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原田さんと父親
私は原田を水をすくうように持ち上げ、
「いいもの見せてあげる」と耳で囁く。
「家族を紹介してあげる」
私は古いアルバムをとり、広げる。
「私のお父さんだよ。生まれる前に死んじゃったけど」
私は原田を見つめて、ゆっくり話す。
「ねぇ、私のお父さんになってよ」
「お前の親?」
「私お父さんと勉強したり、本読んで感想を語り合ってしてみたかった」
「俺はあんたを抱き締める事も沢山撫でる事も出来ない。
そんな親父でいいのか?」
私は黙って首を縦に振った。
「お父さん、今日面白いテレビがあるんだ
晩御飯終わったら一緒に見ようよ」