飛んでくる!!

なんと、レニングさんは風の刃の行く手を遮るように僕たちの前に立ち、槍を自身の目の前に構えて防御の姿勢を取った!!レニングさんの豪華な衣装は酷く傷つき、鮮血が垂れている……!!

「……このままじゃ埒が明かないか……!」

突然レニングさんが呟くと、集中させていた魔力を一気にグングニルに込めて放ち、アトランデュスの頭上から一閃を与える!!!

「無駄だというのが分からないか!!」

しかし、アトランデュスはニヤニヤ笑っている!!

「……なっ……しまった!?身体が……動かないだと……!?」

なんと、地面に深く突き刺さっているグングニルが、釘のようにアトランデュスと地面を繋ぎ合せていた!!

「最初から動きを止められてさえいれば良かったが、グングニルを長時間手元に戻さないで制御するのは莫大な魔力を消費するからね……これが奥の手ってやつさ……!」

「そ、そんな馬鹿な……俺が……人間ごときに……!?」

「さあみんな!一斉に攻撃を仕掛けるんだ!!アトランデュスの息の根を止める!!」

「煉獄の炎よ、あまたの生血を燃やしつくせ!煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫!!」

詠唱文言を唱えて放たれた煉公の轟炎≪スレイサ・ファイア≫は、大きな火の球となりアトランデュスに放たれた!

「だああああああああああああっ!!」

セルディは、僕の鉄の剣を思いっきり振りかぶり、アトランデュスの腹部を思いっきり叩き斬った!!

「サラマンダー!!」

セルディがその場から離れると、サラマンダーに激しい炎を込めて、ネーニャはアトランデュスに激しい連撃を浴びせる!

「さあ、仕上げはアルタさんですよ!!思いっきりぶっ放してくださいよー!!」

ネーニャは瞬時にその場を離れた!!僕は、ありったけの魔力を注いで、自らの腕を前に突き出す!!

「穿つ雷光よ、走れ!!雷光波≪ライジング・エッジ≫ィィィィィィィィッ!!」

僕は強力な雷の波動を、アトランデュスに向けて放った!!雷の波動は激しい音を立ててアトランデュスの身体を通過した!!

「ガアアアアアアアアアアァァァァァッッッ!?」

アトランデュスは、最早原型をとどめていない継ぎ接ぎのような身体で倒れ、幽かに笑いながら呟いた。

「復活の時は、近い……!……お前たちは……所詮……ガハッ……!!」

ついにアトランデュスは、硬直し、弾けるように消滅した!!

「……ふう……久しぶりに強敵と戦った感じがするよ……ぐッ……!」

レニングさんは澄まし顔を見せてはいるものの、先程食らったダメージが大きいみたいで、悲痛な顔を見せている。

「大丈夫ですかあ!」

フランさんは所謂女の子走りでゆっくりと走ってレニングさんの傍に向かう。

「治癒の光≪ヒリング・シャイン≫!」

フランさんは自分の手に魔力を込めると、手に籠る癒しの光がレニングさんの傷をみるみる塞いでいった。

「ここまで回復魔法を巧みに使えるとは……流石はシスターだね」

「褒めていただいて嬉しいですう」

フランさんはニコッと笑顔を見せる。

「……もうここにいても用は無いし、早いところ洞窟から出ないか?」

「うん、そうだね」

セルディは急かすように僕に言うので、確かにここにいても特に何もないので、パーティのみんなを連れて、洞窟から出ることにした。


「おおっ!レニング様!!」

ガレスの村の住民たちは、僕たちを見つけると、一斉にこちらに駆け寄ってきた。

「レニング様たちが出発してから魔物の数が激減したのですが、もしや……」

「ああ……アトランデュスは、我々が討ち取った!!」

レニングさんが爽やかかつ勇ましい声を上げると、村民たちは一斉に歓喜の声を上げた。

「やっと!やっと僕たちの戦いは終わったんだ!!」

「……この日を信じてきてよかった……」

「心の靄が晴れた気がするわい……」

村民たちが一斉に安堵の声を漏らすと、向こう側から、昨日宿泊した宿屋の少女が笑顔を向けて僕たちのところにやってきた。

「……やあソレン……約束、守ったよ」

「……はい……約束……守ってくれましたね……!」

レニングさんが優しく声をかけると、少女は涙を流し始めた。

「……さて、アトランデュスの撃破について国王陛下に報告しないと……アルタ君達も、同行してね」

「はい、わかりました」

「ではみなさん、私達はこれで失礼いたします」

レニングさんはすました笑顔を見せると、服を風に靡かせ村の入り口を後にする。僕たちも村民の人たちに一礼して、レニングさんのあとについて行った。


「……まさか、本当に僅かな人数でアトランデュスを撃破してしまうとは……」

ホレンツィエ城の謁見の間に到着し、アトランデュス撃破の報告を入れると、国王はひどく驚いた表情を見せた。だが、流石、国を治める者だけあって、すぐに動揺していた顔を平常させた。

「さて、『エシュ・アジュラス』とは一体何なのか……教えてもらいましょうかねー……」

ネーニャの言葉に、言葉を詰まらせたが、恐る恐るといった口取りで語り始めた。

「『エシュ・アジュラス』とは……ある組織の名前だ……」

「……組織ですか?」

レニングさんも『エシュ・アジュラス』という言葉を知らなかったのだろう。国王に問い返す。

「ああ……正式な名前は魔神信仰団体エシュ・アジュラス……魔王襲来戦争が終戦してから発足された魔神を信仰する組織だ」

「……何故、この組織は秘密にされているのでしょう?」

アイルさんは疑問を投げかける。

「この組織は非常に危険でな……どうやら魔物を使役する力も持っているらしい……。だから、むやみやたらに世界に公開してはその力を利用しようとする輩や、組織に加担してしまう輩が増えてしまうだろうと懸念する点が多くてな……今は世界のトップをはじめとした一部の人しかこの組織は知らないのだ」

「……そういうことでしたか……」

「あの……」

僕は自然と言葉を出した。

「なんだ?」

「そのエシュ・アジュラスの人間の目撃情報とかってないんですか?」

「……この大陸の南東にあるガルガンティ国で怪しい人物が何度か目撃されているらしい。最近の情報だから、もしかしたら接触できるかもしれんな」

「……よし、ガルガンティ国に行こう」

僕は、何かエシュ・アジュラスという組織にリィラのヒントがあるんじゃないか、と不意に思った。怪しいと思えるところは虱潰しにしたい。僕はそう思った。

「……ま、この話が始まった時点でこうなるんじゃねーかって思ってたさ」

「私はこの旅に、最後までついて行くわよ」

「アルタさんがそう言うなら、私は構いませんよー」

「賛成ですう」

パーティのみんなは僕の提案に肯定する。

「……さて、私が語れるエシュ・アジュラスについてはこれで終わりだ……アトランデュスの撃破、誠に感謝する」

国王がお礼の言葉を述べると、レニングさんは素早く立ち上がり、国王に背を向け、謁見の間の扉に向けて歩く。僕たちもそれに続いて謁見の間を後にする。

「……サバーニャの娘よ……」

国王がネーニャを止める。ネーニャは非常に気に入らない顔を国王に向ける。

「なんですかー?」

「……ガレスの村に住む村民たちを保護する方向で事を運ばせていくつもりだ……これでリディーの不幸の罪を払拭できるとは思わないが……私も、考えを少し改めるようにしたよ」

「……そうですかー」

ネーニャは、さっと顔を扉の方向へ戻し、早歩きで謁見の間を去って行ってしまう。僕たちももう一度国王に一礼し、急いでネーニャのあとを追った。

「……団長……」

ネーニャは涙を流しながら呟く。

「……どうやら、この国の未来に関しては、そこまで心配しなくてよさそうですよー……」

涙を手の甲で拭うと、ニカッと笑顔になって、僕たちに顔を向けた。

「さて、ガルガンティ国に向かいましょうかー」

「……うん、そうだね」

「ガルガンティ国に向かうならば、今からアヴェ港に行けばギリギリ間に合うね」

突然、反対側からやってきたレニングさんに、僕は少しびっくりしてしまった。

「アヴェ港からガルガンティ国への定期船が出ているからね。これを逃すと、次は3日後になるから、早くした方が良いよ」

「ええっ!?……じゃ、じゃあみんな、急いでアヴェ港に向かおう!!」

僕は急いで一本道を駆け抜け、ホレンツィエ城をあとにした。後ろからついて来るパーティのみんなと共に、一気に街道を走り抜け、アヴェ港に辿り着いた。


港には、ガルガンティ国行きの船が停泊していた。どうやらチケットでは無く、船の桟橋の前で運賃を徴収するみたいだ。

僕たちは、慌てて桟橋に駆け込み、急いで船員に5人分の運賃の5000Gを支払う。そして、すぐさま船の中に乗り込んだ。

「ガルガンティにまた行く日が来るとはなあ……」

2階の観光デッキの柵によりかかるセルディが、不意に一人言を漏らした。

「行ったことあるの?」

「ああ、魔王襲来戦争の時に一度だけな。凄い都会の国って感じで凄いぞ」

「へえ、そうなんだ」

セルディとたわいのない話を続けていると、ガクンと船が揺れ、ついにガルガンティ国に向けて出航した。

「……リィラの情報、見つかるかな」

「わかんない。でも、リィラの為なら、僕はどこにだって行くつもりだよ」

「そうか……」

「あ、セルディさん、アルター!!」

階段の方から、アイルさんが大きな声を出して僕たちを呼んだ。

「もうそろそろディナータイムらしいです!食堂に行きましょう!!」

「そんな時間か……そんじゃ行くか」

セルディはくるりとターンして、階段に向かってゆっくり歩き始めた。僕も、それに合わせてゆっくりと船の上を歩き始める。僕は、次なる国、ガルガンティ国への期待を胸に、食堂に向け、階段をゆっくりと下った。

第12話「アトランデュス」、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!!

今回はサブタイトルの通りに魔王残党軍の魔物アトランデュスとの決闘が主な話でしたね。そして人間が食べられてしまうシーン……執筆していた僕自身、非常に気分が悪くなってしまいましたが、執筆欲が普段苦手としているグロ描写を次々と書き上げてしまってました。……実に恐ろしい……。そして、ここからはアトランデュスについていろいろと語っていこうと思います。実は、初期設定では、アトランデュスはただの人狼型のモンスター(しかも爪の攻撃と炎のブレスしか吐かないという設定)でしたが、それではあまりに一番最初のボスのラフィーにそっくりになってしまうと感じたので、「腐敗した獣のような姿」、「杖を持つ」、「呪文を唱える」などという大胆なフォルムチェンジが行われています。さらに仲間を呼ぶ行動をとるのも初期設定にはありませんでした。ちなみに呼ばれた魔物2体はがいこつ兵という名前の魔物です。……といいますか、この外見や行動パターンを見て、もしかしたら一部の方は察したかもしれませんが、(物語に登場した)アトランデュスはドラゴンクエストⅧに登場したボスの嘆きの亡霊が一部モデルになっています。物語が展開していくうちに、いつのまにか行動パターンが嘆きの亡霊に類似してきてました(汗)。一応、火炎の息を吐いてはいますが、これは初期設定のアトランデュスの名残です。麻痺を引き起こす息は、小説を書いていたらいつの間にか吐いていました(笑)。ということで、今まで登場しているキャラや魔物の中で、一番設定が変わってるのはコイツかも知れません。前にも書いたかもしれませんが、やはり執筆していくうちに勝手にキャラクターが動いて設定が盛り込まれていくのは作者の僕としても面白いと感じるところでもあります。

そして、戦闘シーンなのですが、自分で見返していて思ったのは「フランがあまりにも戦闘に参加していないのではないか?」という点です。なので、今回はフランがたくさん呪文を唱えたり特技を使っていたりして、戦闘に加わらせました。実は抗異≪キルルク≫はアトランデュスの麻痺を引き起こす息に対抗するために急きょ設定された呪文です。うまくシナリオにフィットするように呪文が唱えられたのでよかったです。

さて、ここからは次回予告を(いっぱい語っちゃったなあ……w)。次回、第13話のタイトルは「獣耳の楽園!?」でございます。ホレンツィエ国編が終わり、ガルガンティ国に舞台が変わり、これからどのような展開になるのか!?という矢先にいきなり獣耳!?……是非、ケモナーの方、それ以外の方も楽しみにしていただければと思います!!次回の投稿は10月上旬の予定でございます……が、このごろ執筆欲がやばいので早くなるかも!?

では、次回の投稿を楽しみにしていただければ嬉しいです!!また次回、お会いしましょう!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ