優菜&ゆきの会話集 T Minus Ten
優菜「ねえ、ゆきちゃん」
ゆき「あんだよ」
優菜「みそ汁にはねぎ入れるほう?」
ゆき「しんのすけか、お前は」
優菜「ほほーい」
ゆき「ちっ」
優菜「で、どうよ?」
ゆき「ねぎねえ…まあ入れたり入れなかったり」
優菜「どっちなのよ!」
ゆき「えっ…いや、なんでそんなに怒ってるの?」
優菜「はっきりしないと、私イヤなの!」
ゆき「えー…でもなあ、ホントにねぎ入れたり入れなかったりだし」
優菜「じゃあねぎはいつ入れるの!?」
ゆき「いま…じゃなかった、いつって言ってもねえ…作るときとか食べる直前とか」
優菜「だから、どっちなのよ!」
ゆき「えっ…どっちもあるし、そんなはっきりなんて…」
優菜「ふんふん。そうよねえ〜」
ゆき「…急に優しいな、おい」
優菜「やっぱりYESかNOかじゃ答えられないことって、多いよね」
ゆき「そりゃそうでしょ」
優菜「よかった。ちょっと安心」
ゆき「どうしたの?急にそんなこと聞いて」
優菜「世の中って曖昧だよねってこと、確かめたかったの」
ゆき「…なんか、難しいこと言ってるような」
優菜「だから、いい加減でいいんだよね?」
ゆき「ん〜…まあ、さじ加減は重要だよね」
優菜「適当に生きてオッケーだよね?」
ゆき「…まあ、ある程度はいいと思うよ」
優菜「ということは、今日は講義サボってオッケー…」
ゆき「あんた単位足りてないじゃん」
優菜「そこはほら、講義に出ることもあれば、出ないこともあったり…」
ゆき「出ろよ」
優菜「さっきと言ってること違う!」
ゆき「講義とみそ汁一緒にすんなよ」
優菜「あ〜…じゃ、こうだ。みそ汁にねぎを入れたり入れなかったりするのは、その人の自由だよね」
ゆき「はあ」
優菜「じゃあ、講義に出るのも出ないのも、その人の自由だよね」
ゆき「まあ、あんたがそれでいいならね」
優菜「よし!決めた!わたし、今日はサボる!サボりの自由をこの手に!」
ゆき「あっそう。じゃああんたは留年ってことで」
優菜「え……」
ゆき「卒業するもしないも自由だしね」
優菜「え…そんな」
ゆき「ついでにあたしと友達付き合いするもしないも自由だしね」
優菜「ちょ…ちょっとゆきちゃん…な、な、何言ってるの…」
ゆき「優菜にとっての自由って、そういうことでしょ」
優菜「え?え!?」
ゆき「そうよね?」
優菜「…ち、違うよ!そんな自由、わたしいらない…!!ゆきちゃんと一緒にいたいもん!ずっとずっと、ゆきちゃんと一緒に…!」
ゆき「あたしはね、目の前の嫌なことに理由つけて逃げ出すヤツは、大嫌いなの。そんなことにいちいち私の同意を求めるヤツも嫌い。わかる?」
優菜「うん!うん!」
ゆき「逃げたいなら勝手に逃げてってこと。あたしは知らないよ」
優菜「イヤ!ゆきちゃん、見捨てないで!」
ゆき「…ちゃんと真面目に講義受ける?」
優菜「うん!」
ゆき「もうこんな卑怯な真似はしない?」
優菜「うん!しないよ!だってわたし…わたし…ひぐっ…ゆきちゃんのこと、大好きだからあ…ふえっ」
ゆき「よしよし。じゃ、一緒に講義受けに行こ?」
優菜「うん…うん…!ゆきちゃん、ごめんなさあい…ううっ…ひぐっ…」
ゆき「ほらほら、泣かないで。ちょっとキツく言い過ぎたね…」
優菜「ううん…ありがとう、ゆきちゃん。そんなこと言ってくれるの、ぐすっ、ゆきちゃんだけだもん、ひくっ…」
ゆき「そっかそっか…嬉しいこと言うじゃん、優菜…」
優菜「……」
ゆき「…な、なに、目、閉じちゃって…」
優菜「…キス」
ゆき「えっ?」
優菜「…仲直りの、ちゅうして」
ゆき「えっ!!な、なんでそうなるのよ!」
優菜「お願い、ゆきちゃん。お友達なら…して」
ゆき「えっ…いや、困ったな…」
優菜「今日だけだから…くすん」
ゆき「うっ…ま、まあ…軽くなら…しょうがないか…泣かせちゃったし…」
優菜「ほら…早くしないと、講義始まっちゃうから…」
ゆき「え…あ、そ、そうよね。あ、じゃ、じゃあ…」
優菜「……」
ゆき「ちょっと待って優菜。…ってかさ、気になったんだけど」
優菜「…なあに?」
ゆき「やけに人気が無い気がするんだけど」
優菜「え?…そう言えば」
ゆき「何の話し声もしないし…静かすぎるわ」
優菜「あ!!」
ゆき「なに?」
優菜「今日、祝日じゃん!」
ゆき「えっっっ!!うわあ……ホントだ!なんかおかしいなあ、とは思ってたんだけど…」
優菜「は、恥ずかしい…」
ゆき「ちょ、ちょっと今までのやり取り全部消し去りたいんだけど…」
優菜「とりあえず、ささっとやっちゃお!ね!誰も見てないし!」
ゆき「いや、なんか今の衝撃で正気に戻ったわ。帰ろ?」
優菜「ええー!読者のみんなが期待してるんだよ?」
ゆき「読者なんていません!さ、帰ろ帰ろ」
優菜「…むう。チャンスだったのに…。こうなりゃ強引に…」
ゆき「ほら、行くよ?そうだ!せっかくだからケーキでも食べに行こ?」
優菜「え!ケーキ!?わあいわあい!」
ゆき「…ふう。何とか回避したか。しかし、あたしも雰囲気にのまれやすいなあ…」
優菜「ん?ゆきちゃん何か言った?」
ゆき「ああ、いや、なんのケーキ食べようかな、って」
優菜「ウェディングケーキ食べたいな!?」
ゆき「えっ!!」
優菜「あれー?そこは、んなもんそこらで食えるかっ!って突っ込んでくれないと」
ゆき「あ、ああ…そうね」
優菜「ん?どしたの?」
ゆき「あ、いや…調子狂っちゃうな…」
優菜「やっぱりイチゴかなー。マロンかなー。紅茶のケーキもいいなあー!楽しみ楽しみ!」
ゆき「…こういう時、バカっていいなあ、と思います」