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フォーネウス・ローグ ―その復讐は、贖罪たり得るか―  作者: 愛沢 諒
第零章 心火篇

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第十一話「愚兄」

 翌日、ラクアは元気なリーアの声で目を覚ました。


「起きて兄さん! もうお昼だよ!!」


 目を開けると、小さな手が全力で自分の体を揺さぶっている。


――やってしまった…

久しぶりの休日で、つい寝過ぎたか……


 ラクアは言い訳のしようもない罪悪感を覚えつつ、体を起こして居間へ向かった。


 リーアに急かされながら身支度を整え、テーブルに置かれていた作り置きの昼食を慌ててかき込む。


 予定より少し遅れて家を出ると、ラクアは誰もいない家をきちんと戸締りし、リーアの小さな手を取った。


 歩き始めたリーアは、すれ違う人々を少し怖そうに見上げながらも、ラクアの手をぎゅっと握りしめ、

「あれなに?」「ここどこ?」と、途切れることなく質問を投げかけてくる。


 ラクアは一つ一つ答えながら、約三年前、自分も同じように両親を質問攻めにしていたことを思い出し、思わず目を細めて懐かしんだ。


 商店街を通ると、いつも通り露店から声が飛んできた。


「よぉ、坊主!!今日は妹ちゃんも一緒に特訓か?」


「いいえ、今日は休みをもらってて。農場にいる父と合流してから、出かける予定なんです」


 ラクアは差し出されそうになった農作物を、「今日ばかりは」と断り、その場を後にした。


 ふいに、リーアがラクアを見上げる。


「兄さんは、やっぱりすごいね!」


「え? なんで急にそんなこと……」


 思いがけない言葉に、ラクアは少し照れながら聞き返した。


「お店のおじさんたち、みんな兄さんのこと大好きなんだなって。この前もね、お隣のおばさんが兄さんはすごいって言ってたよ!」


 その言葉に、ラクアは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じつつ、リーアの頭をそっと撫でた。


「リーアだって、みんなにすごく大事にされてるじゃないか。お前は俺なんかより、ずっとすごくなれるさ」


 撫でられたリーアは少し頬を赤らめ、満足そうに笑った。


 そうして並んで歩いていると、二人は装飾品がずらりと並ぶ露店の前を通りかかった。

金属や宝石が陽光を反射し、きらきらと輝いている。


 突然、リーアの足がぴたりと止まった。


「見て見て、兄さん!これ、すっごく綺麗!!」


 リーアは目を輝かせ、氷のように透き通った石で作られた髪飾りを指さす。

淡い光を受けて、冷たい輝きが揺れていた。


 その表情を見た瞬間、ラクアの胸に衝動が走る。


――これをリーアがつけたら……どんなに綺麗だろう。


 だが、値札を見た瞬間、その想像は無慈悲に打ち砕かれた。


「……に、二百ガルド……」


思わず声が漏れ、ラクアは固まる。


 その様子を見て、露店の店主がくつくつと笑いながら声をかけてきた。


「お前さん、たしかこの街の英雄とか呼ばれてる

 ラク……なんとかくんじゃないか?」


「初めまして。ラクア・シャーデットと申します」


 慌てて姿勢を正し、頭を下げるラクアに、店主は肩をすくめる。


「これはご丁寧にどうも、うちは他の店と違って高値のものしか取り扱ってないから、なかなか譲れるものがなくてね……」


「いえいえ、お構いなく」


 そう答えるも、店主は首を振った。


「だが、ウチだけ君に借りを作るのも癪だ。

好きなもの一つ持っていってくれ、それが漢の筋ってもんだ」


 ラクアは必死に断ろうとするが、店主の熱意と、期待に満ちたリーアの視線に抗えなかった。


 やがて観念したように、氷色の髪飾りを手に取る。そして、そっとリーアの白い髪に留めた。


「わぁ……!」


 リーアはその場でくるくると回り、弾けるような笑顔を見せた。

それを見て、ラクアと店主は、自然と顔を綻ばせる。


 やがて礼を言い、二人は商店街を後にした。


 街を抜けた二人は、延々と続くあぜ道を歩き始める。

 

 代わり映えのしない景色に、ラクアは少し退屈を覚えながらも、リーアを飽きさせないよう必死に会話を続けた。


 二十分ほど歩いた頃、ようやく景色が変わり始めた。


 はるか前方、手を繋ぐ兄妹の先に、木製の柵が見える。

それは数百メートル先まで続き、柵に沿うように道が伸びていた。


 ついに二人は、ジークの働く農場へとたどり着いたのだ。


 リーアは興奮した様子で手を振りほどき、駆け出す。

ラクアも慌ててその後を追った。


 柵の向こうには、黄金色に輝く小麦畑が広がっている。

水路を流れる水はきらきらと光り、あちこちから牛の鳴き声が響き、独特の獣臭が鼻をついた。


 そのとき、右手側の道から、ガラガラと音が響いてきた。

現れたのは大きな牛車だった。

黒く大きな牛の上には、一人の青年が跨っている。


 白髪の前髪は顔の中央で分かれ、整った額がはっきりと見えていた。

 切れ長の金色の瞳には、どこか揺るぎない自信が宿っている。


 白いTシャツに茶色の長ズボンという、いかにも田舎らしい格好ではあったが、それを打ち消してしまうほど顔立ちは整っている。

 

 その容姿はラクアが、「好青年」という言葉は、この男のためにあるのではないか、と思うほどだった。


「あれ、もしかして君たち、

ジークさんの息子さんと娘さん?」


 青年の声は、聞く者を落ち着かせるような優しいものだったが、どこか年相応の幼さも残っていた。


「こんにちは。ラクア・シャーデットと申します」


 ラクアはすぐに、深く頭を下げる。

それを見て、リーアも慌てて同じように頭を下げた。


「これはご丁寧にどうも。俺は君たちのお父さんの元で働かせてもらってる、レオンハートという者だ」


「そうでしたか。いつも父がお世話になっています」


 レオンハートは、ラクアの子供離れした態度に一瞬目を丸くしたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。


「いやいや、こちらこそ君達のお父さんには感謝してもしきれないよ……おっと、もう少し話したいところなんだけど先に伝えなきゃいけないことがあってね」


 そう言って、ズボンのポケットから一枚の紙切れを取り出す。


「俺の伝言だけじゃ、賢い君は知らない人の言葉を信用しないかもしれないってジークさんが」


 ラクアは紙を受け取り、書かれた文字に目を走らせた。


―――――――――――――――――――――――  ラクアとリーアへ


長旅ご苦労様。午前で終わるはずの仕事が少し長引いてしまってね。私はここから少し先にある村の商店街まで行って仕事を終わらせてくるから、二人はそこにいる青年に、私の居る街の入り口まで送り届けてもらってくれ。


                  ジーク

―――――――――――――――――――――――


 筆跡は、間違いなくジークのものだった。


 気づけばリーアは、すでに牛が引く荷台によじ登っていた。


「兄さん! はやくはやく!」


 急かされ、ラクアも苦笑しながら荷台に乗り込む。

レオンハートが牛にまたがり、牛車はゆっくりと動き出した。


 揺れる荷台の上で、ラクアは延々と語られる「ジークがどれほど素晴らしい人間か」という話を聞き続けることになった。


 ラクアは家族を褒められて悪い気はしなかったが、それもさすがに続きすぎると、少し退屈になってくるのだった。


 やがて林を抜け、街の入口にたどり着く。

門番の立つ門前で、牛車は止まった。


「悪いけど、送れるのはここまでだ。俺はこの先の村に用事があってね」


「父の手紙にもそう書いてありました。ありがとうございました」


 ラクアが頭を下げると、リーアもぺこりと真似をする。


「こちらこそ楽しかったよ。……そうだ、ラクア君」


「はい?」


「俺の一番下の弟が君と同い年でね。レグルスと言うんだが、少し人見知りなんだ。どこかで会ったら、仲良くしてやってくれないか?」


 冗談めいた笑みを向けられ、ラクアはすぐに頷いた。


「はい。ぜひ!」


 そうして二人はレオンハートと別れ、街の中へと足を踏み入れた。


 街の入り口に設置された掲示板で地図を確認し、ラクアはまっすぐ商店街へ向かった。


 街並みはカルケルと大きく変わらない。

ただ、道は少し入り組んでいて、初めて来た人間には困難な造りだとラクアは思った。


 商店街へ到着し、足を踏み入れようとしたその時、二人の前に、男が二人立ちはだかった。


 黒地に白い線が走るローブ。

ラクアはすぐに、その正体に思い当たる。


――防衛員……警察か


「君たち、子供だけで何をしている?」

「最近、家出の子供が多くてね。目的を聞いてもいいかな」


 穏やかな口調だったが、視線は鋭い。

ラクアは一瞬で状況を判断し、簡潔に答えた。


「父を探しています。この商店街にいるはずなんですが」


 そう言って、ジークの外見や仕事の特徴を手短に説明する。


「おい、それってさっき八百屋の前にいた男じゃないか?」


「ああ、いましたね。君たち、ついて来るがいい」


 男たちはそう言って踵を返す。

ラクアとリーアは、その後を追った。


――よかった。これならすぐ合流できそうだ。


 一行は商店街の中を進んでいく。

角を曲がるたび、人の気配が少しずつ薄れていくのがわかった。


――ジークは、こんな場所で何をしているんだ?

そもそも俺たちは、本当にジークの元へ向かっているのか?


 小さな違和感が、ラクアの胸に引っかかり始めた、その時だった。


 前を歩いていた男二人が、急に足を止めた。


 辿り着いたのは、人通りなどほとんどない薄暗い路地裏だった。

両側の壁にはレンガが積み上がっている。


 そして、防衛員の男たちの前に、二人の男が立ちはだかっていた。


 袖の破れた服。

 奇抜な髪型。


 その格好を見ただけで、ラクアは直感的に理解した。

ならず者だと。


 嫌な予感に、ラクアはリーアの手を強く握ろうとした。


 しかし、その手はすでにそこになかった。

反射的に振り返ったラクアは、息を呑む。


 前方にいた四人とは別の屈強な男が二人。

片方はリーアの背後に立ち、片手で口を塞ぎ、もう一方の手で小さな体をしっかりと拘束していた。


「――ッ!!」


 ラクアが声を上げようとした、その瞬間。

強烈な衝撃波が腹に叩き込まれ、体が宙を舞った。


 地面に叩きつけられながらも、ラクアはすぐに身を起こす。

目の前では、防衛員の一人が、ラクアに手を向けていた。


「便利だよなぁ、このローブ。着てるだけで、みんな簡単に信用してくれるんだからさぁ」


 男二人は笑いながら、ローブを脱ぎ捨てた。


 その瞬間、ラクアは悟った。


――人攫いだ……


 ローブを脱ぎ捨てた男の一人が、冷たく言い放つ


「ガキは一人で充分だ。そいつは殺してかまわん」


 その言葉を合図に、男たちは一斉に武器を取った。


 ラクアは瞬時に 探知眼(レイダ)を開眼し、上下を除いた全方角へと視線を走らせる。


――全員で六人……武器持ちは四人。

優先すべきは――


 ラクアは迷わず、両手を左右へと向けた。

その先には、剣を構えた男が一人ずつ立っている。


 周囲に聞こえないほどの小さな声で、短く呟いた。


「『浮遊(リフラクト)』」


 直後、ゴンという鈍い音が二度続いた。


 二人の男が、糸が切れたように前のめりに倒れ込む。

そのまま地面に転がり、ぴくりとも動かなくなった。


「気をつけろ!!」


 先程までローブを着ていた男が声を荒げる。


「お前らの背後にあるレンガだ!

あれで不意打ちしてきやがった!!」


――クソッ……初見で見破られた………


「このガキィッ!!」


 大きな斧を持った男が地面を蹴り、ラクアへと突っ込んでくる。

振り下ろされた刃が、一直線に迫った。


 ラクアは右手から強風を噴き出す。

その反動で体を左へ弾き、刃を紙一重でかわした。


 そのまま滑らかに着地したラクアは、探知眼(レイダ)から極視眼(ジェノス)へと瞬時に切り替えた。


 ラクアは地面に散らばる砂利を掴み、風魔術で発射した。

狙いは、切りかかってきた男の目。


「ぐぁっ! 目がぁぁっ!!」


 男が悲鳴を上げた瞬間、ラクアは間を与えなかった。

すぐさまレンガを浮遊魔法で男の顔面へと叩き込む。


 喚いていた男はそのまま崩れ落ち、静かになる。


――こいつら、連携が取れていない。戦闘に関しては素人同然だ


「逃げろお頭!! 俺が止める!!」


 叫び声に、ラクアは振り返った。


 防衛員に扮していた男の一人が、薙刀を持ってラクアの前へと立ちはだかっている。

その背後では、涙目になったリーアが、別の男二人に抱えられていた。


「うおぉぉっ!!」


 ラクアの前に立つ男が、唸り声と共に突進してくる。

その速度は、先程倒した男達とは明らかに違っていた。


――速い……!


「『風刃(ウィンド・スラッシュ)』!!」


 ラクアは風を刃の形へと素早く凝縮し、振り下ろされた刃を正面から迎え撃つ。


ガァン!!


 二つの刃がぶつかり合い、金属音が路地に響き渡った。

衝撃が腕に走り、足元の砂利が跳ねる。


――でも、着いていける……先生はもっと速かった!


 ラクアは右手で風刃を保ったまま、もう片方の手を背後へと伸ばす。


 その先、数メートル後方に転がっていたレンガがふわりと浮かび上がり、一直線にラクアへと飛来した。


 レンガは速度を落とすことなくラクアの股下を通過し、そこから急上昇する。


ゴンッ!!


 鈍い音と共に、レンガが男の顎を下から打ち抜いた。

男の体は宙を舞い、そのまま地面へと叩きつけられる。


 男は動かなくなった。


 伸びた男に一瞥もくれず、ラクアは顔を上げる。


「リーア!!」


 必死に妹の名を呼ぶ。

だが、返ってくるはずの声はどこにもなかった。


 つい先ほどまでリーアがいた場所には、誰の姿もない。

残っているのは、踏み荒らされた地面と、虚しく舞い上がる砂埃だけだった。


 

---



 一時間後、ラクアは待合室のような部屋で、固い椅子に腰掛けていた。


 傍らには顔色の悪いメリダ、そしていつもと違い、険しい表情をしたジークが立っている。


 リーアの姿が消えた直後、ラクアは迷うことなく近くの交番、防民館へと駆け込んだ。

そこで本物の防衛員に、起きた出来事をすべて話したのだ。


 防衛員の男たちは即座に状況を整理し、行動を開始。

十分後にジークが、三十分後にはメリダが到着した。


 メリダは取り乱してはいたが、ラクアの姿を見るなり強く抱きしめ、

「無事でよかった」と、震える声で何度も繰り返し、ラクアの頭を優しく撫でた。


 自分の不安よりも先に、子供を安心させようとするメリダを見て、ラクアはひどく感心した。


 一人を除いて家族が揃ったところで、再び事情聴取が始まった。


「それで……防衛員に扮していた男に、リーア・シャーデットさんが連れ去られたと。男たちの見た目に特徴はありますか?」


「何度も言いますが、男は二人。服はボロボロで、筋骨隆々。片方は妙に目立つ髪型をしていました」


 防衛員は焦りも見せず、ゆっくりと質問を繰り返す。

その態度に苛立ちを覚えながらも、ラクアはひとつひとつできる限り正確に答え続けた。


 そんなやり取りが二十分ほど続いた後、防衛員はようやく口を開いた。


「わかりました。ただいま防衛省本部に調査員の派遣を要請しています。捜索は、調査員が到着次第……おそらく明日の朝ごろ開始すると思われます」


 その瞬間、ラクアの胃の奥が、すっと下に落ちたような感覚に襲われた。


「……明日!?リーアは、今この瞬間にも殺されているかもしれないんですよ!!」


「そう言われましても……調査員ではない私どもは、事務対応が専門でして」


 防衛員は申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、それ以上踏み込もうとはしなかった。


 声を荒げるラクアを、メリダが必死になだめる。

だがその表情からは、絶望の色を隠しきれていない。


 事情聴取が終わり、三人はそれぞれ別の部屋に通され、防民館で仮眠を取ることになった。


 ラクアは一人、ベッドに横になりながら天井を見つめていた。

胸の奥で渦巻く不安がどうしても静まらず、眠気は一向に訪れない。


コン、コン。


 不意に静かなノック音が、ラクアの耳に届いた。


「開けるぞ」


 その声は、ラクアが何度も聞いてきた、尊敬してやまない師の声だった。


 扉が開くと、そこにはいつも通り無表情のリーファが立っている。

ラクアと目が合うと、何も言わず部屋へ入り、椅子に腰を下ろす。


「武装した大人四人を倒したと、防衛員が言っていたが……外傷がひとつもない所を見るに、苦戦はしなかったようだな」


「運が良かっただけです。四人中二人は、子供の俺を完全に侮っていましたし……一人は、戦い慣れていない様子でした」


 ラクアは俯いたまま、淡々と答える。


「最後の一人も、うまく死角を突いて倒せました」


 そこで、言葉が一瞬だけ途切れた。


「……でも、俺は一番大切なものを守れなかった」


 噛み締めるように放たれたその一言には、隠しきれない悔しさが滲んでいた。


「俺は、あの時から……何にも変わってない……」


 声が、わずかに震える。


「友達が切り裂かれるのを、黙って見ていることしか出来なかった、あの時から……何にも……!!」


 気づけば声は大きくなり、ラクアは拳で壁を叩いていた。


「確かにお前は、友を守れなかった。

だがその敗北があったからこそ、お前は強さを求め、大人相手にも勝てるようになった」


 悔しさを剥き出しにするラクアを、リーファは冷静な眼差しで見据える。


「敗北を意味あるものにするかどうかは、その後の行動で決まる」


 静かな声が、はっきりとラクアの胸に届く。


「お前は妹を救い出すことを、諦めるのか?」


 その言葉に、ラクアははっと目を見開いた。


「違うだろう?……なら下を向くな。前を向け。

次にお前が尽くすべき最善を見据えろ」


 鋭い視線が突き刺さる。


「お前が今、やるべきことは何だ?」


 ラクアは言葉を失い、思考に沈んだ。


――俺が今、選ぶべき道は……


 答えが口をつくより先に、リーファが静かに口を開く。


「捜索は明日から始まるそうだが、私は今夜から単独で動く」


 淡々とした声音だった。


「私が掴んだ情報では、誘拐犯は街の南側にいる可能性が高い」


 リーファは椅子から立ち上がり、扉へと歩き出す。


「お前自身が、後悔しない選択をしろ」


 そう言い残すと、リーファは振り返ることもなく、部屋を出ていった。

扉が閉まり、部屋に残されたのは、ラクア一人だった。

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