三、陰陽はカルピスの原液を求める
ゆきさおりさんの、夜明けのスキャットを聞きながら書いてしまったためか……若干適当気味です
テレビで演歌やってたんですよ
村長の話によると、この事件が起きたのは今から約一ヶ月前らしい。
最初の被害者――それは、村長の孫だった。
一週間前のとある日。雨が降っていた、とある日。
これから起こる事件なんて知るよしもない村長の孫は、あいにくの雨の中、屋敷の中で静かに読書をしていた。元々静かな村長の孫は、普段から本を読むことが好きなんだという。
そんな彼の部屋から、突然として叫び声が聞こえる。そのとき彼の部屋には誰も居ず、不思議に思った村長は彼の部屋に向かった。
ゴキブリでも出たのだろうか。本に怖いことでも書いてあったのか。村長は孫の突然とした叫び声に大して不安も持たず、孫の部屋の引き戸を開けた。
「――しかしそこには誰も居なかった……と」
「あぁ、それからその事件は村で頻繁に起きるようになった。一日に何人もの子供が行方不明になるときもあったらしい」
ちなみに、行方不明になる子供の年齢は、五歳から十七歳までが主らしい。
誰も行方不明になるまでの子供の経緯を見たものは居なくて、少しでも目を話した隙に居なくなるというのも頻繁なようだ。
「しかも全部に該当するのが……雨の日……ねぇ……」
「明日も調査を続けるか」
「そだね、今度は村人達に細かい話を聞いてみよっか」
村長の話を一通り聞いた俺達は、屋敷の外に出たあと、この村に居る間しばらく世話になる宿を探した。
村人から、この村に唯一あるという宿に案内してもらい、少し歩いたところでそこに着いた。
もちろん宿には初めから期待していなかったが、やはりそれは悪い意味で裏切られなかった。破れた障子や薄汚れた壁……お世辞にも快適な宿とは言えないだろう。
一応一週間泊まる予定で指定した俺達は、案内された部屋で椅子に座り話し合っていた。
「『もしこの事件を解決したら、それ相応の報酬金を貰えますか?』なんて言ったら、村長さん意外と了承してくれたしね~」
「どうでも良かったんだろうよ、金のことなんて。きっとここの村人達皆そんな感じだ。金も心も――何もかもが、どうでもいいんだ」
「ふふ、それじゃまるで妖怪に憑かれてるみたいだね~」
縁起悪いことを平気で言う奴だ。もしそうだったとしたら、俺達はここの村人全員を敵に回さなければならない。
「――ねぇ、扇」
「何だ?」
「カルピスの原液……飲みたい」
突然何を言い出すのかと思えば、漆がニヤリと笑い、そんなことを言っていた。
「………………」
何を言い出すんだ、こいつ。と、率直に思った。
カルピスの原液だと? カルピスって……あのカルピスか?
まぁ恐らく俺の思ってるカルピスで合っているんだろうが。俺もそれくらい飲んだことあるし。
というか、何で原液なんだ。
「買ってきて」
「嫌だ、面倒だ」
無論だな。いきなりそんな意味不明な頼み事を申し付けられて、はいそうですかなどと二つ返事で承諾できる程に俺はできた人間――もとい、式神ではない。
しかし、漆のほうも考えなしにこんなことを言ってくるわけじゃないだろうが……。
「これが主の命令でも?」
そう、こいつには゛これ゛がある。
こいつは何かあるとすぐ自分の立場を主張するのだ。俺が人間だとしたら、こいつみたいな奴は真っ先に嫌いになるタイプだな。
しかし俺は式神……園崎漆の式神、園崎扇だ。主の命令とあらば、それがどんな内容であれと実行しなければならない。
それが例え、自分の身を滅ぼすことだとしても……な。
「はぁ、分かった。確か近くに簡単な駄菓子屋があったはずだ。まだ開いていたら買ってこよう」
俺は立ち上がると、漆から千円札を受け取る。
それをズボンのポケットに突っ込むと、そそくさとその場を去る。
「お釣りが出たら扇のお小遣いにして良いからね! 好きなお菓子買ってきな~」
――という、どうでもいいような忠告を背に。
うるしちゃん、結構うざい奴に見えますがどうか嫌わないでやってくださいね
悪気はまったくないんですよ