第2章「29歳彼女いない歴=年齢の真性童貞がマッチングアプリをしてみた」②
毎日更新します。
非モテ童貞の生々しい内面と足掻きをコメディタッチで描いていきます。
そして3カ月の課金が終了した。
結局、3カ月で誰一人とも会うことができなかった。
会う約束を取り付ける前に連絡がつかなくなったり、約束を取り付けたはいいが集合時間になっても一向に現れず、すっぽかしを喰らうなど散々だった。
なんだったの、これ。
断っておくが、アプリに登録した写真が悪いとかはないと思う。
夕焼け空の海を背景にした”エモ”な写真を1枚目に設定したのだから。
2枚目もそこそこ洒落たレストランで撮ったから雰囲気も悪くないはずだ。
自分で言うのもなんだが、割とさわやかなはにかみ顔である。
そして3枚目は街のイルミネーションを背景にしたこれまたオシャンティな写真だ。
どれもこれも平均並みかそれ以上に“映えて”いる写真だと思う。
にも拘わらず、誰一人として会うことができなかった。
自己紹介だってテンプレを参考に印象よく纏まったものに仕上がっていたはずだ。
それなのに、何故なんだ!
……結局、年なのか、年齢なのか!
29歳でフリーターだから駄目だっていうのか!
年収欄にみっともなくて何も書いていないのが駄目なのか!
どれだけ見た目に気を遣っても、写真を工夫しようとも、社会的地位が全てをひっくり返してしまうというのか!
そりゃ、分かってるさ。
29にもなれば、そうなるってことくらい。
でも、納得は出来ない。
お前ら、そんなに結婚したいのかよ!
チクショー、日本の出生数なんて0になっちまえばいいんだ。
全員、独身バンザーイ!
世界なんて滅びちまえ!
そもそも、俺はアプリで無限に表示される見知らぬ女達に興味が持てなかった。
そりゃ、ツラのいい女の子は魅力的だ。
だけど、そういう子は無限にいいねが来ていて俺みたいな別にイケメンでもなければ金もない、そして女性経験もない29歳彼女いない歴=年齢の真性童貞がマッチすることなど滅多にない。
仮にあったとしても、あの「かえで」のように、俺をコケにして楽しむだけだ。
となると、残るのは普通くらいの容姿の子とブスだけだ。
そして普通の容姿の子もカワイイ子ほどではないにしろかなりの数のいいねが来るので俺のような弱者男性は相手にされない。
だから本当の本当にリアルな選択肢として残るのは「ブス」ということになる。
はっきり言って俺は面食いだ。
ブスは嫌だ。
しかもアプリは基本的に写真で全てが判断されるので余計にブスには拒否反応が起こる。
ただでさえカワイイ子が山のように表示される中で、わざわざブスを選びたいと思うだろうか。
いや、別にリアルでならブスであっても、程度はあれど許容できると思う。
というのも、リアルであれば身振り手振りや表情、声などが生に伝わってくる。
それが継続的に顔を合わせる関係であれば尚のこと愛着が湧きやすい。
しかしアプリではそうしたリアルな感触は得られず必然的に写真と文字の情報からでしか判断できないからブスに愛着を抱くことができない。
会ったこともなければ声を聴いたこともない、どういう人間なのかという人伝の評判も聞いたことがない文字と写真だけの「情報」にどうしても没入できなかった。
これは俺の問題というより、アプリのシステムの問題だ。
俺がアプリで彼女ができなかったのは、ブスを弾いていたからだと思う。
マッチする見込みすらないカワイイ子にばかりうつつを抜かして、現実を見ていなかった。
ブスまで射程に入れていれば多分出会えたと思う。
大学時代の後輩に俺と同じアプリを使っているヤツがいた。
そいつは素人童貞だったから素人とセックスすることにものすごく飢えていた。
だからブスであろうといいねを送りまくり、ある時26歳の女とマッチしたそうだ。
その女は写真を見るだけでもかなりのブスであることは明らかだったようだが、なんと向こうから熱烈にアプローチされたというのだ。
今まで彼氏がいたことがなく、とにかく彼氏が欲しかったから「彼氏になってほしい」と会う前から言われたそうだ。
後輩は素人とセックスがしたかっただけのケダモノだったのでそのアプローチは無視してとりあえず女と会うことにした。
千葉からわざわざ長野まで車を走らせ、その女を迎えに行くと、そこに現れたのは写真以上の、醜女と形容してもいいレベルのデブスだった。
しかも極めつけは、その服装で、26歳なのに小学生女子のような格好だった。
要するに、そういうレベルの女であれば簡単にヤることができるのである。
ちなみにその後輩はそんな醜女でも「ヤれればOK」だったらしく、一発ヤるだけヤッて帰ったそうだ。
そこまでの醜女とまではいかなくとも、ある程度のところで妥協できていれば苦労はなかったのだと思う。
しかし、俺はその後輩と違い、「とりあえず女とヤりたい」ヤリモクではないし、普段ネットでカワイイ子を見続けているせいで理想が青天井となっているから、「情報」でしかないアプリのブスにアプローチしようとは思えなかった。
ネットでは、現代の女は高望みしすぎていると批判される。
だけど、男だって俺のように叶わない高望みをして現実を見ない連中は沢山いると思う。
アプリが出会いの主流になったことで男女ともに高望みをするようになったのではないだろうか。
俺達は高度情報化社会の生み落とした欲望のモンスターなのかもしれない。
要するに、俺はアプリに向いていなかった。
俺はアプリをスマホからアンインストールした。
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次回から第3章に入ります。
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