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あたしは、

作者: 櫻木 えり

自由に育ててくれた両親へ、

いつも応援してくれる友だちへ、

これまで感想をくれた読者さんへ、


これから話を読んでくれる貴方に、

感謝のきもちを込めて。

なきそうになる。


 背の高い後ろすがた。体型はほっそりとしてるのに、肩幅はがっしりとしている。男のひとなんだなあと、思うと、もう今すぐ抱きつきたい、そんな衝動に駆られる。



 彼は本棚で雑誌を物色している。彼が好きな雑誌は、あたしには理解不能。好きなものをみる、好きなことをする、その瞬間の目が好きなんだよね。だから、バイクやら男性ファッション誌やら、そんな本の内容には全く興味がわかない。


 それから、ソファに座って、雑誌を読みはじめた。その横でじっと彼をみつめるあたし。



 ねえ、こっち向いて。

 あたしをみてよ!



 小さなあたしの、ちいさな願い。ちいさな、ちいさなテレパシー。じっとみつめて、目で訴えても。今日もまた、叶えられないでいる。


 あたしの心のなかなんて、想像したこともないんだろうな。


 くっそー!

 こういうときは、ついイタズラしてやりたくなる。


 構ってほしいなんて言えないもん。我が儘な女だなんて思われたくもないし、せっかく苦労して手に入れた彼のこころなんだもん。ちょっとくらいの我慢はもう慣れっこだ。恋は、忍耐、我慢に、決断力だというのは、長すぎた彼への片思い時期に実証済み。




 よし。片膝立てて、読書をする彼の腕をすこし掻いてみる。ちょい、ちょい、読書の邪魔をしても、怒られちゃうから、バレないようこっそりと。



 ……バレない。もうちょっと分かりやすく引っ掻いたら絶対怒られる。どうせ、あたしより、バイクがすきなんでしょ、なんて僻んでみたりして。


 たとえばこんな風に、何も会話がなくても、マイペースで自分の世界をもってる彼といても、あたしは幸せだと思ってる――ときどき、僻みっぽくもなるけど。



 好きなひとの隣にいられるだけで、本当にしあわせなんだもん。弱音を吐いてくれるのも、仕事から急いで帰ってくれることも。全部、ぜんぶあたしだけの彼。世界中でたったひとり、あたししか知らない彼だから。



 かわいいね、って言ってもらいたくて、彼のためにもっともっと、自分を磨こうとする。そんなあたしに、やさしい気持ちをいつもプレゼントしてくれる。彼の笑った顔をみているだけで、こころは穏やかに満たされていく。


 恋をすると女の子は綺麗になれるっていうけれど、あたしの場合は容姿だけに留まらないんだよね。こころまで綺麗でいられる気がするから、恋ってふしぎだよね。



 そんなことを考えてたあたしの隣で、彼は携帯を取り出していた――なに、メール? ふいに寂しさがおそってきて、あたしが擦り寄るみたいに甘えると彼はいった。


「ごめん。ちょっと、出かけてくる」

 心地よい温度がはなれた瞬間、あたしは思わずあの女を想像した。



 ――行かないで!


 伝えたいことばほど、いつも声にならない。胸のした辺り、そこがきゅうんと苦しくなる。そして溢れてくる激しい感情。自分が自分じゃなくなる、激しい憎悪は次々と溢れては、あたしを黒く染めてしまう。


 彼は何も言わない。あたしは何もいえない。だけど、あたしは知ってる――あたしに好きだと言った同じ口であの女に口づけているのを、あたしだけは知っている。



 扉の閉まる音が、しずかにひびいた。






 ――もう、限界だ。

 耐えられないと思った。知らないふりは、もうできない。



 ねえ、今日が何の日か知ってる?あたしの誕生日なんだよ。彼女の誕生日を忘れて、他の女に会いにいくなんて絶対に許せない。絶対、問いつめてやる。それで、もう別れてやる!


 出てってやるんだから! ああ、彼じゃなくてもいいんだ。そんな考えに行き着いたとき、あたしは決意した。



 それから、数時間後。待ちにまった扉がひらく。



 誰と会ってたのよ、と喉まで出掛かったよくある修羅場文句は、彼の表情のまえに消えさった。




 ねえ、どうしたの。まず、その言葉が口から出たのだ。彼の顔。土色で赤みがなく、瞳の奥がどことなくくらい。今にも倒れ込みそうな、そんな、気分がわるいときの顔をしていたのだ。



 そして、彼はこう告げた。


「なあ、オレ振られたんだ。慰めてくれよ…………」

 まずはその香りを落としてこいとか、やっぱり他に女がいたんだとか、言いたいことは色々あった。だけど、痛々しいその表情をみていたら、やっぱり胸がくるしくなってしまう。


 

 あたし、ばかなのかな。こんなに傍にいて、浮気されてもまだ、彼を憎めないでいる。さっきの決意はとうに消えて、彼への純粋な愛情だけじゃない、不可思議な想いを感じていた。


 拭いされない嫉妬心。この想いは誰より大きいけれど、少しだけ濁ってしまった。今までとおなじ気持ちには、到底戻れやしないけれど。



 ちらりとみた彼の目は、どこか頼りなく、表情はなんとも情けない。それをみていたら、またどこからか愛おしさが訪れてきた。



 ……あたし、やっぱりばかだ。浮気を繰り返してはあたしの元に戻ってくる彼もばかだけど、そんな彼がまだこんなに愛おしいなんて、ほんと救いようがないよ。


 救いようがないばか同士、お似合いだよ。




 あたしだけは、ずっと傍にいるよ。どんなになっても、ずっとずっと、一緒だからね。そういって、香水のにおいがする薬指をぺろりと舐める。


「ありがとう、ミーちゃん。やっぱりオレにはお前だけだよ!」

 現金なやつだけど、女に振られたくらいで泣く、そんな可愛いところも好きなんだよね。ちいさなちいさな稲妻が、あたしの喉でなっている。しゃがんで、あたしの震えるのどぼとけを触って、彼はやっとうれしそうな顔をする。


 ああ、よかった。


「にゃおん」

もう、浮気しちゃダメよ。そういうと、彼はあたしの頭をひとなでする。その日彼が買ってきた、誕生日プレゼントの缶詰めは、いつもより濃い、まぐろの味がした。









――――あたしは、ねこ。

今流行りのTwitterなるものをやっています。


Twitterにて、たまたま前作の感想を頂き、もう嬉しくて、わたしに恥というものがなければ、うひょー!と言って飛び上がってましたね。


友達へのメールでも言いましたしね(笑)


とにかくモチベーションだけが膨らみにふくらんで、


「あー!なんか書きたいー!」



でも、わたしが得意なのは長編ですし、複雑難解。ナンジャイナーなやつらばかり。設定段階で煮詰まっているやつらばかり。


「何かー。何かないかー!何かネタを……」


と、ネタに飢えたわたしが見つけたのは、今にも投稿しようと練っていたツイッター小説でした。


こやつは、かなり王道パターンですが、自分らしくてかなり気に入っています。



そして、そして!


久しぶりの投稿で、どっきどきしています。



ほんとに、いつぶり!


2006年て、わたしいつ書いたやつだよ!


まだ、未成年じゃないっすか!




……小説とちがい、あとがきは自由に書けるから好きです。



ミステリアスな作者を気取りたかったんですが、ネットでおともだち+作家ともだちがほしいため、あっさりやめました。



ここまで読んでくれたみなさん、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] とっても可愛いネコちゃんを想像しました。 最後にホッとできるお話でした。 ちなみに、私も作家友達を募集中なので、もし良かったら、よろしくおねがいします!
[一言] 読んでいる途中で「あ、これきっと普通に恋人の関係じゃないな」と考えていましたが、それでさえちょっとばかり裏切られた終わり方でした。 最後の最後まで「」でくくられたセリフがなかったり、読み返す…
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