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伝書鳩は今日も馬に乗る

「おお、ハシュ。すっかりここの馴染みになったな」


 気さくなようすで声をかけてきたのは、十月騎士団の厩舎に所属している騎馬十数頭を管理している男たち――厩務員のひとりだった。


 ――()()()()()()、ハシュの父よりもすこしは年上だろうか。


 そんな彼に顔を覚えられ、親しげに声をかけてもらえるようになったことに悪い気はしないが、馴染みと言われると、それだけ伝書鳩としての日々酷使される姿も板についてきたのかと思えて、気分も複雑になる。

 最初こそこういった声かけには世間体よろしくの愛想笑いで流してきたが、ハシュも厩務員と気さくになっていくうちに愛想も尽きて、つい本音が露呈するようになってしまい、


「――まったく、ここの上官たちはほんとうに人使いが荒いですよ! 十月騎士団は文官のトップなんだから、もっとスマートな人柄ぞろいだと思っていたのに!」


 つい、むすっ、としてしまうと、


「何、文官がスマートでいられるのも新人のうちだけだ。酷使されて、怒鳴られて。食っても、食ってもちっとも肉がつきやしない」

「確かに。――食欲は落ちていないのに、十二月騎士団にいたときよりも痩せてきたような気がします」


 言われて、ハシュは何となく自分の腰まわりを撫でてみる。

 騎士とは言えど文官なので帯剣はしていないが、本来なら凛々しく剣を装着させたかった細い腰は、この三ヵ月でベルトの長さを何度か調整している。

 そのしぐさに厩務員は笑い、


「だからといって、何を食べても太らないと思ったら大まちがいだからな。気をつけろよ?」

「?」

「身のこなしがスマートなのと、見た目の体型がスマートなのは、いまのうちだということだ」

「え……っと?」


 それはどういうことだろう、と思い、はて、とハシュが何度かまばたくと、


「新人時代はとにかく酷使されて動きまわるが、それも過ぎればあとは執務室で書類裁きに泡を吹くだけでちっとも動かなくなる。動かないのに腹が減って食っていれば……さて、どうなる?」


 ちょっとした問題をかけられて、ハシュは上官たちの日々を脳裏に浮かべる。

 確かに過酷な外回りをさせられるのはハシュたち伝書鳩の仕事だが、そうやって集めてきた書類をとにかく素早く正確に裁く上官たちが執務室の机から動くようすはあまり見たことがない。


「まあ、上官という立場である以上、多少は迫のために恰幅のよさも必要だろうが、身についた肉は知識よりも簡単に落ちはしないぞ?」


 厩務員の言うそれを浮かべると、確かに体型的にスマートさを維持している上官は年齢層が増すにつれてすくなくなっている気がする。


「あ、はは……」


 ――なるほど、そういう揶揄含みか……。


 意外とこの人は辛口だなぁ、とハシュは思いながら、


「そういう理論でいうと、俺は体型維持のために四月騎士団と五月騎士団の庁舎に喜んで赴かないといけないんですね。反省します。――けど……もう午後だっていうのに、とんだ手間ですよ!」

「何だ、ハシュ。これから四月騎士団と五月騎士団に向かうのか?」

「ええ、そうですよ。ほんとうなら五月騎士団の内務府庁舎だけでよかったのに、誰かがついでに四月騎士団まで行ってこいって言うものだから」

「そりゃあ、体型維持には充分な距離だな。でも、せめて午前のうちに言ってくれれば余裕もあったというのに」

「でしょ?」


 そう言いながら、ハシュはこれから騎乗する騎馬をどれにしようかと選びはじめる。

 文官の騎士団に騎馬などほとんど必要ない。

 そう思われがちだが、伝達係の伝書鳩を有する十月騎士団ではとにかく書類を各騎士団から集めて判を捺し、渡すという作業が主体のため、思いのほか頭数も用途に合わせた馬力を持つ種類も豊富にそろえられている。


 ――とにかく、火急の伝令に必要な速さを活かすことができる競走馬。

 ――荷運びや馬車引きを得意とする、けん引馬。

 ――競走馬には速度こそ劣るが、脚力は充分にあり、持久力と耐久に優れ、その身が背負う重量にもへこたれることのない軍用馬。通称、軍馬。


 これらは武官の騎士団である騎馬隊で構成される八月騎士団で活躍していた名馬たちが現役引退して譲渡されたものだが、だからこそ、どの騎馬も優秀で、文官の騎士団のなかでは破格なほどそろえられているし、


 ――これら実用とは異なるが、騎士たちの息抜きに用いられるポロのような馬上スポーツに適した小回りが得意な馬。

 ――また、障害飛越などの人馬一体の技量が試される、競技能力に長けた馬術用の馬など。


 これらも数頭いて、あつかうことのできる文官が非番のときに馬場で遊んだりしている。

 トゥブアン皇国では十二ある騎士団のうち、正式なる騎士団は十一。

 そのいずれかに入団するには、まず少年兵を育成する十二月騎士団への入団が絶対条件で、将来、武官、文官どちらの騎士になるにせよ二年間の厳しい修練のなかで馬術はかならず経験する。

 なので、まったく騎馬ができないという者は騎士にはいないし、


 ――加えて、この皇国は広大だ。


 一般人として暮らすにしても、馬の脚がなければ道中の移動も大変困難になるので、トゥブアン皇国の国民にとって馬は騎士も含めて移動手段のための乗騎という意識が強く、生活に不可欠な存在でもある。


 ――無論、一般人と騎士とでは乗りこなす技量や求められる技術も異なるが。


 そうやって十月騎士団の厩舎にそろえられている騎馬たちを選んでいるハシュを見て、騎馬にとってもすでに馴染みとして認識しているのか、毛色もさまざまな彼らが柵から顔を出して挨拶をしてくる。


「あはは、ごめん。いまは遊んでいられないんだ」


 などと言ってみせるが、馬は好きなので一頭ずつ丁寧に彼らの鼻先を撫でてやる。

 新人文官の伝達係のなかでもハシュは友人のように騎馬と接するものだから、誰置かれもがハシュに懐いて相手をしてほしくて、もっと撫でてくれ、とじゃれてくる。

 なかでも、毛艶が黒衣の騎士を彷彿させる精悍な顔つきの競走馬である黒馬(こくば)が「自分を使え」と訴えるようにハシュに鼻先を押しつけてくるので、


「わッ、ちょっと待ってよ、待って!」


 あまりの主張の激しさにさすがのハシュもあわてて手で押さえ、やれやれ、といった顔つきの厩務員がかわりに黒馬の鼻先を「ぺし」と叩いて助けてくれる。


「――まったく、この黒馬にこうまで懐かれるとは。お前さんの馬術の技量も相当のものだな」

「そうでしょうか……?」

「そうだ。俺も昔は八月騎士団の武官を経験している。騎馬と騎手を見る目は本物だ」


 厩務員は文官としての生活が長かったというが、厩舎での手際が語るように武官も経験している。

 武官が文官に転属するというのは珍しくないが、大抵、その理由も怪我による現役続行不可能が多いので、あえて尋ねる者はハシュを含めて界隈では存在しない。――いわば、暗黙というやつだ。

 ただ彼の経緯は珍しく、文官となった以降の最終経歴は国府の五月騎士団でもずいぶんと地位のある高官にあったらしいが、どうも文官の騎士団が所有する厩舎の世話の雑さが目に余り、早くにあっさりと退官。

 つまり「騎士」の「号」を返上して、いまは人馬の調教師も兼ねて、ここ十月騎士団を中心に文官の各騎士団の厩舎や厩務員の指導にもあたっているという。


「この黒馬はまだ若く、本来であればまだまだ現役として騎馬隊で構成される八月騎士団に所属することも可能だったろうが……」


 如何せん、気位が高くて気性が荒い。

 脚の速さと性格だけなら騎馬隊の武官たちにも人気があったが、武官の騎士団に所属する以上、個の性格より絶対的な従順さが必要とされる。

 それを持ち合わせる態度がなかったため、黒馬は早々に統率を必要とする武官の騎士団に身の置き所を失った。

 とはいえ、脚力と速度を誇る競走馬としては充分現役も続行できる。そのため、用途のある十月騎士団の厩舎で第二の人生……馬生というべきものを歩んでいるのだが……。


「こいつの気性は、武官に愛想を尽かれたところで我関せず。おかげでここ十月騎士団の文官じゃ手に負えないところを、まさか――新人文官でこいつを乗りこなすやつが出てくるとはな」


 しみじみ言う厩務員に、ハシュもやや乾いた笑いを放つ。


「あ、はは……。俺も最初は振り落とされそうになりましたけど」

「まあ、あのときはさすがの俺も肝を冷やした」


 それはハシュにとって、危うく人生三度目の落馬を経験するところだった。

 現場は、この厩舎。

 今期の新人文官の伝達係に馬術に長けたのがいると聞いて、試しに黒馬を紹介して危うく落馬させそうになった負い目が縁で、厩務員は何かとハシュを気にかけている。

 そう――。

 最初こそ負い目のほうが多かったが、いまは日々馬術の技量が上がるハシュを見ているのが楽しくてならない。

 ハシュもそんな経験豊富な厩務員に十月騎士団の伝書鳩としてのノウハウを教えてもらい、どうにかこうにか要領を学んでいる。

 本来、いわゆる法の抜け道的な教えはハシュの性には合わなかったが、やってみると思いのほか自分にもできる。悪い意味でそれがわかってきた。

 その最たる学びが、


 ――結論として、上官が必要とする書類を集めさえすればいいということ。


 何も、上官に言われた順序で書類集めに回る必要はない。

 今日のうちに集めろと言われたのであれば、その順序は自分の立ち位置から決めてもかまわない。最終的に上官たちが欲しいときに、ハシュがすっと差し出せるよう書類を手にしていればいいのだ、と。

 伝書鳩には伝書鳩の動きがある。

 ハシュもようやく良い意味で悪知恵を使えるようになり、その理論を脳内で構築させる。


「先に五月騎士団への用向きを頼まれましたが、午後の残りの時間を考えたら先に四月騎士団を訪ねたほうが回りやすい。なので、このまま競走馬のこの黒馬を乗騎にしたいと思うので用意をお願いします」


 ハシュが言うと、厩務員が「ほう?」とその思考を試すような顔つきをしてくるので、ハシュもはっきりとうなずき、


「ここからだと、皇宮に庁舎を持つ四月騎士団のほうが近いです。なので、黒馬の脚で一気に時間を稼いで、一度戻ってきて書類を提出して、そのあとすぐに五月騎士団の内務府に向かうので、軍馬の用意もお願いします」

「軍馬?」

「ええ。きっとあちらから受け取る書類のほうが量もあるし、行きも帰りも距離があるので、重いものを運ばせるのなら軍馬のほうが適しています」


 ハシュたちが日々、各騎士団の庁舎を奔走して集める書類の量は確かに多いが、だからといって馬車を使うほどの量でもない。

 だが、書類という魔物はときとして運ぶのに箱や鞄を必要とする量に化けることもあるので、それでは脚力がすべての競走馬では必要以上の重みを背負わせることによって脚に負担がかかり、場合によっては痛める可能性もある。


 ――一方。


 速度こそ劣るが、現役時代の軍馬は鎧甲冑を着こむ武官騎士たちを騎乗させて戦場を駆ることを想定した訓練を積み重ねた、真に耐久と持久力を持ち合わせている。

 その経験を持つ軍馬であれば、ハシュでは抱えきれない量の書類を受け渡されたとしても専用鞄にまとめてもらえれば運べることができるし、持久力が持ち味の脚力で走ることもできるのだ。

 ハシュたち伝書鳩はおもにこの二種類の騎馬の特性を生かして、日々皇都地域中を奔走している。


「なるほど。合格点だ」

「ありがとうございます!」


 どうやら上官経験者として、ハシュが立てた判断は適切に思えたのだろう。

 まるで少年兵時代に世話になった馬術の教官のような口調で厩務員が褒めてくるので、ハシュも思わず姿勢を正して返してしまった。

 そうと決まれば厩務員の用意も早かった。

 先ほどからハシュに対して強い意気込みを見せていた黒馬を連れて来るなり、手早く乗馬用の馬具を装着させる。

 その最中、


 ――自分を登用するのは当然だ!


 と、黒馬は誇らしげに鼻息を鳴らして、嬉しそうにハシュに顔を擦りつけて離れなかった。偉ぶっているのか、甘えているのか。黒衣の騎士を彷彿させる精悍な黒馬を撫でながらハシュも笑う。


「スピード勝負ならきみが十月騎士団一の早馬だからね。最近、ほんとうにお世話になっているよ」


 そう……ほんとうに。

 この気位高い黒馬を乗りこなせるようになってからは、ハシュは時間を惜しむときはほとんどといってこの黒馬を騎馬に選び、その脚力に助けてもらっている。

 おかげで黒馬はハシュ以外を乗騎させるのを嫌がり、いまではすっかりハシュの専属馬のような立場になってしまった。

 ただ……。

 ハシュにとってそれは好都合だったが、元は騎馬隊で構成される八月騎士団の競走馬。書類取りの伝書鳩を背に乗せて走らせるのは、黒馬のこれまでの栄光を思うとあまりにも格下げの役回りに対して申し訳なくも思えてしまう。


「ごめんね、伝書鳩二号としてすっかり酷使しちゃって」


 ついそんな顔をしてしまうと、厩務員がやれやれといったような顔でかるくハシュの頭を叩いてくる。


「――てッ」

「何言っているんだ。伝書鳩――十月騎士団の伝達係は、新人文官騎士のなかでもっとも重要な役どころ。日々、上官からの酷使に辟易もするだろうが、決断の長を冠する上層部がいち早く全体の状況を知り、素早く決断するには、ハシュたち伝書鳩の機動力がモノを言う。いわばお前さんたちの動きが国情、国政を支えているんだ。立派な務めじゃないか」

「そ……そうでしょうか?」


 ――そうかなぁ?


 元、国府の五月騎士団で高官まで登りつめた厩務員が言うと説得力はあるが、


 ――伝書鳩。

 ――伝書鳩。


 それが正式名称ではなく、確実に職務をこなせる伝達係についた愛称であるのは百も承知だが、実際は何やら小間使いのような面も出ている気がするので、もとともは武官を目指していたハシュにはどうも下っ端的な立場に思えてしまい、褒められても素直に身を正せない。

 もし武官として、できることならずっと憧れていた剣技の六月騎士団の武官騎士として採用されていたならなぁ……と思うと、どうしても書類取りの現実にうなだれてしまうのだ。

 ハシュの、そんな肩の落としように厩務員は呆れたため息をつく。


「まったく――。しゃんとしろ、ハシュ。伝書鳩の役目もそうだが、現役引退をして譲渡された騎馬とはいえ、本来馬の矜持は低くない。こいつらは自分の脚のすべてをかけて騎士たちを支えている。それに値する人物にしか馬は真価をあらわさない」

「真価……?」

「ハシュ、お前さんは馬術に優れている。馬たちは自分の真価を発揮させてくれる騎手がお前さんだから高く評価して、その価値で全力疾走してくれているんだぞ。騎手としてもっと胸を張れ」

「は、はぁ……」


 ――胸を張れ、か。


 騎馬たちがそうやってハシュを評価してくれるのは嬉しい。

 じつを言とハシュは海辺の町育ちのため、少年兵を育成する十二月騎士団に入団してからはじめて馬術を習ったので、経歴としてはまだ二年とあまりにも浅い。

 だが――。

 鍛錬は厳しかったが、コツを掴んで慣れてしまえば騎馬は楽しくなったし、上級生と呼ばれる二年生になった後半には騎馬隊で構成される八月騎士団の武官たちに一目置かれるほどの腕前になって、剣技こそ時間を重ねるごとに上位の同期たちに追いつくこともできない差を付けられてしまったが、馬術だけはそれらと真逆に差をつけて、ハシュは思わぬところで才能を開花させた。

 これは後に知ったのだが、ハシュが少年兵を修了する時期、ハシュという新人騎士の獲得に前向きだったのは文官の十月騎士団だけではなく、武官の八月騎士団も相当躍起になっていたという。

 人生の着地地点とは、まったくもってわからない。


「とくにこの黒馬は、ただ走るだけじゃ物足りないと言っている。自分に騎乗する騎手がいかに自分の実力を華麗に引き出してくれるのか。そこに矜持のすべてを懸けているからな」

「え? 馬の言葉がわかるんですか?」


 そんなことを厩務員が言ってくるので、ハシュも釣られて真顔で問うと、これには厩務員ではなく黒馬のほうが心得たように笑った。――そんなふうに口もとがつり上がったようにも見えた。


「――さぁ、用意は整った。行ってこい、ハシュ」

「ありがとうございます」


 ハシュも競走馬騎乗用の手袋をはめると、黒馬に手を伸ばす。


「今日も頼むよ。俺もきみの脚は気に入っているんだ」


 騎乗前にもうもう一度黒馬に顔を寄せて額をつけると、黒馬も満足げにうなずいた。

 そのあとすぐに、ハシュは軽やかに黒馬の背に騎乗する。

 競走馬は座高があるので、騎乗すると視線が変わる。それは気分さえも一変させるほどの爽快感があり、先ほどまで伝書鳩としての立場にまだどこかで不満を燻ぶらせていたハシュの表情に変化をもたらした。

 馬上で顔を向ける方向は、ただひとつ。――前しかない。

 年ごろの少年らしい表情がきゅっと締まり、暗めの橙色の瞳もキッと鋭さを帯びた。

 その凛々しい左目の下には、ハシュのチャームポイントであるほくろがあって、いまはそれさえも鋭気の印象を与えている。


 ――これで、軍装が武官だったらなぁ……。


 腰には帯剣を!

 長い外套が風で風雅にはためいて!

 勿論、正式軍装に鎧甲冑を纏うのもカッコいいが、できたら式典や祭典で着用する盛装もいいなぁ……。

 などと脳内の妄想で自身を飾り付けると、ハシュはゆっくりと厩舎から出るなり、黒馬が得意とする瞬発力を一気に発動させる。


「はッ!」


 普段の喜怒哀楽に富んだようすとは裏腹に、腹の底から発した声には新人文官というよりは若き騎士と表現するにふさわしい力強さがあった。

 ハシュは黒馬を疾走させて、あっという間にその姿を消してしまう。

 そんなふうに出発したハシュを見送る厩務員は、どこか惜しそうに口端をつり上げた。

 せっかく懐いた伝書鳩は可愛いが、才覚が定まっているのだ。とことん伸びる場所で育ててやるのが適材適所というもの。剣技で立つには不十分かもしれないが、騎馬隊で徹底して仕込めば近い将来は皇国に名を馳せる逸材にもなるだろうに。


 ――いったい何の因果で十月騎士団に所属しているのだろうか?


「こりゃあ、近いうちに八月騎士団が本腰入れて捥ぎ取りに来るぞ――」

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