表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォーネウス・ローグ ―その復讐は、贖罪たり得るか―  作者: 愛沢 諒
第零章 心火篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/16

第五話「logue1: 種」

 『失敗は成功の種』。

そんな言葉を作った人間は、転生することもなく、死後きちんと裁きを受けただろうか。


 人は失敗を恐れる。

だから失敗を失敗と思わないために言い聞かせる。


 大丈夫、前に進んでいる。

いつかきっと成功するって。


 僕は、この無責任な励ましの言葉が嫌いだ。

来るかもわからない“いつか”の為に、あてもなく失敗を続けるなんて馬鹿げている。


 進歩のない努力なんて、ただの地獄でしかないというのに。


 僕は何度も練習を繰り返した。

雨の日も、風の日も、平原に足を運び続けた。

それでも石は浮かばず、あの日見たメリダのような強風も起こせなかった。


 報われない努力はある。

そんなことはこの世界に来る前から知っていた。


 僕がまだ東京に住む高校生だった頃。

芸能界で働けという親の言い分を押し切り、高偏差値の大学の医学部を目指して勉強していた。


 結果は散々だった。

医学部の道を諦め、僕は第一志望より一回り偏差値の低い大学の理学部に入った。


 研究とバイトに明け暮れる毎日。

最初のうちは、それなりに充実していたと思う。


 研究内容は、ナトリウム同士を通常ではありえない形で結合させ、その状態を安定させるというものだった。

化学を学ぶ人間からすれば、実質不可能な挑戦だ。


 でも僕は、不可能に挑戦したかった。

親はそんな僕を否定した。

お前のやっていることは無意味だ。

働いて金を稼げるようになれって。


 今思い返せば、親は正しいことを言っていたのかもしれない。


 それでも僕は諦めなかった。


 何度も何度も失敗して、そのたびに、自分が追い詰められていくのがわかった。

自分が嫌になった。

それでも、手を止めることはできなかった。


 研究を始めて、二年が経つまでは。


 その頃の僕は、もう自分に期待なんてしていなかった。

日課のように失敗を繰り返し、失敗することにすら何も感じなくなっていた。


 僕は抜け殻だった。


 口先では大きな夢を語りながら、それが叶うなんて、心の底では思っていなかったんだ。


 そのことに気づいた僕は、大学生活の半分を残したまま、中退した。


 それからのことは、よく覚えていない。

きっと死んだ魚のような目で、毎日を過ごしていたと思う。


 僕は魔法の世界に生まれ変わって、

今までとは違う人生を送れると思っていた。


 でも結局、何も変わっていない。

僕は何も成功させられない。

無能なままだ。


 もう努力なんてしても、意味がないんじゃないだろうか。


 そもそも僕は、なんで努力なんかしてたんだっけ。

こんなにぼろぼろになるまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ