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提琴小夜曲  作者: 弥月ようか
9/12

第3楽章 Ⅰ



「で、何?」

夏休み前最後の一週間。

夕姫帆は意を決して櫟梟夜をお茶に誘った。

梟夜は時間に遅れず現れ、コーヒーを持って夕姫帆の向かいに座るなり、単刀直入に問うてきた。

「あのね、わたし、ほらこの通り、手、怪我しちゃったじゃない?

 だからね、桃花鳥の伴奏、櫟くんに替わってほしいの。」

「用件はそれだけか。」

「そ…だけど?」

「やだ」

「え?」

「返事だよ返事。

 俺は嫌だ。」

「なんでっ?」

「なんであいつが来ないんだよ?」

「あいつって…桃花鳥?」

「これはあいつが出たいコンクールなんだろ?

 なんで町田が言う必要があるんだ?」

「……だって、これは・・・・・・・わたしの一存なんだもん。」

「へぇ。それで、山藤はなんて言ったわけ?

 それ、あいつにも言ったんだろ、どうせ。」

「言ったけど…。

 櫟くん、怒らないでね。」

「今更怒らねーから、さっさと言えよ。」

「桃花鳥はね、


『夕姫帆、適任って誰?

 まさか、櫟くん、とか言わないでね?』

『別に、まさか、って言うほどでもないじゃない。』

『嫌よ。』

『なんで?』

『だって…彼はこのコンクールへの出場を辞退したし、』

『理由ってそれだけ?

 ならいいじゃない。押しつけるのは悪いと思うけど、聞くだけ聞いてみようよ。』

『でも…』

『桃花鳥、珍しいね、そんな風に後込みするの。

 もしかして櫟くんとなんかあった?』

『・・・何もないわ。

 もう、勝手にして。』


 って、言うんだもん。」

「じゃあ、俺が弾く必要はないってわけだな?」

「駄目なの?

 ねえ、本当に桃花鳥と何もなかったの?

 最近2人が喋ってるの見ないし・・・」

「これまでも滅多に喋ってなかったけど?」

「ほら!‘これまで’って、いつまでのこと言ってるの?

やっぱり何かあったんでしょ?」

「なにもねぇっつってんだろ?

 お節介すんなよ。

 山藤に言っときな、ほんとに出てほしたきゃ自分でいいにこいって。」

「え…

     櫟くんのひとでなし!! 

 櫟君ならどうして桃花鳥がこのコンクールのためにあんなに練習してるか知ってると思ったのに。」

「………」


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