第五話「logue1: 種」
『失敗は成功の種』。
そんな言葉を作った人間は、転生することもなく、死後きちんと裁きを受けただろうか。
人は失敗を恐れる。
だから失敗を失敗と思わないために言い聞かせる。
大丈夫、前に進んでいる。
いつかきっと成功するって。
僕は、この無責任な励ましの言葉が嫌いだ。
来るかもわからない“いつか”の為に、あてもなく失敗を続けるなんて馬鹿げている。
進歩のない努力なんて、ただの地獄でしかないというのに。
僕は何度も練習を繰り返した。
雨の日も、風の日も、平原に足を運び続けた。
それでも石は浮かばず、あの日見たメリダのような強風も起こせなかった。
報われない努力はある。
そんなことはこの世界に来る前から知っていた。
僕がまだ東京に住む高校生だった頃。
芸能界で働けという親の言い分を押し切り、高偏差値の大学の医学部を目指して勉強していた。
結果は散々だった。
医学部の道を諦め、僕は第一志望より一回り偏差値の低い大学の理学部に入った。
研究とバイトに明け暮れる毎日。
最初のうちは、それなりに充実していたと思う。
研究内容は、ナトリウム同士を通常ではありえない形で結合させ、その状態を安定させるというものだった。
化学を学ぶ人間からすれば、実質不可能な挑戦だ。
でも僕は、不可能に挑戦したかった。
親はそんな僕を否定した。
お前のやっていることは無意味だ。
働いて金を稼げるようになれって。
今思い返せば、親は正しいことを言っていたのかもしれない。
それでも僕は諦めなかった。
何度も何度も失敗して、そのたびに、自分が追い詰められていくのがわかった。
自分が嫌になった。
それでも、手を止めることはできなかった。
研究を始めて、二年が経つまでは。
その頃の僕は、もう自分に期待なんてしていなかった。
日課のように失敗を繰り返し、失敗することにすら何も感じなくなっていた。
僕は抜け殻だった。
口先では大きな夢を語りながら、それが叶うなんて、心の底では思っていなかったんだ。
そのことに気づいた僕は、大学生活の半分を残したまま、中退した。
それからのことは、よく覚えていない。
きっと死んだ魚のような目で、毎日を過ごしていたと思う。
僕は魔法の世界に生まれ変わって、
今までとは違う人生を送れると思っていた。
でも結局、何も変わっていない。
僕は何も成功させられない。
無能なままだ。
もう努力なんてしても、意味がないんじゃないだろうか。
そもそも僕は、なんで努力なんかしてたんだっけ。
こんなにぼろぼろになるまで。




