「お前らしい」
「お前らしい」
そんな言葉をかけられて、少し心が傷んだ。
なぜ傷んだのか、自分は考えるフリをしていた、とっくに答えは出ていたのに自分自身、その答えに向き合おうとしていないのだ。
中学二年の自分にはその答えに真っ向に向き合う事は出来なかった。
あと一年、あるのだから。
「やっぱりお前は面白いよな!」
同じクラスの男子がそう、自分に言ってくる。
「お前って大人しいよな」
三年後、同じクラスの男子がそう、自分に言ってくる。
着けた仮面は心臓のように離せない。
なぜなら周囲の目が気になってしまうから。
でもそんな周囲の人たちはみな、自分にこう告げる。
「お前らしい」
中三の夏休みが明けた頃自分は学校の自分を忘れた。
夏休みは中二や中一の頃とは違い、みんな受験で忙しく、友達と遊ぶ機会などなく、中学最後の夏終わった。
自分はどんな顔をして生きていたのだろう。
鏡を見ながら過去を振り返る。
「自分はどんな性格をしてたんだろう」
鏡の自分が溶けていく。
そんな妄想を見る。
ドロッと溶けた自分の顔は複数存在していた。
幼児期の頃の顔、小学生の頃の顔、中学生の頃の顔、家にいるときの顔、一人の時の顔。ほか多数。
すべて自分の顔。自分の顔が自分を睨んでくる。だがその顔はみな違う顔をしている。
全部自分なのに……
溶けた顔を鏡を見ながら手で整える。
複数ある顔の中から一つを取り除き自分の顔面にはめる。
「これか?」
顔はひび割れており、今にも割れそうな顔だった
そうだ、もうすぐ壊れるんだ。
´新しい顔を作らなきゃ´
そんなことを思いながら鏡の自分にパンチした。
その後、普通に準備をし、普通に家を出て、普通に学校に着く。
教室が目に見えてきた。一人窓ガラスを見る。そこに映る自分は本当に自分なのか、心配になってきた。
「おはよ~!」
「おう!おはよう!」
友達に普通の顔で返事をされた。
よかった。
自分だ。
~数日後~
顔が形成を保てなくなってきた。
今にも壊れそう。
というかもう壊れている。
自分の顔を作らなきゃ。
「あれ……」
ふと嫌悪感が自分を襲う。
「もう、疲れたや……」
次の日、どんな顔をして行ったのだろう、じぶんでもわからない。
いつもよりバカ静かに椅子につく。
みんなはどう思っているんだろう。
わからない、わからない、わからない。
ひそひそ聞こえる。
自分の噂でもしているんだろうか。
気になる。気になる。
「なぁ、今日お前どうしたんだよ」
「どうって?」
友達が話しかけてくる。
「いやぁそのなんてぇか?´いつものお前じゃねぇなって´」
「そうそう!´お前らしくない´ぞ!」
「´おまえらしく´ないぞ!」
´おまえらしい´??
そう聞いた時にはもうじぶんは教室にはいなかった。
~翌日~
顔は自分と理解した。
自分は学校に行った。
「いつものお前だ!それがお前らしい」
「お前らしいよ」
そう聞いても嫌悪感はない。
心も傷つかない。
心地がいい。
ははっ、何をそんな考えていたんだろう。
これが自分なんだ。
これが自分。
自分。
自分。
自分。
自分……
背後には自分を睨んだ自分が行列を作り、それは一生ついてきた。
今もだんだん列は長くなる。