優菜&ゆきの会話集 はち
優菜「ねえゆきちゃん。美術館に行こうよ!」
ゆき「え?ずいぶん珍しいこと言うね。あんた美術好きだったっけ?」
優菜「いや、別に」
ゆき「なんなんだよ」
優菜「いやね、美術館メシが旨いらしいって聞いたからさ」
ゆき「あー…そう。まあ確かにおいしいよなあ」
優菜「というわけで、連れてって!」
ゆき「まあいいけど…どこがいいの?」
優菜「っていうかさあ、美術館ってどこにあるの?」
ゆき「そこからかい…予想はしてたけど…。でも、単においしいもの食べたいだけなら、他のとこでもいいんじゃないの?」
優菜「やだ」
ゆき「なんで?」
優菜「わたし、美術館に行きたいの」
ゆき「だから、おいしいものが食べたいから美術館に行きたいんでしょ?」
優菜「うん」
ゆき「だったら美術館じゃなくても、どこかおいしいもの食べられるとこでもいいんじゃないの?」
優菜「やだ」
ゆき「だからなんで?」
優菜「わたし、美術館に行きたいの」
ゆき「だから!美術館に行きたいのはホワーイなぜ?」
優菜「おいしいもの食べたいから」
ゆき「だから!おいしいものだったら他のとこでもいいんじゃないの!?」
優菜「やだ」
ゆき「だからなんで!?」
優菜「わたし、美術館に行きたいの」
ゆき「だーかーら!!うまいもの食うだけだったら他でも食えるだろうがよ!なんで美術館なんだよ!」
優菜「だから!!美術館でうまいもの食いてえっつってんだろうがよ!!」
ゆき「だからなんで美術館なのかって聞いてんだよ!!」
優菜「うまいもの食いたいのに理由なんかあるものかよ!!」
ゆき「あるでしょうよ!ほら、どこそこの美術館にある料理がおいしそうだから、とかさ」
優菜「あー……」
ゆき「美術館メシがどこでもあるわけじゃないし」
優菜「ん〜……」
ゆき「オススメの美術館ならいくつかあるけど」
優菜「それ早く言いなさいよ!こちとら美術館?ハァ?な状態なんだから!」
ゆき「つまりアレだ、“おいしい料理が食べられる美術館”に行きたい、と」
優菜「だからさっきからそう言ってるじゃん!」
ゆき「目当ては“おいしい料理”なわけでしょ?」
優菜「うん」
ゆき「じゃあ美術館じゃなくてもいいんだよね?」
優菜「やだ」
ゆき「だからなんで?」
優菜「わたし、美術館に行きたいの」
ゆき「えーっと、つまりあれか。行ったことないから行ってみたい、と」
優菜「そうそう!それ!」
ゆき「で、おいしいものも食べたいしぃ〜、と」
優菜「そうそう!!だから、連れてってよ!」
ゆき「はあ……疲れた」
優菜「ん?どうしたの?ゆきちゃん?」
ゆき「いや…」
ゆき「オススメの美術館はいくつかあるんだけど…だれそれの絵がみたい!とかある?」
優菜「あーー…ピカー…ピカー……ピッ…カッ……ソ?」
ゆき「ピッカッチュウ!って言うかと思ってドキドキしちゃったじゃねえか」
優菜「ピカソぐらい知ってるもん」
ゆき「それにしちゃあ、やけにピーガリガリロード中って感じだったけど」
優菜「パブロ・ピカソ!どうよ、わたしだって知ってるんだからね!!」
ゆき「ピカソかー…あたしも好きだなあ」
優菜「ゲルニカ!」
ゆき「おおっ!?知ってるねー」
優菜「ふふん。それぐらい知ってるわよん」
ゆき「そうかそうか。じゃ、せっかくだからゲルニカ見に行こうか」
優菜「…え?ピカソ見に行くんじゃないの!?」
ゆき「え?だから…ゲルニカでしょ?」
優菜「え?え?え?」
ゆき「…ああ、そうか。あのね優菜、ゲルニカってのは人の名前じゃなくて、ピカソの作品名よ?」
優菜「え?」
ゆき「色々教えてあげるね」
優菜「え?ってかピカソって人の名前なの?」
ゆき「あ?」
優菜「じゃああの絵ってピカソじゃないんだ〜」
ゆき「あの絵ってどれだよ」
優菜「どれってわけじゃないけど、なんかわけわかんない絵が全部ピカソっていうジャンルなのかと」
ゆき「そこからかい……先は長いな……」
優菜「だってさ、この絵はピカソだよ、ってみんな言うじゃん。で、ことごとくわけわかんない絵だったから、わけわかんない絵は全部ピカソなのかなって」
ゆき「あー…なるほど」
優菜「クリニカっていうのは?」
ゆき「そんな歯にやさしい作品なんて描いてねえよ!!」
優菜「今日は楽しい美術館デートー!」
ゆき「シートベルトしめてね。さ、じゃ行きますか」
優菜「美術館で会った人だろー」
ゆき「何その歌?」
優菜「美術館にー火をつけるよー」
ゆき「やめなさい」
優菜「ところで、なに料理なの?そこって」
ゆき「イタリアン」
優菜「わあ、ピザ食べたいなあ」
ゆき「パスタもおいしいよ」
優菜「よく行くの?」
ゆき「うん。いつも面白い作品が展示してあってさ」
優菜「へえー。やっぱゆきちゃんって美術の人なんだねー。わたしはさっぱりだけど」
ゆき「いやあ、見てみると面白いと思うよ。絵だけじゃなくて彫刻とかオブジェとか色々あるしさ」
優菜「ふーん」
ゆき「さ、着いたよー。ここだよ」
優菜「すっごい静かなとこだねー」
ゆき「そっちの方行くと、森の中を散歩出来るんだよ」
優菜「空気良いし、いいとこ知ってるねー。さすがゆきちゃん!」
ゆき「ありがと。あ、あれが入り口」
優菜「え……何コレ」
ゆき「ああ、これは廃材を利用したオブジェ」
優菜「でかっ!ってかこれって何を表現してるわけ?」
ゆき「さあ」
優菜「え?わかんないの?」
ゆき「見た人が何か感じれば、それでいいと思うよ、あたしは」
優菜「ふーん。で、なんて人の作品なんだろ…」
ゆき「フランク・ステラ。あたしも詳しくは知らないけど、何か好きだな」
優菜「ふーん…台風がきたら壊れちゃいそうだけど…」
ゆき「いや、かなり頑丈に出来てるみたいよ」
優菜「ふーん。じゃ、中入ろうよ」
ゆき「はいよ」
優菜「へえー。天井高ーい。あ、ねえねえ、あの受付の人、かわいくない?ハーフかな?」
ゆき「あー…確かにちょっと北欧っぽい感じ」
優菜「秋田美人?」
ゆき「あー、秋田って北欧の血が入ってるらしいからね。そうかも」
優菜「すいませーん。大人二枚…」
ゆき「あ、いえ。学生二枚で」
優菜「あ、そっか」
ゆき「学生一枚こども一枚と言いたいとこだけど」
優菜「あー。わたし美少女だからねー、美少女割ってないのかしら」
ゆき「…あ~もう、バカ一枚ってねえのかな!!」
優菜「なんか色々あって、へえ~ふう~ん、ほおほおって感じ」
ゆき「つまりはよくわからん、と」
優菜「うん。よくわかんないけど、でも面白いね!」
ゆき「うん、その感覚って大事よ」
優菜「名前も作品名も何にも覚えてないけど」
ゆき「いいのいいの。楽しめたんならそれでいいのよ」
優菜「ホント!?わあ、ゆきちゃんってば、やっぱり優し~!」
ゆき「いや、別に…。本当にそう思うからさ」
優菜「何だコイツわかってねえのかよ、とか思わない?」
ゆき「全然。下手にわかったフリされる方がムカつくし」
優菜「そっかそっか。それじゃあ私、思い切って言うね!ぜ~んぜんわっかりませ~ん!!」
ゆき「…考える努力は、しようね、優菜」
優菜「さあ憧れの美術館メシ!」
ゆき「憧れてたの?」
優菜「うん。こういうオッシャレ~なとこでオッシャレ~な食事してみたくてさ」
ゆき「あんた金持ちだから、こんなとこ余裕でしょ?」
優菜「だからあ…わたしは庶民なんだって。外食なんて全然しないし」
ゆき「ふう~ん。意外」
優菜「意外じゃないって。普段のわたしを見てればわかるでしょ?」
ゆき「まあ確かに…。お嬢様だったらバイトしなくていいわけだしね」
優菜「そうそう。だからね、こういうとこで食事ってずっと憧れてたんだあ~」
ゆき「ところで、何食べる?」
優菜「トンカツ食べたい」
ゆき「ねえよ!!さっきと言ってること全然違うじゃねえか!!ぶち殺すぞ!!」
優菜「じゃあカツ丼」
ゆき「カツから離れろ!!」
優菜「やっぱりこういうとこはパスタとかピザとかとワインか…」
ゆき「そりゃそうでしょうよ」
優菜「食べ飽きてるしなあ~」
ゆき「外食しないんじゃなかったの?」
優菜「ん?いや、実家でよく食べてたから。いつも料理長さんに作ってもらってたんだよね」
ゆき「おい、何だよ料理長って!全然庶民じゃねえじゃねえか!」
優菜「ああ、料理長ってのはお母さんのこと。ご飯時になるといつもそう呼んでたから」
ゆき「紛らわしい……」
優菜「あ!これにしよ。トマトパスタ!おいしそ~」
ゆき「食べ飽きてるんじゃねえのかよ」
優菜「わたしがトマト嫌いだから、ウチでは作らなかったんだよね」
ゆき「ああそうかい。でもトマト嫌いなのに大丈夫?」
優菜「多分大丈夫」
ゆき「なんで?」
優菜「ぜ~んぜんわっかりませ~ん!!」
ゆき「…なんかこいつもう本気でぶち殺したくなってきた」
優菜「わっ!おいしい!なにこれ超おいしいじゃん!」
ゆき「へ~。トマト嫌いでも食べられるんだ」
優菜「うん…すっごいびっくり。素材がいいのかな、わたしでも食べられるよ」
ゆき「ふ~ん」
優菜「ゆきちゃんのはそれ何だっけ?」
ゆき「ペペロンチーノ」
優菜「ペロペロ……」
ゆき「やめろ!18禁にするつもりかお前は」
優菜「え?いや、そんなつもり全然ないんだけど…」
ゆき「え、あ……いや……」
優菜「…何想像してたの?」
ゆき「……な、何て言おうとしたの?優菜は」
優菜「え?ペロペロペロンチョペペロペペペペペペペペペペペ…」
ゆき「復活の呪文か」
優菜「へ?」
ゆき「ああいや、何でもない……」
優菜「ペロペロだけで18禁だなんて、ヤラしいわねえゆきちゃんは」
ゆき「…普段から優菜がエロいことばっかり言ってるからでしょ」
優菜「言ってないもん!」
ゆき「じゃあさ。ペロペロで想像するものって言ったら何?」
優菜「そりゃあ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○……」
ゆき「ほ~ら、全部伏字になった」