リハビリするって……本当ですか?
前回のあらすじ!
―どうしようもない僕に白天使が降りてきた―
「さて……どうしてやろうかしら」
(コッチのセリフだパンツ女。何がおかしな波長だ)
「アンタの思考がオカシイって言っってんの! あとパンツ女とか呼ぶなヘンタイ!!」
(じゃあ白パンツ天使)
「うわキッモイ! マジキッモイ!! アタシにはレイ・シキって名前がちゃんとあんの!!
呼ぶならそう呼べこのヘンタイっ!!」
(うぅぅ…………っ。うえええええええええええ……)
「ええっ!? 泣くトコっ!? なんでっ!? なんでよっ!?」
(わ、悪い……。会話できるって……なんて素晴らしいことなんだろってさ……)
「……も、元の世界でもそんなに人と話とかしてなかったじゃないのよ」
(そりゃそうだけどさ……もう一生誰とも話せないんじゃないかって思うとさ、もっと人と話しときゃよかったってさ……)
「なによそれ……大喜びで飛びついたくせに」
(ネタだと思ったんだよ。じゃなきゃ自分の名前、ティンコ・ティンティンなんて……しないってぇ)
「あー……」
話しながら、ああ、こいつが諸悪の根源か、と確信してみたりする。
(でも俺がやりたいって返事したのは事実なんだよなあ……)
「……」
(ゴーレムはまあ、メールにもあったことだししゃあねえけどさ、喋れないてのはさすがに想定外だよ……トホホ)
「……思考、だだ漏れてるわよ」
(おおう。す、すまん、6話ほどぼっち会話だったからさ。ちょっとごちゃごちゃになってる)
「……ったく。バッカじゃないの? もっとアタシのこと責めたりしなさいよね。じゃなきゃ、コッチが気持ちのやり場に困るじゃない……」
(あー、うん。ゴメン)
「……ホントバカね……状況わかってんの?」
(いや、サッパリ。ゴーレムだってのはわかってんだけど、動けないし喋れないし、どうしたものかなあこれ、って思ってるトコだ)
「じゃあまずは説明するわね。そのために来たんだから」
(頼む)
「まずアンタの思考は、『魂の宝珠』ってのに封じ込められてるわ。それが、このゴーレムの頭に入ってるの。ここまでオッケ?」
(オッケオッケ。俺の予想とそんな違ってない)
「で、『魂の宝珠』の台座……鷲掴みの手みたいなやつなんだけど……」
(あー、わかる。悪い魔術師の杖の先っぽとか、シェンドラがボール持ってる手のとか、そんなだな)
「シェン……? まあ、その掴んでる指が宝珠から出るエネルギーを感知して、繋がれた体を動かすのよ」
(おー、それ脳の仕組みそのまんまじゃん)
「……そうなの? なんかアンタの世界ってそのへん無駄に進んでるわよね。自転車とか」
(そこ!? 無駄かどうかは俺には判断つかないけどな。でもまあ、動く理屈が理解できたんだから、今役に立ったぞ。無駄じゃない)
「はいはい。でね? 基本的に、『魂の宝珠』が壊れると、魂がそこに留まれなくなるの」
(帰れるってことか? それとも……)
「わっかんないのよね。試した人いるけど、その後の電書は帰ってこなかったわ」
(電書……ああ、メールね……って駄目じゃねーか)
「そもそも、呼び出した時にそっちの世界の通信装具、壊れちゃうから届いた電書見れてないだけかもしれないし、アタシには正直なんとも言えない」
(なるほどねぇ……。んーまあ、そーすっと極力こっちにいたほうが良さそうだな。で、俺は世界を救うのか?)
「ううん。このゴーレムは、さっきいたポリカたちの持ち物なんだけど」
(うむ。それはわかる)
「いまアンタが入ってる『魂の宝珠』は、あの子達が買ったのよ。アタシから」
(ほう)
「で、こうやってゴーレムに組み込んだわけだけど……動かしてみないとわかんないのよね、どうなるか」
(どうなるか?)
「いろんな人がいるのよ。パニックになって暴れだす人とか、壊れちゃう人とか」
(まあ……どうだろうなあ……そうなのかもなあ……)
「最初は売ったっきりにしてたんだけど、それだとクレームが多くて。で、最近は最低限の説明だけしに来ることにしてるの。アフターケアってやつ?」
(なるほどなあ……シキ? 以外とは喋れないんだもんなあ)
「喋れないっていうか、アタシ達ネクロマンサー以外は、宝珠に入ってるのが人間の魂だってのは知らないから、そもそも話なんてする気、ないわよ」
(え、でもポリカちゃんは喋りかけてきてくれたぜ?)
「あの子は、『そういうコ』なのよ」
(あー……。あのさ、しゃべる機能とかないのかよ)
「できなくはないだろうけど、難しいでしょうね。手足でも、タイへンなのに」
(文字は?)
「文字はぜんぜん違うわよ。解読器かければどうにかなるけどよくわかんない単語も多いし、いつも大変なんだから」
(そっか……ん? じゃあシキが通訳シてくれればいいんじゃん?)
「嫌よ。アタシ達ネクロマンサーからしたら、『魂の宝珠』の中に人間の魂が入ってるなんてバレたらそれこそオオゴトなの。協会でも遵守項目に決まってるし、今日は、その口封じに来たってのもあるわ」
(ええぇ……)
「言葉の理解できる、いいなりの人工精霊でいなさい? そうしたら消さないでいてあげるから」
(えー……? 脅しかよー)
「脅す気はないけれど、お互いいい関係でいましょ、ってこと。売り物が優秀だと、どんどん買い手がつくのよ。当然、逆もあるわ。ようやく独り立ちできて、今がアタシ、勝負どころなの。だから、ね?」
(だからね? って言われても……なあ? 俺にウマミ、なくねえ?)
「ないわね。あ、一ヶ月に一回くらいは、お話しに来てあげる」
(おうふ)
いや正直、それはすこし魅力的だ。話相手ってすげえ大事だよ……マジデ……。
でもあれだよな、今はちょっと流石に無理だけど、口がきけなくても身体が動くようになったら他のコとも意思疎通を図るのは不可能じゃない気がする。
なんだろう、口が聞ける相手がひとりいる、ってだけですげえ安心したし、今はコレでいいか……人間って不思議なイキモノだな。
(よし、パンツで手を打とう。会いに来るたびに毎回パンツを見せてくれればそれで!)
「!! 嫌よこのヘンタイ……って言いたいトコだけど、ホントにそんなのでいいの? アンタの人生なのに。アタシ、アンタの人生めちゃめちゃにしたのよ?」
(……)
「……」
(……なんかシキってさ、いいやつだよな結構。『死霊使い』とか向いてないんじゃないのか)
「う……うっさいわね……」
(あっちの世界で、つまんなそうにしてる奴頑張って探して俺にしたんだろ? なんかわかるよ)
「……」
(そんな申し訳無さそうな顔すんなってば。シキだって仕事でやってんだろ? それに少なくともシキが俺を選んだのはそんな間違ってなかったって。あっちであんま迷惑掛かる人もいないしさ)
「うー……そんなこと、自分で言わないでよ……」
始終キツイ表情でコッチを睨みつけていたシキだったが、もうコッチをまっすぐ見れてない。なんか湿っぽくなっちゃったな。
(えっと……さ、ここで作られて、俺は戦争につかわれるのか? それとも土木作業? 単純作業とかヤだなあ。ゴーレムって休みなさそうだし)
「そういうゴーレムもあるけど、アンタはちょっと違うの。でもまあそのへんは、ここのコ達の話しを聞いてるほうがよくわかると思う。スグに売りに出される、ってことはないから安心して」
(そうなのか。まあ、日々土木作業じゃないなら……いいのかなあ。うーん……)
「それはまだ先の話。まずアンタを待ってるのはね、辛く苦しいリハビリ生活よ」
(リハ……はぃぃ!?)
第八話:「リハビリするって……本当ですか?」完
会話があるって楽しいね!!(おい誰のせいだ)