【悲報】私は犬獣人の番いだった
「【悲報】犬獣人の番いが見付かった」
そう言って、歓迎?してくれたのは、私の番いの幼馴染の少女。
幼馴染という立場から見下しているように聞こえる言葉だけど、憐憫に満ちた表情がすべてを語っている。
憐憫?
「?」
「犬獣人は誰にでも愛想振り撒く屑野郎だから、付き合ったら誰にでも良い顔して、ドアマット扱いするから、ガンバ」
「?! え? 何それ?!」
マウント発言が来たと思ったら、不良物件に我慢しろと、励まされた。
「カイのお母さんの実体験だよ」
私の番いのお母さんの実体験らしい。
「そ、それって・・・」
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「仕事と番いの私、どっちが大事なの?!」
メンヘラみたいな発言だけど、仕事を理由にデートをドタキャンされたこと×毎週。
やってられるか!
それも、可愛い同僚なり、後輩なりの尻拭いで一緒に残業して。
やってられるか!
これが幼馴染なら、初めから狙っていたと言えるけど、仕事なら仕方ない?
そっちも、初めから狙っていたパターンでしょ!
ここで幼馴染ちゃんの発言が頭の中をグルグル回る。
『犬獣人は誰にでも愛想振り撒く屑野郎だから、付き合ったら誰にでも良い顔して、ドアマット扱いするから、ガンバ』
「番いとのデートより、可愛い子ちゃんの仕事仲間と残業したいだと?! 番いより優先する相手なんかいてたまるか! それは、ただの浮気だ!!」
引っ叩いて、蹴って、
通りがかった幼馴染ちゃんから手渡されたヒノキの棒で殴って、
無抵抗のカイが言い訳を止めて「二度とドタキャンしないから許して!」と言うまで殴った。
でも、駄犬だから、ドタキャンは直らない。
その度にヒノキの棒が折れるまで殴った。
ついでに、職場に仕事せずに男を引っ掛けに来ている給料泥棒のせいで、デートをドタキャンされていることを訴えた。
番いとの間に割り入った理由が、仕事が終わらないことだっただけに、それが何度もあったとなると、職場も良い顔はしない。他のイケメン従業員も、仕事を手伝わされて残業させられた事実から、略奪女はカイの職場から消えた。
駄犬は言って聞かせてもダメだったので、本当に助かった。
これが幼馴染ちゃんの言う『犬獣人は誰にでも愛想振り撒く屑野郎だから、付き合ったら誰にでも良い顔して、ドアマット扱いする』か。
カイのお母さんにも話を聞いたら、デートの途中で人助けをし始めることを言い出した。
それは良いことだと思ったら、毎回のように困っている人を助けに行く。それも女性が大半。
男女比から考えて、半数が女性になることはわかる。でも、十人中七人は若い女性だ。
犬獣人は人当たりが良くて、親切で優しいからと、大人気だとか。
幼馴染ちゃんもそれがウザくて、ヒノキの棒を持ち歩くようになったらしい。病弱を装った女性のすぐ傍で、ヒノキの棒で地面を叩いたら、元気に飛び上がって逃げるそうだ。
ヒノキの棒を持って通りがかるなんて、と思ったら、私の番いのせいだったらしい。
本当に申し訳ない。
元カノだと邪推してしまったが、幼馴染ちゃんはカイのお母さんに幼い頃に犬獣人の屑さを教えてもらったので、カイには恋愛感情を持てなかったらしい。
本当に申し訳ない。
カイのお母さんがしみじみと言った言葉が耳に残る。
「あなたみたいに愛あるフルボッコをしていたら、今もあの人と一緒にいられたかもしれない」
ドタキャンされ、後回しにされ続けたカイのお母さんの決断は悪くない。
私の場合は、通りがかった幼馴染ちゃんがヒノキの棒をくれたから、我慢できている。
モノローグに対する幼馴染ちゃんの突っ込み「あたいが棒を渡す前から殴っていたじゃねーか」
※棒を渡す前は引っ叩いたり、蹴っていました。