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逆ハーエンドのその後

乙女ゲームの逆ハーヒロインは、非王道展開を望む

※作者は乙女ゲームを何度もしたことはあります。

 当作品は乙女ゲームユーザー様を貶める意図はありません。

 

 リア充に、憧れてたんだよ……



「……」



 男女混合グループできゃっきゃっわいわいしたり、カップルでいちゃいちゃしている奴らを横目で見る度、「爆発しろ」と呪いながら、漫画やアニメ、ネット小説でリア充気分疑似体験してたんだよ…



「………」



 男なら魔法使いと化してる30歳の誕生日、心筋梗塞でぽっくり死んじゃったら、なんと前世ではまりまくってまくってたネット小説の王道展開「乙女ゲームのヒロイン転生」が待っていたという神展開。

 しかもくだんの乙女ゲームは、お約束にも逆ハーエンド有りという、ちょいキワモノ系のマニア向け乙女ゲー。


 あれだよね。乙女ゲームのヒロイン自体リア充だけど、逆ハー展開極めたら超ハイパーミラクルリア充だよね。

 ヒエラルキーの頂点である有能イケメンどもを従える女王様って、頂点のさらに先っぽの超小さい点だよね。天辺だよね。

 これはやっぱり天辺目指すっきゃないでない?

 つーわけで、超ノリノリで逆ハー展開に向けて、イベントこなしまくったわけ。



「……確かに端から見て引くくらい、ノリノリだったな」



 脳内アドレナリンでまくりだったからね。

 イケメンどもがゲーム通りに動くだけで簡単に堕ちまくり。掌の上でコロコロ転がされまくり。

 まるで神になったかのようで、超愉しかった。まさに天辺だよ、天辺!!

 喪女だった前世に復讐してる気分。


 ……だけど、逆ハーエンドを無事向かえて、気付いたんだよ。



「…何にだ?」



 逆ハーって、超めんどい。



「……」



 私ね、このゲームの逆ハーエンドってさ、『皆は私を好きだけど、私は誰のものにもならないの。きゃはっ。私女王サマー』ってな感じだと思ってたら、『私は皆の恋人。一人に選べないだけなの、うふっ』ってな感じだったのね。

 逆ハーっていうか、一妻多夫制?

 ほれ、なんか実際の一夫多妻制って、複数の妻を平等に愛することを求められるから、男が考えるほど良いもんでないっていうでない?



「……まあ、聞いたことあるな」



 あれと同じ。6人いる逆ハーエンドキャラを平等に愛することを求められて、出来ないと拗ねる怒る、ヤンデレるで、大惨事。

 ローテーションで一人ずつ望まれるがままに恋人として付き合って、1日中べったり拘束される×6日間。

 週単位で残された1日も、「全員一緒なら平等だから」と押し掛けられ、自由な時間がないという悲劇!!


 元々私はコミュ障でぼっちマンセーな、インドア系オタクだっただけに、いくら相手がイケメンとは言え、ぶっちゃけ超・苦痛!!

 てかイケメンにちやほやされるより、漫画読みたい!!アニメみたい!!ネット小説巡りたい!!乙女ゲーム…はお腹いっぱいたから、なんかシミュレーション系のゲームしたい!!ほのぼの育成系とか!!



「…すればよいだろ。男はべらせながら」



 どいつもこいつも、「俺と一緒にいるのに、他のこと考えられるの嫌だ」とかいって、オタ趣味許してくれねーんだよ!!

 オタ趣味暴露して、キャラ作ってたこと白状すれば解放されるかもって思ったけど、エンド迎えたせいか「お前なら、どんな趣味があろうが、どんな本性だろうが好きだ」とか、六人が六人とも意味不明なことほざくし!!

 なのに、趣味にふけることは許してくれねーし!!


 何なんだ、あいつらは!?あれか!?リア充様だからか!!リア充様だから、この趣味の素晴らしさと、趣味を奪われる悲しみを理解出来ないのか!?

 滅べ!!リア充!!てめえらは、別の生き物だ!!脳みその造りからしてちげぇんだよ!!



「………落ち着け」



 はぁ…はぁ…ごめん。ついつい興奮してしまった。

 ――ともかく、私は失って初めて気がついたんだ。


 前世のあの、どっぷり趣味に浸っていた日々こそ、私にとっての理想郷だったのだと。

 リア充の素晴らしさなど、無い物ねだりの幻想だったのだと。



 あの日々を、もう一度……



 ちゅーわけで私は、私が理想郷に引きこもる為に邪魔な逆ハーメンバーどもを、何とか誰かに押し付けられないか、考えたのさ。



「……おい。勝手過ぎやしないか」



 逆ハーエンド狙う女が身勝手じゃないわけねーでしょ。

 それとも何かい?君には私が性格が良い女にみえるかい?



「見えない」



 ……そうも、はっきり言わんでも。泣くぞ…まあ、よいけど……


 …話戻すよ。私がはまってたネット小説では、乙女ゲームヒロイン転生の亜種が色々あって、ヒロイン転生より人気なってた。

 こんなネット小説まんまな世界ならば、きっとこの世界に私以外の転生者もそのあたりにいるんでないかと思って、探ってみたら、ドンピシャ。

 サポートキャラの娘が、転生者でした。



「サポートキャラ…藤野か」



 そう!!クールビューティ。毒舌ツンデレ眼鏡娘。

 私のサポートキャラにして、心の友と書いて心友の、藤野まもりちゃんです!!



「…お前は心友を売るのか」



 …さすがに私も、逆ハーの結果全校の女子から蛇蝎のごとく嫌われている私を、唯一友と読んでくれるまもりちゃんを売ったりしないよ。見くびるない。

 ただ、まもりちゃんがポジション乗っ取りとか望んでるなら、それもやぶさかでないかな思って聞くだけ聞いてみたのよ、そこんとこ。

 そしたら超きっぱり言われた。


『私は二次元キャラを愛しているんだ。二次元から三次元に堕ちたキャラになぞ興味が無い』



「いっそ清清しいオタクだな」



 思わず『師匠!!』と叫んで抱きしめてしまいました。



「お前も大概だな!!」



 師匠は、私も、私も師匠程の確固たる信念をはじめからもっていれば…と泣き崩れる私に言いました。


『いや、逆ハーヒロイン目指すお前は見ていて笑えたから、むしろグッジョブ』



「…さり気に酷いこと言われていないか…?いいのか、お前ら、そういう関係で」



 そして師匠はこう言い足しました。


『乙女ゲームのエンドの強制力がどれほど継続するか知らんが、あいつらは現段階で卒業後お前を、6人で共有する屋敷に監禁する計画を立てているようだぞ。身の危険を感じたらいつでも言えよ?かくまってやるから』


 ああ師匠!!なんて男ま…



「いやいやいやいや、お前さり気に恐ろしいフラグ立っているじゃねーか。大丈夫か?」



 ダイジョウブダヨ。キット学校卒業スレバ、ソンナ情熱サメルヨ。ウン



「…現実逃避するな!!」



 …こほん。

 まあ、心友兼、師匠。そして私の心の嫁のまもりんを逆ハー男どもになんかやれないんで、脇役成り代わり展開は却下。

 そーなりゃ、次は悪役ヒロインものでしょう。

 ゲームのイベントで私を虐めまくってくるキャラクター、神藤あやね。

 ゲームの強制力かは知らんが、実際色々虐められたから恨みはある。

 逆ハー男どもを押し付けても罪悪感は湧かぬ。相手にとって不足なし!!

 そんなわけで、私はあやね嬢に会いに行ったのさ!!



「…ん?確か神藤って、彼氏が」



 そうなんだよ!!あの悪女、逆ハーメンツに振られたら、速攻で別の彼氏作ってやんの!!

 しかも相手は幼馴染で、振られた時もずっと傍にいて支えてくれて恋が芽生えたとかいう!!

 なに、そのリア充的、切り替えの早さ!

 幸せそうな顔で『あのときはごめんなさいね。彼にも、周りが見えてなさすぎだって叱られちゃった』とかほざきやがって!!

 しかも転生者じゃない いこーる 元乙女ゲーユーザーではない、生粋のリア充だという!!

 別に教科書ズタズタにされても、公衆の面前で水ぶっかけられても、大声で罵倒されても展開知ってたからさして気にして無かったけど、ぜってぇ許さねぇ!!

 呪ってやる!!

 将来リア充故にすんなり結婚したはいいが、同居の姑さんとうまく行かなくて、ストレスから円形脱毛症になる呪いを掛けてやる!!



「…気にしてないならいいだろーが」



 それとリア充憎しは話は別なの!!



「それで、神藤の誘導にも失敗して…あー…もう言わなくていい。話が読めてきた。聞きたくない」



 いやいやいやいや。ここまで来たんだから逃げないで最後まで、聞いてよ。

 ね?



「…馬鹿力で腕を掴むな…嫌な予感しかしないんだ…」



 …ポジション押し付け役がいない私は、軽く絶望しながら、何か他の展開はないか考えたんだよね。

 ヒロインの王道展開を邪魔する感じのストーリー。

 そんで、思い出したのよ。

 攻略キャラが転生者で邪魔するパターンがあるってさ。



 んで、このゲーム。逆ハーエンドもクリアしないと出てこない、隠しキャラがいるんだよね。

 攻略キャラの6人の誰よりも高い権力を持っていて、だれも逆らえないような「カイザー」といわれるキャラクターが。

 隠しキャラというわりに、どのキャラのルートでもチラチラしてて、絶対後で攻略できるようになるんだろうなって分かってたんだけど、な・ぜ・か、私の逆ハー狙いの時はニアミスすらなかったとゆー。

 てか、主人公以外の人には名前が知れ渡っているキャラクターのはずなのに、なーぜーかー、その名前あまり知られてないんだよね。「カイザー」っていう渾名も。

 ピンときたのだよ。きっとカイザーは転生者なのだと。展開知っていて、巻き込まれたくないからジミメン装って、身分隠していると。


 しかしカイザーの権力の由来は、生れた実家によるものだから、背景が変わらない限りいくら能力を隠そうが私的には無問題。

 他の攻略キャラが逆らえない身分があればいーのだ。


 つまり、カイザーイベントをこなして完クリさせれば、他の6人がいかに喚こうか、逆ハーエンドは上書き出来るというわけだ。








 ――――――



「つーわけで、私に恋をしてくれ、カイザー!!全ては私のオタ充ライフの為に!!」


「ぜってぇいやだ!!」



 妹が嵌っていた乙女ゲームの隠しキャラとして転生し、面倒なしがらみを避ける為、身分を隠し地味な変装を続けて一年半。

 こんな女の為に、俺がようやく作り上げた平穏ライフを壊されてたまるかよ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] このシリーズというか、空飛ぶひよこさんの作品はどれも私の好みにどんぴしゃで恐ろしいです _:(´ω`」 ∠):_ [気になる点] 真ん中辺りの『蛇笏のごとく』→『蛇蝎のごとく』ですかね? …
[一言] 人の不幸とか気にしない所が良いですね。
[良い点] こういうのも得意なんですね。 [気になる点] 誤字 「お前も対外だな!!」→大概
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